ジャスティン・ウォーカー〜予言の書〜

けんじぃ

優勝杯

あの事件から1週間経った頃、医務室にやってきたイーサンとイザベラ、リリーとパーシルについて話していた。どうやら僕はかなり眠っていたようだ。
「まさかやつの能力が重力だったとはな」
「先生達も騙されるぐらいの使い手だったってことよね。そんな人と一緒にいて無事でよかったわ」リリーがおそるおそる言った。
「そうね。だって重力ってたぶん複合能力の中でもかなり貴重な上にコントロールが難しいはずだわ。試合の時も自分の能力を隠したまま勝利したし、ジャスティンでも歯がたたないくらいの能力者だったなら、私達が生き残ったのは運がよかったわ」
「パーシルが去った後どうなったの?」
「先生達がパーシルは家の事情で、別の国に行くことになったと言ったんだ。まさか犯罪組織に入ったなんて誰も思わないよな。」
その後僕たちは犯罪組織についてあれこれ話した。全く的はずれなことでもみんなでまた話せることが楽しかった。


あっという間に学期末。どうやら僕たちはみんな無事2年生にあがれたようだった。
学校最後の日。みんなホールで集まっている。みんな休みに何をするか楽しそうに話している。けれど僕は学校を離れるのがなんだか寂しかった。
何人かの学生は僕たちの方をちらちら見ている。どうやらあの日の夜のことが噂になっているようだ。僕たちが立ち入り禁止区域に入って泥棒から何かを守ったんじゃないかという噂のようだ。かなり当たってはいたが確信にせまるものは何もなかったようだ。
しばらくして校長先生がベルを鳴らすとホールがしんとなった。
「さぁ諸君。1年間よくがんばった。それぞれ自分の試練に立ち向かい、大きく成長したようで嬉しく思う。」
「言うことがいちいち大げさだよな」
イーサンがにやりと言った。
「さて、今年の優勝杯じゃが。点数発表につい最近の出来事も加えねばならぬ。皆も知っての通り立ち入り禁止区域に入ったものがおる。当然ながらこのことは厳しく罰せねばならぬ。」
全員が僕らを見た。シルフのみんながざわついた。今シルフは一位だが二位のサラマンデルとは20点差だった。
「シルフの4人は1人50点減点とする。」
「そんなっ!」僕らは思わず叫んだ。
シルフは一気に最下位になってしまった。
「だがしかし。彼らは危険を犯してまで立ち入り禁止区域に入ったのは、あるものを犯罪組織から守るためじゃった。残念ながら阻止することは叶わなかったが、彼らのおかげで政府は素早く対応でき、やつらの目的も分かったのじゃ。そこで彼らの働きに200点を与えることにする。」
「校長も人が悪いぜ」イーサンが座りながら言った。
「でもこうしないと他の生徒への示しがつかなかったんじゃないかしら」イザベラが言った。
シルフは首位に戻った。サラマンデルの学生はかなり落ち込んでいる。
すると校長が話を続けた。
「さらにじゃ。彼らが助けを求めた時、サラマンデルの監督生が素早くわしらに伝えてくれた。よってサラマンデルに20点と与える。
ということで、今年の優勝はシルフとサラマンデルということになる。」


シルフとサラマンデルのみんなはいつまでも大喜びだった。


そして家に帰る準備をした後、みんなと別れのあいさつをした。
おばさんが学校まで迎えにきてくれている。
「手紙ちょうだいね。」イザベラが僕たちにハグをしながら言った。僕たちは照れながら頷いた。
「私にもよ」リリーともハグをした。


「2人は何をするの?」
「俺たちは行くとこもないし、2人で能力を訓練しておくよ」
「わたしはフラム王国に行ってみるの。他国の文化を学べるなんて今からわくわくするわ。」イザベラはとても嬉しそうだった。
「わたしは妹のお世話で忙しいから家にいるわ」


「さぁそろそろいくわよ」
「今行きます。」イーサンが叫んだ。「いくぞジャスティン。」
「うん。じゃあまたね。」
「また」イザベラとリリーもお母さん達の元へ去っていった。
「さぁいこう。次に戻ってきた時はもっと強くなっていようぜ」
「うん。また戻ってくるのが楽しみだね」









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