The hater

とある学園の教師

第1話

結局のところ、過去の話は関係ない。
クローヴェルにとって、もはやどうしようも無いものだった。
死者の蘇生も出来なければ、他人をどうこうできる程の勇気も胆力も無いから。
不老不死だとしても、再生は常人と変わらない。
というより、出来なくなった。
超再生が機能しなくなって、下手な怪我をすれば機能不全になりかねないのだ。
だから、彼はより臆病になって、弱くなっていった。

時は現代。
クローヴェルの生きた時代、そして世界から長過ぎる時が過ぎていた。






目覚める。
学校の時間だ。
飯を食い、制服に着替え、荷物を持って出発する。


到着して、クラスメイトに挨拶をする。
いつも通りの行動。
彼の日常。
空三門そらみかどタカシとして生きるクローヴェルは、国の支援を受けて生活していた。
第二次世界大戦では、三国協商につき、アメリカからの要請で日本へと移住した。
核兵器と同等の存在であり、『生きる抑止力』とまで言われた程だ。
「おはよう、タカシ」
アジアンタが話しかける。
交換留学生であり、タカシの恋人。
桃髪の麗人。
告白は彼女からだった。
一目惚れだったらしい。
有り得ないとは思いつつも、了承したのだから軽い。
「おう、おはよう」
笑顔で返す。
硬いものだったが、及第点であるだろう。



授業を終える。
休み時間が来る。
アジアンタと話す。
その繰り返し。
自分の出生の話。
彼女の過去のこと。
話すことは尽きない。


この日常は、彼にとって楽しいと思うものだった。







あれから、何も取り戻せないままやり直し続けた。
苦痛を感じては挫折した。
悲しみを通して憎しみは肥大した。
悪態を吐きながら、何度でもやり直した。
だが時は流れて、様々な世界を転々として地球へと辿り着いた。
流転を繰り返す。
その度に退去する。
星の始終という流行に圧死されないように。
慎重に歩み続けてきた。
世界の終わる間際に、自分の記憶をパッチとして仕込ませては、新しい世界の訪れを待つ。






「タカシ」
「ん?」
「今日も、遊ぼうね」
アジアンタが微笑んで言う。
「おう。どこに行く」
「うーんとね、映画!」
「またか?どうせ同じのだろ」
「むー。名作は何度見ても面白いのです!」
「そりゃ同感だ。金は足りるのか?」
「うん?足りるよ?バイトで稼いでるからね。えっへん」
無い胸を張る。
その様相も愛おしく感じる。
守りたいと思う。
有り得ないと思っていた感情を湧かせてくれた彼女に、彼は感謝している。



「あー楽しかった!」
「何回見てもあのシーンは理解できない………」
「だよね、家族を殺してハッピーエンドなんて胸糞悪いというか………」
「はは、口が悪いぞ」
「でも、実際そうなんだもん」
「確かにそう思わないこともないがな。お前に同感だ」
「うんうん!」
嬉しそうだった。こんな反応をしてくれる人なんて居なかったから。
彼にとっては新鮮なものだった。
「お前って、バッドエンド好きだもんな」
「えへへ」
ならば、自分の過去を語ったらどんな反応をするのだろうか。
信じて泣きじゃくるか。
否定して笑うか。
面白い、と歪んでしまう。
でも、少なくとも、クローヴェルにその勇気は無かった。


いつか話そう。
その気持ちを心に留めて、恋人と共に夜道を歩く。



あぁ、願わくば。
この平穏が続きますように。
二度と、失いませんように。

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