異世界に召喚されたのは二度目だけど、まぁとりあえず強くてニューゲームします

Luxuria

序章 2 どこの世界でも、弱いものいじめって存在するのね

 こちらの異世界に来て、早くも一週間が経過した。皆割とこちらでの生活にも慣れてきたらしく、暗い顔をする者が減ってきた。

 それ自体は別に良い事である。そう、良いことなのだ。ただ問題は、彼らに余裕が生まれてしまうことだ。

 余裕、つまり慢心は多くの隙を生む。これは戦闘において、とても危険なことである。実際、前の世界では、それが最初の犠牲を生んだ。




 初陣から多くの武功を挙げていた生徒達は、危険など知らず、多くの敵兵相手にも無双していた。だがその後に事件は起こった。

 対抗召喚された、敵国の勇者だ。彼らも同じく神からの祝福をうけており、同等の力を有していた。それに対し通常の兵と同様に戦った彼らの内の一人は、それまでの戦績が嘘のように惨敗した。

 敵は、恐れていたのだ。痛みを、死を。

 故に彼らは痛み・死を避けるがため、回避、防御する術を磨いていた。そして、敵を確実に、安全に仕留める手立てを。

 しかしこちらはどうだっただろうか。死んだ一人、彼は遠距離殲滅攻撃向きの祝福を有していた。【天罰の矢】。魔力で生成した矢を高速で撃つ能力である。高い威力を誇り、鎧兜を貫通させる程であり、魔術でその威力を再現する場合、ある程度の詠唱が必要となり、連射は難しくなるのだが、彼は詠唱無しに加え、連射が可能であった。

 だが彼はそれを近距離で扱った。まさに西部のガンマンの如く、現れる敵の頭を打ち抜き、多くの兵を屠った。故に回避・防御する必要は無かった。敵は攻撃を放つことも許されず地に伏すのだから。

それが仇となったのだ。

 彼を討った勇者は、防御系の祝福を有していた。その為矢は防がれ、接近を許した。だがそれで彼の敗北は決まった訳では無かった。相手は別に突出した攻撃は無く、冷静に対処するならば、攻撃をいなしつつ、撤退すべきであった。


 だが、彼は最悪の選択をとった。背を向けての逃走だ。

 背を向けた彼はすぐに追いつかれ、槍で貫かれるという形でその生を終えた。

 彼が慢心していなければ、死ぬことはなかったし、あちらより早く召喚されている分、むしろ有利であったと考えられる。


 まぁ怯えたままよりはマシだが。



 ……そして、心の余裕というものは、もう一つ、ろくでもないものを生む。


 まさに今の状態である。

 眼前には、二人の男子の姿が映っている。一人は初日に怒鳴っていた鮫島、もう一人は奴の取り巻き、もといパシリの服部はっとりだ。

 「おい、能無し、ちょっと面貸せや」

 後ろに振り替える。あれ?誰もいない。

 「テメェの事だよ! なめてんのか!」

 ですよねー、知ってた。

 「ありゃ、俺に用でしたか。でも、何の用です?」

 十中八九何の用だか察しているが、一応聞いてみる。

「感謝しろ、この俺がテメェの事を鍛えてやる」

 はい出た。余裕から生まれるろくでもないものその二いじめ。鍛えるって面してねぇんだよなー。絶対これから俺をサンドバッグにしようっていう顔なんだよなー。

 「OK、何処でやる?」

 「いい返事だ。とにかく着いて来い。良い場所がある」





    促されるまま移動すると、そこは初日の夜にも来た、城の裏手であった。


    「それで、鍛えるっていっても何をするんです?」

    特に内容は聞いていないので自然にそう聞いた。

    「ああ、たっぷりと教えてやるよ、テメェの体でなぁ!」

    ゴッ!

