異世界に召喚されたのは二度目だけど、まぁとりあえず強くてニューゲームします

Luxuria

第一章 2 冒険の始まり


    メルト教国。メルト教の唯一神である、人類の繁栄を司る神、メルトを祀る宗教国家だ。

    世界に東西南北・中央の五大陸ある内の一つ、南大陸の南方を統べる国だ。

    この世界では、もう一つ、多神教の宗教が浸透している為、他国とは仲はあまり良くなく、人間以外、獣人やエルフのような亜人、特に魔族を嫌っているため、正直評判の良い国では無いのが本音だ。

    しかし、人間に対しては住みやすい国なのかもしれない。奴隷は禁止されているし、国の騎士達は定期的に魔物を狩るため、他国に比べ、強い魔物が少なく、冒険者が旅立つ場所としては丁度いい所だろう。


    そして昨日。俺は冒険者ギルドに入会し、いざ冒険の幕を開けたのだが……


    「起きろ、起きろって。もう昼だぞ」

    何者かに起こされ、目覚める俺。

    「ふわぁ、何だオリバーか」

    「何だとは何だ、せっかく起こしに来たのに」

    カーテンが開かれた事により差し込む陽光が俺を目覚めさせる。

    清々しい快晴の空は、起こしに来たのが美少女であればなお良かったが、そんなのはイケメンかラノベ主人公だけの特権だ。

    「悪かった、頭痛が少し残っていてな」

    「あ〜、お前さんかなり呑んでたからな、まぁあいつギル程じゃあないが」

    そう、昨日は結局朝まで飲むレベルだった。最終的には他の冒険者も混ざっていたので情報収入も出来た。最終的にはノックダウンされはしたが。

    「とりあえず水でも飲んでおけ。俺は先にギルドに行ってる」

    「分かった、ありがとよ」

    部屋を出て行くオリバー。気遣いが出来る事から大分モテると、昨日他の冒険者から聞いた。羨ましい限りだ。

    ……支度するか。





◆◇◆






    「来たか。オリバーは依頼を見てくるそうだ」


    遅めの朝食を宿屋で取りチェックアウト。その後足早に冒険者ギルドに向かった。

    出迎えたのギル。昨日は大分荒れていたがもう復活してるらしい。

    「いいのか?   ただの新入りにここまでしてもらって」

    「少しは先輩面させてくれ、というか僕に勝てる奴はただの新入りとは言わん。ギルドにも噂になっているぞ」

    噂になっているのか。そういえばチラチラと視線が向けられていたな。

    「確か中央大陸に向かうんだろう?    僕も向かおうとしていたから丁度いいんだ。オリバーは確か中央出身だしな」

    「それだったらお言葉に甘えて同行させてもらうよ」

    昨日、呑みながら俺のこれからの方針等を彼らに話した。もちろん勇者と魔王関係は伏せたが。

    ちなみに俺は現在魔王のいる北大陸から一番遠い南大陸におり、その南方を統べる国、メルト教国にいる。今いる街フェミルは、教国の北よりの地域に当たる。一昨日いた訓練用の洞窟型ダンジョンから最寄りの街だ。

    あの二人からの連絡によると、勇者達は現在王城に戻っているらしい。どうやら俺のは正当防衛だと弁明されたらしいが、鮫島の死体によるショックと、俺が聖騎士のトップをボコったせいで、訓練は滞っているとか。服部は軟禁されてるらしいが。

    誤解が解けたから、戻っても良いと思うが、馴染めることは無いし、一部の生徒は俺を怖がっているらしいのでやめた方がいいだろう。

    結果的に俺はそのまま単独行動をとる事になった。

    少しばかり寂しい気もするが、これからは自由な旅が出来るので、気持ち的にはプラマイゼロだ。


    「お、戻ってきた」

    ギルが食べていた、野菜スティック(何の野菜かは謎)を食べながらテーブル席で待っていると、依頼書らしき紙を持ったオリバーが戻ってきた。

    「おぉレン、酔いは覚めたか?」

    「おかげさまでな。それより、依頼を受けるのか?」

    人参っぽい野菜を齧りながらオリバーに聞く。

    「ああ、Dランクの依頼だ。『荷物の護送』、ある商人が隣国のセーレムまで荷物、商品の護送をお願いしたいんだと。教国とその付近は安全だが、運ぶ荷物が少しばかり高価な物らしく、大事をとって依頼してきたらしい。報酬は四万ネスだ」

    「だが、一つ問題がある」

    「「問題?」」    

    依頼の内容を話した後に問題を提示するオリバーに俺とギルが疑問符を浮かべる。

    「四人以上必要らしい。だが、この依頼は長距離移動かつ、長時間かかる依頼だ。直ぐに誘える奴はいないし、依頼の受注期限は今日の夜まで。どうしたものか……レンは来たばっかりだったな、ギルは誘える知り合いはいないか?」

