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The hater

とある学園の教師

第15話

「とっ捕まえるったって、お前。それは誰にやらせるつもりだ?」
「勿論、あんた達よ。こんなか弱い乙女にやらせるつもりだったの?」
「確認だよ、やらせるつもりもねぇしな。だけど、何時も見張ってられる程俺も暇じゃねぇんだわ」
「それは知ってるわよ」
腕を組み、目を逸らす。
今までは魅せられた・・・・・ように見つめていたのに。
「だから、私は引き篭ることにしたわ!」
「誘き寄せるんではなくて?」
「いいえ、引き篭るのよ」
「まぁお前達の家はセキュリティがしっかりしてるからな」
「兄貴の家が雑なだけだよ」
「盗まれて困るもんもねぇし」
「とりあえず!私は土日しか家出ないから。明日、宜しくね」
今日は土曜日だったはずなので、明日の予定を埋めに来ている。
が、
「明日予定あるんだけど」
そうだ、会議みたいなことをすると言われた。
「そう………じゃあ明日も引き篭るようね………」
しゅんとする麒麟。
「なに、来週行けば良いじゃない」
と、白虎がフォローを入れる。
「?  空けとくけど、出かけることが目標になってないか?」
タカシは何もわかっていないので、困惑した様子を見せる。
本当にわかっていない。
「誘き寄せるのもありかなーって」
何故か汗だくになる麒麟。
「お前、自分の考えくらい突き通せよ」
「うっさいわね!しばくわよ!」
「怖い怖い」
「本当は思ってないでしょーーーー!!!!」



この日は、ズルズルと時間の延長と駄弁を繰り返して夜を迎えてしまった。






「ふぁ〜〜あ」
欠伸。
「昨日は風呂入って寝ちまったんだっけか……」
そう言えば何も食べてない。
腹が鳴る。
「チッ、今日は忙しいのにな………」


ラーメンを啜った後、服にアイロンをかけ、出掛ける準備をする。
「何時からだ?そこまで言ってなかったな………」
とりあえず、早めに行くことには越したことはないと踏み、家を出る。
防衛省までは目と鼻の先。
巨大なマンションがそびえ立っているが、それはタカシの所有物である。
彼はそこの1階、そして1号室に住まうのだが………
家を出る時に金髪の学生とすれ違う。
ついこの間来た留学生だ。
「おはようございます」
流暢な日本語で挨拶する彼女。
「よーっす」
「アイサツくらいちゃんと出来ないんです?」
「…………おはようございます」
面倒になる前に己が非を認める。
「はい、それで良いんですよ。行ってらっしゃい」
「行ってきやす」
寝ぼけているだけで、普段は至って真面目な彼なので近隣住民からは珍妙な目を向けられるが彼女はなかなかに胆力のある人で。
彼の天然な部分を軽く受け流している節がある。
「もう」
ぷりぷりと可愛らしく頬を膨らませる。
あざと可愛いと呼ばれる部類の怒り方だが、心に決めた相手のいる彼には何も支障は無かった。
そんな彼女を後目にそそくさとその場を去ってしまったタカシは暑い暑いと言っている。
「はぁ………ホントにあの人、変わってますねぇ」
そう言って、彼女は家の鍵を開けて明かりのない空間へと吸い込まれて行った。


この防衛省、ブラックなことにシェアハウスのようなシステムが組み込まれている。
テレビ、洗濯機、シャワールーム、キッチン。
「帰らせねぇよ」と言わんばかりの揃い用である。
国に脅され、無理やり出資させられたタカシがグチグチと言っている時があるが、これが原因だ。
「タカシ、来てたのか」
「あ?元木じゃん。休日出勤とかシャレたことしてんな?」
「おい、それは煽ってるのか、苦学生モドキ」
「俺の負け………しかし、よりによって今日なのも、上層部が気合い入れてる証か?」
「なんだ、起きたばかりなのか。最近はシフト制で厳戒態勢って聞いてないのか」
「聞いてねぇよ。なんだよ、その機密情報みたいな事実」
「ニュースにもなってたんだがなぁ………ミニマリストなお前でもテレビくらいはあるだろ」
「動画サイト見るのに使ってるくらいで、地上波とか見ねぇよ」
「あー、そうだった………」
「まぁ良いよ。良いさ。親戚と遊びに行く予定だったけど泣く泣く断ったけれど、それは置いといて」
「泣く?お前が?」
「良いよそれは。煽るための話題提供じゃねぇから」
 「俺も休日出勤に呆れてるんだよ。少しサンドバッグになれ」
数少ない帰宅勢の元木が呆れている。
ここにはベッドが無いので、洗練された社畜戦士くらいしかここで寝泊まりしていない。
「うわー、録音してたら確実に首だったな」
「俺はこの国を信用してるからな」
「あちゃー、揉み消される」
客人まれびとのお前のことだ、歓迎されるだろうよ。俺みたいな人間1人どうなろうと、な」
察しろ、ということだ。だが、そんなことは気にしない。
「俺の友達ってだけで国家予算を遥かに超える価値があると思うぞ」
「お前は顔が広いからそれは嫌味に聞こえるぞ」
元木が苦笑する。
「ハッ、悪名高いのは知ってるさ。それよりも____」


