異世界に召喚されたのは二度目だけど、まぁとりあえず強くてニューゲームします

Luxuria

第一章 1 異世界って言ったらやっぱ冒険者だと思う

    ──【冒険者ギルド】。人々の依頼を元に魔物の討伐や物品調達、お使いや貴族の使いっぱにも対応する、何でも屋に近い職業、冒険者の窓口にして、世界を股に掛ける大企業でもある。

    中には世界最強を争うような猛者も抱えているとか。

    また、世界有数の権力を持ち、各国政府とは独立しており、あくまでビジネスパートナー。一国に加担等はしない、国際組織だ。

     他にも二つ似た国際組織がある。貨幣を管理する【世界金融ワールドバンク 】、運送と商業を管理し、取引の公正を取り締まる【商人ギルド】があり、この三つを合わせて、三大法人と呼ばれるらしい。

    高い武力を持った冒険者ギルド、財力にものを言わせる世界金融、物流を支配する商人ギルド。確かに敵には回せないな。


    で、今から俺はこの街、フェミルの冒険者ギルドに向かっている。

    あと、この街の情報は昨日同じ宿屋にいた、オリバーという冒険者に聞いた。酒を一杯奢っただけだが気前が良く、有用な情報をかなり得ることが出来た。

    近辺の地理や主要な店など、酒一杯では全然足りない程の情報である。今度あったらまた奢ってやろう。

    そんな事を考えていると冒険者ギルドに着いた。日本の作品でもよく見るような造りで、食堂・酒場が併設されており、昼間だというのにもう呑んでいる者もいる。

    何か絡まれるとも思ったが、その心配は無駄になったようで、普通に受付に辿り着いた。

    「いらっしゃいませー!    本日はどのようなご用件で?」

    職員のお姉さんがビジネススマイルを浮かべながら接客してくる。

    「ギルドに登録したいのですが」

    「登録ですね、少々お待ちください」

    少し待つといくつか道具を抱えて戻って来た。

    「登録にあたって、いくつかご説明を致します」

    「まず、冒険者とは基本的には依頼を受け、達成。それが基本的な仕事になります。また、魔物の素材、ダンジョン等で得られたトレジャーの買い取りも行っております。この二つが冒険者の収入源となっております。

    次にランクについてです。ランクはF〜Sの7段階あります。これは依頼を達成することを重ねれば昇格試験を受けることが出来ます。またランクは、依頼やパーティー募集の際に受注制限、募集要項に関係し、そのランクに達していなければ、依頼の受注、パーティーへの参加が出来ない事があります。あと、その依頼の難易度の指標ともなっており、依頼のランクが高い程昇格試験への道のりも短くなります。

    そして禁止事項についてです。まず当たり前ですが、民間人への暴行及び、冒険者同士の私闘の禁止です。また迷惑行為や、他人の依頼の妨害等も禁止されております。そして冒険者カードの偽造や詐称。もちろんそのような行為を防ぐ為にこちらも対策をしておりますが、念の為お伝えしています」


    「次に冒険者カードについてです」

    お姉さん(名札を見るにサラというらしい)が先程持ってきた道具を出した。

    「こちらの書類に必要事項を記入して頂き、その後に魔力によるカードの関連付けの為、血液を頂きます」

    書類と針、小さな器を受け取る。一つはただの書類、残りは血液採取の為の物だ。

    書類に目を通す。名前、種族、性別、年齢、の基本的なものに加え、【特筆事項】という欄があった。特筆事項?

    「すいません、この【特筆事項】って何ですか?」

    サラさんに聞く。

    「はい、【特筆事項】パーティーを組む時に参考になるもので、使える武器や魔術、その他特技を記入して頂く欄となっております。また、Bランク以上の方に依頼される、指名依頼を依頼する際、依頼主の方が参考にする事もあります」

    なるほど、中々に便利だな。これを見れば役割の割り振りだったり、仲間の能力を把握出来るのか。

    能力か。昔敵の武器を拾って使う事もあったから割と色々使えるんだよな。魔術も攻撃、支援、回復全部いける。あれ、割と俺有能なのでは?

