界外の契約者(コール)

鬼怒川 ますず

推理と直感と特権?

ニアと対峙する神宮寺も合わせた3人と神が1人。

その状況をで頭から血を流しながらフラフラと立ち上がるニア。


「…な、何が………。何が起きてるの!?」


神宮寺達が全員初めて見る、余裕が失われたニアの表情。それは本当の焦りとともになりふり構わずといった感じだった。


「俺が教えてやる」


ニアの質問に、神宮寺は淡々といった口調で経緯を語る。




それは、霧島がアリアを連れて消えた後のことだった。



埃が舞う部屋で食いしばって悔しさを我慢していた神宮寺は、ここで閉じこもっていては意味がないと思い、すぐにアリアを探そうとしていた。

「おいこっくり。アリアの場所は分かるか!」

「は、はい!! なんとか探してみますぅ!」

強い命令口調でこっくりさんに指示を出す。しかし、神宮寺は知っていた。あの空間に消えたヨグは出力を全開に出しても探せないことに。
それでも30%の全力をこっくりさんに願わずにはいられなかった。

そう思っていた神宮寺だったが、しばらく閉じていたこっくりさんの瞼がゆっくりと開き、恐々とあることを告げた。


「と、東京中になんか神がうじゃうじゃいるぅんですけど………」


それを聞いて神宮寺は、アリアたちを見つけるもう一つの可能性を見つけた。

「こっくり、その場所を概要で良いから教えてくれないか?ちょっと確かめたいことがある」

「え? 良いですけど…………」


半ば強引にこっくりさんから大まかな情報を聞き、それを持っていたスマホの地図に照らし合わせる。
そして、その地図にこっくりさんが見た神、正確には『約束された盤上』が意図的に出したと思われる人形を媒体にした付喪神が。出現した場所をマーキングするのと同時に、その個数や形状、そしてどんな事をしているかを大まかに聞き出す。


「えーと、これってもしかして場所がわかるとかいった消去法的な推理ですぅか?」

そう目を輝かせて尋ねるケモミミ着物少女。
だが、神宮寺は。


「いいや、全然わかんねぇな! ……ってそんなゴミを見るような目をすんな勝手に落胆するな。ちゃんと話しを聞け」

汚物を見るような視線に、必死に耐えながらも考えをこっくりさんに教える。


「いいか、奴らは無作為に人を襲っている。場所もバラバラで統一性がねぇ。しかし、それでも共通点がある」

そう言って神宮寺はスマホ画面をこっくりさんに見せる。そこにはゴシップ字体でこう書かれていた。


『東京タワーを眺めながら夜景を楽しもう!』


『高層ビルから明るい東京を見下ろすのが流行りかも!』


「………これがなんなんですか?」

「こいつがニアの場所を教えてくれている」

そう断言し、今度は地図アプリの画面を見せる。
赤いピンが東京タワーの周辺に6箇所立てられている。

「奴らは観光名所に出没している。普通なら、その観光名所のすぐそこでコトを運んでいるって思うだろ」

そして今度は台東区の雷門周辺を見せる。そこも同じようにピンが6個刺さっていた。


「だけど、そんなのは普通の犯罪や事件とかだ。こいつらは東京って街全てでそれが出来る。連絡手段とかは知らないが、仲介役がいるなら中枢にいるニアは、たとえ国家権力を持っても永遠に見つけられない」


そして今度は地図を広げて、今度は大まかな東京の地図を映しだす。

「だったら視点を変える。奴が東京でするのはわかっている。なら、この光景がよく見え、かつ見下ろしてあざ笑うところがある所を重点的に探し出す。そこにアリアがいるはずだ!」

「なるほどぉ……」


そう感心して頷くこっくりさん。しかし、すぐに心配そうな表情に戻り、この神宮寺の考えの欠点を言う。

「それって当てずっぽに探すってコトですぅか?」

「その通りだ」


その言葉にガクッと崩れそうになるこっくりさん。
だが、神宮寺は不敵に笑い、そんなこっくりさんにある絶対のことを言った。


「そこは、幼馴染の特権で見つかるだろ? 昔から一緒だったんだし」

「………それって信じていいものなんですぅか?」

「運任せだな」


そんなことで、ほとんど勘の推理でビルからビルを転々とし、道中『約束された盤上』のメンバー数10名を倒しつつ、半分正解といった経緯でアリアを見つけた。



その話しを聞き、そんな勘で見つかったアリアはというと。


「………それってキメ顔で言えることじゃないよね? それに幼馴染の特権ってなに? 普通にキモくてさすがに引いた」

「はぁ? なんでだよ!!  俺とお前の間には切れねぇ縁があるってことじゃねーか!」

「ごめん、今このシリアスな場面で言ってはならない空気読めない発言は止めて」

「なんだって!! それじゃ今この場でお前の胸でガラパゴブフフグゥぅ!?」

「見た目や外見が良くてもこの口が悪いのか!!  出せないように縫ってやろうか!!」


神宮寺の体に飛びかかり顔を引っ掻くアリア、そんな光景を霧島とヨグが呆然と見る中。

彼らの目の前では、頭から血を流しながらニアが立ち上がり、こちらを睨む。

主に、神宮寺に対し。


「あ、あんたぁぁあぁあ!! 一体どうやって私に攻撃したのォォォォォォ!!」


最大の疑問を投げかける。
そう、それはこの場にいた全員が思っていたことだった。あのアリアでさえも。
それは、先ほど霧島が撃った拳銃の弾がニアの肉体を傷つけなかったことだ。
ニアは界外術師の自分を守るために神が勝手に守っていると言った。
それなのに、神格者の神宮寺の蹴りが当たって血を流すのは、その場でニアを守った現象を見ていたもの達に不思議な疑問を抱かせて当然だ。

顔を引っ掻かれて真っ赤になった神宮寺は、そんなニアの疑問に答える。


「そんなもん決まってんだろ。俺が儀式を中止させたんだよ、神さんは元の場所に戻った。それで納得したか?」



その発言は、この場にいる全員の頭にフリーズをかけた。
敵のボスであるあのニアですらポカンと口を開けて止まっている。


「………あれ? なんだよみんなして……、もしかしてアリア、お前らは気付いてなかったのかよ」

「………一体なにに私達が気づいてなくて、あんたが気付いているのよ」

「え? だってこの儀式、東京の特定の地域限定でばら撒かれた迷惑メールが結界を形成していたんだぜ?」


その発言に、アリアを含めた霧島やヨグは、最初「なに言ってるんだこいつ……」と小馬鹿にしたような眼差しと表情を向けていたが、1人だけその表情ではなかった。
それどころか目を見開き、口を開閉し、焦った風に神宮寺を見つめていえう人物がいた。


「な、なんで……なんで分かったのよ!! 」


それは、この界外に自信たっぷりだったニア、本人だった。

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