「そろそろだな」
「そろそろ?」
長すぎる駄弁を遮り、正午過ぎ。
「ああ、お前がここに来た目的でもあるだろ」
「あぁ、なるほどな。俺はまだ寝ぼけているらしい」
「どれだけ疲れてたんだ」
「最近、2、3時間くらいしか寝てなかったからな」
頭を搔く。
「この日曜は生命線だった訳だ」
ニヤリ、と元木が笑って言う。
「そうなんだよな。さて、行くぞ」
ブランドのソファから重い腰をあげて、会議室を指さす。


「なんだね、もう来てたのか」
この間の上部の男がこちらを見据える。
「なに?早く来ちゃまずかった?」
イラッときたタカシは、睨む。
「いや、ゆとりの若造が立派だと感心しただけだ」
「あっそう」
興味無さそうに答える。上手く躱されてしまった気分だ。
「今日は大臣も御出でなさる。無礼のないように」
「わかってるさ、アイツは悪い奴じゃないしな」
「アイツ呼ばわりとは、罰当たりな。と言ってる間に来たぞ、備えろ」
男はおもむろにネクタイを締める。
入室してきたのは、男とも女とも見分けのつかない子供。
朱の長髪に、麗しいまつ毛。
どちらかと言うと女性だろうか。
寸胴では無いが、健康的な少年をそのまま縮小した感じだ。
「あれ?また縮んだか、アマちゃん」
「は?縮んでないが?」
「早速無礼をーーーー!!!!天照様、どうか心を乱されないよう………」
今のところ、あたふたしてるのは上部の男だけだ。
冷ややかな雰囲気が会議室を覆う。
十余人の最高役職の人間が凍えている。
そう、彼女こそは天照大御神。
日本神話の最高神とも謳われる存在、かもしれない。
「くろぅう”ぇる」
「その名前はやめろ」
「ならば、先の非礼を詫びよ」
「嫌だね」
「灼かれたいか」
「…………複合神性だったっけ」
「今は、な。何処かの誰かのせいで」
「〜♪」
口笛で誤魔化そうとするが、冷ややかな視線を向けられる。
「………まぁ良い。現人神として降りるのも、蒙昧なこの脳で考えるのも久しい。旧き者として………」
「ポンコツになるけど許せってことだろ?」
「うるさい………んんっ」
咳払い。本当に久しぶりのようだ。
「私はまつろわぬ者を許さぬ。客人の子におわせども、それは変わらぬ」
目を伏せながら、淡々と。
「タカシ、だったか。貴殿も客人。どうか、日の本の神として、人の長として………頼む」
「…………そこまで言わなくとも、やるつもりだ」
「頼む」
「頭を上げろ」
「………頼む」
声が震えている。
「泣くな」
「………………頼む!」
徐々に力強く。
「…………んぁ……チッ………」
平生、嘘泣きできるような奴では無いから信用する他ない。
「軽い気持ちでは無いのはわかってる。あの時から変わってないのもわかる」
ゆっくりと顔を上げる。
その顔はもう、クシャクシャだった。
笑ってて、泣いていた。
「頼むぞ………」
会ってまもなく、泣いてしまうほどに彼女は追い詰められていたのだろう。
そう思うと、少し気の毒だった。


この国は異常だ。
神と人が共存出来ている。
彼らは手を取り合い、人の政治機構に組み込まれている。
しかも、本物の神性が。
それだけ、人に寄り添いたいという気持ちがあるのだろう。


「…………少年」
上部の男が割って入る。
「君には、この国を背負う覚悟はあるのか?」
「……………」
「君に問う」
「うん?」
「正直、我々は君を信用出来ない」
「信じるな、と言ったはずだ」
「それでも、だ。責任の所在を知らないわけではあるまい?」
「勿論」
「ならば、知らないふりをするな」
「あぁ」
「子供のふりを、するな」
「……………あぁ」
「それなら良い。言質はとったからな」
「それでいい。それくらい、真面目でないとな」
タカシは笑う。
「じゃないと、この頑張り屋な神様が報われない」
「大した度胸だ。君になら、今のところは任せられるかもな」
「これ、国家機密だけどな。
コイツ、俺の孫みたいなもんだし」
解れかかっていたその場が、再び凍った。

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