    腹部に強い衝撃を受け、数メートル吹っ飛ぶ。

    あ痛たた……直前に後ろに跳んでいなかったら、骨が数本逝く所だったわ、馬鹿かこいつは。

    これが、こいつの受けた祝福、【剛力】か。単純だが普通に強いな。

    「かなり派手に吹っ飛ぶな、いちいち歩くのがめんどくせぇ、服部、テメェの力でこいつ縛れ」

    「はい!    ただいま!」

    鮫島の言葉に服部が動く。

    倒れた俺のすぐそばに来た服部が俺にその手を向けたと思うと、手首のあたりから、粘着性の糸を飛ばした。

    うわ汚ったな!

    糸は俺を蓑虫のように捕らえ、動きを制限する。

    これが服部の祝福、【蜘蛛糸スパイダーネット】だ。俺はこの能力を見てから服部を内心でスパ●ダーマンと読んでいる。

    「良くやった服部、しばらくしたらお前にも楽しませてやる」

    そう言った鮫島は片手で糸の端を掴んで持ち上げ、もう片方の手で拳を握る。


    ゴッ!


    「カハッ!」


    打撃をモロに受け、吐瀉物を吐く。今ので数本逝ったな。

    「汚ぇな、殺されてーのかタコ!」

    糸を掴んだ手を離してのローキック。


    ドゴン!

    脇腹に鋭く刺さり、俺は壁へと打ち付けられる。

    「カフッ!」

    血を吐きながら倒れ込む。


    「興が冷めた。服部、好きにして良いぞ」


    「ありがとうございます!」

    トーンの低い鮫島の声と、高めの服部。

    「では早速……」

    ガッ!

    服部の蹴りだ。鮫島のものに比べると大分軽い。

    ガッ!ガッ!ガッ!

    何度も蹴りが入る。

    ぶっちゃけ軽いし、俺の能力で折れた骨も治ってる。加えて多少魔力を纏っているので全然痛くない。

    全然痛くないのだが……



    如何せんムカつくところだ。さて、どうしたものか。と、思っていた所……



    「何やってるのあなた達!」


     委員長、佐倉だ。


    「チッ、行くぞ」

    「はい!」

    
    その存在に気づいた奴らは一目散に去っていった。

    「大丈夫?    蓮君」

    起き上がる俺に手を貸す佐倉。

    大丈夫というか無傷なのだが。まぁ心配してくれるのはありがたい。

    「大丈夫だよ。それにしても優しいね、佐倉は。こんな役立たず・・・・に……」

    自虐気味にそう言う。

    「当たり前だよ!     普通友達が殴られたら心配するよ!」

    涙混じりに叫ぶ佐倉。しまった、ムカついててつい嫌味に……

    「鮫島君の力、凄いんだよ?    昨日なんて素手で訓練用の剣を叩き割ってたし……」

    あれか。使い古した剣の刃を潰した物とはいえ、一応金属なんだけどな。確かに凄い。

    「だから死んじゃうと思って!」

    そう言って泣き崩れる様に俺に縋り付く。

    おっとヤバい。

    女子高生に抱きつかれると、いくら紳士で大人な俺と言っても反応せざるを得ない。

    ちょっといい匂いするし、所々柔らかいし!

