異世界に召喚されたのは二度目だけど、まぁとりあえず強くてニューゲームします

Luxuria

序章 1 異世界召喚モノって流行ってんのかな?


    白い光が消えるとそこは荘厳な王城の謁見の間でした。

    一面煌びやかに装飾された壁に、天井にぶら下がるシャンデリア、深紅に輝くカーペット。現代の地球にはあまり無い物ばかりである。

    「おい!    どうなってんだ!」

    美しい城に似つかわしくない怒声。その声はあまり素行の良くない男子生徒、鮫島さめじまの物である。あまりにもテンプレなフレーズで、少し吹き出しそうになる。

    「これはこれは、突然の召喚、失礼致しました。わたくしはこの国の第一王女、ルクシア・エメラーダと申します。皆様には、北に住まう魔王を討伐して頂きたく、こちらに召喚させて頂きました」

    (ぶふっ!)

    おっと、小さくだが吹き出してしまった。テンプレが過ぎるわ。

    あの時・・・は驚いていたが二度目だと、落ち着いているせいか、笑いが出てきてしまう。

    「待って下さい。僕達は何の力も持たない、一般市民です。そのような危ない事の力に慣れるとは思えないのですが」

    「そうですっ!    私達はか弱いただの女子供です。責任者としても、彼らを危険に晒す事は出来ません」

    副委員長の橋本はしもと、そして先程の授業を行っていた教師の中島が抗議の声を出す。

    『 そうだそうだ!』

    そこに便乗するような皆の声。まぁ当然だ。三年前の俺も似たような事を言っていた覚えがある。

    そう、三年前俺……俺達は一度異世界に召喚されたのだ。

    そこはとある帝国。今回とは異なり、同じ大陸にある国との戦時中であった。そこで投入されたのが、神の祝福(という名のチート)を有する勇者達だ。

    俺達勇者は圧倒的な力で敵国をねじ伏せ、とてつもない早さで戦争を収束させる。と、当時は皆思っていた。現実、初陣から大きな戦果を誇っていた。

    そこまでは皆、異世界チートもので終わると思っていただろう。だが、結果は違う。

    対抗召喚。そう、敵国も同じく勇者を召喚したのだ。同じ日本から。

    彼らも同じく祝福を有し、こちらの兵、勇者も多くの死者を生んだ。逃げ出す者いたが、結局一つの共通する目的の為に戦わざるを得なかった。それは帰還・・、である。酷い話だが、帝王は帰すには戦争を終結という交換条件を出した。抗議する者もいたが、そこを握られている時点で、その意味は無かった。

    とまぁ紆余曲折を経て、地球に帰ってきたのだが、また召喚されるとは。



    「……ですが、皆様には特別な力を主から賜っているのです……」

    そんな事を考える内に結構話は進んでいたようだ。要訳するとこうだ。

    この世界は様々な種族(今回の出来事の発端である魔族)が入り乱れており、昔は多くのいざこざが絶えなかったそうだが、ここ百年近くは平和で、大きな戦は起きなかったが、突如北の大国を治める魔王とやらが、今となって世界征服とやらを始めたらしい。

    それで先程言っていた通り、やはり神からの祝福があるらしく、その力を調べる為に、今別室へと移動している。

    「こちらの部屋で、皆様が賜った力、祝福を調べさせて頂きます」

    入ったのは薄暗く、中心でほのかに光る水晶玉が設置された、ドーム状の部屋だ。

    先程までは声を荒らげていた生徒達だったが、力が手に入るという話を聞いたのか、ある程度鎮静されている。

    「こちらの宝玉に触れて頂くと、祝福の名前が表示されます。その後また別室で発現させる訓練となり、それを元に今後の方針を、練らせて頂きます 」

    ほうほう、てっきりステータス的な物が出るのかと思ってた。魔王とかド●クエ的なのがいるんだし。ちからとか、みのまもりとか。





    しばらくすると、自分の番が回ってきた。促されるがままに水晶玉(宝玉)に手をかざす。


    手をかざす。


    手をかざす。


    あれ?