    とりあえず、剣術、槍術、弓術を使用武器で魔術は四大属性と回復が使える、と。

    そんなふうに書いて提出すると、なんかうさんくさっ、って目で見られた。

    「お若いのに随分と多彩なんですね」

    やっぱ疑われたか。実年齢は数えてないけど少なくとも50歳位だし、種族は人間だからサバ読んで(サバ読むってレベルじゃないが)18歳にしたのが間違いだったか。

    「まぁ親が冒険者でして、その知り合いからも色々教わりまして」

    「なるほど、冒険者の息子さんでしたか。それだったら少し納得出来ます」

    咄嗟の作り話である程度誤魔化せたみたいだ。ちなみに俺の書いた書類はこんな感じだ。


    【名前】レン

    【種族】人間

    【性別】男

    【年齢】18

    【特筆事項】

    剣術・槍術・弓術

    魔術(四大属性・回復)





    こんなもんだろう。ちょっと器用なんですぅ、とか言えば誤魔化せるだろう。名前が『レン』なのはこの世界の平民には姓が無いからだ。


    それで後は血液か。針で指先をプスッと。そしたらすぐに……

    「《ヒール》」

    血液の流れる傷が塞がる。俺は基本的に祝福の力で回復魔法は要らないのだが、なるべくこの能力は知られたくない。

    「本当に回復魔法を使えるんですね、信憑性が上がりました」

    「いや疑ってたんですか」

    「たまに能力を誇張する人がいるんですよ、あなたみたいに多彩に書く人は特に怪しいんですよ」

    「な、なるほど」

    悪い事する奴も居たものだ。

    「まぁこの後の入会試験で大体バレるんですけどね」

    「えっ」

    「これから訓練所で入会試験を行います。結果次第では、Eランク、Dランク、最高でCランクから始める事が可能ですよ。是非頑張って下さいね?」

    ビジネススマイルとは違う、少し可愛らしい微笑みを見せるサラさん。この顔は何人か恥ずかしい奴を見てる顔だ……ッ!






◆◇◆






    「どうぞどうぞー♪」と笑顔で案内されたのは模擬戦用の装備や遠距離射撃用の的が壁にある、まさに訓練所というには相応しいものだった。あの王城にもあったしな似たやつ。


    「君が新規の入会者かい?    僕の名前はギルデバート・ロイゼン。今回の試験を担当するBランク冒険者だ」

    訓練所に入って話し掛けて来たのは……なんと言うかスカしたイケメンだった。

    「冒険者ギルドの入会・昇格試験は高ランクの冒険者によって行われんです。今回はたまたま居たギルデバートさんにお願いしました」

    横にいたサラさんが解説をする。

    たまたま居たって。結構軽い感じなんだな。

    「まぁ新入りにはお手柔らかにしてやろう、ところでサラちゃん、今日の夜どう?」

    割と真面目な雰囲気かと思えば、いきなり何してんだ。

    「お断りしまーす」

    さらっと断るサラさん。サラだけに。(激寒)


    「おっほん、まぁいい、とりあえず始めよう、時間は有限だ」

    




    「時間制限や禁じ手は特に無しだが、周りに危険が及ぶような事は禁止だ。君は魔術が使えるらしいが、使うのは中級以下かつ、攻撃範囲の狭いものにすること、いいな?」


    「はい、分かりました」

    さっきまでの態度とは別に、割と真面目な口調で説明するギルデバート。びっくりである。

    「審判は私が務めさせて頂きます。致命的な箇所に攻撃する事で一本、それを二本で勝利、終了とします。その結果次第で初期ランクを決定致しますが、一本取らなくても、評価する事はあります、一応ギルデバートさんはBランクなので」

    サラさんが審判を行うらしい。先二本取った方が勝利と言っているが、最後の方を聞くあたり、本来試験官の敗北はありえないのだろう。

    「では、位置について……始め!!」



    数メートル離れ、訓練所の備品の木剣を構えると、始まりの合図がされる。

    「簡単に終わらせてもつまらないから、先に来い」

    挑発的な笑みでそう言うギルデバート。相当な自信があるのだろうが、俺はそれをへし折る気だ。イケメンは滅ぶべきだしな。


    「それじゃあお言葉に甘え──てっ!」

    スパアァァァン!


    高速で突進し、相手の構えていた長剣を模した木剣を弾き、胴を横に一閃。


    「グッ!」


    「はっ?」


    「……レンさん一本!」


   あまりにもさらっと一本を取ってしまった。

    「ふっ、どうやら舐めていたようだ。ここからは全力で相手をしよう。失礼な真似をしたな」

    どうやら舐められていたらしい。まぁ入会しに来たやっぱなんて大体村人よりちょっと強いとこレベルが普通なのだろう。ギルド後援の学校があるらしいし、強いのは大体そこからか、貴族の出なのだろう。

    ともあれ、まず一本だ。

    しかし、もう一本取るのは難しいだろう。彼の体にはオーラが出ている。

    これは比喩では無く、本当に出ている。

    魔力纏まりょくてん。前の世界でもあった、人間がより高次元の戦いを可能とする為の技術。魔力を纏った体、武器は生身の体の何倍も強くなるため、使い手を相手に、圧倒的な身体能力を持つ魔物相手には必須とも言っていい技術だ。

