異世界に召喚されたのは二度目だけど、まぁとりあえず強くてニューゲームします

Luxuria

序章 4 本当の彼


    ドスッ!!



    肉を貫く音。



    蓮の体──腹部からは、ありえない物が突き出ていた。長剣だ。


    長剣。パーティーの中でその武器を所持していたのはたった一人だ。


    ──鮫島。彼が蓮を貫いたのだ。


    ドサッ!


    鮫島が剣を引き抜き、力無く蓮は倒れ込む。貫かれた腹部からは、とめどなく血が溢れ出す。


    「何を、やっているの?」


    突然そのような行動を取った鮫島に菜々香が問う。

    「見れば分かんだろ。斉藤を殺した」


    さも当然かのように答える鮫島。冷めた口調で話す彼の体は、とても紅く・・濡れていた。

    「何をするつもり?    アンタ達」

    次は野嶋が問う。

    「いくらそいつ斉藤が役立たずでも、人としてやっちゃいけない事も分からないの?」

    「そうよ!    何で蓮君を!?」

    鮫島に詰め寄ろうとする二人。だが、それは出来なかった。

    糸だ。糸が二人を捕らえ、それ以上進むことを許さない。

    「この糸、服部の仕業?」

    「ご名答だよ」

    やけに口数が少なかったのは、暗闇に潜んで居たからだろう。蝋燭のに照らされていない地点からゆっくりと現れたのは服部だ。

    「こんな真似が許されるとでも?    すぐに燃やしてやるわ!」

    野嶋の瞳に意志が灯り、超高音の熱を出す。と、思われた。だがそれは鮫島が殴り飛ばす事によって阻まれた。

     ガン!    と、思い切り洞窟の岩肌に叩きつけられ、砂埃を撒き散らす。

   「ゴホッ!    ゴホッ!」

    胴を殴られたか、撒き散らされた砂埃のせいか、大きく咳をする野嶋。

    「あー、あー、傷付けないで下さいよ鮫島さん。この娘は僕が頂くんですから」

    「あまり調子に乗るなよ……服部」

    軽い口調で口走る服部に鮫島が睨む。


    「あなた達?    頂くって何の事?」

    未だに状況を掴めない菜々香が後ずさる。

    「決まってますよぉー、あなた達の処・女。ですよぉー」

    服部は嬉々とした表情で両手を横に広げ、口を開いた。

    「あなたは鮫島さん。野嶋ちゃんは僕が。いやー、生意気そうな娘のを奪う時って最っ高に興奮するんですよぉー。だって、いざ犯されそうになると、いきなりしおらしくなって、『止めて下さい、止めて下さい』って涙ながらにお願いするんですよ?    興奮しますよねぇー?」


    流れるような最悪な台詞に、菜々香は怖気が駆け巡り、嫌な汗が吹き出し始める。

    また、台詞の後半を聞くに、これまで多くの人間が似たような被害にあった事を察せられ、怖気に加え憎悪が心の底から湧き出てくる。

    嫌だ、嫌だと体が、心が叫ぶ。動かなければ。逃げなければ。そうしなければ、殺されるよりも酷い目に合う。そんな警告が体を駆け巡っていた。

    まず、炎属性の魔術で糸を焼き切る。そして牽制の攻撃、逃走。筋書きは頭の中で高速で描かれた。

    だが、



    (声が……出ない!)


