【完結】私の赤点恋愛~スパダリ部長は恋愛ベタでした~
2-5.初めてのデート
佑司は私を、海浜にある大型ショッピングモールに連れてきた。
「まだあるんだ……」
広場には大型ロボット、ニャンダムの原寸大モデルがそびえ立っている。
以前一度だけ、見にきた。
あの当時のものとは違う気もするが、私には違いなんてわからない。
「チー、行くぞ」
「は、はい」
並んで歩く私を、不思議そうな目で佑司は見下ろした。
「腕、組まないのか?」
「は?」
それがさも当然、佑司はそんな顔をしている。
いやいや。
ない、ないから。
手を繋いでいる人は見かけるけど、さすがにこんなところで腕を組むとかありえない。
でももしかして……。
「だっていつも、勝手に腕組んできてたぞ」
ああ、やっぱりですか。
あれかな、こんなイケメンが私の彼氏なんです!って自慢したかったのかな。
過去に佑司が付き合っていた人たちは。
「私は別に、佑司を自慢したいとか思わないので……」
「なんで?
チーも俺を自慢すればいいだろ」
いや、ちょっと待って。
もしかして佑司を自慢していたんじゃなくて、こんなイケメン彼氏のいる私、凄くない?って自慢していたのかも。
その可能性に気づいたら、ちょっと彼が可哀想になってきた。
「えっと。
別に私はいいので」
「なんで?」
いままで佑司の中ではそれが当たり前だったんだろうけど、普通はそうじゃないんです。
……なんて説明して、わかってくれるんだろうか。
「……腕を組むのは恥ずかしいので、なにかしたいのならもっと控えめにお願いします」
最大限、譲歩した。
さっきちょっと、昔の佑司に同情したのもある。
「やっぱりチーは可愛いよなー」
そっと彼の手が私の手を掴む。
「これなら恥ずかしくないだろ」
いや、これだって十分恥ずかしいんだけどね?
腕を組んで歩くことを強要されるよりはずっとましなので、妥協することにした。
「手ー繋いで歩くとか新鮮だよなー」
楽しそうに繋いだ手が上下に揺れる。
「え、もしかしてずっと腕を組んで歩いてたんですか」
「そうだけど」
なんかおかしい?って感じに、佑司の首が傾く。
いくら色恋沙汰に鈍い私でもわかる。
手を繋ぐだなんて段階をすっ飛ばして腕を組んで歩くなんて、初彼だったら絶対にありえない。
この人、もしかしてずっとそういう恋愛をしてきたんだろうか。
だから、スパダリ的言動になってしまったとか?
手を繋いだまま佑司と歩く。
少し歩いて、洋服店に連れ込まれた。
「チーに似合いそうな奴……」
なんだか知らないが、佑司はぶつぶつ言いながら真剣に悩んでいる。
「チーって会社で、スカート穿かないよな。
なんで?」
「足が太くて似合わないからですよ……」
言われたのだ、昔。
珍しくミニスカートなんて穿いてみたら、ゾウみたいな足出すなって。
それからコンプレックスでスカートなんて必要じゃない限り穿いたことはない。
「は?
なにそれ?
昨日のチーの足、滅茶苦茶きれいだったぞ」
思い出しているのかニヤついているのはひじょーに嫌だが、きれい?
私の足が?
「だからもっと出した方がいいと思うんだよなー」
どうでもいいがミニプリーツスカートとか、白のレースブラウスとか選んでいて、絶対にそれは似合わないと思う。
「これを着てみろ!」
数点の服を渡され、はぁっと小さくため息が漏れた。
「あのですね……。
こういう、ロングスカートは丈が合わないんですよ」
渡された中から、水色のロングプリーツスカートを身体に合わせる。
地面につかないようにするにはハイウエストどころか胸まで上げなければならず、佑司の顔から失望の色が隠せない。
「あとこういう、襟がフリルのガーリーブラウスは私には似合わないです。
ほら」
「うっ」
ブラウスを身体に当ててみせたら、佑司が声を詰まらせた。
「フレアスカートは可愛いですが、ピンクって似合わないんですよね……」
同じく身体に当ててみる。
佑司はもう、なにも言わなくなった。
「あ、でも、この黒ニットは着回しがきくのでいいと思います」
「……うん」
佑司の目にはうっすらと涙がにじんでいる。
よっぽど私に、少女まんがに出てくるような可愛い格好をさせたかったようだ。
「自分で選んでもいいですか」
「……いい」
どうでもいいが、俯いて私のカーディガンをちょんと、掴まないでほしい。
「そうですね……」
スカートは穿きたくない。
が、佑司としては穿かせたいのだろう。
さっきからちょっと泣きそうなのが可哀想なので、スカートも考慮に入れてやる。
「ちょっと着てみますから、待っててもらえますか」
「……うん」
佑司はすっかり、項垂れてしまっている。
もう癖になったんじゃないかというため息をついて着替えた。
