偶像は神に祈る夢をみる
一年後の結末 6
「それで?俺はなんで呼ばれたの?」
コーラの入ったグラスをかき混ぜながら、ショウは尋ねる。
深夜のレイニーズはいつもの倍は寂れて感じた。
客は僕らの他になく。グラスの氷はカラカラと鳴く。
「愚痴ぐらい言う相手がいたっていいだろ…」
あの少女にしてしまったことに対する自責の念で重力に負ける。
僕は机の上につっぷしたまま唸った。
「はぁ〜、まっ、お前の気持ちわからなくもないけどさ」
ショウはコーラをすする。
「そう簡単には割り切れないよな兄弟を失うって」
彼はここではない過去を見る。
「…」
そんな彼がどこを見ているか察しがついた。彼には妹がいる。
そしてずっと前に姉がいた。その天命を終え数年前に炉に帰った姉が。
僕はこんな話をしたことを少し申し訳なく思った。
「でもよ。兄弟がいなくなれば、新しいパートナーがくる。
それが普通だろ。むしろ一年近く一人だったことが不思議なぐらいだ」
「お前はすぐ受け入れられたのか?」
「いや。でも、受け入れた」
僕の質問に同い年のはずの少年は少し大人びた表情をする。
「時間がかかるんだよ。家族になるってのは」
「忘れられるかな?」
それは寂しい言葉だ。
「おい、勘違いするなよ。俺は姉貴を忘れたことなんかない。ただ時間をかけて消化しただけだ。もう二度とあんな思いはゴメンだ…」
境遇を思えば最後の言葉は僕に向けられたものではないだろう。
ショウの今の妹であるアリスは、体が丈夫ではない。
もしかすると今年の試験も無理かもしれない。彼女の年齢を考えるとあるいは、っとショウが危惧していることを僕は知っている。
「アリスちゃんは、大丈夫だろ」
当然であるかのように口にして、勇気づける。
「しってるよ…」
自信なさげな笑みが帰ってきた。
「とにかく!」
ショウはしみったれた会話を吹っ切るようにストローをグラスからひきあげる。
それからそれで僕の額をピンと指した。
「お前の話だ。お前はさ、いちいち考えなくていいんだよ。全部、《《彼女》》が決めたことだ。間違ってるはずがないだろう?お前がするべきはさっさと家に帰って、新しい妹とやらに謝って許してもらうことだけだ。それ以外のことは全部、時間が解決してくれる」
「そういうもんかな?」
勢いに押されて思わず顔を上げてた。
「そう、グジグジすんな。バカになれ。考えるな。俺はお前って男をしってるよ。お前はちゃんとやれる。エリカさんのことも折り合いをつけれる。新しい妹とも家族になれる。考えなくても、そのままでな!」
清々しく言い切る彼の勢いに、僕は単純にも励まされる。確かにバカが必要なのかもしれない。
「なんか元気が出てきたかも」
笑みがこぼれた。
「ありがとな」
「おう。こんな時間に呼び出されたかいがあったってもんさ」
ニヤリと笑みが帰ってくる。
「『兄弟愛せ』はこの街のルールだろ。お前の好きな規則さ」
彼はからかう様にそう言って席をたつ。
「だな」
僕もまた立ち上がった。
そうして二人揃って店をでる。
「ところでさ」
別れ際になってショウは思い出したようにつけたした。
「エリカさんの私物は、去年俺とアリスで遺品整理を手伝っただろ?忘れたのかよ。
ひどい記憶違いだぜ。妹ちゃんのせいにしてんじゃねえ。そこんとこ、ちゃんと謝っとけよ」
「え?」
僕はとっさに尋ね返したが、ショウはとっくに背を向けていて、僕の声は届かなかった。
コーラの入ったグラスをかき混ぜながら、ショウは尋ねる。
深夜のレイニーズはいつもの倍は寂れて感じた。
客は僕らの他になく。グラスの氷はカラカラと鳴く。
「愚痴ぐらい言う相手がいたっていいだろ…」
あの少女にしてしまったことに対する自責の念で重力に負ける。
僕は机の上につっぷしたまま唸った。
「はぁ〜、まっ、お前の気持ちわからなくもないけどさ」
ショウはコーラをすする。
「そう簡単には割り切れないよな兄弟を失うって」
彼はここではない過去を見る。
「…」
そんな彼がどこを見ているか察しがついた。彼には妹がいる。
そしてずっと前に姉がいた。その天命を終え数年前に炉に帰った姉が。
僕はこんな話をしたことを少し申し訳なく思った。
「でもよ。兄弟がいなくなれば、新しいパートナーがくる。
それが普通だろ。むしろ一年近く一人だったことが不思議なぐらいだ」
「お前はすぐ受け入れられたのか?」
「いや。でも、受け入れた」
僕の質問に同い年のはずの少年は少し大人びた表情をする。
「時間がかかるんだよ。家族になるってのは」
「忘れられるかな?」
それは寂しい言葉だ。
「おい、勘違いするなよ。俺は姉貴を忘れたことなんかない。ただ時間をかけて消化しただけだ。もう二度とあんな思いはゴメンだ…」
境遇を思えば最後の言葉は僕に向けられたものではないだろう。
ショウの今の妹であるアリスは、体が丈夫ではない。
もしかすると今年の試験も無理かもしれない。彼女の年齢を考えるとあるいは、っとショウが危惧していることを僕は知っている。
「アリスちゃんは、大丈夫だろ」
当然であるかのように口にして、勇気づける。
「しってるよ…」
自信なさげな笑みが帰ってきた。
「とにかく!」
ショウはしみったれた会話を吹っ切るようにストローをグラスからひきあげる。
それからそれで僕の額をピンと指した。
「お前の話だ。お前はさ、いちいち考えなくていいんだよ。全部、《《彼女》》が決めたことだ。間違ってるはずがないだろう?お前がするべきはさっさと家に帰って、新しい妹とやらに謝って許してもらうことだけだ。それ以外のことは全部、時間が解決してくれる」
「そういうもんかな?」
勢いに押されて思わず顔を上げてた。
「そう、グジグジすんな。バカになれ。考えるな。俺はお前って男をしってるよ。お前はちゃんとやれる。エリカさんのことも折り合いをつけれる。新しい妹とも家族になれる。考えなくても、そのままでな!」
清々しく言い切る彼の勢いに、僕は単純にも励まされる。確かにバカが必要なのかもしれない。
「なんか元気が出てきたかも」
笑みがこぼれた。
「ありがとな」
「おう。こんな時間に呼び出されたかいがあったってもんさ」
ニヤリと笑みが帰ってくる。
「『兄弟愛せ』はこの街のルールだろ。お前の好きな規則さ」
彼はからかう様にそう言って席をたつ。
「だな」
僕もまた立ち上がった。
そうして二人揃って店をでる。
「ところでさ」
別れ際になってショウは思い出したようにつけたした。
「エリカさんの私物は、去年俺とアリスで遺品整理を手伝っただろ?忘れたのかよ。
ひどい記憶違いだぜ。妹ちゃんのせいにしてんじゃねえ。そこんとこ、ちゃんと謝っとけよ」
「え?」
僕はとっさに尋ね返したが、ショウはとっくに背を向けていて、僕の声は届かなかった。
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