界外の契約者(コール)
魔術の先にある者『魔法師』
「えーという事は、東條絵里さんは界外術師で、しかも霧島と同じ主神級を使役してると」
「そうですね……」
ボコボコの腫れぼった顔で不満そうに事実確認をする神宮寺に怯えながらも、こくこくと質問に対して頷いて肯定する。
東條絵里。
現在、アイドルとして世間の壁を越えて世界で活躍する超人気アイドル。
彼女の出す新曲はすべてファンが買ってしまって在庫を切らしたり生産を中止するものばかり。
今現在、存在そのもので世界を揺るがすアイドル。
その本人が、神宮寺の目の前で弱々しくかしこまっていた。
「まさか東條絵里がお前の学校に在学してるってすごいラッキーだな。そういやいつからいんの? やっぱコロコロ学校変えんの?」
「いえ、入学時からここにいます……」
「へー、それにしちゃ神宮寺や俺がこんな大きな存在に気づかないって。つまり絵里ちゃんの神の力ってのは」
「はい、注目のオンオフ」
「そうそう! この前テレビで皿回しやって成功させたじゃん。アレって仕込んでたりする? ほら、糸で釣ってさ!」
「えーと、あれは練習して……」
霧島がキラキラした目線を隠しきれず質問やら関係のない事やらを東條に向ける。
当の本人は、その反応に困っているようで黙りそうになってしまう。
「はいはい、とりあえずあんたはちょっと口を閉じてなさい」
「え? いやさ俺はまだ聞きたい事が-」
「い、い、か、ら!」
アリアに止められて渋々引き下がる。そんな落ち込んでいた霧島の肩にポンっと手を置いて「グッジョブフ!」と嘲笑混じりで笑うヨグがまたなんとも言えない。
「言っとくけど、べつにあんた達にエリっちの正体や存在を教えたのにはちゃんと話があってだから」
「なんだよ。もしかして命が狙われているとかってお決まりの展開かー?」
「その通りよ」
「嫌だ嫌だ! 俺もう戦いたくないんだけど!! 界外とか嫌いもう最悪。汗かきたくなーい!」
「…………言っとくけど時給も出るわよ?」
ピクンと、神宮寺の頭の中でせめぎ合いが起きた。主に金に対する執念だ。
「…………内容が知りたい」
超絶極めたイケメンボイスとその顔にかかる影がカッコ良さを出しているが、アリアは気にした様子もなく無視して話を進める。
「今から言うけど……よし。それじゃそこのベンチにエリっち座ってて」
ベンチに座るように東條絵里に促すアリア。東條絵里もそれに従って、ちょこんとヨグの隣に座る。
「んじゃ、ちゃんと自分で言ってねエリっち。心配しなくても、こいつらは悪い奴らじゃないから。むしろ安心できるやつらだから」
ベンチの横からアリアが肩に手を置いて宥める。少し緊張気味なその顔に少し元気が戻ったようで、横に座る3人、ヨグ、霧島、神宮寺に顔を向け、決心したように言った。
「実は、私と ある人を護衛して欲しいんです。今度の土曜日に行われるその人の誕生日記念会で、参加者の私も殺されちゃうそうで…………」
さて、そんな物騒事かつとんでもないことに巻き込まれてから二日後、金曜日の夜に場面は変わる。
場所は神奈川県にある真夜中の繁華街。
そこは昼は人通りが多く、夜でも賑わっていたのだが今夜は違っていた。
穴ぼこに空いた道路と凹んだシャッターなどがその原因だ。通行人はみんなその意味不明な現象に驚いて全員何処かに逃げてしまった。遠くからサイレン音が響いてきて、あと数分で警察も来るのがわかる。
しかし、意味不明な現象の巻き起こった場所で対峙する2人と1人はそんなの気に掛けていない。
「おいおい、こんなに派手に暴れたら僕が受け取る金額が減っちゃうだろ。せっかくの4桁台の仕事なのにさ」
「ふふふ、そんなこと言うのなら君の連れている『神格者』の方がボクよりここを破壊しているけどね。おっと、失言だったかね?」
対峙する三人の格好は少し変わっていた。