「どう、ですか……」
選んでみたのはブルーグレーのTシャツに白のチュールスカート、それにダンガリーシャツを腰巻きで。
スカート丈が膝下なので、コンプレックスの足もさほど出ないから、いいことにする。
「……可愛い」
みるみるうちに佑司の機嫌が直っていくのがわかる。
私の苦手なガーリーさをTシャツで抑え、スカートで佑司の希望を叶える。
上手くいったみたいだ。
「よし、それを買おう。
それで、そんな感じで選べばいいんだな?」
「そうですね」
「さっさと着替えろ。
次、いくぞ」
私をせかせる佑司は、すっかりご機嫌になったようだ。
その後、洋服店をはしごして着せ替え人形にさせられた。
ときどき、私の好きなラインから完全に離れた可愛い系を着せられたが、悔しいけど似合っていた。
「チーはここで待っていろ」
入っているコーヒーチェーン店で私の飲み物だけを買い、佑司は荷物を抱えて車に戻った。
……よかったのかな、ほんとに。
服は全部、佑司が買ってくれた。
いやいや、悪いしと遠慮したものの。
『俺が買いたいの。
だから買わせろ』
その一点張り。
佑司がいいのならいいのかと、無理に納得した。
「なーんであんなに、はしゃいでるんだろう……」
彼に酷く、気に入られているのは理解した。
でもなんでかわからない。
私なんて可愛くないし、性格悪いし。
そんな私を可愛いといったのは佑司と、――昔、私をチーと呼んだ人だけ。
「そのうちきっと、飽きるよね……」
そうだと思いたい。
じゃないと、納得できない。
「チー、お待たせ」
「あ、はい!」
私が飲み終わる頃、佑司は戻ってきた。
「ん?
俺がいなくて淋しかったのか?」
「そんなこと、あるわけないじゃないですか」
考えていたことを笑って誤魔化す。
「そろそろ昼メシにするか」
「あー、その……」
失敗した、時間を考えずにクリームたっぷりのフラペチーノなんて飲んでしまって。
おかげでお腹はあまり、空いていない。
「ん?
ああ、そうだな。
この時間だと混んでるだろうから、少し外して食うか」
にかっ、眩しいくらい白い歯を見せて佑司が笑う。
「……そーですね」
席を立ってゴミを捨て、店を出る。
佑司はまた、私と手を繋いだ。
「どうかしたのか?」
「なんでもないです」
見上げると、目のあった彼が少しだけ首を傾ける。
私が言いにくいこと、察してしかもスマートに代替え案を提示してくれた。
そういうのは……素直に、格好いいと思う。
「まだあるんだ……」
広場には大型ロボット、ニャンダムの原寸大モデルがそびえ立っている。
以前一度だけ、見にきた。
あの当時のものとは違う気もするが、私には違いなんてわからない。
「チー、行くぞ」
「は、はい」
並んで歩く私を、不思議そうな目で佑司は見下ろした。
「腕、組まないのか?」
「は?」
それがさも当然、佑司はそんな顔をしている。
いやいや。
ない、ないから。
手を繋いでいる人は見かけるけど、さすがにこんなところで腕を組むとかありえない。
でももしかして……。
「だっていつも、勝手に腕組んできてたぞ」
ああ、やっぱりですか。
あれかな、こんなイケメンが私の彼氏なんです!って自慢したかったのかな。
過去に佑司が付き合っていた人たちは。
「私は別に、佑司を自慢したいとか思わないので……」
「なんで?
チーも俺を自慢すればいいだろ」
いや、ちょっと待って。
もしかして佑司を自慢していたんじゃなくて、こんなイケメン彼氏のいる私、凄くない?って自慢していたのかも。
その可能性に気づいたら、ちょっと彼が可哀想になってきた。
「えっと。
別に私はいいので」
「なんで?」
いままで佑司の中ではそれが当たり前だったんだろうけど、普通はそうじゃないんです。
……なんて説明して、わかってくれるんだろうか。
「……腕を組むのは恥ずかしいので、なにかしたいのならもっと控えめにお願いします」
最大限、譲歩した。
さっきちょっと、昔の佑司に同情したのもある。
「やっぱりチーは可愛いよなー」
そっと彼の手が私の手を掴む。
「これなら恥ずかしくないだろ」
いや、これだって十分恥ずかしいんだけどね?
腕を組んで歩くことを強要されるよりはずっとましなので、妥協することにした。
「手ー繋いで歩くとか新鮮だよなー」
楽しそうに繋いだ手が上下に揺れる。
「え、もしかしてずっと腕を組んで歩いてたんですか」
「そうだけど」
なんかおかしい?って感じに、佑司の首が傾く。
いくら色恋沙汰に鈍い私でもわかる。
手を繋ぐだなんて段階をすっ飛ばして腕を組んで歩くなんて、初彼だったら絶対にありえない。
この人、もしかしてずっとそういう恋愛をしてきたんだろうか。
だから、スパダリ的言動になってしまったとか?