    だが俺は鋼の精神で耐えた。

    というか、こんなに心配される程、好感度高かったイメージ無いんだけどなー。

    「ちょっとヤバいから、一旦離れよう。何がとは言わないけど、当たってるからね?」

    「ッ!」

    頬を紅潮させて離れる佐倉。可愛い。

    「ゴメンゴメン。それにしても、何でここが分かったんだ?」

    そうだ。こんな人気のない場所、そうそう来る事はないはずだ。

    「それは……」

    佐倉がポケットからメモの様なものを取り出す。

    「これ、さっき廊下を歩いてたら目の前に落ちてきて」

    取り出された物を受け取り見てみる。

    日本で売られている一般的なメモ帳に、『斉藤    蓮が城の裏手で捕まっている。直ちに急行されたし』と書いてある。


    彩音アイツか。恐らく渡したのは翔だな。後で礼を言っておこう。

    「親切な人がいたもんだな。佐倉もありがとう、助かったよ」

    「うん、どういたしまして。この事は先生に伝えておくね」

    「いや、事を荒らげたくない。多分一回目撃されたから、もうやってくることはないだろうしさ」

    「う、うん……蓮君がそう言うなら……」

    無駄に目付けられても面倒だしな。

    しかし、稀に見る優しい人だな、佐倉は。普通、力を持っている集団の中で仲間外れがいたら迫害するのがよくある話だろうに。





◆◇◆






    あの後から、陰湿ないじめを受ける様になった。彩音、翔を含めだ。

    足を掛けられたり(避けた)、トイレで水を掛けられたり(個室の上に結界を張って防いだ)等、様々だが全て防いで、涼しい顔をしていると、悔しがった顔が見れるので清々する。(勿論目の前で魔術は使ってはいないが)

    というかそれに聖騎士や、城のメイドまで加担してくるのに驚いていた。

    図書室で調べたのだが、この国はメルト教国といい、宗教国家であることから、神への信仰が厚く、中でも聖騎士や僧侶、この城で仕えている者はやや狂信的で、他宗教に対して当たりが強く、煙たがられているそう。

    他にも色々な情報が得られた。魔物や種族について、他国について、観光地について。というか逃げ出して世界一周旅行したい。

    まぁとにかくここしばらくは情報収集をしていた。



    それで今はあの二人と情報交換しに来ている。

    勇者達に個別に与えられた客室。その内の俺の部屋。

    「はい、これがこの城で得られた、この世界の情報だよ」

    彩音が腕輪の収納から二束の書類を取り出す。B5のコピー用紙に綺麗に図説込みで印刷されており、とてもわかりやすい。

    「なにこれ。めちゃくちゃ現代じゃん(意味不)」

     「ふふん!    もしもの時のために日用品と電子機器その他諸々常備してるのさ!」

    と、自身満々に語る彩音。

    「「さす彩、さす彩」」

    こればかりは絶賛せざるを得ない。圧倒的便利や現代技術……

    「それでこれを取り出しまして……」

    「ああ、手伝うっすよ」

    彩音が腕輪からノーパソとプロジェクターを取り出し設置し……

    「……であるからして、であるからして……」


    PPでプレゼンが始まった……

    ファンタジー感が皆無である。

    「……それでこれがこちらの世界の魔術。ある程度構成が違うものの、今まで使っていたものと、大差は無いみたいだよ。大きく異なるのはそれが対魔物用のものが多いくらいで」

    動画付きで魔術の解説。

    なるほど、こちらの世界では魔物が蔓延っているのか。あちらの世界では基本的に対人戦だったからな。覚えておくに越したことはないな。





    多くの解説を聞いている内に消灯時間が迫ってきた。


    「それじゃ、そろそろボク達は帰るよ。明日は実践訓練らしいしね」

    「お休みなさいっす、兄貴!」

    長い城の廊下へと二人が消えていった。


    「実践訓練か……悪い事が起きなければいいが」


    実践訓練。内容は、国の魔術師が作ったゴーレムが蔓延る洞窟の探索。最深部にいるボスを戦闘不能にするのがクリア目標だ。

    ちなみにパーティに別れて挑むらしく、五人一組で振り分けるそうだ。なるべくあいつらと組みたいものだ。

    「ふわぁぁあ」

    思わず欠伸が漏れる。スマホを確認すると、もう23時である。ちなみにスマホの充電は雷属性魔術の応用した魔道具を使っている。クラスの奴らは欲しがるだろうな。

    

    ……寝るか。


    ベッドに倒れ、消灯し、流れるように眠りに…………














    読んで下さった方、ありがとうございます。今後も続けていく予定ですので暖かい目でお見守り下さい。コメントも待ってます。


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