    恐怖。動けば逃げられるというイメージよりも、返り討ちに遭うというイメージが勝り、心体を縛り付ける。


    恐れているのだ。目の前の二人恐怖に。




    「そろそろお楽しみを始めましょーかぁー」

    始まる。始まってしまうのだ。体を、心を犯し、精神の奥底までを穢す、最低な所業が。

    「その前に、とりあえずこの部屋から出ましょうか。汚い斉藤ゴミが転がってますし」

    服部は鮫島の方に振り向く。

    「鮫島さん」

    そこで服部は気づいた。鮫島が動かない事に。


    「ちょっと、何やってんすか」


    やれやれといった顔で鮫島の肩を小突く服部。だが、その返答は思わぬ形で返された。






    首が……落ちた。




    「はっ?」



    ゴトン。と鈍い音を立てて首が足元を転がる。

    その瞬間、服部の全身に寒気が走る。鮫島が居た所の後ろに存在する暗闇。そこからは本能的に逃げなくてはならない。と体が警告するような存在感があった。


    コツン……



    コツン……



    足音だ。暗闇に潜む何者かの足音が迫る。服部は本能的に腰の小剣を引き抜く。


    コツン。



    コツン。




    「誰だ!」



    暗闇から現れたのは、軍服を纏ったの姿だった。


    かなりの上背。190cmある鮫島とまではいかないまでも、180cmはあると思われる。だが、そのような体型の者はここには居なかったはずだ。

    一瞬誰だ?    と思った服部だが、その者の右手に握られる武器と、面影のある顔で解った。


    斉藤 蓮だ。死んだはずの彼がそこに立っていた。


    「斉藤、お前なのか?」


    有り得ないと思いつつも、問が口から零れる。


    「蓮君……なの?」


    ついさっき失ったと思われた友人の帰還に体の自由が戻る菜々香。


    その言葉に返答は無く、ただ服部に歩み寄っていく。

    「近づくな!」

    服部は彼に剣を向け、威嚇する。


    だがその威嚇は届かず、歩みは続く。

    「ッ!」

    シュルン!

    言葉が届かない事を知った服部は彼に能力、【蜘蛛糸】を撃ち出す。
 


    だが、その糸は何故か彼を避ける様に外れ、無駄撃ちとなった。


    「クソ!    何でだ!」


    シュルン!    シュルン!


    何故か当たらない糸を見て、焦った様に何度も糸を撃ち出す。


    スン!


    風邪を切る音が空間に響く。彼の剣が走った音だ。

   服部の右の小手。つまり右腕が切り落とされた。

    「ぐぁぁああぁぁ!!!」

    絶叫。断末魔に近しい程の声が服部の口から発せられ、洞窟内を駆け巡る。また鮮やかな紅が宙を舞う。


    「ああ、ああ」


    もう一度剣が走る。

    今度は左腕が落ち、同じものを吹き出す。


    「ああ!  あぁ、あぁ」


    言葉にならない声が溢れる。


    「《紅き風よ、その熱は、汝の現身を焼き焦がし、その塵をも消し去らん》」


    炎、風の複合属性魔法、【ブレイズ・ダウンバースト】本来強烈な熱を伴う強風を叩きつけ、燃焼と風化をもたらし、あらゆる生を消し去る魔術であるが、何故かその威力は抑えられ、ある一点に集中している。


    服部の腕だ。切断面を止血するように焼き焦がしていく。荒々しいが、即席の治療としては妙に子慣れている。

     
   「ぬあぁぁ!!」


    再度訪れる痛みに、更なる絶叫、そして地面に倒れ、転げ回る。



    数分後。ようやく痛みが緩和されてきたのか、口を開く服部。


    「こんな事をしてただで済むと思うなよ!」


    手を切断までされても、喋れているのは、勇者の強化のおかげか。ある程度は苦痛や痛みに耐性が生まれているのだろう。


    「こんな事?    お前はつい先程自分達が取った行動も覚えていないのか?」


    「黙れ!   お前らは黙って僕に殺されればいいんだ!」


    明らかに錯乱している服部。こんなに手酷く報復を受けるなど、考えていなかったのだろう。


    「まぁいい、元々お前らと馴れ合うつもりは毛頭無かったし、いい機会だ」


    深いため息を吐き、菜々香に歩み寄る蓮。どうやら服部の声は届いてすらいないようだ。


    「ちょっ!    何するの蓮君!」


    何を思ったのか菜々香の懐をまさぐる蓮。それに頬を紅潮させ声を上げる菜々香。

    しばらくすると、彼女の懐からとある物を取り出した。非常事態の為に用意された帰還石だ。

    蓮は取り出して少しの間眺めた後、魔力を流し、石を発光させ始めた。

    その光は洞窟内を照らし、光で包んだ。











◆◇◆











    訓練用の洞窟の外。最後のグループを待ち続ける2-Aクラスメイト。

    退屈の為に雑談に投じる者も居れば、今か今かと待つ者もいる。


    そんな中、輝く光が入口付近に一筋。



    「帰還石の輝きッ!    何かあったのか!」



    待ちあぐねていたバルトがその光に気づき駆け寄る。



    「なんだなんだ?」「どうしたんだ?」「あの約立たずが死んだんじゃね?」



    クラスメイト達も野次馬のように集まり、その光に注目が集められる。



    光は一際輝き、人影を映す。





    現れたのは何故か恐怖に怯えたような表情をした菜々香と野嶋。

    そして、姿の変わった蓮、両腕を失った服部、首と胴体が別れた鮫島だ。



    その異様な光景に辺りは静まり返るが……




     「「「イヤアァァァアアア!!」」」



    悲鳴。当然だ。今まで平和な世界で暮らしていた少年少女。そのような光景など、映像の中でしか見た事が無いのだから。


    「貴様がやったのか!    約立たず、いや、斉藤 蓮!!」


    憤怒の形相で叫ぶのはバルトだ。あえて本名で呼んだのは、蓮、彼から発せられる異様な雰囲気からだろう。姿が変わっていても同一人物であると瞬時に気づけるのは、洞察力の高さもあるのだろう。


