The hater

とある学園の教師

第14話

アジアンタと別れたあと、考えた。
彼女と再会できたことは喜ばしい。
彼女が自分を恨んでいる様子も無かった。
むしろ、以前よりも積極的に関わりを持とうとしている。
彼女は知っていて近づいたのだろう。
だが、そこはどうでもいい。
家族を殺した存在を知っていた。
それが、大きかった。
彼女は博識だ。
ふんわりとした口調の裏には何処か核心を突いたような、そんな強みがある。
そんなことを考えていたが、議会が近づいている。
不安も混じっていたが、退廃的な機関だと侮っている節があるので気にとめていない。
だから、アジアンタのことに思考を集中させる。


別れ際、彼女はこんなことを言っていた。
『大丈夫、貴方の願いは叶う。報われるんだよ』


あの時はただ「ありがとう」と答えたが、正直踏み込んで欲しくない領域だった。
あれは、自分の汚点で。
あまりにも、他人が抱えるには重すぎる。
「1人で乗り越えるべきものなのに、な…………」
出会いがあった。
長い永い時を経て。
「なぁ、あんたはどうなんだ。親父」
返事は無い。
もう暫く前から、意思疎通が出来なくなった。
いつの間にか、聴こえなくなっていた。
「俺は………」
わからない。
何をしたいのか。
わからない。
何をすべきなのか。
わからない。
何が自分にとっての幸せなのか。
家族を取り戻すこと?
目処もない。
このまま彼女と結ばれること?
それでは妹達が報われない。
「何が、何が正解なんだよ…………」
そんなことを呟く。


「おっ、タカシじゃん」
そんな声が聞こえた。女だ。
「本当だ、久しぶりに見た」
続いて男の声が聞こえる。
「………?」
一瞬考えが纏まらず困惑する。
そうだ、思い出した。
「麒麟、白虎」
四聖獣の名を冠する5人・・
その中の、双子。
数ヶ月ぶりに出会う。
最近はこの街にずっと引き篭っていた。
「こんなとこまで何しに来たんだ、兄貴」
タカシを兄貴と呼び慕う少年、白虎。
確かに今の境遇から見ればタカシの方が1つ年上、という状況だが。
事情を知っている彼らは敢えて彼を年上として扱っている。
「いや、たまたま寄っただけだ。こっちは大分都市化が進んでるみたいでな。暫く来てなかったし、見てみようかと」
言い訳をつらつらと並べてみる。
麒麟にアジアンタのことを知られたらどつかれるだろうと考えたからだ。
「お前らこそ、2人だけとは珍しいな」
そう言うと、気まずそうに麒麟が頬を搔く。
「デートか?」
からかってみる。
「違う違う」
苦笑いで白虎が答える。
思ったよりも反応が薄い。
「麒麟が話があるって言ってたから。他の3人は玄武についていったよ」
「そっか。邪魔したな」
「待った」
立ち去ろうとしたタカシを麒麟が引き止める。
「ちょうどいい所に来てくれた訳だし、あんたも聞きなさいよ」
「人に頼む時はそうしろって言われたのか?」
「そういう時だけ人間ぶるのやめなさいよ。悪い癖ね」
「けっ…………で?何処で話すってんだ」
バツが悪そうに舌打ちをする。
「あら、いい場所があるじゃない」
「あぁ、そうだな」
麒麟がキメ顔でそう言って、白虎が笑顔で同調した。

  




やってきたのはカラオケボックス。
「んで、話って?」
タカシが前のめりになって指を組む。
その顔は少し面倒臭そうで。
「実は、最近尾けられてる気がするのよね………」
「気がする………?気配を感じるとか、そういう?」
白虎が疑問符を浮かべる。
「そう、あくまで気がするのよ」
「統合失調症では?」
「私がそんなの抱える性分だと思ってる?」
「馬鹿だし、無いか」
「最初のは余計ね」
麒麟が腕をまくり身を乗り出す。
「そういうところでは?」
タカシが煽っていく。
「ふん、まぁ百歩譲って私が精神疾患を持つなんて有り得ないのよ」
「繊細なくせにな」
「うっさいわね」
「へいへい」
「で、どうしろと」
白虎が話題を展開しようとする。
「決まってるでしょう」
『?』
「待ち伏せして、とっ捕まえるのよ」
「やっぱ馬鹿だコイツ」








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