手を繋いだまま佑司と歩く。
少し歩いて、洋服店に連れ込まれた。
「チーに似合いそうな奴……」
なんだか知らないが、佑司はぶつぶつ言いながら真剣に悩んでいる。
「チーって会社で、スカート穿かないよな。
なんで?」
「足が太くて似合わないからですよ……」
言われたのだ、昔。
珍しくミニスカートなんて穿いてみたら、ゾウみたいな足出すなって。
それからコンプレックスでスカートなんて必要じゃない限り穿いたことはない。
「は?
なにそれ?
昨日のチーの足、滅茶苦茶きれいだったぞ」
思い出しているのかニヤついているのはひじょーに嫌だが、きれい?
私の足が?
「だからもっと出した方がいいと思うんだよなー」
どうでもいいがミニプリーツスカートとか、白のレースブラウスとか選んでいて、絶対にそれは似合わないと思う。
「これを着てみろ!」
数点の服を渡され、はぁっと小さくため息が漏れた。
「あのですね……。
こういう、ロングスカートは丈が合わないんですよ」
渡された中から、水色のロングプリーツスカートを身体に合わせる。
地面につかないようにするにはハイウエストどころか胸まで上げなければならず、佑司の顔から失望の色が隠せない。
「あとこういう、襟がフリルのガーリーブラウスは私には似合わないです。
ほら」
「うっ」
ブラウスを身体に当ててみせたら、佑司が声を詰まらせた。
「フレアスカートは可愛いですが、ピンクって似合わないんですよね……」
同じく身体に当ててみる。
佑司はもう、なにも言わなくなった。
「あ、でも、この黒ニットは着回しがきくのでいいと思います」
「……うん」
佑司の目にはうっすらと涙がにじんでいる。
よっぽど私に、少女まんがに出てくるような可愛い格好をさせたかったようだ。
「自分で選んでもいいですか」
「……いい」
どうでもいいが、俯いて私のカーディガンをちょんと、掴まないでほしい。
「そうですね……」
スカートは穿きたくない。
が、佑司としては穿かせたいのだろう。
さっきからちょっと泣きそうなのが可哀想なので、スカートも考慮に入れてやる。
「ちょっと着てみますから、待っててもらえますか」
「……うん」
佑司はすっかり、項垂れてしまっている。
もう癖になったんじゃないかというため息をついて着替えた。
「どう、ですか……」
選んでみたのはブルーグレーのTシャツに白のチュールスカート、それにダンガリーシャツを腰巻きで。
スカート丈が膝下なので、コンプレックスの足もさほど出ないから、いいことにする。
「……可愛い」
みるみるうちに佑司の機嫌が直っていくのがわかる。
私の苦手なガーリーさをTシャツで抑え、スカートで佑司の希望を叶える。
上手くいったみたいだ。
「よし、それを買おう。
それで、そんな感じで選べばいいんだな?」
「そうですね」
「さっさと着替えろ。
次、いくぞ」
私をせかせる佑司は、すっかりご機嫌になったようだ。
その後、洋服店をはしごして着せ替え人形にさせられた。
ときどき、私の好きなラインから完全に離れた可愛い系を着せられたが、悔しいけど似合っていた。
「チーはここで待っていろ」
入っているコーヒーチェーン店で私の飲み物だけを買い、佑司は荷物を抱えて車に戻った。
……よかったのかな、ほんとに。
服は全部、佑司が買ってくれた。
いやいや、悪いしと遠慮したものの。
『俺が買いたいの。
だから買わせろ』
その一点張り。
佑司がいいのならいいのかと、無理に納得した。
「なーんであんなに、はしゃいでるんだろう……」
彼に酷く、気に入られているのは理解した。
でもなんでかわからない。
私なんて可愛くないし、性格悪いし。
そんな私を可愛いといったのは佑司と、――昔、私をチーと呼んだ人だけ。
「そのうちきっと、飽きるよね……」
そうだと思いたい。
じゃないと、納得できない。
「チー、お待たせ」
「あ、はい!」
私が飲み終わる頃、佑司は戻ってきた。
「ん?
俺がいなくて淋しかったのか?」
「そんなこと、あるわけないじゃないですか」
考えていたことを笑って誤魔化す。
「そろそろ昼メシにするか」
「あー、その……」
失敗した、時間を考えずにクリームたっぷりのフラペチーノなんて飲んでしまって。
おかげでお腹はあまり、空いていない。
「ん?
ああ、そうだな。
この時間だと混んでるだろうから、少し外して食うか」
にかっ、眩しいくらい白い歯を見せて佑司が笑う。
「……そーですね」
席を立ってゴミを捨て、店を出る。
佑司はまた、私と手を繋いだ。
「どうかしたのか?」
「なんでもないです」
見上げると、目のあった彼が少しだけ首を傾ける。
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