    これを安定して全身に均等に纏えるとは中々出来る奴である。少なくとも、騎士であれば管理職に就けるレベルの。


    「次は僕から行かせてもらうよっ!!」


    素早い突き、それに対し俺も魔力を纏って防御する。


    「分かっていたが、君も魔力纏を使えるようだね?    どこで習ったかは知らないけど」


    無駄の無い剣技の応酬が俺に浴びせられるが、全て捌き事なきを得る。


    実用的かつ美しい剣技。俺の使う帝国式剣術には無い美しさだ。

    俺の使っている剣術は帝国式剣術、かつて俺が召喚された帝国で習得した剣術だ。対人特化しており、人の弱点を突くことに重きを置く剣術。その用途から、使う者は一部の者から蔑まれていた。

    そんな事が頭に浮かぶが、そんな事をじっくりと考える時間は無い。この瞬間にも彼の持つ木剣が迫る。

    彼の放つ攻撃は鋭く、当たったらかなりの威力だろう。美しいながらも洗練されており、その裏には血のにじむ努力が読み取れる。

    剣技には突き技が多いことから、細剣使いである事が分かる。細剣──レイピアの類はリーチと速さに長けており、対人に向いている。見た目も良いから練習してた時期がある。

    対処法としては、低めの体勢からの急接近。これは長剣や大剣使い、斧使いにも言える事だ。主に刃渡りの短い小剣を使う俺にとっては相性が良い。

    実践であれば、剣で無理矢理にでも押し込んで、超近距離から隠し持ったナイフで首に一撃。で、あるがこれは即死コースなので使わないのは言うまでもない。

    なのである目的・・・・の為にも距離を、取り口を動かす。

    「《ファイアボール》」

    詠唱を省略した魔術。別に無言でも使えない事はないが、名前を使うとイメージ力と魔力効率が少し上がるのだ。

    その魔術による火球はスライダーのような軌道を描き、着弾。

    煙が上がるが相手は無傷。当然か。


    「……炎属性は本当っと……」


    小さくだがサラさんの呟きが聞き取れる。これがある目的、【特筆事項】の証明だ。あとは三つの属性魔術を使えばクリアだ。


    「魔術か、面白い。僕もそれで応じよう!    《ストーンバレット》!」


    小さな石を弾として打ち出す初級土属性魔術。メインとしては微妙だが、対人戦の牽制には重宝する。

    「《ブリーズブロウ》!」

    飛来する石弾に風属性魔術の風圧が干渉し、軌道を変えていく。


    「……中々に面白い奴が来たもんだ」

    「光栄だ。Bランクの冒険者様にお褒めに預かれるとは……」

    別にお世辞ではない。CランクとBランクには明確な違いと壁があると、城の書物で読んだ。Bランクからは指名依頼があることから、審査や試験がキツく、そこに昇格門はかなり狭い。

    ざわざわ……


    気づくと某ギャンブル系の漫画とは異なるざわめきが聞こえるようになっていた。どうやらBランク冒険者といい戦いになっているのを見物しに来た冒険者達だ。

    「あいつ、ギルと対等以上に渡りあっているぞ」「あの子、あとでパーティーに誘っちゃおうかな」「魔法戦だ!    これは金払ってもいいレベルだな」


    色々な声が上がっており、聞くと少しむず痒い気がする。


    「まだまだっ!    《ウォータービーム》!」

    横に伸びる水の柱が強い水圧をもって迫る。

 「《ロックシールド》」

 だが、俺が発動した土属性魔術の壁に阻まれる。これで、俺がまだ使ってない四大属性の魔術の属性は残り一つ。

 「《白き霧よ、我らを包み、霞め賜う》」

 炎属性・水属性複合魔術、【アクアミスト】。水の魔力で生成した水を加熱し、瞬時に液体から気体に変化させ、周囲に水蒸気、霧を生み出す。

 これでノルマは終了。あとは、全力で戦うのみ。

 
 「ッ!?」

 相手の驚きと金属音が聞こえる、どうやら今無詠唱で放ったストーンバレットは回避されたらしい。ちなみにこの霧は俺の魔力を含むため、相手に俺の位置はわからないが、俺は逆だ。だが……

「《命運ぶ風よ、我らに絡む霧を晴らさん》」

    そよ風を発生させる、【ブリーズブロウ】の魔術を改変した魔術。その効果は先程の小範囲ではなく、少し広い範囲で及び、【アクアミスト】の霧を晴らす。


    そんなのは予想済みだ。

    霧が晴れると同時に切り込む。

    「それは読めているっ!!」

    
    バレていた。俺の動きを予想していたギルデバートは俺に対し、高速かつ正確に突きを
放つ。

    その突きは俺?・・の胸元を貫いた……

    「残念外れ」


    今貫かれたのは、先程発生させた霧に幻影魔術【イメージリアライズ】を重ねがけた俺の分身。

    そして本人、俺はギルデバートの背後。晴れた霧の残滓から現れる。

    「何ッ!」


    生まれた隙に距離を詰める。そして下段に木剣を構えて踏み込む!