    人数制限。ギルドの依頼書に書かれる募集要項の一つだ。

    俺は来たばっかりなので当然、オリバーはいないらしく、ギルに聞いている。


    「いない。行ける知り合い、というか親しい知り合いがほとんどいない」

    おおう……なるほど、女性にはともかく、男の知り合いもいないとは……

    よくよく考えれば、初対面のとき、ナンパしてたし、あの顔と能力的に友達も出来にくいだろう。まぁ俺も学校ではボッチに近かったが。

    「そ、そうか。じゃあ手当り次第にスカウトする感じで」

    「そ、そうだな」

    気まずくなって別れる俺達だった。








    昨日の戦いを見られていたこともあって、話しかけると良さげな反応をする者もいたが、長期に渡る依頼がいきなりと来ると断る者が多く、未だに参加してくれる人が見つからなかった。

    その時だった。食堂兼酒場のテーブル席の端っこに座っている人物を発見した。

    フーデットケープを目深に被っており、顔は見えないが、小柄で華奢な体躯から、女性であることが読み取れた。

    フード系や仮面系のキャラは強キャラなのは定番だ。そういう訳で俺は彼女?に話しかけようとした。

    「あの女はやめといた方がいい」

    「ッ!」

    後ろから声がする。あまりにトーンの低い声に驚いたが、その声の主はギルだった。

    「どういう事だ?    明らかに強キャラ臭がするだろ」

    「あいつはヤバい。とにかくやめといた方がいいんだ」

    尋常ではない様子で怯えるギル。一体どうしたのだろうか。

    「とりあえず一旦聞かせてくれ」

    「ああ、これはここらの冒険者はよく知ってる話なんだが……」




    「彼女の名前はミラ。出身不明、年齢不詳。一年前位にこの街で冒険者を始めて、現在はCランクだ。主武装は魔石の付いた高そうなダガーと魔術。お前と同じく、四大属性魔術を扱える優秀な人材だ」


    「……それだけ聞くと、中々優秀そうじゃないか。誘っても良さそうじゃないか?」


    「まぁ聞け。問題はこの後だ。彼女は基本的に単独行動で成果を挙げてきた。だがある日、多パーティー合同の緊急依頼、この街の東の森で、モンスターの大量発生があって、この街の冒険者と騎士が勢揃いで出撃したんだ。そこで事件は起こった…………」

    稲川●二みたいな語り方でおどろおどろしく話を続ける。何があったんだ。

    「騒動の収まった後の祝勝会、皆酒を片手に武勇伝を語ったりと和気あいあいとしていた。彼女は一人で呑んでいたがな。だが、一人の男が彼女に近づいた。彼女は断ったが男はしつこく迫る。その末には肩に手を回し、密着状態になった。その時だ、彼女は強く相手を振り払い……」

    …………。(ゴクリ)


    「男の股間に、小規模だが、【パニッシュフレア】を放ったんだ」


    はっ?


    【パニッシュフレア】    。炎を爆発させ、硬い敵でも吹き飛ばす中級の炎・風属性複合魔術だ。

    それを股間に…………




    「ヤバいな」

    股間が消滅する。

    「ああヤバい、とにかく彼女だけは止めとけ。股間を消されたくなければな」

    最後の忠告とばかりに言うギル。

    けれど、俺は彼女に向かって歩き始めた。

    「おい!    止めとけって!」

    ギルが制止してくるが、近づいていく。それは、ある感覚を感じたからだ。


    「向かい、座っていいか?」

    彼女のテーブルの向かいに立ち、そう聞く。

    「何の用かしら、あなたも今私の事を聞いたでしょ?」

    「まぁな、正直ゾッとした」

    正面から見て、彼女の容貌が目に入り、美しい。そう思うが先程の話のせいで息子ヤツは反応しない。というか縮み上がっている。

    (気になったのは、アンタが魔族だっていうことだ)

    「ッ!」

    近づいて分かった。人間とは違う、獣人やエルフのような感じもしない。もっと強い存在感。

    魔族。魔族といっても色んな種族の総称だから、何の種族かは分からないが、そんな気がした。

    俺は前の世界で魔族にあった事がある。戦後の処理とかで数年滞在していたある日、外交官の魔族が帝国に来た。

    濃密な魔力、そして存在感。俺が東方の気功術を習得しているからかは知らないが、とにかく強い気を感じた。

    ちなみに今は割愛するが、気功術という自分の生命力を武術に転用するというものを俺は習得している。

    という訳で似たような気を感じた俺はギルの制止も振り切り、彼女に接触した訳だ。

    (何故それを!)

