The hater
第12話
私はね、ずっと耐えてきた。
この体が穢されようと、
この艱難辛苦で報われなくても、
ずっと貴方を思って頑張り続けた。
そんな私を見てヴァンクは、
「おお意思固き処女よ。君に授けた力は、本当に救いをもたらすのか?」
と、哀れんだ。
だから、
「うん、だってね。だってね、クローヴェルは私を好きで居てくれたんだ。例え彼が私を殺したと苦しんでいても、ずっと寄り添い続けたいんだ」
って。
健気だね、私。
でもね、悲劇のヒロイン振ってるだけじゃ駄目なの。
頑張らなくちゃって思った。
「助けて」
って言いたかったけど、助けてくれる人なんて居なかったから。
みんな、私の髪を見て逃げてくからね。
鮮血に染った乙女。
まるで、エリザベートのように。
疎まれたよ。
だけど耐えた。
私には貴方が居たからね。
耐えられたんだ。
貴方を思って、想って、懐った。
だから、笑って、嗤って、哂って。
咲ったよ。
アジアンタムが。
天使としての私が。
目覚めた。
本来の姿に。
私はね、天使だったの。
貴方が生まれるずっと前から、あの世界を治める存在として君臨していたの。
だけど、天と大地が私を殺した。
彼らは人間達を恨んでいたからね。
私は人間を愛していたから、真っ先に殺された。
私の歌を聞くことも無く、淡々と八つ裂きにした。
そして、私は人間に堕ちた。
ねぇクローヴェル。
貴方を苦しめた存在の名前なのよ。
ねえ、復讐しないの?
復讐しようよ。
私達が一緒なら、彼らを殺せる。
前のめりになって熱弁するアジアンタ。
「知ってるよ」 
クローヴェルは、ぽつりと答えた。
周りがこちらを見ている。
「大地と天………神話に出てくる奴らだよな」
「うん、私の敵」
「ああ、俺の敵でもある」
「ふふっ、2人の敵だね」
「笑い事じゃないんだけどなぁ………」
「でも、嬉しいよ」
「え?」
クローヴェルは表情を固めた。
「私達を苦しめた奴らを、私達が懲らしめる。
これって幸せなことじゃない?」
微笑んでいる彼女の言葉が、重い。
圧を感じる。
「いや、あのな………」 
「うん?」
「アイツらを倒したいと言うのなら止めておけ」
耳打ちをする。
「お前には昔程の生気を感じないし、俺もあまり本調子じゃない」
続ける。
「今じゃ無理だ。もっと、長い時を掛けて、アイツらの力を奪い取る」
「でも、私達には時間が無いんだよ」
真剣な眼差しで彼を見る。
「ああ?」
「貴方の復讐心は、諦めと共に摩耗している。これって、死活問題じゃない?」
「…………そうか、お前にはそう見えるか」
「……うん」
「うわぁ…………駄目だなぁ、俺。この程度の決心であの呪いを引き受けたんじゃねぇんだよな」
「呪い、か………」
「うん?」
「あれはね、私からのプレゼントだったんだよ?友人であるゼルスへの、餞別のつもりだったの」
「ゼルス………随分と懐かしい名前だな」
「そうだね、彼、元気にしてる?」
「してると思うよ、何年も声も聞いてないけど」
「ふーん……天国にも居ないし、何してるんだろうね?」
「さぁな………」
「何か知ってるんじゃないの?」
「知らないな」
「へー………」
頬杖をつき、ニヤつくアジアンタ。
「まあ、天と大地の件に関しては知ってたけど、お前が天使だったのは驚きだよ」
「もう少し表情に出しても良いんじゃない?」
「なに、もう既に枯れてる身だ。仕方ないとは思うがね」
「考え方は変わらないけど、言葉遣いは老けたねぇ………」
「そうか?」
「そうだよ。ふふっ」
