十刻の魔物使い

黒良シキ

十四話 レイクの誘い


「と、という訳でわ、わたしゅはメイドになりました。」

「そんな事が………ごめん聞いちゃって。でも、話してくれてありがとう。とても辛いだろうに……」

「い、いえ、わたしは大丈夫でしゅ。」




 リーナにそんな過去があったなんて、僕は全く知らなかった。
 これからリーナにはいろいろと気を使ってあげなくちゃならないな。
 僕が何か出来るわけじゃないけど少しでも楽になってくれるといいな。
 それはそうと、コイツはどうしようか? 

「おーい! 起きろー!」

「あっ?ん?なんだテメェ?」

「なんだじゃないよ?」

「は?何言ってんだ?」

「もしかして覚えてないの?」

「ああ。」

「リーナ、少しやり過ぎたんじゃないか?」

「しゅ、すみません! ム、ムカついたので少し強くしてしまいました。」

「いや、別に怒ってるわけじゃないから謝らなくていいんだけど、コイツどうする?」

「そ、その、罰が必要だと思いましゅ。」

「でも、一応僕も身分は明かしていなかったし、そこまで大事にしたくないんだけど。」

「レ、レイクしゃまがそうおっしゃるのなら、ギルドましゅたーに任せればいいと思います。」

「分かった。」

「ギルドましゅたーはわたしが読んできましゅ、す。」

「ああ、頼むよ。」

「その必要はありません。レイク様。」

 リーナがギルドマスターを呼びに行こうとすると、前から誰かが話しかけてきた。

「あの〜どなたですか?」

「レイクしゃま!この人がギルマスでしゅ。」

「はい。私がこのギルドのマスターを務めている、アレクサンドロス・チェロコンパです。名前が長くて申し訳ありません。私の事はアレクとでもお呼びください。」

 自己紹介をしてくれたギルマスのアレクは中々いい人だと思う。
 まだ、初対面だからよくはわからないけど、悪い人ではなさそうだ。

「あの、アレクさん? この冒険者を頼んでもいいですか?」

「勿論です!私にお任せください。」



 僕達は乳臭冒険者をギルマスに託すと、冒険者ギルドを後にした。

 僕達は結構な時間冒険者ギルドにいた様で、もう帰る時間になっていた。
 僕は特にやりたい事がある訳ではないので、普通に馬車に乗った。
 父様はまだ仕事の関係で帰れないので、帰りはリーナと一緒に馬車に乗った。
 勿論、ラルも一緒だ。
 今は僕の膝の上ですやすや寝ている。
 僕はラルの体を撫でながらリーナに聞いた。

「リーナ、僕と一緒に冒険する気はない?」

「れ、レイクしゃまぁ? そ、それはどういう意味でしょうか?」

「僕、学校入学まで1年間旅をしようと思う。」

「た、旅ですかぁ?」

「ああ。」

「な、なぜ、レイクしゃまが旅を? そ、それもわたしなんかと。」

「僕はリーナも知っている通り魔法の適性がない。だから、僕は魔法が使えなくても十分に戦える様になりたいんだ。だから、旅をしようと思った。」

「で、でも、なんでわたしなのでしゅか?」

「リーナは立派な冒険者じゃないか。今はやっていなくても、知識や技術はSランクなみに強いでしょ。だからリーナなら大丈夫だと思ったんだ。リーナが嫌なら僕は強要するつもりは無いよ。過去の事もあるからね。でも、僕は出来ればリーナと冒険したい。どうかな?」

「しゅ、すこしだけ考えさせていただいてもよろしいですか?」

「うん。分かったよ。」






















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