まず、一方の男と女がいる方は、男が季節違いの厚いコートを着ており。
もう一人の女の方は男物の黒のスーツ服を着ており、短く結んである黒い髪が特徴的だ。
その彼女の無感情に近い瞳が、その雰囲気を葬儀屋と同じものにしていた。
もう一方の方は、頭に白のシルクハットに全身が黄色に近いスーツを着ており、肩からマントのようなものを羽織っていた。
彼らは異質だった。
それこそ目立つくらいに。
「それでさ、結局きみはなんなのさ? まずはそれが知りたいんだけど」
「知ったこと。貴様の知識にボクの攻撃方法を照らしたほうがよりわかるのではないか? 『界外術師』のはしくれが」
「なるほど、それじゃあの噂やお話はフィクションではなくって今目の前にいる君だということだね。それは分かったよ」
コートの男が言った直後。
黒スーツの女がとても視認できない速さで黄色スーツの男の足元まで近づき、アッパーカットのように腕を上に突き上げる。
黄色スーツの男が血を吐いて倒れた。
否、それは阻止されていた。
「不完全な『神格者』じゃ身体能力の向上と肉弾戦しかできないのかね? ならボクを倒せないぞ」
彼女の拳には、大きな水の塊がまとわり付いており。パンチの衝撃を抑えて止めていた。
女はすぐに飛び上がって後ろに引くと腕をブンブンと振り、手に着いた水を遠心力の力ですべて離していく。
「なるほど、やっぱりきみが噂の『魔法師』ってやつか。稀代の天才達って言われた『魔術師』達のその上をいく本物の魔法使い。お会いできて光栄だと僕は思ってみるよ」
「おいおい、そんなに褒めるなよ端くれ。ボクのこの初歩的なもので褒められてもちっとも嬉しくないよ。むしろ侮辱に近い」
次の瞬間、黄色スーツの男が突っ込み、黒スーツの女が同じように突っ込む。
まばゆい光が繁華街を包み込んだ。
通報を受けて警察が現地に来た頃には、すでに人影はなく。
代わりに穴ぼこの道路が先から端までずっと続いていた。
「そうですね……」
ボコボコの腫れぼった顔で不満そうに事実確認をする神宮寺に怯えながらも、こくこくと質問に対して頷いて肯定する。
東條絵里。
現在、アイドルとして世間の壁を越えて世界で活躍する超人気アイドル。
彼女の出す新曲はすべてファンが買ってしまって在庫を切らしたり生産を中止するものばかり。
今現在、存在そのもので世界を揺るがすアイドル。
その本人が、神宮寺の目の前で弱々しくかしこまっていた。
「まさか東條絵里がお前の学校に在学してるってすごいラッキーだな。そういやいつからいんの? やっぱコロコロ学校変えんの?」
「いえ、入学時からここにいます……」
「へー、それにしちゃ神宮寺や俺がこんな大きな存在に気づかないって。つまり絵里ちゃんの神の力ってのは」
「はい、注目のオンオフ」
「そうそう! この前テレビで皿回しやって成功させたじゃん。アレって仕込んでたりする? ほら、糸で釣ってさ!」
「えーと、あれは練習して……」
霧島がキラキラした目線を隠しきれず質問やら関係のない事やらを東條に向ける。
当の本人は、その反応に困っているようで黙りそうになってしまう。
「はいはい、とりあえずあんたはちょっと口を閉じてなさい」
「え? いやさ俺はまだ聞きたい事が-」
「い、い、か、ら!」
アリアに止められて渋々引き下がる。そんな落ち込んでいた霧島の肩にポンっと手を置いて「グッジョブフ!」と嘲笑混じりで笑うヨグがまたなんとも言えない。
「言っとくけど、べつにあんた達にエリっちの正体や存在を教えたのにはちゃんと話があってだから」
「なんだよ。もしかして命が狙われているとかってお決まりの展開かー?」
「その通りよ」
「嫌だ嫌だ! 俺もう戦いたくないんだけど!! 界外とか嫌いもう最悪。汗かきたくなーい!」
「…………言っとくけど時給も出るわよ?」
ピクンと、神宮寺の頭の中でせめぎ合いが起きた。主に金に対する執念だ。
