十刻の魔物使い

黒良シキ

十三話 リーナの話2


 私はSランクになって三日後、冒険者を辞めました。

 私はその日、2年間共に冒険をしていたパーティーのラン、イラン、レイスとワイバーン討伐に向かいました。
 場所は竜の谷。
 この場所には黒龍がいるらしいという噂が ありますが、黒龍がもし居たとしてもワイバーンのいる様な場所には現れないのです。
 私達は特に何事もなくワイバーンを狩っていました。

「ここ一帯のワイバーンは狩尽くしたし、もう帰るか。」

 リーダーのランがそう言った。

「えぇーー。もうちょっと奥行って狩ろうぜ!」

 イランがそう返すと「分かったから、少し落ち着け。2人とも、もう少し大丈夫か?」

「うん。」
 
「問題ない。」

「よし!じゃあもう少し進もう!」


 私達はそのまま谷を進んで行った。

 少し進んだ所で再びワイバーンを狩っていると、地面に亀裂が現れた。
 その亀裂はどんどん広がっていき、地面も揺れ始めた。

「お、おい!これなんだよ!」

「落ち着け! 何が来るかわからない。気をつけろ!」

「ああ。」

「うん!」

 私達の周りは緊張で包まれていた。


 少しするとそれは現れた。

 黒い鱗で身を包み、黄金に輝く牙と爪を持ち、瞳が紅蓮に光る漆黒の龍!


「我の寝床を荒らすとは貴様らは何者だ?」

 龍が訪ねてくる。
 龍の一言一言はずっしりと重く、威厳を感じる。

「すまない! 俺達はあなたの寝床を荒らすつもりはない! すぐにここを離れるから見逃してはくれないか?」

「ならば今すぐここから立ち去れ! そして、2度とここに近寄るでない!」

「分かった! 感謝する。」

 私達はそのままそこを後にするつもりでした。
 なのに………

「ッ!クッグワァァァァアーーー!!!」

 龍は暴走したのです。
 龍の身体からは禍々しいオーラが溢れ出ている。

「おい、今度はどうしたっていうんだよ!」

「わからない。しかし、様子を見るに暴走しているのは確実だ。」

「おいおい! 嘘だろ! こんな奴が暴走したら誰が止めんだよ!」

「まずは救援を要請するしかない!」

「誰が行く?」

「リーナ、頼めるか?」

「い、いやだ! また、誰かを失うのは! 私も戦う!」

「「「リーナ………」」」

「リーナ、こんな事になったのは元はと言えば俺の責任だ。だから2人は俺が守る。だから、リーナも心配せずに行ってくれ!」

「っ!、分かりました。絶対に生きてください!」

「ああ!」

「おうよ!」

「勿論!」

 私は3人の返事を聞くと冒険者ギルドへと向かった。
 私は一刻でも早く3人を助ける為に走って走って走り続けました。
 息が切れても走り続けました。
 3人を必ず助ける為に!



 私は冒険者ギルドに着くとすぐ様この事を報告しました。
 冒険者ギルドでは龍討伐の隊が即編成され、森へ行きました。
 私が案内をして最速でその場所へ向かいました。


 でも………私が来た時には既に3人は亡き者 となり、龍の姿は消えていました。

 私はまた、大事な人を失ったのです。
 残酷です! 残酷です! この世界は残酷です!
 私の今までの努力はなんだったのでしょう。
 また何も出来なかった。
 私は………わ、たしは!
 誰も救う事が出来なかった!
 何がSランクだ!
 こんなものなんの意味もない。
 こんなんじゃダメなんです。
 でも、もう疲れました。
 冒険者はもう続けられません。
 もう誰も失いたくない。

 私はその日から冒険者から離れる事にしました。











 私が冒険者を辞めて少し経った時、私は町でメイド募集という話を聞きました。
 私は冒険者を辞めて、その後はお婆ちゃんの薬屋の手伝いをしていました。
 私はこの話を聞いてメイドになろうと決めました。
 いつまでもこんなんじゃ、お婆ちゃんを心配させてしまうので、冒険者はもう出来ませんが、せめて自立だけはしよう思ったからです。

 私はすぐさま面接を受けに行きました。

「あなたの名前は何ですか?」

「リ、リーナ・ファ、マリアでしゅ。」

 あっ、とても思いっきり噛んでしまいました。
 私はこういうのは苦手なのです。

「す、しゅい、すいましぇん、せん!」

 また、噛んでしまった。
 これは不合格………

「ぷっ!フフフあなた合格よ!」

「へっ?ご、合格でしゅか?」

「ええ、合格よ。旦那様は出来るだけ面白い子がいいとおっしゃってたので。」


 私はなぜか分かりませんが合格する事ができました。
























コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品