    「そうだ」



    その肯定に周囲はどよめく。



    「あの斉藤が?」「どうやってやったんだ?」「あの鮫島ゴリラ相手にか?」



    「俺が……服部の腕を、鮫島を──殺した」
  

    先程の肯定をより正確に伝える蓮。


    「ちょっと待って下さい!    一旦話をしましょう、まったく状況が掴めません!」


    
    重い空気を破ったのは教師の中島だ。


    「まだ洞窟内での出来事を聞いていません。一旦整理しましょう」


    あくまで冷静に対話しようとする、大人の対応だ。だが、この空気でそんなことは許されなかった。


    「整理なんて必要無い!    こいつは、鮫島さんを殺し、僕の腕を奪った!    議論の余地なんて無い!    とっとと殺すべきだ!」


    服部が荒れ狂ったように叫ぶ。冷静に考えれば、何故その事態に陥ったか考えるのが当たり前だが、その惨状を直視しているクラスメイト達は冷静では居られなかった。


    「そうだ!    人殺しだ!」「人殺し人殺し!」「捕まえて置かないと俺らも危ない!」「殺せ!」


    人殺しと呼んだり、殺せと教唆したり、言いたい放題だ。


    (こんな喧嘩別れよりも酷くなることは予想していたが、殺意を向けられるまでとは……)



    クラスメイトが蓮を取り囲み、武器を構え、じりじりと距離を詰めていく。


    「でも待って下さい。鮫島さんがただでやられるなんて有り得ません。何らかの力を持っているはずです。不用意に近づくのは、止めましょう」


    取り囲むクラスメイトの後ろの方から発言するのは副委員長、橋本だ。

    その言葉に一同は動きを止める。


    「だから祝福も得られなかった。そして、同じような人が他にもいる筈です」


    二人の人物に注目が集まる。彩音と翔に対してだ。


    「まさか、この二人も!?」


    クラスメイトの一人、柏木が指差す。それによって蜘蛛の子を散らすように距離を取るクラスメイト達。


    「 「──ッ!」」



    人殺しが三人。そう考えた周囲は危機感を覚える。

    (不味いな、あいつらを巻き込むのは……)

    「待ってくれ、そいつらはただの約立たずだ。俺とは何の関係も無い」


    蓮がそんな事を口にした。

    無論それはハッタリだ。二人は彼と同じく異世界に一度行っており、高い能力と、大きな経験を積んでいる。

    「俺は、力を持っている。だから神様とやらは何もくれなかったんだろう。だが、そいつらは違う。ただの素人だ」


    冷笑を浮かべ、とある意図を持って言葉を紡ぐ。

    (痛々しい事この上ないが……仕方ない)


    「俺は好きなんだよ、人を斬る事が。肉を裂く感覚、断末魔の悲鳴、溢れ出す血液を感じる度に興奮する。お前らに分かりやすく説明すると、殺人鬼とかいうのか?」

    彼は殺人鬼を演じたのだ。口角を上げ、歯を剥き出し、獰猛な獣のような眼をして演出する。

    「貴様、もはや生かしてはおけんッ!」


    「──ッ!?」

    バルトが抜刀し、疾風の如く突きを放つ。どうやら彼の正義感の逆鱗に触れたらしい。


    だがそれを難なく躱し、反撃の剣閃を浴びせる蓮。その閃きは正確かつ、一片の隙もない。

    しかし、バルトも歴戦の聖騎士、幾重に放たれる剣閃を防ぎ、隙あらば自分も攻撃を放つ。

    まるで音楽を奏でるかのように、金属音が鳴り響く。バルトに加勢しようと、数人のクラスメイト、聖騎士が集まるが、それは不可能だった。

    ──あまりにも、レベルが違う。


    速すぎるのだ。一方が攻撃を放てば、もう一方は防ぎ反撃、そのサイクルが高速で続く。その剣先は見えず、素人が介入すれば即座に切り捨てられる。ということが全員に伝わった。


    ガキンッ!

