The hater

とある学園の教師

ローゼンの場合

ローゼンという少女がいる。
クローヴェルの姉であり、常に共に居た存在。
黒く伸びた髪はまっすぐで、とても綺麗だった。
弟の事を溺愛し、ずっと従ってきた。
酷く過保護で、甘やかして。
残念な美人、という印象。
他人には厳しく、優男も寄せ付けない。
その反動が、ブラコンというわけだ。
黒い薔薇だ。
永遠の愛の象徴のような。
クローヴェルのそれとは違う。
あちらは憎悪で、こちらは終わらない愛情。
真逆。
そう、違うのだ。
彼女はクローヴェルと対を成す。
姉と弟。薔薇と白詰草。愛と復讐。
真逆の存在でありながら、家族として彼を愛している。



双子の姉妹が生まれた時、彼女達を溺愛するクローヴェルに絶望した。
自分の愛を受け入れてくれた人間が、他人を愛している。
それは、彼女にとって辛いものだ。
凄まじい嫉妬に駆られ、彼女は怒った。
憎悪ではない、純粋な憤怒。


やがて、彼女は魔女堕ちした。


クローヴェルが高等学校に入学した時には、既にローゼンの姿は誰も知れず。
弟は酷く憂え、妹達は歓喜した。
そして、4月の31日。
あの日だ。
彼女はふらり、と現れた。
不意に。
酷く痩せて、頬は骨の浮き彫りのようだった。
死期の近い人間が、似たような姿をしている。
まるで、呪われている。
助けを乞うような瞳で、弟を見つめる。
書き残しがあった。


私は不死。遍くを弾く。


そう言った。
自分は死なないという。
人間では無いという。
弟は問うた。


では何だ。何者だと言うのだ。



そう言った瞬間に誰かが彼等を襲った。
姉も。物音に呼ばれて入ってきた妹達も。
みな、バラバラにされた。
無惨に切り裂かれ、肉体が解離する。
痛みを感じる間も無く、命を刈り取る。
多分、姉を襲う為のものだったのだろう。
しかし、彼等は巻き込まれた。
残酷な偶然が、地獄を生み出した。


答えは、クローヴェルが無限とも呼べる時間を終えた時に返ってきた。


私は魔女であり、神の子。
偉大なるガイアの娘。


ガイア。今で言うギリシャ神話の大地母神。
根源とも呼べるケイオスから生まれた神。
その娘。
恐らく、愛の神エロース。
薔薇の花言葉と同じものを司る神。
だが、今の彼女からはそのような神気は感じられない。
苦痛と悲しみに歪んだ顔は、嘆きに見える。
コキュートスに堕ちたように。


お前が神だと言うのなら俺は何だ。


弟は問うた。


貴方は偉大なる天帝。ケイオスそのものだ。


彼女は真剣だった。
弟は信じた。
本当でないのなら妄言であり、そうなら驚異だ。
正直、半信半疑ではあるが。
やや信じている寄りのものだ。


弟よ。貴方に力を貸したのは本来、ケイオスであるべきものだった悪魔だ。
貴方であり、貴方ではない。
重なった存在だ。
脆弱で、堅牢な肉体は全てを溶かす。
使い方は間違えないように。

と言う。


もう遅い。
俺は既に死ねない。


弟が答う。


いや、死ねる。私の手なら。
溶けてしまった無辜のオルトルーゼ達の為に、死ね。


そう言って、彼女は弟の首をへし折った。


種明かし。
弟は不老不死ではなく、不老だった。
老いることは無い。
生命力が常に臨界状態にあるから、成長は止まっても老化が始まらない。
だから、姉は生命力をゼロにする魔術を学ぶ為に身を隠した。
会得した彼女は、再び姿を現し弟を殺す為の刃となった。


ただ、それだけである。







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