ミカガミシンヤの物語 ７

「おう、こっちだこっち」
店に着くなり、短髪のハンサムな少年が読んだ。
どうやら彼がユウキ友人らしい。

僕たちは彼の腰かける四人掛けのテーブルを目指し、
それから腰掛ける。

「よっ、久しぶり」
ユウキの表情にも、親しみが。滲む

「おう。でっ、そっちが例の？」
視線は俺に向けられる。

「そう、ミカガミシンヤ様。シンヤで良いってさ」
ユウキはそう紹介してくれる。

「よろしく」
握手を求める。

「おう、よろしく。俺はショウだ。ユウキの友達っていうからさ、俺も敬語とかなしでいかせてもらうぜ」

「ああ、それでいいよ」
ずいぶんすっきりした性格のようだ。
「ここにはいつも来るのか？」

ずいぶんと寂れたファミレスに見える。

「うん、いつも通りの場所がいいっていったでしょ。僕がショウと会うのはいつもここなんだ。長居できるし」
そういって彼はパネルを呼び出しメニューを見始めた。

俺も習うようにして適当に頼む。
悩んだ末に結局ビーフシチューに落ち着いた。

「しかし、神様ってのはもっと気取ってると思ってたな。三番はなんか怖いし」
ショウがまじまじとこちらをみる。

「あえっと、ショウは三番、シンヤとはまた違う神様の夢見なんだ」
ユウキが補足してくれた。

「俺以外か…、なあ俺以外にも目覚めた奴はいるのか？」

「何にかは記録に残ってるけどな。百年以上前に目覚めた奴が最後」
ショウの言葉に落胆する。少しだけ期待していたことだ。

この世界で古い人間は俺だけらしい。
目覚めたときもしここに新しい文明が根付いていなければどうなっていただろう。
一人誰もいない世界に立ち尽くす姿を想像して身震いした。

「そういえばお前最近あれ系の話しないよな」
ユウキがショウに振る。

「あれ？」

「それがこいつ、都市伝説みたいな話が好きなんだよ」

「俺はもうそういうの卒業したんだよ」
ショウはその言葉を否定する。
「それにもう、そんな話必要ないしな…」
続くと言葉は誰に向けられたものでもないようだった。

「都市伝説ってどんなのよ？」
興味本位で聞いてみる。

「あれ、なんだっけ、この世界には実は二種類の人間がいるみたいなの」

「なんだそれ？」
俺はショウに尋ねる。
彼は少し嫌そうな顔をユウキに向けたが、結局俺に説明してくれる。

「世の中には有機率が50%を切ってる人間がいるって話だよ。世の中には二種類の人間がいて、俺やユウキみたいなこの街で比較的重要な仕事を任されてる人間は普通に有機率が９０前後だけど。あんまりどうでもいいような役割を割り当てられる人間は、もっと低く作られてるんだ」

「有機率？」
聞きなれない言葉だった。

「ざっくり言えば、機械でできた体のやつがいるってことだよな。まあ、ただの都市伝説だよね。そんなのあるわけないし」
ユウキは答えるついでにそんな風に付け足した。

「嘘じゃないぜ」
「そういうのは卒業したんじゃないのかな」
断言するショウをユウキがからかう。

ただ俺の頭は全く別のことを考えていた。
機械の体？それはまさにあの夜見たものではないか。
あれはやはり現実だったのだ。

「その話詳しく…、っ⁈」
その光景に俺は思わずフリーズする。

テーブルに料理を運んできた生き物が目に入ったからだ。

「あはは、驚いてる。シンヤあれはデミってんだ。この街ではめったに目にしないからな。気持ち悪いだろ？」

子供ぐらいの大きさの毛むくじゃらな生き物は
ショウの物言いも気にしない様子で料理を並べ終えると下がっていく。

俺はこの生き物をしっている。
やはりあの晩に、出会った毛むくじゃらの獣人にそっくりだった。

「だから、この店はさすがにやめたがいいて言ったのに」
「ありのままをみせたがいいだろ」
そんな風に言い争う二人の声が聞こえる。

その光景は俺の知るこの世界と何ら変わらない。
だけどこの街の裏側には俺の知らないもう一つの何かが広がってる。

今まで見過ごしてきた何かが、
だんだんと俺のほうに近づいてきている。
俺はそれをなるだけ隅のほうに追いやろうと努める。

直感がこの街の見えないもう一つの姿を知ってしまうことを恐れていた。