「お前はよく笑うようになったな」
「そりゃそうだよ、病弱なのは嘘だもんね」
「はぁ?」
「ひ弱な天使とか聞いた事ないでしょうに」
「確かにな………」
「元気だよ、元気。筋肉もついてきたし」
「筋トレにはまってるのか?」
「うん、強くなりたいしね。私、力天使だしね」
「嘘つけ」
「ふふ、嘘。本当は天使長よりも偉いよ」
「サンダルフォンとか?」
「うんうん、そうそう」
「名前とかあるの?」
「あるよ!えーと、確かね………そうだ、ヴァルキエル」
「ヴァルキエルゥ?なんか強そうな名前だな」
「えへへ………実は7億8000通りの名前があります………」
「ぶふーーーーーーっっっ!!!」
口に含んだコーヒーを吹き出す。
「いや、人のこと笑えねぇけど、流石に変え過ぎだろ」
「そうだねぇ………飽きっぽいから」
「それでも、だ」
「気に入る名前が無かったんだ。ディーヴァも、アジアンタも」
「じゃあ、俺が名付けようか」
「え?」
「テスク、とかウォラミーとか」
「うーん…………」 
「じゃあ、ワーフェア」
「急に物騒だね」
「えー、トリュオーンは?」
「いかつい」
「はぁ………じゃあタルミフ」
「無理してつけなくていいよ?」
「あ?良いんだよ、有難く受け取っとけ」
「そういう自己中心的なところは変わらないね」
「変わっちゃいけないからな。ヌミフェ」
「微妙」
「オルフィー」
「良いね」
「あ?マジで?」
「カッコ可愛いじゃん?」
「そうだなぁ、少し弄ってオルフィムトラとかな」
「良いね!」
「次は苗字だな…………」
「そうだね」
「どうしようか………」
「クローヴェルは苗字何?」
「本名?今の名前?」
「今の名前は知ってるよ、本名。忘れちゃった」
「はぁ?………クローヴェル・デウスァート」
「じゃあオルフィムトラ・デウスァートだね!」
「なんで?」
「なんでって、卒業した後のことも考えなきゃ」
「ふむ?」
「卒業したら、結婚しよ。クローヴェル」
「うぇ?」
口からコーヒーを零して、彼は叫んだ。
「えええええええええええええ!?!?!?!?」
この体が穢されようと、
この艱難辛苦で報われなくても、
ずっと貴方を思って頑張り続けた。
そんな私を見てヴァンクは、
「おお意思固き処女よ。君に授けた力は、本当に救いをもたらすのか?」
と、哀れんだ。
だから、
「うん、だってね。だってね、クローヴェルは私を好きで居てくれたんだ。例え彼が私を殺したと苦しんでいても、ずっと寄り添い続けたいんだ」
って。
健気だね、私。
でもね、悲劇のヒロイン振ってるだけじゃ駄目なの。
頑張らなくちゃって思った。
「助けて」
って言いたかったけど、助けてくれる人なんて居なかったから。
みんな、私の髪を見て逃げてくからね。
鮮血に染った乙女。
まるで、エリザベートのように。
疎まれたよ。
だけど耐えた。
私には貴方が居たからね。
耐えられたんだ。
貴方を思って、想って、懐った。
だから、笑って、嗤って、哂って。
咲ったよ。
アジアンタムが。
天使としての私が。
目覚めた。
本来の姿に。
私はね、天使だったの。
貴方が生まれるずっと前から、あの世界を治める存在として君臨していたの。
だけど、天と大地が私を殺した。
彼らは人間達を恨んでいたからね。
私は人間を愛していたから、真っ先に殺された。
私の歌を聞くことも無く、淡々と八つ裂きにした。
そして、私は人間に堕ちた。
ねぇクローヴェル。
貴方を苦しめた存在の名前なのよ。
ねえ、復讐しないの?
