異世界に召喚されたのは二度目だけど、まぁとりあえず強くてニューゲームします

Luxuria

第一章 3 初の依頼は護送

    メルト教国北辺に位置する街フェミル。国境付近ともあって朝から商人達が行き交う姿は、日本のオフィス街の光景に似ている気がする。

    「よっ、中々早いな」

    朝の七時四十分頃。約束の場所である、北門付近の噴水広場に赴く。

    今日も心地の良い快晴で、朝日が俺ともう一人を照らす。

    もう一人とは、昨日パーティーに誘った、ミラという女だ。歳は知らないが結構な美人で、例の件が無かったらお近づきになりたかった所だ。

    今は二人だけ。ギルは元々違う宿。オリバーは今頃起きているだろう。俺が起きた時に起こして、まだ早いからゆっくり行くと言われた。ちなみに俺は金が無くてオリバーの部屋の床で寝たので、眠りが浅かったのか早く起きた。

    「あなたね。確か名前は……」

    「レンだ。姓は無い」

    「そう。あなたも中々早いのね。まだ三十分前よ」

    これがデートの待ち合わせだったら、『待った?』『待ってないよ』みたいになる訳だが、当然そんな会話は無い。殆ど初対面に近いしな。

    「これが初めての依頼だからな。自然と早く起きたのさ」

    早く起きたのは床で寝たからだが。

    「とりあえず待つか」


    俺がそう言うと、眠かったのか、近くの壁に寄りかかって目を閉じた。寝てるのか?





    俺も同じく壁に寄りかかって待っていると、ギル→オリバーの順で所定の場所に着いた。


    約束八時ちょうど頃に依頼主のオーレンという男が現れた。

    出で立ちは中世ヨーロッパ人の商人といったもの。少しばかり恰幅のいい体型が、トル●コを彷彿とさせる。

    馬車の便の予約をしているらしく、今回はそれに乗って行くらしい。

    街の北門を抜けると、馬車の停留所があり、そこに俺達が乗る馬車もあった。

    馬車に乗ると妙な事に気づいた。

    商人の護送だというのに、何故か荷台もなく、オーレン本人も大きめのリュックしか持っていない。

    「オリバー、なんでこんなに荷物が少ないんだ?」

    疑問に思い、隣に座るオリバーに聞く。

    「そりゃあお前さんも持ってるアレでだろう?」

    アレ?    ……あぁ、腕輪か。

    「本来荷台に積むような商品を完全に収納してるっぽいから、割と高価な部類のアイテムボックスだな。百万ネス近くはするな」

    旅に飽きたら商売でもやったら儲かるかもしれないな。確か腕輪が収納出来るのはプレハブ小屋位なら余裕だから、かなり便利だし。



    「そうだ、自己紹介しましょう」

    アイテムボックスの会話を含め、オリバーとギルにこの世界の事を聞きながら馬車に揺られていると、オーレンが口を開いた。


    「今回は結構な長旅になりますし、互いを知っておいて、損はないかと思いますが、どうでしょうか」

    いい提案だ。ここで仲良くなっておけば、後々のフラグになったり、商人ならではの情報が得られるかもしれない。


    「じゃあ僕から、ギルデバート・ロイゼン、出身は今向かっているセーレムだ。一応親は貴族だ。でも、僕は妾の息子だから、別にどうということはない。気にしないでくれ」

    最初にギルが自己紹介を始める。苗字持ちの時点で、貴族の家系の者だということは知っていたが、本人から聞くのは初めてだ。

    「ロイゼン……まさか侯爵家の出でしたは、何故冒険者をしているのか、聞いても?」

    「ただ外に出たかっただけさ、妾の息子というだけで、あまりいい目で見られないからな。うんざりしたのさ」

    侯爵家……五爵位の中でも上に位置し、王家の分家に近い公爵を除けば最高の爵位である。

    高い地位にあれば、相当のしがらみやその他があるから抜け出してきた。というところか。彼の魔力纏や剣術にはそのルーツ故なのだろう。

    「簡潔にいきたいから、僕は終わりでいいだろう。次はオリバーでどうだ?」

    貴族絡みの会話が嫌いなのだろうか、さらりと次に会話を促すギル。

    「今聞いた通り、俺はオリバー姓は無い。出身は中央大陸東部のクラテスという街だ。親が冒険者で俺も自然とそうなった。元々南大陸には海上輸送の依頼で来たんだが、こっちの暮らしが良くてな、気づいたら二年経ってた。そんで今回はこっちの面白そうな奴に会って、そろそろ中央に戻ろと思った訳だ」

    オリバーが自身の経緯を話していく。俺の設定と同じく、冒険者の息子らしい。面白そうな奴、つまり俺が北方面に向かうのに乗じて同行を決めたらしい。しばらく長い付き合いになりそうだ。

