The hater
■■■の場合
私の知人について話そうと思う。
憧憬の人だ。
友人であり、恩人である人の事。
私は幼い頃から体が弱かった。
窓から級友を眺めては、本を読んで時間を潰す。
動けないことは慣れていたが、疎外感から精神を病んでいた。
遊びたいな、走りたいな。
そう思っても、叶わないのだから非情なものだ。
体がボロボロで、何も出来ない。
周りから特別視され、常に優しく扱われてきた。
だけど、そんな私にも大事な人が出来た。
大男で、私とは真逆だった。
体格は勿論だけど、性別、性格、その他の殆どが違った。
言葉は汚いけれど、裏には優しい心を持っているのを知っている。
強そうで好きだなぁ、って思った。
ガシガシと髪を掻き乱す彼の笑みは、私には眩しく思えた。
痛かったけど、嬉しかった。
触れてくれる人は居なかったから。
みんな、私を割れ物みたいに扱っていたから。
学校が終わったあとはおんぶして、街で遊んでくれた。
誕生日にはアクセサリーもくれた。
彼の前でだけ、お洒落して綺麗になろうとして。
でも、ありのままの自分の方が良いって言って。
少し拗ねて、でも嬉しかった。
街で知らない人に遊びを誘われた時も、怖がってた私を庇ってくれた。
友達として、私を守ってくれた。
下心も無くて、澄み切った心で接してくれた。
私は、そんな彼に恋したんだと思う。
だけど、時間はそれを許さなかった。
魔素が溢れた。
それも大量に。
意識が遠のきそうだった。
魔素っていうのは、人の血液に流れるヘモグロビンみたいなものなんだ。
昔からそれが、体から溢れようとしていた。
だから定期的に血を吐いて魔素を逃がして。
大量に吐いて、パニックになって。
そんな時に、彼は背中を摩ってくれた。
でもね、そうしてくれたのに、私は。
彼の目の前で。
血に塗れて。
胸がズキズキした。
悲しいのと、痛いのと。
両方だった。
泣くことも出来ない。
話すことも出来ない。
鼻水を垂らして。汚かっただろうに、私を抱きしめてくれた。
声にならない声で、「好きだよ」って言ったら笑ってくれた。
嬉しかったよ。
好きな人に好きって伝えられただけ良かったのかな。
死んじゃうんだ。
そう思った。
そしたらね。
彼は、私に口付けをしてくれた。
初めてのチューだった。
口から、苦いのを流し込まれた。
何度も味わったから知ってる。
これは血だ。彼の。
どうしてかわからなかったけど、彼は私に血を注いだ。
そしたら、胸の痛みも治まって。
彼は「ごめんな……ごめんな……」ってずっと謝ってる。
どうして、って聞いた。
お前は不老不死になったんだ、って。
ぽかーんとしちゃった。
ほぇ?
冗談やめてよって笑った。
でも、真剣な顔で私を見るの。
嘘じゃないんだってさ。
なんでも、血を操る力を持ってるんだって。
それで、私の体を治した。
そういうことらしい。
彼は、不老不死じゃなかった。
自分自身にはその力が使えなかったって。
なにそれ。
私はお墓の前で立っていた。
彼の。
綺麗なままで居るのに、どうして見てくれないの。
あぁ、願わくば。
私に死が訪れますように。
憧憬の人だ。
友人であり、恩人である人の事。
私は幼い頃から体が弱かった。
窓から級友を眺めては、本を読んで時間を潰す。
動けないことは慣れていたが、疎外感から精神を病んでいた。
遊びたいな、走りたいな。
そう思っても、叶わないのだから非情なものだ。
体がボロボロで、何も出来ない。
周りから特別視され、常に優しく扱われてきた。
だけど、そんな私にも大事な人が出来た。
大男で、私とは真逆だった。
体格は勿論だけど、性別、性格、その他の殆どが違った。
言葉は汚いけれど、裏には優しい心を持っているのを知っている。
強そうで好きだなぁ、って思った。
ガシガシと髪を掻き乱す彼の笑みは、私には眩しく思えた。
痛かったけど、嬉しかった。
触れてくれる人は居なかったから。
みんな、私を割れ物みたいに扱っていたから。
学校が終わったあとはおんぶして、街で遊んでくれた。
誕生日にはアクセサリーもくれた。
彼の前でだけ、お洒落して綺麗になろうとして。
でも、ありのままの自分の方が良いって言って。
少し拗ねて、でも嬉しかった。
街で知らない人に遊びを誘われた時も、怖がってた私を庇ってくれた。
友達として、私を守ってくれた。
下心も無くて、澄み切った心で接してくれた。
私は、そんな彼に恋したんだと思う。
だけど、時間はそれを許さなかった。
魔素が溢れた。
それも大量に。
意識が遠のきそうだった。
魔素っていうのは、人の血液に流れるヘモグロビンみたいなものなんだ。
昔からそれが、体から溢れようとしていた。
だから定期的に血を吐いて魔素を逃がして。
大量に吐いて、パニックになって。
そんな時に、彼は背中を摩ってくれた。
でもね、そうしてくれたのに、私は。
彼の目の前で。
血に塗れて。
胸がズキズキした。
悲しいのと、痛いのと。
両方だった。
泣くことも出来ない。
話すことも出来ない。
鼻水を垂らして。汚かっただろうに、私を抱きしめてくれた。
声にならない声で、「好きだよ」って言ったら笑ってくれた。
嬉しかったよ。
好きな人に好きって伝えられただけ良かったのかな。
死んじゃうんだ。
そう思った。
そしたらね。
彼は、私に口付けをしてくれた。
初めてのチューだった。
口から、苦いのを流し込まれた。
何度も味わったから知ってる。
これは血だ。彼の。
どうしてかわからなかったけど、彼は私に血を注いだ。
そしたら、胸の痛みも治まって。
彼は「ごめんな……ごめんな……」ってずっと謝ってる。
どうして、って聞いた。
お前は不老不死になったんだ、って。
ぽかーんとしちゃった。
ほぇ?
冗談やめてよって笑った。
でも、真剣な顔で私を見るの。
嘘じゃないんだってさ。
なんでも、血を操る力を持ってるんだって。
それで、私の体を治した。
そういうことらしい。
彼は、不老不死じゃなかった。
自分自身にはその力が使えなかったって。
なにそれ。
私はお墓の前で立っていた。
彼の。
綺麗なままで居るのに、どうして見てくれないの。
あぁ、願わくば。
私に死が訪れますように。
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