世界最強の男の娘

光井ヒロト

20話  入学式




「貴様ら、用意は良いな?」

「勿論ですぜ、ボス」

「良し、アレは手を出すなよ、クライアントが面倒臭いからな。目標は貴族どもの子どもを攫う。男は要らん。第一目標は王女だ、間違えるなよ」

「分かってますよ、旦那」

「無理だな、貴様ら」

「何もんだてめぇ」

「俺は貪財のエリオ。あの方の忠実なる僕であり、貴様らを処す者だ」

「貴様があのっ!……ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」

「センス、完了した」

『了解』

「何もしなければいいものを」

 後に残ったものは血まみれの肉塊が十五個だけだった。




 上手く処理したか。今日は王都の学院の入学式である。ドーチェルにある学院の入学式は昨日だった。俺は理事長なので全ての学院に入学式の祝辞を読まなければならない。分身の魔法を使い、四校同時に挨拶をする。

 そういえば、俺の方からブリードウェル王立学院がうちのドーチェルの学院の対決に混ざらないかと提案すると、喜んで引き受けると言って貰えた。目的はブリードウェルの貴族たちの力量を知ることと、平民相手にどういう態度を取るのか気になるからだ。という体で、貴族たちに力量を分からせることと、平民相手ということで傲慢な貴族の子息が釣れるだろうからだ。

 そんなこんなで入学式。席は合格時の成績順なので、右隣はガイズで、左隣はローズだ。ブーストン公爵家に挟まれるとは。ローズが手を繋いでこようとしてくるので避けなければならない。手ぐらい繋いでやれと言われるかもしれないが、貴族の中には手を繋げば婚約を意味するという家があるので、そういった口実をつくられないようにしなければならない。

「只今からブリードウェル王立学院、入学式を行います。先ず始めにグレイズ学院長より式辞がございます」

「新入生の皆さん、私がブリードウェル王立学院学院長のグレイズだ。これから皆さんはこの学び舎に入り、沢山の困難が襲うだろう。何度も挫け、挫折する者もいることだろう。そんな時は仲間がいる。仲間と助け合い困難を乗り越えてくれることを私は期待する。今年からブラック伯爵閣下よりドーチェル領内にある学院対抗戦に参加させてもらうことになった。春の交流会、夏の対抗戦、冬の学術研究発表会の三つに参加する。参加できるのは優秀な生徒のみである。君たちの力を発揮できる数少ないチャンスだ。是非とも、ものにしてもらいたい。これから頑張ってくれ」

 拍手が起こる。秋の学院祭はブリードウェル王立学院には存在しないので参加することが出来ないのだ。他の学院と戦えるとなれば火付け薬になれるだろう。だからこの場で言ったのだろう。

「続きまして、国王陛下より祝辞を賜ります。陛下宜しくお願いします」

「新入生皆さん、入学おめでとう。君たちは今、全てを吸収し、成長できる。今年からブラック伯爵の厚意によりドーチェル領の学院対抗戦に参加できる。グレイズ学院長の言っておった通り、数少ないチャンスだ。これを自分のモノに出来るかは君たち次第だ。頑張ってくれ給え」

 拍手が起こる。陛下が入学式に来るのは王家の人間が入学する時のみで、平民たちにとっては一生に一回あるか無いかというくらいの機会だ。今の時点でどれ程凄いかは分からないかもしれないがその内分かるだろう。

「では、教師の紹介です」

 各クラスの担任と各教科の担当教師の紹介をされる。グレイズの言っていた通りブンドルとかいう奴はBクラスの担任で魔法の担当教師のようだ。Bクラスにはべーボース公爵の息子のドールがいると思われる。仕組まれているだろうな。

「では、各クラスに別れてホームルームを行ってください」

 Sクラスの教室に案内され、三人ずつ座れる椅子に順位の順番で座っていく。俺は四席なので左隣には人が居らず、右隣にローズ、その隣にアメリスだ。アメリスは隣になりたいと駄々を捏ねていたが却下しておいた。

 教師は全員が席に着いたことを確認してから一度頷き、自己紹介を始める。

「初めまして、私がSクラス担任のマーリエです。担当教科は魔法学を担当致します。これから宜しくお願いしますね。では、首席のオードス殿下から一言挨拶ずつお願いします」

 担任のマーリエは水色の髪をした、まだ二十歳いかないくらいの容姿をしている。可愛い顔だ。男子に人気がありそうな感じをしている。

「私はオードス・フォン・ルーンレリアだ。気軽に接してくれるとありがたい。宜しく頼む」

 こんな感じで挨拶は進んでいく。今日は自己紹介と教本の配布で終了予定だ。早く家に帰りたいな。日本でも学校はすきではなかったからな。行っても特に意味は無いし。はぁ、帰りたい。








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