    そして、次は俺の番だ。


    「俺はレン。オリバーと同じく、姓は無く、冒険者の息子だ。辺境の村で暮らしてて街に出てきた所に二人に出会ってここにいる。少し常識に疎いから、もしもの時はフォローをお願いしたい。今後ともよろしく」

    短く簡潔な自己紹介。確か高校の最初はこれ以上簡潔だった。そのせいで友達は少なかったのは記憶に新しいところだ。

    それでもう一人は……

    「私はミラ、姓は……無いわ。以上よ」

    短っ。

    「おいおい、短過ぎねぇ……何でもない、十分だ」


    その短さにオリバーが指摘するが、彼女の眼光に当てられ、口を閉じるオリバー。怖いわ。

    「……あ、私の紹介をしますね。私はオーレン。フェミル等、メルト教国の各地で商人をやっていたのですが、今回希少な物を仕入れまして……この魔石をセーレム王都の城下町で開かれるオークションで競りに出そうと、今回の護送を依頼させて頂きました」

    重くなった雰囲気の中、気まずそうに自身の紹介をするオーレン。


    「「「「…………」」」」


    沈黙が続き、響くのは馬車が平原を走る音。初めての冒険にしては随分と気まずいものだ。


    どうにかこの空気を変えねば。そう思った時だった。


    「おい皆、仕事のようだ」


    オリバーの声により、俺を含めた全員が反応する。進行方向に何かがいるようだ。

    目を凝らして見ると、その何かの正体が明らかとなった。狼だ。体格は1m〜2mで、元の世界のものより一回り大きい。

    個体名は【レッサーウルフ】。平地、森林、山など様々な所に広く分布し、最も多くの被害を発生させている魔物だ。群れによっては百体を超えるものもあるとか。

    現在いるのは見晴らしのいい平原。当然もう気づかれているので迂回は不可能、戦うしかない。

    「馬車を停めてくれ、ちょっくら行ってくる」


    停まった馬車から繰り出し奴らに向かう俺達。

    戦闘開始だ──





◆◇◆






    戦闘が終了し、馬車に戻る。

    ウルフの数は計12体。向かってきたのに対し、魔法で数体倒すかダメージを与えた後は近接武器で片付けた。

    戦闘を見て思ったのだが、ギル以外の2人も強かった。まずミラは俺、ギルと共に魔法で手前のウルフを倒し、その後も持っていた細剣で串刺しにしていた。オリバーは魔法は使わなかったが、幅が広く肉厚な剣でウルフをおろしていた。

    ちなみに俺も普通に活躍した。ウルフは中々に早く、日本の一般人だったら瞬殺だろう。強さ的には、戦争時に徴兵された一般市民よりちょい強いくらい。

    あと解体もした。魔物は基本的に売れるらしい。強い魔物や、希少な魔物の素材は高額で、冒険者の主収入になるらしい。また、魔物は【魔石】という器官?があり、それは汎用性が高く、常に需要があるらしい。

    魔石というのは魔力を持った石の様なもので、魔道具の素材になったり、ポーションの材料になる。種類は二種類あり、今回入手した動物性のものと、山や洞窟で入手可能な鉱物性のものが存在する。

    動物性は基本的に使い捨てで、鉱物性と動物性でも高位のものは魔道具や、武器に用いられる。後者は高価で取引され、それ故に採掘専門の冒険者が居たりする。


    馬車に揺られて数時間。あれから二回のレッサーウルフの群れからの襲撃があった。一度目は8体、二度目は15体。少し多いとは思ったものの、難なく返り討ちにできた。


    「おかしい……おかしいぞ……」


    再び動き走り始めた馬車で、下を向いて考える様に座っていたギルがブツブツと喋り始めた。


    「何かあったのか?」

    「ウルフの数が明らかにおかしい、レッサーウルフは基本的に森林や山に多い。平原にも分布するが、それは群れからはぐれたもの。平原、それも比較的通りの多い場所に12匹。民間人のみならず、少人数の冒険者でも瞬殺されるぞ」


    やはり多かったのか。特に何も言わないし、あっさり倒すから普通なのかと思ってた。

    「お前さんもそう思うのか、俺も何かがおかしいと思ってたいた所だ」

    「やはりこの所魔物の数が増えているというのは事実のようですね……」


    そういえば商人──オーレンは確か護送依頼の理由に、高価なものを運搬するから、というのに加え、朝、挨拶するときに「最近は物騒なので」とも言っていたな。


    「とにかく平原を抜けよう、早くギルドに報告をしなければ」

    「解りました、少し、飛ばしますよ!」

    オーレンが手綱を強く握り、馬車は走る速度を上げていく。

    不安を胸に抱えながら、冒険は続くのだった。
    



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