異世界に召喚されたのは二度目だけど、まぁとりあえず強くてニューゲームします

Luxuria

第一章 プロローグ ① 彼の過去

    あの事件のあった日の夜。

    私、佐倉 菜々香は、とある人物の元を訪ねた。

   「佐倉です。蓮君の事で聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

    ノックをして、扉越しに用を伝える。


    「いいよ、空いてるから入ってきて」


    促されるように部屋に入る。


    風呂とトイレ、ベッドが存在するだけのホテルのような部屋。こんな部屋が私達全員に与えられていた。

    「とりあえず座ってよ」

    ベッドをポンポンと叩く彩音ちゃん。隣に座れということらしい。

    「さて、その様子だとボクと彼には何らかの関係がある事は知っているようだね」

    「初日の夜、蓮君が外れに行くのが見えて……付いて行ったらあなた達の姿の会話を聞いちゃって」

    「あちゃー、聞かれてたかー。仕方ない長くなるけどいいかな」

    「うん、私はそれを聞くためにここに来たの」

    







◆◇◆









    まず、ボク達は三年前、今回と同じように異世界に召喚されたんだ。

    その目的は二つの国家間における戦争の集結。

    そうそう。今回よりも直接的な人殺しの強要だね。まったく、酷い話だよね。

    とにかく、ボク達は同じように訓練と学習を重ねて戦いに挑んだんだよ。

    初めは血を見て泣く子もいたけど、すぐに慣れたよ。貰った祝福の力で、簡単に事は進んだから、割とすぐに帰れるとその時は思ってたよ。

    だけど、それを覆す存在が現れた。勇者。そう、ボク達と同じ存在が敵国にも召喚されたんだ。

    そこからは苛烈を極めたね。殺し殺され、大地には血が染み込んだ。

    そうだ、ボク達の能力の話をしようか。まずボクの能力、【錬金術士】。あらゆるものを分解、合成、再構成する能力だよ。ほら、こんな風に蓮クンの1/7フィギュアも……いる?

    で、次は蓮君の能力、【再生】について。この能力のせいで、彼は死ぬよりも辛いことを体験しているんだ。

    異常な自己治癒力。擦り傷・切り傷は無いも同然、腕を切り落とされようとも、内蔵を奪われても問答無用で治す、異様な力。

    察したようだね?    そう、彼は全身を貫かれても、灼熱の炎に身を焼かれても生きているんだ。その激痛は想像もつかないだろうね。常人はそれを感じる前に死んじゃうから。

    結局何年で戦争は終わったかって?    三十年くらいかな?    少なくともそのくらいは経ってた。その後内乱を鎮めるのに四・五年、まったく、人使いが荒いよね。

    若さの秘訣?    まず蓮クンは不老で、ボクは能力の応用で今の見た目を保っているんだ。詳細は後でね。

    まぁとにかく色々あったんだよ。彼も随分と変わっちゃってね。二十代後半くらいだから、召喚されて半ば頃かな。彼の幼なじみが死んだ時から大きく変わったよ。


    ただひたすら敵を殺す機械のようにね。


    ボクは能力で兵器を量産してたから、人数に関しては一番殺したのはボクだけど、勇者を一番殺したのは彼だよ。半数近くは彼が片付けたね。まぁ人数に関しても彼は二番目だけどね。

    とにかく彼は受けた傷も、与えた傷も一番多かった。心の傷に関してもね。明るくなったのは一年程前かな、日本の娯楽って凄いね。彼の戦闘技術をアニメのシーンの再現という方向に活かすことで、段々笑顔が出るようになったんだよ。無駄遣いも甚だしいけどね。

    ボクはどうなのかって?    ボクは兵器の開発で、自ら手を下すことはほとんど無かったからね。彼程じゃないさ。

    結局最期に残ったのは彼とボクの二人。ん?   あー、翔クンは敵側の勇者。ボクの能力で若返らせる事を条件に降伏させて一緒に帰って来たのが彼。当時五人も残ってたにも関わらず降伏したのは、若返りの魅力と、蓮クンへの恐怖だろうね。蓮クン、勇者絶対殺すマンだったから。

    彼は敵だったけど、降伏してからは大分こっちに親しい感じになったね。学校もわざわざ転校して来たし。

    まぁとにかく色々経て今に至るんだよ。







◆◇◆










    「これが、知ってる話を要約したものだよ」

    三十年余りの戦争に身を投じていた。その事実に驚きを隠せなかった。

    「これが、あなた達の隠してた秘密だというの?」

    驚きのあまりに、手からは汗が流れており、心無しか鼓動が加速している気がする。

    「そうだよ、今話した事に嘘偽りはないよ。彼に誓ってね」

    私の問に普段見せなかった真面目な顔をする彩音ちゃん。どうやらこの話に偽りは本当にないらしい。

    「ところで……」

    ……まだ何かあるのだろうか?

    「何?」

    「菜々香チャンさ、基本的に男子を呼ぶ時は苗字で呼ぶけど、何で蓮クンだけ下の名前で呼ぶの?」

    「ふぇっ!?」

    しまった、変な声が。

    「もしかして、蓮クンの事が好きだったり……」

    「〜〜ッ!」

    全身が熱くなるのを感じる。よりによってこの子にバレるなんて。

    隠し通すか?    でも今更はぐらかせなさそうだし、先程真実の話を聞いた後に嘘を吐くのは心的に無しだ。

    「ありゃりゃ、図星か〜、それでぇー?    どんな所に惹かれちゃったのかなぁ〜?」

    落ち着いて深呼吸をする。体温が下がるのを感じ、質問に答える。

    それは……

    「中学校を卒業して、高校に入学する前の期間に、思い出作りに遊びに行ったの。でも帰りが遅くなっちゃって、悪い人に絡まれちゃって……そこに彼、蓮君が現れて、その人達を追い払ってくれたの。でも彼は無言で消えちゃってお礼も言えなかったんだけど、まさかの同じ高校で」

    彼に興味を持った経緯を話す。

    「その後にお礼を言ったんだけど全然憶えて無くて!    (中略)    私結構モテる方なんですよ?   自分で言うのもアレですけどね?    その後も散々間接的にアプローチしてるのに反応が薄いし!    どう思います!?」

    若干キレ気味になってしまった。

    だが、一年以上秘めていた思いを誰かに話したら、少しばかりすっきりする気もした。

    「お、おう。結構重いね。甘ったるくて胸焼けしそうだよ。つまり颯爽と助けてくれたのと、自分になびかないから、興味を惹かれたのね。ベタだけど。あー、あと今日も助けもらったらしいね」

    「そうですよ!」

    はぁはぁ、つい熱く……

    「でも彼、精神的には50歳前後だし、直接的に思いを伝えないと気づかないよ?」

    そうだった。別に年齢で気持ちは変わらないが、アプローチする方法は変わってくる。でも彼の好みとは何だろうか?    

    というか、彼と彩音ちゃんはそういう関係では無いのだろうか。

    「ッ!」

    「まぁ応援してるよ。それにこれからキミを鍛えてあげるよ。着いて来れたら、彼のあんな事やこんな事を……」

    「一生着いて行きます!!」

    思わぬ僥倖、どうやら彩音ちゃんはライバルじゃ無かったらしい。しかも情報も得られる。それよりも、これからは頑張ら無ければ……









    「……ハハハ、蓮クン、これからキミはとっても苦労する事になりそうだよ」



    彩音ちゃんが何か言った気がするが、熱くなっていた私はよく聞こえていなかった。



    よし、頑張るぞ!!

「異世界に召喚されたのは二度目だけど、まぁとりあえず強くてニューゲームします」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く