ジャスティン・ウォーカー〜予言の書〜

けんじぃ

巨大な鳥

パーシルと分かれて僕達は長く続く坂道を歩いた。イーサンがいないだけでかなり心細く感じる。そういえば僕はイーサンと離れることがほとんどなかった。


しばらく進むと光が差しているのが見えた。
「出口だ。けれど油断しないように。」パーシルがささやいた。
坂が終わり、出口に出ると、縦長い部屋だった。壁にはの少し上の方には平たく長い木飛び出し、がその先端には松明が飾られ、炎が揺られていた。
「これは永遠の炎だ。かなり高度な技術だ」パーシルが言った。青く穏やかな炎だった。
「永遠の炎って、ずっと燃え続けるってこと?」
「その通りだ。これはグリモワールによるものだ。」
「グリモワールって何?」
「そうだな。能力が使えるようになって、現代では物にスピリットを込めることで装備や道具を特殊なものに変えてきた。古代にもこれに似たことをしていたんだ。まず念具は古代にもあったことは知っているね?しかしそれとは別に、スピリットを込めることで特殊な能力を使える本が見つかっている。これらは旧時代は魔術書、呪術書なんて呼ばれてなんの意味もないと思われていたけど、古代の人達は言霊を本に閉じ込める技術をもっていたようだ」
「こんな炎を作り出せるなんて。そんな人達の文明がどうして滅んだのかしら。」イザベラが炎に見とれながら言った。
「さぁね。僕にもそれは分からない。今は先を急ごう」
さっきの広場とは違って出口は明らかに1つだった。炎に照らされ部屋のかなり向こうに1つの扉が見えた。
「行くわ。油断しないでね」イザベラが緊張したように言った。
出口を出て進み出した時、少し視線を感じたような気がした。
しばらく進んでも何も起きなかった。
「変ね。必ず何か罠があると思ったけど。」
僕はさっきより鋭い視線を感じて後ろを振り向いた。するとさっき入ってきた時は気づかなかったが入り口の上に巨大な鳥の銅像があった。
「ねぇ。みんな後ろを見て。」
そう言ったのもつかの間。銅像と思った巨大な鳥の大きな翼が開きすごい勢いで、僕達の方に向かってきた。
「伏せて」リリーが叫んだ。
間一髪。僕達の背中をかするように鳥は飛び、上昇して松明の木のところに止まった。今度はかなり近くに見えた。目はギラッと松明の炎で光り僕達を狙っているかのように素早く動いていた。かぎつめはすごくながい。銅像でなくてもあれでやられたらと思うと背筋がゾッとした。
「ジャスティン。風であの鳥を追い払えないか?」
「やってみる」パーシルに言われ、できる限り強い風を鳥に浴びせた。
鳥は巨大な翼を開いて背を向けた。成功したかと思われたが鳥はむしろ風を優雅にかわし、その勢いを利用したかのようにUターンして僕らを襲ってきた。
今度は僕達は左右に避けた。イザベラに引っ張られなかったらあぶなかった。
リリーもパーシルのおかげで無事みたいだ。
鳥は再び木に止まり、僕達に狙いをつけているかのようにこっちを見ていた。
「よし。こうしよう。リリー能力はもう使えるかい?」
「ええ。大丈夫。」
「この鳥は僕とリリーとで何とかする。おそらくこの鳥は夜行性の鳥のように、鳥本来の目まではもっていない。この炎は僕達を照らすためのものだ。リリーが僕を隠し、僕が攻撃する。僕は地面を蹴って少しなら空を飛ぶことができるし、あの速さにもついていける。その間にイザベラとジャスティンは扉へ。鳥を倒したら僕達もすぐ追いかける。」
「分かったわ。気をつけてね」
「絶対に後から来てね。待ってる」
「ええ。」リリーが覚悟したように言った。
「僕の合図でリリーは僕を隠し鳥の方に向かう。ジャスティンとイザベラは扉へ。鳥は2人を追って行くから、僕が後ろから攻撃して、足止めする。」
「分かったわ。立ちましょうジャスティン」
僕達は立ち上がった。
「いいかい。今だ。」
そういうとリリーとパーシルはどこかに消えた。僕らは全速力で扉に向かった。僕は少し僕らを押すように風を吹かせ、足にスピリットを集中した。
すると鳥は再び高く舞い、僕達の方に向かって飛んで来た。
パーシルの言う通り、うまくこっちに誘導できた。
すると、後ろですごい音がし、振り返ると鳥が地面に打ち付けられていた。
「振り返らずに行くんだ。」
姿は見えないが、パーシルが叫ぶ声が聞こえた。
その後聞こえてくる音も無視して振り返らずに、パーシル達を信じて進んだ。
扉の向こうへ。

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