    剣が交わり、鍔迫り合いの体勢に持ち込まれる。


    「貴様、一体何者だ?    これ程の実力を持って居ながら、何故そのような愚行に至った!?」


    「貴様なら、どこの国でも最強位の騎士となれる筈だ!」


    バルトは自然と蓮に問う。その言葉には少しばかり研鑽も含まれていた。


    「さっきも言った筈だ、ただの殺人鬼。──碌でもない人殺しだとなっ!!」


    ズドン!


    掌底。小剣を振るっていた手とは異なる手で、バルトの腹部に蓮の手が放たれる。その手には何らかのオーラを纏っているようにも見えた。


    「ガハ──ッ!」


    その衝撃にバルトは吹き飛ばされ、口からは吐瀉物が吐き出される。



    地面を転がるが、直ぐに地に剣を刺し勢いを止める。


    直ぐに反撃に向かおうとした。だが、


    (立て……ない!?)



    全身の力がどこかへと流れて行くような感覚。力を込めようとするも緩まるばかりで自由が効かない。
    


    (何故、これ程の実力者が……)




    バルトは纏っている鎧のけたたましい金属音と共に地に倒れ込んだ。



    「他に、俺を相手にする奴は?」



    蓮が周りに問うが、その答えは返って来ない。当然だ。この中で最強と思われる人間が為す術もなく倒されたのだから。



    「いないな。まぁ当たり前か」



    やれやれといった表情で剣を収める蓮。


    そしてため息をつきながら、クラスメイト達に近づく。

    「来ないでよ人殺し!!」


    クラスメイトの女子の一人が言う。


    「人殺し、か。そう言われるのは仕方が無いな。でも、お前らに聞きたいことがある」


    「お前らが呼ばれた目的って、なんだ?」


    親が子供に質問するような口調で問う。


    しかし、この雰囲気の中で進んで答えるような者は居なかった。

    「……じゃあ橋本。答えてみろ」

    「僕が!?   …………それは魔王とやらを倒す事か?」

    動揺するが、割と直ぐに答える橋本。

    「そうだな。魔王の討伐。それが俺達の呼ばれた目的だ」

    ゆっくりとした口調で説明を始める蓮。

    「でも、よくよく考えたらそれも人殺しじゃないか?    この国の書物で見たけど、魔族という存在は、俺達とは多少見た目が異なるけど、本質的にはあまり変わらない姿をしている。そしてお前らはそいつらを含め倒さなくては……いや、殺さなくてはいけない」

    ──魔族。その存在の事を簡潔に話す彼。

    「それは、人殺しに入らないのか?」

    その質問に、空気が凍った。


    「そう、お前らは人殺しをするために・・・・・・・・・呼ばれたんだ」


    『…………』


    沈黙が続くもその話は終わらない。


    「お前らは神とやらに作られた殺人兵器だ。勇者とかいう体のいい表現をしているが、その本質はただの人殺しだ」


    誰も言い返せなかった。皆、自分が得た力をよく知っていたからだ。

    元よりも動ける体。そして武器を握る手。超常現象を操る魔術。一人一人が持っている能力。そのどれもが戦闘の為であることを理解しているからである。

    「まぁ俺には関係ない。俺はここを離れて、のんびりと旅でもしてるさ。お前らとはおさらばだ。安心したか?」

    「でも考えておけよ?    国側はお前らをただでは帰さない。帰ることを交換条件に、お前らに人殺しを強制させる」


    軽い口調で話しながら、ニヤリと笑う。その言葉には皮肉……自嘲も含まれていただろうか。


    「じゃあな、お前ら」



    そう言って、蓮はそこを立ち去った。















◆◇◆










    「最悪だ。ほんと最悪だ」



    クラスメイトの元を立ち去り、最寄りの街へと移動する俺は、意味も無い独り言を呟いていた。

    でも、これで良かったんだ。

    あの二人に襲われた時は反射的に攻撃にしてしまった。

    貫かれた傷が再生すると同時に鮫島の首を落とし、糸を撃ち出す服部の腕を切断。そこまでは本能的に動いた。

    だが佐倉の怯えた目で我に返った。

    そして洞窟外に帰還。

    斬られたあの二人を見て、俺を人殺しだと叫ぶ皆。先にやってきたのはあいつらだったが、俺の能力とあいつらの傷で、弁明しようにも出来なかっただろう。もし弁明したら、『何で力を隠してたんだ!』とか言われそうだし。しょうがないじゃん、こういう類の場合、力を隠してた方がカッコいいじゃん。

