偶像は神に祈る夢をみる
めでたしめでたし 3
「まだ終わらないのか?」
零番宮玉座の間、その玉座に腰掛けながらも俺はいらだっていた。
「焦る必要はないさ。ここまではちゃんと上手くいっただろ?」
苛立ちをぶつけられた相手は、
ひょうひょうとした態度で返す。
実際ここまではこのデミの言った通りになった。
モグラのと名乗るこの紅目、長耳のデミと
その配下と思われる数人のデミたちを率いて、
この零番宮に押し掛けたのは一週間ほど前だ。
たった十人に満たない人数でのクーデターが
成功するはずがないと反対したが結果は逆だった。
彼の言う通り、ここの者たちは皆俺の姿を確認するや否や、
無抵抗でこの零番宮をあっさり明け渡したのである。
それはこの部屋の隅におとなしく腰掛ける天子と呼ばれる
あの偉そうな少女も例外ではない。
彼女は所謂人質だった。
「だが、もう一週間だぞ」
「ここには膨大な量のデータが蓄積されている。全てを人力で調べるのには時間がかかるのさ」
「どうだか」
吐き捨てるように言う。
こいつはこいつでどこまで信頼していいものかわからない。
「勘違いしてもらって困るよ。我々は君の部下じゃない。僕たちには僕たちの目的がある。君には君のね。それぞれの目的のために互いに利用し、協力し合う、それが約束だろう?」
「あの、調べ物があるのでしたら、私を通して《《彼女》》にお願いすればすぐにでも…」
大人しく座っていた彼女が控えめに口を開いた。
その年相応な少女の表情は依然ここで会った時とは別人のように見える。
「だ、そうだけど、どうする?」
モグラはにやにやと笑った。
「…いや、いい。引き続きお前たちで調べてくれ」
不幸にも今の俺にはこの街のどんな人間よりも、
デミたちのほうが幾分か信頼がおけた。
「安心してくれ、手は抜かないよ。君の目的は君の目的でキチンと叶えてあげるさ」
彼はそんな俺の感情を見透かして、満足そうに微笑む。
実際すべてこいつの思い通りなのだろう。
俺を協力者にするために、こいつはあんなもの俺に見せたのだ。
だが、いいように利用されてでも俺はこいつの提案を受け入れざるを得なかった。
モグラの言葉が真実ならどんな手段でもそれは成し遂げなければならない。
彼女は今もこの世界のどこかで眠っている。
俺がそうであったように、彼女もまた結晶体の中に閉じこもって生きている。
彼女に会いたかった。もう一度彼女に触れたかった。
「早くしてくれ」
その言葉を肯定するように首をすくめるデミの紅い目は
いつものように怪しく光る。
この世界がどんなに仮初の虚構であると教えられたとしても、
彼女がまだこの世界のどこかに存在しているのなら、
俺にはそれだけで生きるのに十分な理由だった。
零番宮玉座の間、その玉座に腰掛けながらも俺はいらだっていた。
「焦る必要はないさ。ここまではちゃんと上手くいっただろ?」
苛立ちをぶつけられた相手は、
ひょうひょうとした態度で返す。
実際ここまではこのデミの言った通りになった。
モグラのと名乗るこの紅目、長耳のデミと
その配下と思われる数人のデミたちを率いて、
この零番宮に押し掛けたのは一週間ほど前だ。
たった十人に満たない人数でのクーデターが
成功するはずがないと反対したが結果は逆だった。
彼の言う通り、ここの者たちは皆俺の姿を確認するや否や、
無抵抗でこの零番宮をあっさり明け渡したのである。
それはこの部屋の隅におとなしく腰掛ける天子と呼ばれる
あの偉そうな少女も例外ではない。
彼女は所謂人質だった。
「だが、もう一週間だぞ」
「ここには膨大な量のデータが蓄積されている。全てを人力で調べるのには時間がかかるのさ」
「どうだか」
吐き捨てるように言う。
こいつはこいつでどこまで信頼していいものかわからない。
「勘違いしてもらって困るよ。我々は君の部下じゃない。僕たちには僕たちの目的がある。君には君のね。それぞれの目的のために互いに利用し、協力し合う、それが約束だろう?」
「あの、調べ物があるのでしたら、私を通して《《彼女》》にお願いすればすぐにでも…」
大人しく座っていた彼女が控えめに口を開いた。
その年相応な少女の表情は依然ここで会った時とは別人のように見える。
「だ、そうだけど、どうする?」
モグラはにやにやと笑った。
「…いや、いい。引き続きお前たちで調べてくれ」
不幸にも今の俺にはこの街のどんな人間よりも、
デミたちのほうが幾分か信頼がおけた。
「安心してくれ、手は抜かないよ。君の目的は君の目的でキチンと叶えてあげるさ」
彼はそんな俺の感情を見透かして、満足そうに微笑む。
実際すべてこいつの思い通りなのだろう。
俺を協力者にするために、こいつはあんなもの俺に見せたのだ。
だが、いいように利用されてでも俺はこいつの提案を受け入れざるを得なかった。
モグラの言葉が真実ならどんな手段でもそれは成し遂げなければならない。
彼女は今もこの世界のどこかで眠っている。
俺がそうであったように、彼女もまた結晶体の中に閉じこもって生きている。
彼女に会いたかった。もう一度彼女に触れたかった。
「早くしてくれ」
その言葉を肯定するように首をすくめるデミの紅い目は
いつものように怪しく光る。
この世界がどんなに仮初の虚構であると教えられたとしても、
彼女がまだこの世界のどこかに存在しているのなら、
俺にはそれだけで生きるのに十分な理由だった。
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