The hater

とある学園の教師

第2話

何も無い日々。
刺激が無い。
ゲームして、恋人と遊んで、周りにチヤホヤされて。
自分の過去と何ら変わりのない無意味な生活。
タカシにはつまらなく思えたし、特に不満もない日常である。
今、色々な人から助けて貰っている。
それだけで充分だった。
自分にとってはそれで満足していた。
ただ、後悔を残して。



彼の過去を知る者が居ないということは、それは彼にとって孤独を表す。
不老不死というのは、そういうことだ。
誰かを見送らねばならない。
仲間を、家族を、恋人を。
家族は既に死んでいたが。
そして彼に恋人は居なかった。
失ったものは、仲間だ。
殺された家族を取り戻す為に見殺しにした仲間。
至極当然な犠牲。
魔女堕ちしてもおかしくない程の被害を背負った哀れな人々だった。



もはや、不老不死の彼に置いてかれる生命全てが、彼に憎しみを抱く権利を持っている、ということ。
彼が自覚したのは、自身に芽生えた感情から生まれた悪魔に言われたから。
それまでは、全く思うことは無かった。
無くなったことにならない。
己の記憶に残る限り、それは消えない。


そう、彼は憎む者ではなく。
憎まれる側の人間だったのだ。



「ゲーセン行こうぜ!」
「この間彼氏とデート行ってさ〜」
「こないだ来た先生かっこいいよね〜」
そんな声が聞こえる。
あぁ、アジアンタと話したい。
そんな衝動に駆られる。
遠目から見守っている。ストーカー紛いのことをする程に、彼は彼女に執心していた。
透き通る肌と桃色の髪を撫でたい。その華奢な体を抱きしめたい。
劣情を抱く。
ここまで、狂いそうなことはあったか。
やはり、彼女は彼女に似ている。
昔遊んだ友人に。
ディーヴァに。






「私ね、お嫁さんになりたいんだ」
「へー、誰の」
「ひみつ」
「ふーん」
「もー、反応薄いー」
今思えば、かなり臆病チキンだったと思う。
自分ではないだろうという諦念と、自分だったらどうしようという迷いがあった。
残念ながら、彼女の願いは届かなかった。
だけど、アジアンタが現れて。
彼女は彼女に似ている、というのはそういう事だ。
初めて会ったはずなのに、他人の空似どころではない。
似すぎだ。
本人と見紛う程に。
だから、彼女を好いた。過去の女に似ているだけで。
彼にとっては、理由として充分だったのだろう。


しかし、意外なことが起きた。
アジアンタの方から告白してきたのだ。
彼は拍子抜けした。
当たり前だ。
まさか、自分のことを大して知らない人間がいきなり告白してくるとは思わないだろう。
人気はあるが、近寄り難い人間だった筈だ。
怖がられているという認識であると思っている。
だが、彼女はそうじゃなかった。
流暢な日本語で、彼に告白した。
返事は、肯定。
凄まじい幸運でしかなかった。
嬉しいと思った。
だけど、悲しいとも思った。
だって、彼にとって彼女と付き合うことは友人を捨てることにもなるのだから。
だけど、そんなことは失念していて。
彼は、快く彼女を受け入れてしまった。





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