    まぁそれが最悪の結末を呼んだ訳だが。

    あそこはああ切り抜けるしかなかった。彩音と翔の力がバレるのは避けたかった。あいつらまで迫害されてこっちに来たら、あいつら、クラスメイト達はほとんどやられるだろう。だから、俺が悪役となるしか道はなかった。

    もともと離れて動きたいというのもあったが。

    あいつらの中にも、一応親しかったり、優しかったりする奴がいた。好きなアニメを語り合った倉持、ロリコンだったけど虐められていた俺に優しくてしくれた弓野。そして、分け隔てなく優しい佐倉。他にも数人。

    そういう奴らを守る為には、あの二人が居なければならない。

    まぁあの殺人鬼の演技は自分で言っててイタかったのだが。


    まぁとにかく、今後の方針を固めなければ。

    魔王を俺一人で倒すのは無理だ。魔族は全員が高い能力を有しており、それが軍勢を率いるということは、勇者、それに並ぶ実力者が揃わないと勝つ事は難しいだろう。だからカッコつけての単独魔王討伐は無し。というか自殺行為だ。

    で、今考えた所最高のプロセスは、勇者あいつらが魔王のいる北大陸に来る事を待つ。そして陰ながら援護して、ピンチに颯爽と登場、魔王を討伐、俺のイメージも回復。そんなところだ。

    楽観的かもしれないが、一人である俺にはそれしか出来ない。


    
    
    よし、そうと決まったらとりあえずさっきバルトからくすねた金を路銀にして、一人旅でも…


    ピピピピピピピピッ!

    「うわっ!」


    突然鳴り響く機械音。右手に嵌る腕輪からだ。

    この腕輪には収納の他に通話機能等の便利機能が沢山ある。


    その解説の前にとりあえず、通話をしなければ。


    「もしもし、斉藤です」


    『もしもーし、ボクだよー』


    このハイトーンの可愛らしい声は彩音のものだ。実年齢を考えるとイタい気がするが言わないのが華だろう。

    「彩音か。何の用だ?」

    沈んだ気分で居たため、自然とテンションの低い返答になってしまう。

    『何の用だとは、随分な挨拶だね?    せっかく必要な道具一式送ってあげようと思ったのになー』

    「ごめんごめん、でも少しくらいセンチメンタルになってもいいだろ?」

    一応あれだけの事があったのだ。少しくらいは別にいいだろう。

   『まぁね、分析するに蓮クンはボク達が彼らから離れるのを防ぎたかったんでしょ?    それは分かったんだけど、何であの二人を斬ったの?    特に接点とかは無かったと記憶してるけど』

    「……パーティーの二人を犯すのに邪魔だと刺された。で、ついカッと……まぁ傍観するつもりも無かったんだけどな」

    「ありゃりゃ、そんな下衆なのねあいつら。最近の若いもんって恐ろしいかぎりだね」

    「まったくだ。それよりも、あいつらのカバーは、頼んだぞ」

    『オッケー!    ん……誰か来たみたい。じゃあまたね、おやすみー』

    「おやすみ」

    腕輪の通話が切られる。来客は翔かと思われるが、違かった場合怪しまれるのを防ぐには仕方ないか。








    そうこうしてる内に、城から最寄りの街、フェミルに着いた。


    道を歩く人に宿屋の場所を聞き、その通りに進むと、二階建ての普通の宿屋に着いた。(ちなみにさっき着てた軍服は怪しまれるので予備の村人っぽい服を着ている)


    「いらっしゃい!    素泊まりなら二百ネーシャ、食事付きなら三百ネーシャだよー!」


    高校生程の年齢と思われる女の子が料金を教えてくる。

    エプロンにバンダナといった服装は、異世界ではよくある服装で、村娘系美少女には必須の服装である。可愛い。

    「食事付きでとりあえず2泊。夕食は今すぐでも大丈夫ですか?」

    小袋から銀貨を6枚、六百ネーシャ出して言う。

    ちなみにこの世界では貨幣は統一されており、鉄→銅→銀→金→白金の順の価値を持つ硬貨が使われている。また、10枚毎に一つ繰り上がる。

    ネーシャとは、この世界に存在する、商売繁盛の神だとか。硬貨の面に描かれてたりもする。

    「毎度ー、夕食は大丈夫ですよ。お母さーん!    夕食一人追加でー!」

    


    ……こうして一人旅一日目の夜は更けていった。ん、夕食美味いな。


   

    



    



    

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