世界最強の男の娘
12話 王城でのパーティ〜後編〜
会場内の端で一人、ぶどうジュースを楽しんでいる。炭酸飲料を飲みたくなった。あのシュワシュワ感は堪らないものだ。なんてことを考えていると、
「君、少しいいかな?僕はドール・フォン・べーボース。特別に君を僕の婚約者にしてあげよう」
「いえ、すみません。そういうのは…」
「何っ!?!ぼっ、僕は公爵家だぞ!僕の言うことを聞け!」
「しかし……」
「君、その子が困っているだろ!よし給え!」
「なっ、なんだとぉ…王子殿下ぁ!これはどうも…僕はこれで…」
絡まれたと思ったら、直ぐに何処かに行ってしまった。喧騒を聞き、周囲の貴族はこちらを見ている。王子殿下は格好よく助けたと思っている様で、髪を掻き上げ、微笑みかけてくる。
「大丈夫だったかい?レイ殿?」
「えぇ、まぁ…」
「安心するがいい。貴女のことは私が守ろう」
「ちょっと、オードス!その方は男ですよ。困らしてはいけませんわ」
「何を言っているんだ、アイリスよ。女性に決まっておろう。レイ殿、貴女を正室に招きたい。受けてくれるね?」
「オードス、ならん。ブラック伯爵は駄目だ」
「父上、なぜです?」
「それはお主が知ることではない。伯爵、済まないな」
「いえ、構いません」
王女殿下に陛下まで出てきてしまった。だが、終わりよければ全てよし。陛下がこの場で、俺との婚約は駄目だと明言してくれたため俺に婚約を申し込む馬鹿者はぐんと減るだろう。このまま、領地で悠々自適ライフを送れたらいいと思う。
「ブラック伯爵、少し後で話がある。応接室に来るようにな」
「了解しました」
そのままパーティは終わり、言われた通り応接室に向かう。メイドに室内に通されて椅子に座っていると、歩く音と話す声が聞こえる。どうやら王子殿下が陛下にごねているようだ。まだ諦めてなかったのか。
「ブラック伯爵、済まない。うるさい奴がいてな」
「いえ」
「それで話なんだが、お主の領に向かう日程について話しておきたくてな」
「左様ですか」
「うむ、向かうのは今日より一ヶ月後。一週間程の視察で、向かう場所等はお主に全て一任しよう」
「それは…いえ、左様ですか。此方も万全の準備をしておきます。最高の持て成しを致しますよ」
「楽しみにしておるぞ。向かう人は儂に王妃と王子、王女、ブーストン公爵と公爵夫人にご令嬢と嫡男、ドンマナス侯爵と侯爵夫人、ご令嬢と騎士たちと文官数名だ」
「了解しました。幾人でもお越しくださいませ」
そのまま王都の屋敷に帰り、ベランダでお気に入りのジンジャーエールをロイドに注いでもらいながら、報告を聞く。
「レイ様、報告を。先ず、奴・はやはりクロい様です。処分しますか?」
「いや、待て。泳がしておけ」
二杯目に入る。
「了解しました。東のアーワルノ帝国が怪しい動きをみせていますが?」
「十纏に任せておけ…?いや、違うな…それでは…いやそうだな…うん。南・だ。アレに監視させろ。そして、隣のドーチェル領を調べておけ」
「南ですか?了解しました。ドーチェルは王国直管地ですが、宜しいのですか?」
「構わん、十戒にやらせろ」
「御意に」
「くくく…くくくくく…王・手・だ」
「?何がでしょうか?」
「気にすんな」
はぁ〜っ、疲れた。良く眠れそうだな、今夜は。
グラスの中に残っているジンジャーエールをグラスの中で回してから、一気に飲み干す。空になったグラスを置いてそのままにして、席を立った。
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