    「……とりあえず皆様と同じく別室へ……」


    なんか引きつった顔で王女様がそう言う。とてつもなく気まずいのだが。

    心当たりがあるけど、それはあいつらも同じだろうから後で考えよう。



    先程の部屋を出てしばらく通路を歩くと、先に行ったクラスメイトがいる場所に着いた。

    そこでは多くのクラスメイトが様々な祝福を発現させていた。

    炎を操る者、宙を浮く者、変身する者。女子はともかく、男子は皆その力に歓喜を隠せないようだ。


    元々最後の方に来たので数分たった頃には全員集まった。

    

    「皆様、揃いましたね。これから皆様の力量を測らせて頂き、それを元に今後の方針を練ります。あとこちらの方を紹介させて頂きます」

    王女のそばから一人の男が前に出る。召喚されてすぐもそばにいた男だ。白い重鎧を纏った短髪の男性だ。パッと見ダンディなおじ様だが、よく見るとかなりの実力を持つのが読める。


    「こちらの方はこの国の聖騎士総括にして、最強の聖騎士、バルト・シュトロハイム様です。今後の訓練及び、討伐にも同行される方です」

    「殿下より紹介に預った、メルト教国聖騎士総括、バルト・シュトロハイムだ。これより貴殿らと行動を共にする次第だ」

    かなりのイケボである。一部の女子からは黄色い声援が飛んでいる。

    「これから貴殿らの賜った祝福を拝見させて貰う。それから戦術を組み、来たるべき決戦へと備える。異論は無いな!」

    『 おぉぉぉぉ!!』

    男子達が猛々しい声をあげる。やっぱこういうノリって男子ならあるよね。俺もやったもん。

    「だがその前に一つ。お前らの中に三人役立たずがいる事がわかった。自分で解るな?」

    突然そんなことを言う。おそらく一人は俺、もう二人も誰だか多分わかる。

    まぁ無視するの悪いしとりあえず前に出る。

    他の二人も前に出る。やっぱりお前らか……

    するとバルトが口を開く。

    「召喚したのはあくまで私達だ。一応同行してもらうが、期待はしていない。せいぜい頑張るんだな」

    うわ性格悪いわー、やっぱ顔じゃないんやなって。

    後ろからは笑い声が聞こえるが無視だ無視。原因は分かってるし、支障はない。







◆◇◆







    あの後他の聖騎士達も集まり、訓練や座学の講習を受けた。クラスメイト、聖騎士からの嫌な目線や陰口があったがもう慣れた。


    で、今はあの二人と集まっている。場所は城の裏手である。季節は知らないが、ちょうどいい感じの夜風が頬を撫でる。

    集まったのは彩音ともう一人。こいつらは俺が行ってた異世界から共に帰ってきた日本人の内の二人だ。

    「いやー、最近の若者の手のひら返しは手首がねじ切れんばかりっすね」

    ケラケラと笑うように軽口を叩くのは哀川あいかわ    かける。かなりチャラいが実年齢は俺と同じく、高校生のものではない。

    確か友達がかなり居たはずだが、瞬く間に切り捨てられたというか、仲間外れにされたらしい。

    「まぁそもそもボクは友達が少ないから、右に同じくなんだけどね、アハハハ」

    笑顔で言うなや。

    「で、何で集まったのかは、言うまでもないよな?」

    「ああ、勿論。こっちの世界でも力が使えるかだろう?」

    そう、先程の水晶玉では何も出なかったが、こちらには前の異世界で手に入れた力がある。

    こちらの世界でもチートを貰えると思っていたが、それは強欲だったか。

    「休憩時間に試したけど、魔術の行使は普通に出来るし、祝福の方も普通に使えるよ。ほら、《ソニックボルト》」

    バリッ!