「…………内容が知りたい」
超絶極めたイケメンボイスとその顔にかかる影がカッコ良さを出しているが、アリアは気にした様子もなく無視して話を進める。
「今から言うけど……よし。それじゃそこのベンチにエリっち座ってて」
ベンチに座るように東條絵里に促すアリア。東條絵里もそれに従って、ちょこんとヨグの隣に座る。
「んじゃ、ちゃんと自分で言ってねエリっち。心配しなくても、こいつらは悪い奴らじゃないから。むしろ安心できるやつらだから」
ベンチの横からアリアが肩に手を置いて宥める。少し緊張気味なその顔に少し元気が戻ったようで、横に座る3人、ヨグ、霧島、神宮寺に顔を向け、決心したように言った。
「実は、私と ある人を護衛して欲しいんです。今度の土曜日に行われるその人の誕生日記念会で、参加者の私も殺されちゃうそうで…………」
さて、そんな物騒事かつとんでもないことに巻き込まれてから二日後、金曜日の夜に場面は変わる。
場所は神奈川県にある真夜中の繁華街。
そこは昼は人通りが多く、夜でも賑わっていたのだが今夜は違っていた。
穴ぼこに空いた道路と凹んだシャッターなどがその原因だ。通行人はみんなその意味不明な現象に驚いて全員何処かに逃げてしまった。遠くからサイレン音が響いてきて、あと数分で警察も来るのがわかる。
しかし、意味不明な現象の巻き起こった場所で対峙する2人と1人はそんなの気に掛けていない。
「おいおい、こんなに派手に暴れたら僕が受け取る金額が減っちゃうだろ。せっかくの4桁台の仕事なのにさ」
「ふふふ、そんなこと言うのなら君の連れている『神格者』の方がボクよりここを破壊しているけどね。おっと、失言だったかね?」
対峙する三人の格好は少し変わっていた。
まず、一方の男と女がいる方は、男が季節違いの厚いコートを着ており。
もう一人の女の方は男物の黒のスーツ服を着ており、短く結んである黒い髪が特徴的だ。
その彼女の無感情に近い瞳が、その雰囲気を葬儀屋と同じものにしていた。
もう一方の方は、頭に白のシルクハットに全身が黄色に近いスーツを着ており、肩からマントのようなものを羽織っていた。
彼らは異質だった。
それこそ目立つくらいに。
「それでさ、結局きみはなんなのさ? まずはそれが知りたいんだけど」
「知ったこと。貴様の知識にボクの攻撃方法を照らしたほうがよりわかるのではないか? 『界外術師』のはしくれが」
「なるほど、それじゃあの噂やお話はフィクションではなくって今目の前にいる君だということだね。それは分かったよ」
コートの男が言った直後。
黒スーツの女がとても視認できない速さで黄色スーツの男の足元まで近づき、アッパーカットのように腕を上に突き上げる。
黄色スーツの男が血を吐いて倒れた。
否、それは阻止されていた。
「不完全な『神格者』じゃ身体能力の向上と肉弾戦しかできないのかね? ならボクを倒せないぞ」
彼女の拳には、大きな水の塊がまとわり付いており。パンチの衝撃を抑えて止めていた。
女はすぐに飛び上がって後ろに引くと腕をブンブンと振り、手に着いた水を遠心力の力ですべて離していく。
「なるほど、やっぱりきみが噂の『魔法師』ってやつか。稀代の天才達って言われた『魔術師』達のその上をいく本物の魔法使い。お会いできて光栄だと僕は思ってみるよ」
「おいおい、そんなに褒めるなよ端くれ。ボクのこの初歩的なもので褒められてもちっとも嬉しくないよ。むしろ侮辱に近い」
次の瞬間、黄色スーツの男が突っ込み、黒スーツの女が同じように突っ込む。
まばゆい光が繁華街を包み込んだ。
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代わりに穴ぼこの道路が先から端までずっと続いていた。
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