復讐しようよ。
私達が一緒なら、彼らを殺せる。
前のめりになって熱弁するアジアンタ。
「知ってるよ」 
クローヴェルは、ぽつりと答えた。
周りがこちらを見ている。
「大地と天………神話に出てくる奴らだよな」
「うん、私の敵」
「ああ、俺の敵でもある」
「ふふっ、2人の敵だね」
「笑い事じゃないんだけどなぁ………」
「でも、嬉しいよ」
「え?」
クローヴェルは表情を固めた。
「私達を苦しめた奴らを、私達が懲らしめる。
これって幸せなことじゃない?」
微笑んでいる彼女の言葉が、重い。
圧を感じる。
「いや、あのな………」 
「うん?」
「アイツらを倒したいと言うのなら止めておけ」
耳打ちをする。
「お前には昔程の生気を感じないし、俺もあまり本調子じゃない」
続ける。
「今じゃ無理だ。もっと、長い時を掛けて、アイツらの力を奪い取る」
「でも、私達には時間が無いんだよ」
真剣な眼差しで彼を見る。
「ああ?」
「貴方の復讐心は、諦めと共に摩耗している。これって、死活問題じゃない?」
「…………そうか、お前にはそう見えるか」
「……うん」
「うわぁ…………駄目だなぁ、俺。この程度の決心であの呪いを引き受けたんじゃねぇんだよな」
「呪い、か………」
「うん?」
「あれはね、私からのプレゼントだったんだよ?友人であるゼルスへの、餞別のつもりだったの」
「ゼルス………随分と懐かしい名前だな」
「そうだね、彼、元気にしてる?」
「してると思うよ、何年も声も聞いてないけど」
「ふーん……天国にも居ないし、何してるんだろうね?」
「さぁな………」
「何か知ってるんじゃないの?」
「知らないな」
「へー………」
頬杖をつき、ニヤつくアジアンタ。
「まあ、天と大地の件に関しては知ってたけど、お前が天使だったのは驚きだよ」
「もう少し表情に出しても良いんじゃない?」
「なに、もう既に枯れてる身だ。仕方ないとは思うがね」
「考え方は変わらないけど、言葉遣いは老けたねぇ………」
「そうか?」
「そうだよ。ふふっ」
「お前はよく笑うようになったな」
「そりゃそうだよ、病弱なのは嘘だもんね」
「はぁ?」
「ひ弱な天使とか聞いた事ないでしょうに」
「確かにな………」
「元気だよ、元気。筋肉もついてきたし」
「筋トレにはまってるのか?」
「うん、強くなりたいしね。私、力天使だしね」
「嘘つけ」
「ふふ、嘘。本当は天使長よりも偉いよ」
「サンダルフォンとか?」
「うんうん、そうそう」
「名前とかあるの?」
「あるよ!えーと、確かね………そうだ、ヴァルキエル」
「ヴァルキエルゥ?なんか強そうな名前だな」
「えへへ………実は7億8000通りの名前があります………」
「ぶふーーーーーーっっっ!!!」
口に含んだコーヒーを吹き出す。
「いや、人のこと笑えねぇけど、流石に変え過ぎだろ」
「そうだねぇ………飽きっぽいから」
「それでも、だ」
「気に入る名前が無かったんだ。ディーヴァも、アジアンタも」
「じゃあ、俺が名付けようか」
「え?」
「テスク、とかウォラミーとか」
「うーん…………」 
「じゃあ、ワーフェア」
「急に物騒だね」
「えー、トリュオーンは?」
「いかつい」
「はぁ………じゃあタルミフ」
「無理してつけなくていいよ?」
「あ?良いんだよ、有難く受け取っとけ」
「そういう自己中心的なところは変わらないね」
「変わっちゃいけないからな。ヌミフェ」
「微妙」
「オルフィー」
「良いね」
「あ?マジで?」
「カッコ可愛いじゃん?」
「そうだなぁ、少し弄ってオルフィムトラとかな」
「良いね!」
「次は苗字だな…………」
「そうだね」
「どうしようか………」
「クローヴェルは苗字何?」
「本名?今の名前?」
「今の名前は知ってるよ、本名。忘れちゃった」
「はぁ?………クローヴェル・デウスァート」
「じゃあオルフィムトラ・デウスァートだね!」
「なんで?」
「なんでって、卒業した後のことも考えなきゃ」
「ふむ?」
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