    俺の振るう剣をギリギリ防ぐギルデバート。反応速度には驚くが、もう遅い。

    「《……を切り裂く剣とならん》!」


    剣を持つ手とは逆の手で放つのは水属性魔術、【アクアカッター】。本来水の刃を幾つか放つ中級魔術だが、少しいじって手元に水の刃を精製した。それを首元に当てれば……

    「これで、二本だ」


    「レンさんに一本、二本先取したためレンさんの勝利、終了となります。お疲れ様でした」

    『おぉぉぉおー!!』


    辺りから感性があがる。やっぱりむず痒い。

    「まさかこの僕が負けるとは……中々やるな……レン」

    「いや、ギルデバート先輩のレイピアと魔法の扱いも凄かったですよ」

    互いに賛辞の言葉を送り合う。いつの間にか名前呼びされている。

    「ギルでいい、皆そう呼ぶ。あとお前の敬語は少しわざとらしい」

    見た目良いとこの坊ちゃんっぽいのにフランクな感じで接してくるギル。てか俺の敬語ってわざとらしいと思われてたんかい。

    「そうか、なら普通に喋る。これからよろしくな!」


    手を差し出し、握手。


    周りからは拍手喝采が飛びかい、中には硬貨を投げる者も居た。


    こうして入会試験は終わった。





◆◇◆






    色々手続きが終わったのか、受付に呼ばれた。


    「こちらが、レンさんの冒険者カードになります。再発行には時間とお金がかかるので、紛失はなるべく控えて下さい。

    あと、初期ランクですが、今回は最高のCランクからとなります。貴族や冒険者学校卒の方以外でのこのランクのスタートは数年ぶりだそうです。これからの活躍ご期待してますね」

    柔らかいビジネススマイルで言うサラさん。


    「ありがとうございます、これからお世話になります」



    こうして何事も無く、冒険者としての生活が始まるのだった。






    カードを受け取り、酒場に戻ると、見知った顔がいた。


    「ちくしょおう、この僕があんなにサラッとやられるなんてぇ〜」

    「飲め飲め、今日は奢りだ」


    さっきのギルと、昨日あったオリバーだ。どうやらギルはかなり呑んでいたのか、顔を赤くし、呂律が回っていないようだ。

    「あれ、お前さんか。まさかあそこまでやるなんて、予想だにしてなかったぜ」

    ほろ酔いで笑いながら話してくるオリバー。やけに笑顔だ。

    「勘でお前さんに五千ネスも賭けたら、まさかの大勝利、笑いが止まらねぇぜガハハハハ!」

    豪快に笑うオリバーは相当嬉しそうだ。てか賭けてたのか。

    「オッズは十倍、つまり五万ネスだ。思わぬ臨時収入だぜ」

    五万ネス……日本円換算すると50万位。ネスというのはお金の単位ネーシャを短縮した呼び方で、信仰の深い国、ここメルト教国領だと大体ネーシャと言うのだが、大体はネス、と短縮して呼ぶ。

    それより……

    「どんだけ儲けてんですか」

    五万ネス。節制すれば、二年は暮らせる金額。この世界に来てから短くて物価はそこまで詳しくないが、一日の食事に大体五十ネスまで切り詰めて一年約一万八千ネス。後その他生活費も切り詰めれば、二年は暮らせる。

    まぁ、中堅冒険者にもなれば年収はその倍は行くのだが。

    「ハッハッハ、お前のお陰で稼がせてもらった。ほら幾らでも飲め!」

    そう言ってお酒の入ったジョッキを渡してくる。

    「まぁ、そういう事なら」

    ジョッキを受け取り、オリバーの隣に座ると……

    「あれぇ!    僕を負かした、レンじゃないか!    あのあとめちゃくちゃ笑われたんだからな!    『新人にボコられたイケメン(笑)』ってなぁ!」

    ギルに絡まれた。というか飲み過ぎだ。どっちかって言うと小洒落たバーで女の子をたらしこんでる、すけこましだと思っていたのだが。

    「ハハハ、今日は飲むぞぉ〜」

    怒っているのか、笑っているのか知らないが飲み過ぎだと思う。

    「ぷはー、とりあえず呑めよ。明日から俺が色々レクチャーしてやる、なんたって俺はBランクだからな!」

    酒を飲み干して自慢げに言う。Bランク以上って少ないって聞くけど、これは中々に珍しいことではなかろうか。

    それは置いといて、今日は呑もう。何か目の前で呑まれると、こちらも呑みたくなる。

    よし、明日から頑張ればいいか。



    

    

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