The hater

とある学園の教師

第6話

『元木君。あの流体物質をどうするつもりだね』
「解析によると、あの内部の液体の100%が致死性の毒素です。ある程度の耐久を持つ皮を持っていますが、時限爆弾のように破裂してもおかしくありません」
防衛省の幹部や重鎮達の緊急会議が行われていた。
元木は勿論、タカシも出席している。
「まさに聖書通りのニガヨモギだな」
タカシが同調する。
『あれをどうするつもりだね?蒸発と言っても、一筋縄では行かないだろう』
「そうなんだけどな、それ以外の方法でやるにはリスクが大きいんだ」
『ふむ………君には空間を操る力は無いのか?宇宙空間に引き摺り込めれば後は………』
『それは有りだ。蒸発よりはマシだろうな』
『あの虫共を殲滅したんだ。無理では無いだろう』
下卑た笑みを浮かべる老人達。
タカシは黙り込む。
「あまり虐めないでやってください。此奴も人間です。限界はありますよ」
元木が庇う。
「良いんだ。別に出来ないことは無いし。だがな、一つだけ覚えておけ」
画面を睨みつける。
「俺はお前達の所有物じゃねぇんだよ。本当ならガキのお飯事に付き合ってる余裕なんて無いんだ」
『ガキだと………!?老いる事も出来ず、家族を見殺しにした腰抜けの人でなしが何を言う!』
「じゃあてめぇらは知ってるのか?家族を失う恐ろしさを。何度も繰り返す死を?」
『ぐっ………だが!そんなの眉唾かもしれないじゃないか!君の記憶が間違っているとは考えないのかね!』
「信じなくていい。理解してもらおうとも思ってないしな。何より、わかられた方がむしろ都合が悪い」
『お前は否定されるのが、怖いのか』
「そうかもなぁ………こんなの大したことないって言われるのに怯えているのかもしれない」
『素直なもんだ。そういう時は強がるのが人間なのだがね』
「知らねぇよ。そんで、方針は宇宙に転移させるのでいいのか元木」
「そうだな。それで良いと思う」
「決まりだな、じゃあなクソ共」
通信を強制的に切る。電源ごと落として。






「仕事少ないぞ。良かったな給料泥棒達」
「酷い言い様だ。お前らしい」
彼の皮肉を元木が笑う。
「少し八つ当たりしたい気分なんだよ」
「はは、可哀想なものだ」
元木は若い。三十路近い年齢だが、相応の純粋さが無い。
滅多に笑わない彼が笑うのは、タカシからしても珍しいものだった。
「お前らの仕事はあの球体を追放できる宇宙空間を探すことだ。簡単だろ?出来るだけ、環境に影響が出ない場所を選ぶんだ。俺はあいつを転移させる方法を探す」
「探すって………転移の方法は幾つあるんです?」
「それを絞るんだよ。お前らは探せばいい。その後は俺に任せろ」
「わ、わかりました」
「タカシ」
元木が話し掛ける。
「どうした。ブルったか?」
「本当はお前の方が緊張しているんだろう?」
タカシの耳元で囁く。
「お前はアレに対して有効手段は持つが使えない。そう言ったな」
「あぁ、正直言って宛は無い。今考えてるのだって、ヤケクソの手段だ」
「ふぅむ………お前は好きにやるといい。お前に人権は無いが、同時に法律も通用しない。誰もお前を人間だと思ってないんだ」
耳から離れ、小声で話す。
「わかってる。俺の素性を知ったら誰もがそう思うだろう。だから、隠している。それだけの話なんだ」
「良いのか、それで」
「良いんだよ。これで」
「そうか。じゃあ、頑張るといい」
「おう、お前もあまり気を張るなよ」
「わかってるよ」
元木が苦笑いで答える。







十分が経った。
「それで、どうやってアレを追い出すんだ」
「座標を書き換える」
「それはどうやるんだ」
「まずこの星の空間座標をリンクする。その材料を揃えて。そしたら、座標の限界値以上を割り出す為の演算をして欲しい。俺は空間転移の力を使う為に全力を注ぐ」
「わかった。もし、これが失敗したら………」
「空間転移するには俺がアレを常に触れている必要がある。多分、俺だけが宇宙に放り込まれて終わりだろうな」
「リスクの大きさは妥当、ということか。お前はそれでもやるのか?」
「やるさ。俺は不死身だぜ、心配は要らない」
そう言って、彼は退室した。

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