界外の契約者(コール)
16話 reversal@一件落着(仮)
銀城は一部始終は見ずにすぐ背を向け、ヨグがいる場所に戻っていく。
「さてと、まずワテらの………」
その一言を言い遂げないうちに、銀城の頭上を飛び越え何かが飛んできて壁にぶつかる。
銀城は飛び越えてぶつかったその物体に見覚えがあった。
それは腕だ。
付喪神のものと思われる藁と鎌がついた腕だけが、今、後ろから飛んできたのだ。
驚きながらも銀城は振り向く。
そこには、禍々しい付喪神達が、3メートルもある日本の鎧武者に、大きな鮫きり包丁のような刀で切り捨てられている様子だった。
「な……!?」
銀城はその場面がなぜ起きたのか理解できなかった。
もし、あの女の子が界外したとしたらそれは納得ができる。しかし、問題は早さだ。
この数秒の間にあの鎧武者のヤツを界外したのだとしたら。それは人間業とは言えないからだ。
元々、神を界外するのには贄がいる。そして周囲の同一の感情を媒体に、それと酷似した性質の神ならば召喚ができる。
けれど、そんな裏の世界の一般常識が銀城の目の前で壊れる。
「………ねぇ、そこのおっさん」
その声を聞いて、ゾクリと、背筋がこわばる。
見るとあの一方的とも言える神々の戦いの中から一人だけ、小さな少女が歩いてくる。
一歩、また一歩と。
「……さっきの事でさ、うん。……話したいことがあるんだ。……あぁ………、そんな怖がんないでよう。お話ししたくないなら………ヤロ」
少女の顔には微笑みにも似た表情を浮かべているが、目には光彩が入っておらず、殺意すら感じる。
銀城はこれはまずいとさすがに思ったのか、サングラスを外して両目を晒す。
自らの目に宿している『邪眼』の力で少女を操り、手先にしようと考えての行為だった。
しかし、サングラスを外して目の前を見るとそこにはさっきまでの少女はいなかった。
そう。
第三者だ。
「……ヨグ=ソトース………?」
目の前には不敵な笑みを浮かべながら睨むヨグが立っていた。少女ではなく。
そこで銀城は気付いた。
自分の後ろにいたハズのヨグが、今目の前にいる意味を。
そして、ヨグが空間を司る神であることを。
「しまっ…………!!!!!?!?!???!」
銀城は慌てて後ろを振り返る。しかしその挙動は意味を成さなかった。
「界外………」
か細い、しかし工場内の騒ぎの中でもはっきりと耳に聞こえるほど透き通った綺麗な声。
そして自分の腹部に何か鈍器のような物がメリ込んでいく。
それは溝内に的確に刺さるようだった。
それだけで銀城は我慢が出来ず、意識が痛みで混濁していく。
「…………ぁ……」
小さく呻き膝をつく。
銀城はその音源の元である少女を見ることが出来ずに、静かに膝から崩れるように倒れこむ。
最後に、虚ろう意識の視界の中で、自分の部下が出した最後の付喪神の藁の首を鎧武者に斬り飛ばされて消える場面を見て、銀城は本当の『絶望』を感じて瞼を閉じた。
「さてと、まずワテらの………」
その一言を言い遂げないうちに、銀城の頭上を飛び越え何かが飛んできて壁にぶつかる。
銀城は飛び越えてぶつかったその物体に見覚えがあった。
それは腕だ。
付喪神のものと思われる藁と鎌がついた腕だけが、今、後ろから飛んできたのだ。
驚きながらも銀城は振り向く。
そこには、禍々しい付喪神達が、3メートルもある日本の鎧武者に、大きな鮫きり包丁のような刀で切り捨てられている様子だった。
「な……!?」
銀城はその場面がなぜ起きたのか理解できなかった。
もし、あの女の子が界外したとしたらそれは納得ができる。しかし、問題は早さだ。
この数秒の間にあの鎧武者のヤツを界外したのだとしたら。それは人間業とは言えないからだ。
元々、神を界外するのには贄がいる。そして周囲の同一の感情を媒体に、それと酷似した性質の神ならば召喚ができる。
けれど、そんな裏の世界の一般常識が銀城の目の前で壊れる。
「………ねぇ、そこのおっさん」
その声を聞いて、ゾクリと、背筋がこわばる。
見るとあの一方的とも言える神々の戦いの中から一人だけ、小さな少女が歩いてくる。
一歩、また一歩と。
「……さっきの事でさ、うん。……話したいことがあるんだ。……あぁ………、そんな怖がんないでよう。お話ししたくないなら………ヤロ」
少女の顔には微笑みにも似た表情を浮かべているが、目には光彩が入っておらず、殺意すら感じる。
銀城はこれはまずいとさすがに思ったのか、サングラスを外して両目を晒す。
自らの目に宿している『邪眼』の力で少女を操り、手先にしようと考えての行為だった。
しかし、サングラスを外して目の前を見るとそこにはさっきまでの少女はいなかった。
そう。
第三者だ。
「……ヨグ=ソトース………?」
目の前には不敵な笑みを浮かべながら睨むヨグが立っていた。少女ではなく。
そこで銀城は気付いた。
自分の後ろにいたハズのヨグが、今目の前にいる意味を。
そして、ヨグが空間を司る神であることを。
「しまっ…………!!!!!?!?!???!」
銀城は慌てて後ろを振り返る。しかしその挙動は意味を成さなかった。
「界外………」
か細い、しかし工場内の騒ぎの中でもはっきりと耳に聞こえるほど透き通った綺麗な声。
そして自分の腹部に何か鈍器のような物がメリ込んでいく。
それは溝内に的確に刺さるようだった。
それだけで銀城は我慢が出来ず、意識が痛みで混濁していく。
「…………ぁ……」
小さく呻き膝をつく。
銀城はその音源の元である少女を見ることが出来ずに、静かに膝から崩れるように倒れこむ。
最後に、虚ろう意識の視界の中で、自分の部下が出した最後の付喪神の藁の首を鎧武者に斬り飛ばされて消える場面を見て、銀城は本当の『絶望』を感じて瞼を閉じた。
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