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The hater

とある学園の教師

第16話

天之御中主神アメノミナカヌシ
日本神話最古の神にして、至高神。
とある二柱と共に、伊邪那美と伊邪那岐に天沼矛を賜った。


「さて、今頃タカシくん達はお話の最中かな?」
そんな、尊大な肩書きにおわす男。
「あぁ、多分な」
「国の長」
「その呼び名はやめろと言っているんだがな。なんだ、ミナカヌシ」
「不壊たる獣達を、あぁやって殺せるほどの逸材が何故…………」
「あーあー、その話か。それは未だにわかってないんだよ・・・・・・・・・
「そうか………なら良いんだ」
「何が良いって?未知な時点で、こちらが下手に出るしか無いのに?」
「未知だからこそさ。彼の力を知ってしまえば、こちらは立ち竦む者が出てくる」
「そういうもんかなぁ…………俺には、あのタカシとかいう奴が胡散臭く見える」
「そりゃそうだよ。ここの世界におわす殿方ではないからね」
「だが、何処の国にもあんなデタラメな神は居ない。居るはずがない」
「そうだね。その筈だ。私の知り合いにもあんなのは居なかった」
なんせ、彼が日本に来たのはほんの数ヶ月前だ。
しかも、監視しているが何も怪しい動向を見せていない。
時々姿を消すが、暫くしてからわざとらしく目の前に現れる。
試しているかのように。
「彼には感服する事ばかりだ」
「貴方だけだろうに」
「いや?高御産巣日も神産巣日も、彼を慕っているようだった」
「それが本当なら、彼は相当のバケモノだな」
「そうだねぇ、君にはそう見えるけど。私には、仲間に見えるよ」
「貴方ほどの神と同等なら、それはそれで不味いんですがね」
「格上なのも間違いない」
「まさか」
国の長は嗤う。
「じゃあ、彼が俺達に従う理由は?」
「足元を見てるんだろうさ」
「……………俺達を馬鹿にしていると?」
「違うよ、今のところは自分は弱いと言いたいのだろう」
「何故だ。力を誇示して、恐怖支配でもすれば良いのに」
「彼なりの皮肉………私達への当てつけか」
「はっ、それが本当なら嫌な奴だ」
「私達も人のことは言えないだろう」
「人かすら怪しいのに、な」
「あははははは」
「ふん」






