十刻の魔物使い

黒良シキ

十七話 冒険の第一歩


 僕達は家を出るとまず、冒険者ギルドへ向かった。
 冒険者ギルドは朝だからなのか、とても賑わっていた。
 僕達は奥の受付に向かうと、受付の人に話しかけた。

「あの、冒険者登録をしたいんですけど。」

「冒険者登録ですね。それでしたらこの紙に名前と年齢を書いてください。」

「あの、名前って本名じゃなきゃいけませんか?」

「いえ、偽名でも別にいいですよ。でも、年齢はちゃんと書いてくださいね。」

「わかりました。」

 僕はもらった紙にレイクと11歳と書いて渡した。
 リーナは僕が書いてる間にもう書き終わって渡していた。

「では、この水晶に手を乗せてください」

 僕とリーナは言われた通りに水晶に手を置いた。

「これで登録は終わりです。今からギルドカードを発行するので、少しお待ちください。」


待つ事10分………

「これがギルドカードです。2人ともFランクからですね。冒険者について説明は必要ですか?」

「あっ、それなら大丈夫です。」

 僕の隣には元Sランク冒険者がいるしね。

「分かりました。では、ご健闘を祈っております。」

「ありがとうございます。」

 僕達はその後、冒険者ギルドを後にした。



「レイクしゃまは確か海沿いの町を回ったりしゅるんですよね。」

「うん。少し寄りたいとこもあるからね。まずはセイレン領に行こうかな。」

「セイレン領でしゅね。行き方はどのようにしましゅか?」

「歩きで近くの村で休んだりしながら向かおうかな。」

「分かりましゅた。」


 僕達は門に向かうとギルドカードを見せて、外に出た。
 セイレン領までは歩くと1日と半日はかかるらしい。
 だから、途中にナーネ村があるのでそこで少し休んで、また向かう事にした。
 でも、僕はふと思いつく。 
 ラルに乗れないだろうかと。

(ねぇラル? 僕とリーナの事を運べる?)

(主人、そんなの昼飯前ですよ!)

(微妙に間違ってるけど、まぁいいや。 なら頼むよ。)

「リーナ、やっぱりラルに乗って行こう。」

「ラ、ラルにでしゅか?」

「うん。」

「で、でも、しゃすがに2人は無理があるんじゃ…」

「それは特に問題ないよ。」

 だって神狼だし。

 僕がラルに乗ると、続いてリーナもラルに乗った。

(じゃあ、ラルこのまままっすぐ進んで。) 

(はい。主人。)

 ラルは脚に力を入れて走り出す。
 どんどんスピードは上がっていく。
 まだまだ上がっていく。




「ラッ、ラルゥゥゥウ! は、速すぎー!」

「ラッ、ラルゥゥゥ! ストッープ!」

僕がどんなに叫んでもラルには届かない。
なぜなら、叫んでも風でかき消されるからだ。
どうすればラルに伝えられるんだろう。
あっ、念話だ。

(ラル! ストッープ!)

僕がそう伝えるとラルは止まった。

(どうしたのですか主人? 何か問題が?)

(問題大有りだよ! ラルいくらなんでも速すぎ。僕死にそうだったよ。)

(す、すみません主人。)

(反省したならこれから気をつける事。)

(はいです。)

本当に死ぬかと思った。
僕はリーナは大丈夫かと後ろを向いた。
リーナは気絶していた。

「リ、リーナ! 大丈夫!」

「ん、へ? レイクしゃま? どうしたのでしゅか? あれ、わたしゅは何を? 確かラルに乗って」

た、大変だ。
リーナ、記憶が消えてる。
あれ、でもこれっていいんじゃないか?
記憶が残ってたらラルの事がばれちゃうし。
まぁ、適当に誤魔化そう。
いずれはバレるだろうけど、隠せない時までは隠そう。

「あ、それは、ラルが走り出してすぐ転けたんだ。転ぶのに丁度良い石があってね。」

「そ、そうなんですか。」

結構強引だけどなんとか誤魔化せたみたいだ。

「で、でも、なんでもう着いてるのでしゅか?」

「えっ?」

僕は前を向いた。
目の前にはセイレン領の門があった。














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