十刻の魔物使い

黒良シキ

一話 悔しい日々


「おいレイク! 僕は貴様が嫌いだ! 魔法無敵性のクセに、伯爵家の息子だからといって調子に乗る貴様が!」

 1人の少しぽっちゃりした男の子が、目の前で尻もちをついている男の子にそう言い放った。

「そ、そんな! 僕はただ君達の為にしただけなのに………」

「そういうのが気に食わないんだ! ハハッいいなお前は、父さんが権力を持っていて。」

「しかし、君の父さんもかわいそうだ。」

「違う! 父様はかわいそうなんかじゃない!」

「ほう、こんなダメ息子がいるのにか?」

「ッ!」

「ほらな!言い返せないだろ。」

「クッ、クッソー!」

男の子はもう1人に殴りかかった。

「クソ雑魚のお前が俺に勝てるわけないだろ。風よ吹け!ウィンド!」

しかし、魔法によって吹き飛ばされ近くの木に激突した。

「カッ、カハッ!」

そのまま気絶する。

「おいっ! 何してるんだお前! 俺の弟によくも!」

1人の少年が駆けつけて来て怒鳴る。

「クッ、何でレイクの兄さんが!」

そう言うと男の子はその場から立ち去った。

男の子が立ち去ったのを確認した少年は、気絶している子に駆け寄った。

「おい!レイク!大丈夫か?兄ちゃんが来たぞ!」

「うっ、んっ………に、兄様? どうしてここに?」

「どうしてって、決まってるだろ。レイクを助けに来たんだ。」

男の子はまだ状況を飲み込めていない様で、キョトンとしている。

「とにかく帰るぞ!」

「う、うん」


 僕はその日、兄様と共に家に帰った。
 家に帰るといつもの様にみんなに心配された。
 そう、いつもの事なのだ。
 僕、レイク・ロシュ・アルカーナは伯爵家の息子でありながら、生まれた時、魔法適性検査結晶板で検査したが、1つも適性の無い魔法無敵性者なのだ。
 貴族の血が繋がっているものなら大体、適性が3個はあるのだが、僕は無適性………
 一般の民でさえ、適性が1つはある。
 なので僕は、他の貴族がこのルシアル領に来ると、その貴族の子に虐められるのだ。
 本当に自分が惨めで仕方がない。

「クーちゃん食事の時間だから降りて来なさい。」

「うん! わかったよ母様。」

 僕を呼びに来た女性は、僕の母様のセラ・ロシュ・アルカーナだ。
 母様はその………とても綺麗だ。
 偶に見惚れてしまう時がある。
 綺麗な金髪にエメラルドの様な瞳がとても素敵だ。

 僕は階段を降りて食堂へ向かった。
 僕が食堂に着くと、既に家族全員が集まっていた。

「父様、遅れてしまい申し訳ありません。」

「おっクー来たか。謝罪なんてしなくていいから早く座りなさい。」

「はい父様。」

 僕は言われた通りにいつも通りの席に座る。
 僕の左には僕の姉様のルラ・ロシュ・アルカーナが座っている。

「ねぇ、クー君?」

「何ですか。姉様?」

「ギューしていい?」

「しょうがないですね姉様は」

「しょうがないでしょ!クー君が可愛すぎるんだもん!」

「分かりました。いいですよ。」

僕がそう言うと姉様は思いっきり抱きついて来た。

「ね、姉様! く、くるしいです。」

「ご、ごめんねクー君。」

「大丈夫ですので、次からもう少し弱くしてくださいね。」

「うん!」

 やっぱ姉様は可愛い。
 母様譲りの綺麗な金髪にクリっとしたエメラルドの様な綺麗な瞳、それと僕は姉様のこの元気いっぱいの性格が好きだ。

「ルラ、そろそろ席に着きな。」

「はい。お兄様。」

 兄様の言う事を聞いて、姉様は席に着いた。
 僕の兄様、レキ・ロシュ・アルカーナはとても優しくてカッコいい。
 いつも僕は兄様に助けられてばっかりだ。    
 この金髪と青の瞳を見た世の女性達は大体一目惚れだ。
 それくらい兄様はカッコいいのだ。

「よし、それじゃあ食事を始めようか!」

 父様、レケル・ロシュ・アルカーナがそう言うと、皆食事を始める。
 アルカーナ家の大黒柱である父様は、ここアルカーナ領の領主だ。
 見た目は、黒髪に透き通る様な青の瞳が特徴だ。
 僕の髪は父様譲りの黒に、瞳の色は母様譲りの緑だ。


 僕は食事を終えると、自分の部屋に戻り少し休み、風呂に入って就寝した。



         
 
     








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