一方、
「天照様の祖父………それは本当か?」
「あぁ、実際にお前らの首領とは見知った仲だ。何よりも、天沼矛を生み出した張本人でもある」
『!!!』
「天之御中主神、もといミナカくんとは旧い友人でな」
エホバアイツには、世話になった」
「タカシ君、口を慎みたまえ」
丸々と太った中年が話を遮る。
「神前にあらせられるぞ」
「それもそうですが」
元木が更に口を被せる。
「何より諸外国も最近は動きが怪しい」
「まるで何かに追い詰められているかのように」
「タカシ、あまりかげきなはつげんはしないように」
その一言にタカシは反応する。
具体的には耳が、ぴくりと。
「それはどういう事だ?」
「…………我々はこれを神性事変と命名。金銭面、武力面での支援を開始する予定だ」
「なぁ、敵が何かはわかっているのか?」
「…………未だ、わからず。との事だ」
「はぁ?何かすらわからねぇ奴らに何をされてるのかもわからないと?」
「違う、違うんだ。確実に被害は出ている」
「それは?」
「巨大地震、豪雨、火山の活発化………殆どが天災に関わるものだ」
その時タカシだけが、衝撃を受けたように固まる。
「嘘だろ」
オルフィーの言葉が脳裏に過ぎる。
まさか、己が復讐相手がここに?
気の所為であれ、と願う。
「それは、それは………」
珍しく言葉に詰まる。
「各国の主要神性と首領達が、今度会議を行う」
「タカシ、君にも誘いが来てない訳じゃないんだが………出来れば参加してもらいたくない」
「…………当たり前だろ」
「ふっ、そうか……………それでいい」
「行きたくもねぇし、顔を合わせたくない奴も居るしな」
「例えば?」
「エホバ、インドの三柱、マホメット」
今まで張り詰めていた緊張が、更に引き締まる。
「そんなポンポンと大神の名前を出して良いのか………?」
「さぁ、盗聴されてなきゃ良いんじゃない?」
「他人事みたいに………」
「実際他人だしな」
シラーっと話を受け流していく。
「でも、それはそれで面倒だ」
1人が言う。
「長達と連携が取れないのは………」
「この世界には俺由来の神があんまり居ねぇからなぁ………それ考えちまうと、仲が悪いのもわかる」
「例えば」
タカシは立ち上がり、天照の元へと歩む。
「この子には伊邪那岐と伊邪那美という親が居た」
「まぁ、母親はアレで死んじまったけど………」
「神産みの権能を授けたのは俺だし、未だに後悔してる」
「でもだからこそ、この子の面倒を見るって決めた理由でもある」
「それが何と関係があると」
「わかるだろ?」
苦虫を噛み潰したような顔で告げる。
「元より神産みは俺の権能だ」
「…………」
「俺にそんな力は残ってないが………世界の循環と共にその力は戻ってくる」
「始まりはプロメテウスの炎だった」
「終わりは知らん」
「だが、今はある」
「なぁ、この時の為に生きてきた人間なんて居ないだろう」
「人は等しくその時を猛進する為に生きている」
「予定調和で殺されていい訳がない」
「なら、俺は生かすだけだ。無論私情で殺すし、仕事でも殺す」
「それが俺の意思だ」
「倫理だの何だのに従って生きていい高尚な人間では無いんだよ」
「俺は」
中年が、のそりと前に屈む。
指を組み、眼前に携える。
「そうやって、君は誤魔化してきたのか?」
「自分は特別だと」
「人間として生きたいのなら、倫理を持ちなさい。道徳心で人に接しなさい。そう教わっては来なかったのか」
「この世界にやって来たのなら、この世界のルールで生きろ」
確かに、言い得て妙だ。
全く、その通り。
だが、タカシには違う思惑があった。
「俺は『人でありたい』と願ったが、時折人では無いのだと自覚する時がある。人にとって致命的な欠陥を抱えていると自認している」
「あんたには有るんだろう、恋心、親愛とか言うやつが」
「だが、俺には無い。幾ら何でも長すぎる時を過ごしてもなお、知れなかった」
「最近、恋とかいう物を知れた気がしなくも無いが」
「それでも、曖昧な物だ」
物を考える目では無い。むしろ諦めている。
「ふん、話を戻そう」
「天照大御神様の祖父だとして、今更言った意味は何だ」
「これから言うんだよ。聞いてろ」


「俺はこの世界を産むにあたって、1つの懸念があった」
「混沌」
「お前らが知っている通り、この世の神話は殆どが『混沌』から生まれている」
「だが、旧約聖書とかは違かった。いきなり天と大地が有ったからな」
「んで、ここが重要なんだけれどさ」
「どうやら俺の家族は、天と大地って奴に殺されたらしい」
殺された、という旨は既に伝えていた。が、誰に殺されたかまでは彼自身も知らなかった。
「お前らの知る奴らとは違う。と思う」
「俺も詳しい訳では無いし」
「だが、それが関係あるのなら…………」
「許せないとは、思う」
彼は拳を握りしめ、俯く。
「…………そうか」
中年も上部の男も黙る。
ただ、元木だけが相打った。
「ならば、尚更備えなければな」
「私情を絡ませた以上、お前には責任が伴う」
「私達は全力でフォローしよう」
「だから、立ち上がれ」
ガタッと音がした。
上層部の人間が1人、2人と立ち上がる。
「勝手に話を進めるな!」
「私達の話を反故にするつもりか!」
喚く上層部の人間達に、元木はにっこりと微笑み。
「わかってますよ。貴方達の権利は守られている。如何なるクズであろうと、その立場にいる限り命は保証されるでしょう」
黙っていれば・・・・・・
その一言で、人間達は黙ってしまう。
「ひぃ………」
「人の気持ちがわかりません。幼い頃に家族を失った私には」
「ですが、この胸に燃える怒りは私に寄り添ってくれたからわかります」
「貴方達の怒りは違う。私に寄り添ってくれたようなものでは無い」
「ただの、利己心だ」
「ならば貴方達に彼を否定する権利はありません」
「そして何より、人類の反映にはこのタカシの存在は欠かせない。ですから、よろしくお願いします」