    彩音が手を突き出すと、青白い閃光が直進する。

    雷属性魔術【ソニックボルト】。モロに喰らうと、少なくとも十秒は硬直するし、悪ければ失神する、初歩的且つ汎用性に長けた魔術だ。

    「そして、《リクリエーション》」

    虚空から金属の球体を取り出したかと思うと、その球体が小型のジャベリンに変形した。あ、無駄に装飾凝ってる。

    「相変わらず彩音ちゃんの能力は便利っすよね〜、一家に一台欲しい感じっすね」

    「もう、褒めても何も出ないよ」

    と、言いつつも、ジャベリンを作り替え、銀色に輝く飛龍の像を作り出した。リオ●ウス希少種やん。

    これが彼女の祝福、【錬金術士アルケミスト】である。あらゆる物質の形成にはじめ、物質の性質を、分解、合成する事によって、様々な物を作る事が可能な能力である。例えば、オリハルコンより硬いひのきのぼうを作ったりなど、遊びにも重宝する能力である。俺も欲しかった。

    ちなみに虚空から取り出した、というのは彼女が作ったマジックアイテムの腕輪の機能で、通話、収納、エトセトラの便利道具で、俺の右手首にも着いている。

    「そりゃ使えるか。普通に地球でも使えたからな」

    「それで、翔も使えるか?」

    「モチのロンっすよ兄貴!」

    ヒュン!

    次の瞬間、翔が消えた。厳密に言うと消える訳では無いのだが。

    これも祝福、【韋駄天いだてん】だ。連続使用に制限はあるが強力で、目視できる距離ならば、瞬間的・・・に移動出来る能力である。あくまで瞬間的なだけであり、ワープする訳では無い。また、推進力がある訳でも無く、ただ素早く移動する能力であり、障害物があれば当たるためガラスや結界があると通れないし、速度に乗せて剣を振ったりは出来ない。それでも十分強いが。

    「やっぱめっちゃカッコイイよなその能力。俺もそういうのが欲しかったわ」

    「そう言っても兄貴の能力の方がチートっすよ?    こっちは派手なだけだし。そもそも兄貴は祝福抜きでも俺より全然強いじゃないっすか」

    と言っても地味だしな……攻撃には転用しにくいし。

    「一応見せてよ。もしもの時に死んじゃったら困るしね」

    「はぁ、まぁ減るもんじゃないしな」

    例の腕輪から短刀を取り出し、手のひらを切りつける。

    少し切りすぎて、血が思ったより溢れ出すが、瞬く間に傷は塞がり、痕も残っていない。

    「特に変わりは無いな」

    「相変わらずグロいねそれ……痛くないの?」

    彩音が覗き込むように手を眺める。

    「慣れてるだけだ」

    これが俺の祝福、【再生】だ。その名の通り、ただ傷を再生する能力。料理中に、「手切っちゃった〜」というシチュエーションが無くなる能力である。

    ぶっちゃけこの能力は現実だと使い所が少なく、強いて言うならば老化しないだけである。

    俺が高校生の見た目を保っているのもこの能力のせいである。

    では、彩音と翔が若い見た目なのは何故か。

    それは彩音の【錬金術士】の能力にある。能力で肉体を作るのだ。元となる肉体があれば先程の【リクリエーション】で形を整え、性質遺伝子を自分と同じく書き換えクローンを作り出す。といったところだ。

    うん。【錬金術士】強すぎ。

    「まぁ、これで命の危険はないし、適当に魔王とやらを殺っちまえば帰れるっすよね〜」

    「楽観的だけど、ボクもそう思うよ」

    それもそうか。

    「そんじゃ、怪しまれるし、そろそろ戻るか」

    「「お疲れ〜」」






    そんなこんなで、新しい異世界での一日目は終了した。
















    城の裏手。先程まで蓮達がいた城の裏手の影に一人の人影があった。


    「蓮君と、あの二人、様子がおかしいと思ってたら、まさかあんな力があるなんて……

    









    

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