界外の契約者(コール)

鬼怒川 ますず

デルモンド・キルギスという人間

それは12年前のことだ。

この世界には未だ不可解な謎が蔓延っている。それこそネットで飛び交い議論されるように、陰謀論や宇宙人説など。

しかし、答えはどんなに漁っても出てこない。どんな有名な著者の本を読んでも、どんな歴史ある文を読んでも、どんな公明な科学者に聞いていてもだ。

表が明るければ裏も黒い。

そして、暗闇の中の奥にあるもの。


それこそ世界の闇に隠れて見えない深淵。



そう考えたデルモンドは、【魔法師】や【界外術師】などといった世界の裏側の他に、違う裏の世界があるのではないのかと結論を出し、僅か19歳で【魔法師】となった彼は本国のイギリスから出て世界を旅した。

それから10年。

彼は自らの【魔法師】という称号の価値が無価値であることを悟り、同時に世界の裏や表に対する憎悪を燃やした。


世界を知った。


世界の謎の僅か3割の答えを知って12年間で考えは変わっており、彼は表舞台に立つ人間に悪意を向けていた。


【世界経済は今日も活気付いており……】

【老後の心配も大丈夫! 保険に加入すれば◯◯万円もお得】

【最近の平和活動につきましては……】



どうして、お前たちは輝いているんだ。


【貧困で苦しんでいます。どうかこの子達に十分なご飯を恵んでください】

【学校にもいけません】

【犯罪は増加の一方……】


どうして、世界は暗いんだ。


【ねぇデルモンドさん。どうしてあたしの身体は動かないの?】

【親が紛争に巻き込まれて死んだんだ……】

【デルモンドさん。あたしって生まれてきた意味ってなんなのかな?】

【デルモンドさん。魔法って本当にあったらいいね。そしたら世界中を笑顔に出来るんだから…………】


どうして、この子達はボクと同じ【魔法師】としての才能があるのに、こんな悲劇的で救われなかった人生を送ってしまったんだ。



【すまない…………すまない…………ボクは……ボクは魔法使いなのに、子供一人のために奇跡のひとつすら叶えられない…………。本当にすまない…………】


結論を出して2年。
30を越えて、準備を進めたデルモンドは動く。

大鷲誠治という男を通した裏を知るために、表で輝くあの憎い少女を殺すために。



デルモンド・キルギスは、白いシルクハットと黄色のスーツを着こなし、【魔法師】としての実力と自分が育てた『弟子』達を連れ、表と裏のどちらの世界も引っ掻き回そうと画策していた。




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