「あっそ、それで良かったの?」
あれから一週間が経ち、不気味な程に何も起きなかった。
この週末は麒麟に連れられ、ショッピングモールへとやって来たのである。
「さぁね、上にはいい薬なんだろうけどこのやり方じゃあ駄目だ」
麒麟はパフェの苺を口に放り込む。
「そうねぇ…………」
「でも、他に何ができたのかしら」
「そうだよなぁ………咄嗟に思いつけなかったし、今もわからねぇな」
「それが正解ね。わかってたら、疑われてるわよ」
タカシが笑う。
フードコートの喧騒は、その声を容易に掻き消す。
「敵情視察やらスパイやらってか?まさか」
「まぁ、そうだとしても送り込んだ側の損害は割に合わねぇよな」
「アンタ、そういうとこ細かく考えすぎっていうか、俯瞰が得意よね」
呆れたような眼差しで彼女が見つめる。
「そりゃ、まあ」
目を逸らしてみせるが、それは逆効果だった。
「もっと肉食になれば良いのに」
「なんでだよ」
「そっちの方が………踏ん切りつくし………彼女さんも幸せじゃない?」
「ははは、それは難しい話だな」
乾いた笑み。
「どうして?」
「こっちの事情」
ガーリックライスを頬張る。うめぇ。
「はぁ?秘密にしてるくせになよなよしてんの?童貞かよ」
「童貞だわ」
「調子狂う〜。ぶっ殺してやろうかしら」
「むしろ殺してくれよ………そっちの方が都合良いからさ………」
「じゃあ死になさい。その目ん玉私のスプーンで抉りとって口に突っ込んで窒息させてやる」
「やめ、やめ」
流石に派手過ぎたかのか、人々の視線が集中する。
「人前ではやるなよ………」
「あんたが屈託してるからでしょ。自戒なさい」
「わーったよ………俺が悪かった」
「ん」
「それで、どいつ?」
「ドイツ?留学の時の話?」
「違ぇよ、件の、ストーカー」
耳打ちする。
「あぁ、それね」
「叩き潰したわ」
「なんだそりゃ………」…
「よくよく考えてみれば破門されてたしどうでも良かったわ」
「人としてどうかと思うなぁ、それ」
「人じゃないもの」
「とほほ………」
「そんな悲しみ方してるの現実で初めて見たわ」
「俺の持ちネタなんだけどなぁ……」
「虚言止めなさい」
「数億年に2度くらいのペースで言ってるけど」
「そのスパンはもう持ちネタでは無いわよ。擦ってないじゃない」
「俺的にはセーフ」
「私的にはアウト」
「ちぇー」
「はんっ」
「でもさぁ、そのストーカーってどうなったんだ?」
「玉蹴り飛ばして交番に吊るしあげたわ」
「こわ…………」
「ついでに顔面ボコボコにして深海魚みたいにしてやったから社会復帰は無理ね」
「傷害罪で訴えられるんじゃねぇのそれ」
「はぁ?アイツ、私に対して汚ぇ一物ぶらさげて襲おうとしたのよ?笑止千万よ」
「お前………はぁ………そうか……お前はそのままで居てくれ………」
「?」
「何でもねぇ」
また、ガーリックライスを頬張る。
美味すぎる。
「私は生涯、誰にも捧げられないもの。捧げてはいけないし、これからもそう」
物憂げにパフェを見つめる。
「まぁ、世界が滅ぶって言う時になら」
「捧げても良いのかもね」

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