    (何となくだ。それより、話がある)

    小声で会話を続ける。遠巻きにギルが焦っているのが見えるが気にしない。

     (とりあえず聞くわ、何がお望みかしら?    教国に密告する?    それともそれを傘に何かさせるつもり?)

    (別にそんな下衆な話じゃない、ただパーティーに参加して、依頼を手伝って欲しいだけだ。もちろん報酬も出す)

    (先に依頼の内容を聞いても?)


    俺は護送の依頼について話した。

    (乗るわ。私もそろそろここを離れたかったの。でも条件があるわ)

    (俺に飲めることなら何でも)

    とりあえず承諾してくれた事に安堵。二人は文句を言いそうだが、強い人材なら俺は別に良いと思っている。股間が爆発は怖いが。

    (まず、私の正体についての口外の禁止。それと私については一切詮索しないこと。あくまでビジネスパートナーとして、私と接しなさい)

    (お易い御用だ。これからよろしく頼む)


    交渉は成功。これで隣国に向かえる。


    (じゃあ明日の朝八時頃に、街の北門付近の噴水広場で)

    彼女はコクリと頷くと、さっきよりも目深にフードを被った。





    ギルの所に向かうといきなり怒られた。

    「何をしているんだ君は!    あやうく君のが無くなるところだったぞ!」

    「無くなるって……そこまで怖い人ではなかったよ。依頼についても参加してくれるらしい」

    「ヒィッ!」

    そんなに怖いのか。







◆◇◆







    結局誰も見つからなかったらしいオリバーと合流し、彼女の参加する旨を伝えた。

    その後、新人に必要な物の買い出しについて来てもらっていた。

    現在、鍛冶屋におり、防具を繕っていた。武器があることは事前に伝えている。

    俺が纏っているのは、教国で支給された村人のような衣服。攻撃当たらなければどうということはないが、装備するに越したことはない。

    ちなみに一昨日着ていた軍服は、彩音謹製の防弾・防刃、魔力抵抗の代物だが、あれを街中で着る気にはなれない。目立つし。

    「防具を見繕う前に、お前さんの武器を見せてくれないか?」

    様々な防具が並ぶ棚の前で、オリバーに聞かれる。

    俺は腕輪から武器を出す。

    現れたのは小剣。同じく教国に支給された物。勇者に支給されるものだけあって、中々の逸品で、白く輝く刀身はとても鋭く、魔力との親和性も申し分ない。

    「ほぉ、良い剣だ。親御さんから貰ったのか?」

    「……まぁ、そんなところだ」

    「それより、今アイテムボックスを使わなかったか?    それも高価な」

    「あー、これはちょっと知り合いにもらってだな」

    ギルに腕輪の収納について聞かれる。しまった、これ結構レアな品物だったのを思い出した。

    異世界には、マジックアイテムという物が存在する。人工、もしくはダンジョンから発掘され、物によってはかなりの値が付く物もあるとか。

    俺が持つ、この腕輪のような収納系のマジックアイテムは割と高価な物らしく、(アイテム自体の小ささ)×(収納上限)で比例するようだ。

    「小さいのに、そんな剣も入る程の代物をくれるなんて気前の良い人がいるんだな」

    冒険者の息子だという設定が効いたのだろう。あまり詮索はしてこない。



    「じゃあ防具を選ぶか。武器的には軽い防具の方が良いか?」

    革鎧や肘・膝当てのような比較的軽い防具の並ぶ棚を差して聞いてくるオリバー。

    「そうだな、基本的に超近距離で戦うからなるべく身軽がいいな。あと、装備でケチりたくはないが、あまり金がない」

    手持ちは一万五千ネス。バルトが持っていた財布を奪ったものだ。聖騎士の統括とか言うから高給取りで金もあるんだろうと思っていたが、意外と少ない。一応節制一年程は暮らせる金額だが。

    防具の相場はワンセットで五千ネスから数万ネス程。選ぶとしたら最安値の全身革の防具か、ギリギリ買える、革鎧に合わせて肘・膝、胸当て等が付いた物だ。

    「ケチるのは命に関わるからな。これにしよう」

    手に取ったのは後者。一万四千弱だが、しばらく節制すれば何とかなるか。

    「即決だな。僕もそれは良いと思ってたよ。金は大丈夫か?」


    「ああ、ギリギリだが問題ない」

    「ギリギリなのか……まぁ今夜の夕食位なら奢ってやる、とりあえず買って、サイズ調整してこい」

    
    俺は会計し、体に合うように調整された後、鍛冶屋を出た。


    その後は街をブラブラし、冒険者ギルドのギルドで呑んだ。人の金で呑む酒は美味かった。



       



    

    
    

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