界外の契約者(コール)

鬼怒川 ますず

5話 reason@神格者

これは重要なことなのだが、界外術によってこの世界に界外された神には、みなある欠点を抱えている。

それは出力だ。

元々、才能があって神を界外できる素質がある界外術師。
だが、それだけの話だ。

界外術師が自分たちより巨大な力を持っている神を召喚するのだ。ただ神本体も界外するのに必死な人間が、神が本来持つ巨大な力すらも界外させるほどの力を有しているわけもない。

つまり、全部の界外術師のほとんどが界外させる神の出力は、本来の力から70%引いた約30%の出力しかない。
そのためか、前述で書いた邪神を界外させたカルト教団のような輩が過去に複数いたが、
その時代の地元軍隊に鎮圧され、倒せるほどに神が弱体化されていることがほとんどだ。

しかし、そんな界外で弱体化した神の出力を元の100%まで引き出せる存在がいる。

それが神宮寺孝作だ。

正確には彼が保有する『神格者』と言う体質だ。
界外した神が直接その『神格者』に憑依することによって、初めて100%の出力を発揮することができる。

何とも素晴らしい体質だと思うが、そこまで良いものではない。
事実、神宮寺は嫌そうな顔でアリアを見ている。

「……なぁ、アリア。俺がその憑依が大っ嫌いなの知ってるんだよな」
「えぇ、だから?」

当たり前といった顔で神宮寺に答えるアリア。
神宮寺はそんなアリアに深くため息をついて。

「俺は嫌だね」

拒否する。
いつもおちゃらけている男が
今回ばかりは神宮寺はふざけていない。

「お前はいっつも自分じゃ出来ないことを人に頼らずに俺に頼む。しかも俺自身はこの体質が大嫌いなんだよ」
「えぇ、それを知っていてまた頼んでるの」

不機嫌そうな神宮寺の顔に、アリアは一枚の紙を突きつける。

「これはなんだと思う?分かってるんなら声に出してみなさい」

神宮寺は嫌々そうにその紙、新聞のある一面を目に通して声を出して読み上げる。

「『不良少年グループのメンバーたちが相次いで病院に搬送。5日で被害者数およそ400名。喧嘩か仲間割れか?』………」


この事件は神宮寺も知っている。事実、今日の昼休み校舎裏に呼んだ連中の所属するチーム『フラッグ』がこの被害に遭っているグループなのだ。

「この事件は界外術師が起こしているのよ」

アリアはそう言ってポケットからある男の顔が写った写真を取り出して、神宮寺に見せる。

「こいつは霧島弾。東京の私立校にかよってる高一。私が6日もこのこっくりを使って探しても、1度も姿形も見つけることができない追跡不可能ってレベルの界外術師」

「追跡不可能? お前なら出力を自在にあげられるんだろう」

そう、『天才界外術師プリンセス』の彼女なら使い魔を何百体も使役することにより出力を60%まで引き上げることが可能だ。

しかし。

「それでも無理だった。これで分かった?」

天才界外術師プリンセスですら匙を投げた。それが意味することを神宮寺は知っている。

霧島なる人物が界外した神の出力が60%より上ということだ。
そしておそらくは、相手の神のランクが高い。
その両方のどちらかではあるが、今現状のアリアではコックリさんを使って捜し、追いかけることが不可能な相手になっているのだ。

だからこの場に神宮寺が呼ばれた。
コックリさんが彼に憑依して100%の出力を引き出すために。

それでも。

「でも嫌だ。それに不良の野郎に同情すんのもめんどくせぇもん」

またも拒否する。
しかし。

「追加情報もあるのよ。よく聞いてなさい」

アリアはそう言って一区切りした後、次の言葉を紡ぎ出す。

「ちょうど現場近くにいた無関係の高校生の女子が3人もまとめて病院送りにされた。これ聞いでどうするか決まったでしょ?」







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