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The hater

とある学園の教師

第18話

オルフィーとタカシは夜、よく通話をするようになった。
学校での話、お互いの非共通な趣味の話。
そして、今までの話。

通話を切る。

「あぁ、楽しかった」
少女は喜んだ。再びの幸福を。

「…………」
男は憂う。あの時の絶望を。

「あぁ」
「こうやって」
『今日も生微温い甘ったるい夢を見る』







夢を見た。悪心がする。吐くために便所へ向かう。最近は吐き溜めとしてしか使われていないここは、俺にとって存在意義を問われる場所。
風呂。禊の場所。
ベランダ。火照った体を冷静にしてくれる場所。
リビング。揶揄う者の居ない、自分だけの空間。
だが、トイレは違う。
そもそもあまり飯を食べない彼にとって、排泄の機会は少ない。
常にあらゆる生命の性質が彼の肉体に潤いを齎していて、水を不要としてくれる。
飯は代謝が激しく働いていて、脂肪を介さず直接燃える。
だから、周りからは大食らいだと言われるが全く太らない体質で。
筋肉も割れているし、身長も伸びた。
ここ数億年最近で1.6cm。
ロウペースに見えるかもしれないが、彼からしてみると大きな成長である。
話を変えよう。
彼は夢を見た。
それは良い。だが、内容だ。
家族を目の前で殺された。これはいつものだ。
だが声がする。久しく聞かなかった者の声。
恐らく、オルフィー。
かつてはディーヴァと呼ばれていたが………
彼女の性質上それは仕方がないのだと親父から聞いた。
確かに言っていたのだ。
『貴方は何も出来なかった。何もしてあげられなかった。私も何かしてあげられたら良いのだけれど…………』
『だから、貴方に恋を教えるわ。これも復讐のひとつよ。さぁ、手を取って___』
悪魔の妄言、彼の中を巣食う獣の戯言だとは思うが酷く魅力的だ。
だから、彼はこう言うのだ。
「それはとっくにある」
「俺に無いものを寄越せ」
「まあ、無いんだろうけれど」
別に縋りたいわけでもない。だが、これからも共に有るのなら利害が一致する限り奴らは甘い声を滔滔と垂れ流してくるだろう。
だが、飲み込まれてはならない。
甘き毒と称するのが一番だ。だって、本来毒は苦いものなのだから。






「タカシ」
「タカシ!」
「タァカシィ!!!」
怒号。微睡みから覚める。
「あぁ、すみません、続けて」
「遅くまで勉強する事は良いが、このままでは関心意欲態度の真偽を問われるぞ」
「最近色々あって夜に慣れちゃって眠れないんですよ………」
「その言い訳は後で聞く。では、続けるぞ」
「____」
確か、今は数学だったか。
(なんで文系なのに理数系もカリキュラムに入ってるんだろうなぁ………)
そう思いつつ、教師の解説に耳を傾けた。


昼休み。2人は向かい合って定食を食っている。
「いやー、派手に怒られてたね」
「ああ、お陰様で目が覚めたよ」
「笑っちゃったよ」
「そうか、良かったな」
「ふふふ」
「んで」
タカシは身を乗り出す。
「本当に改名するの?」
耳打ちする。
「結婚してからでいいんじゃないか?」
なんせ、未だに学生という身分だ。
周りから疑問が浮かぶのは間違いない。
ならば、ある程度自由になった卒業後の方がいい。
「うーん、でもさ。時間が無いんだよね」
「は?」
「こっちの話。後で話すよ」
何か企んでいるのだろうか。嫌な予感がする。
「さ、食べよ?」
その顔に、何かがあるように思えて仕方がない。


学校が終わった。帰ろうという時に、校門に人影がある。見覚えのある人間だ。
「なんだ、お前ら来てたの?」
白いパーカーに身を包む緑髪のソフトモヒカン、玄武。
ブカブカのシャツを着た両目が見えないほどに前髪の長い青龍。
そして、黒髪のラウンドの少女、綾音。
この3人は麒麟達と共に生まれてきた者だ。
「綾音がどうしても会いたいって言うからよ……」
ため息を吐きながら玄武が言う。
「麒麟ちゃんと朱雀ちゃんも連れて来たかったんだけど、お稽古があるらしくて……それでお兄ちゃん!」
溌剌として展開していく綾音。元気が伝播していく。
「なに」
マイペースなタカシに関係なかったが。
「今度、お家に行っていいですか!」
「ダメ」
キッパリという。彼女持ちとしての意識は高い彼には事案だからだ。
「あ、あの、僕からもお願いします!」
珍しく押しの強い青龍にたじろぐ。
「いいよ」
「なんで私はダメなのに!蔑視だー!!!」
「お前は不安要素の塊だし何されるかわからん」
「そんなー!」
「でも、そんなグイグイ来るの珍しいな」
「ちょっと話したいことがあって………」
「じゃあ俺、ただの付き添いだし帰るから」
玄武がそそくさと逃げ出してしまう。
「なんだアイツ」
「兄さんにしか話せない事なんです」
「じゃあ、直接家来いよ………」
「毎回『アポはとれ』って言うくせに」
「だったらメールなり何なりで言ってくれれば良いだろ」
「ちぇー、あー言えばこー言うなー」
綾音がバツ悪そうに口を曲げる。


『お邪魔しまーす』
「はいよー」
「相変わらずゲームとかPCしか置いてないねー」
「奥にトレーニングルームあるぞ」
「はぁ!?あのお兄ちゃんが!?」
綾音は驚き、青龍は頬を赤らめる。
なんせ、筋トレなどしなくてもその肉体美は保たれる。何故かは知らないが。
「んで、座れよ。話ってなんだ」


「実はね…………」
「?」
「生理が来ましたー!!!」
パチパチパチと手を叩く。
「それは、久しぶりにか」
「ち、違います。しょ、しょ、初潮ですよ……」
「………………」
タカシが固まる。
「おかしい………何でだ………?」
「どうかしましたか?」
顔の赤い青龍がもじもじとしながら聞いてくる。
「来るはずがないのに………どうしてだ………?」
「何が来るはずはないの?」
「確かに人と同じ仕組みに造ったが、そんな機能は組み込んでいない………何故だ……?」
「え、あ、じゃあこれって……」
「イレギュラーでは………?」
2人が固まる。
「もしかして、生理現象は生命のサイクルの象徴だ。それが無いということは、寿命があることになる」
「私達死ぬの………?」
「ああ………多分な」
「そっかぁ………僕達も死ねるんだ………」
「青龍は昔から破滅願望があったしな」
「うん………」
四聖獣の役割。
それは、亡くなった黄龍の役の継承。


かつて、天帝、またの名を黄龍という四神の長が居た。
彼の役割は「世界に央を定めること」即ち「世界の腹を定める」こと。
彼はその役割を果たし、後に五体の聖獣と娘を産み落とした。
不殺の象徴、麒麟。
寿命の象徴、玄武。
生命力の象徴、白虎。
知恵の象徴、朱雀。
恩恵の象徴、青龍。
そして、綾音の先祖である娘。

この六人が1人でも欠ければ、星は滅ぶ。
とされている。
あくまで通説だが、常に人は厄災に襲われ続けているという。
だが、五獣はそれらから人々を守っている。
ただ、居るだけでいいのだ。
言うならば、厄除けのお守り。
だから、タカシは五獣に不老不死の神人の肉体を授けようとした。
あらゆる場所から神性をかき集め、素体を造り上げた。
そして、白虎達は再誕した。
だから、


「僕達は生きなければならない」
「何があっても、ね」
「あぁ、だから俺は何があってもお前らを守るさ」
「うん、約束だからね」
そう笑って、綾音達は笑った。




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