転生しているヒマはねぇ!
58話 中止
「いきなり何かな? 中止って?
ボクにもわかるように、説明してくれる?」
おお! まさか、異世界にもボク娘が!
しかも、ショートヘア!
やるな、旅女神レンダ!
現界に転生できたら、信者になると誓おう!
ソレイユがオレの尻をつねってくるが、魂魄移動されていないので痛くない!
しかし! リアクションを返さないのは流儀に反するので、ソレイユのお尻を撫でてやる。
可愛らしい「きゃっ」という声を聞きながら、オレはレンダの質問に答える。
「もちろん今日の交流会の話だ。これ以上やっても意味がない」
「おやおや、まともに会話ができる奴が来たと思ったら、結局なにもせず帰るのか?
自分で話を聞くことぐらいはできると言ったのは嘘だったのか?
まだなにも聞いてもらっていないが?」
豊穣神サクリフィシオが、はっきりと言ってくる。
だが、怒っているようではない。
きちんとした説明をしてくれと、言外に匂わせている。
「うん。サクリフィシオ殿の言いたいことはわかる。
ただ、ここまでの貴方がたの話を聞いて思ったことは、貴方がたは冥界を知らなさすぎるんだ。
誤解しないでもらいたい。これはもちろん貴方がたが悪い訳ではなく、これまでの対応係が、あまりにも歪んだ情報のみを伝えていたのが悪いんだ」
「だから、なんなのだ! お前の物言いは、さっきから迂遠すぎる!」
太陽神カサルティリオが、苛立たしげにそう言う。
せっかちだな、コイツは。
「このまま、誤った知識を持ったまま意見交換しても、相互理解を深めるのは不可能だと言うことだ。
まずは、冥界の魂運営システムを中心に、本当の冥界の姿を知ってもらうべきだと思う。
それも貴方がただけじゃなく、神族全員にだ。
できれば、来月に神族向けの冥界説明会を開催したい。
ここより広い場所、できれば全ての神が集まれるような場所があれば、提供してもらいたいんだが、可能かな?」
オレの質問に、10神の視線が、北神と南神に注がれる。
この2神が、神族の中心であることは間違いないようだ。
「可能だ」と北神。
「だが、冥界の接見の魔方陣を張るには広すぎるだろう」と南神。
「場所を貸してもらえるなら、問題ないよ。
俺たちの仮体に、直接魔方陣を書き込むから。
それから最初に言ったけど、オレが対応係になったのは今日なんだ。
しかも事前に通告もなかったから、神族に関しても、交流会のこれまでのシステムに関しても、勉強をする時間がなかった。貴方がたや他の神々に集まってもらうにはどうしたらいいのかな?」
「そうか。本当に貴殿は、緊急でこの場に派遣されたのだな。
そうとは知らず、先程は失礼した。
私は戦女神カラベラ。
一定以上の信仰地域を持つ神は、冥界から連絡用の通信魔方陣を付与されている。
現存する神の半数近くはこれで連絡が取れる。
使い方は、そちらで確認されるがよかろう。
だが、これを付与されていない存在の弱い神は、冥界の存在すら知らない可能性があるが、そういった神も呼ぶのか?」
すぐに頷く。
「オレはそうしたいと思っている。
できれば、冥界と神族との新しい約束事を明文化する為のきっかけの場ともしたい。
その小さな神が、大きくならない保証なんてないからな。あとから、そんなこと聞いていないと憤られても困る。
呼び掛けは全ての神に行いたい。来るかどうかは本人の自由意思に任せるけど」
カラベラが頷く。
「承知した。冥界側が自ら情報を開示してくれるのならば、私は協力しよう。今後、我らの関係をどうするかは、その後に話会えば良い。
知り合いの神々には私からも呼び掛けておこう。
冥界からの連絡が有る無しに関わらず、参加できるとな」
戦女神カラベラがそう表明すると、他の神々も次々に参加と協力を表明していく。
そして、10神が表明し終え、北神と南神に目を向ける。
「いいだろう。神界大評議場の使用を認める」と北神。
「しかし、お主に決定権はないと言ったな。
本当に冥界の情報を開示するような集会を開けるのか?」と南神。
「大丈夫だと思う。直接の上司はともかく、転生役所の最高責任者を丸め込む自信はある!」
オレの言葉に月女神サラーが笑う。
「それって、充分大物だと思うのだけれど♪」
とりあえず来月の開催を目指し、詳しい日時は、決定次第連絡魔方陣で通知することに決まった。
解散となり、全ての神を見送ると、部屋の片付けを職員に任せ、ソレイユを連れ、報告のため転生役所の神類部オフィスへと戻る。
オフィスに入ると神類部部長と交流課課長が駆け寄って来た。
「どうだった 神たちは考えを改めたか 」
「そうだぞ! 奴等から冥界の魂は守れそうなのか 」
詰め寄ってくる二人を宥めつつ、オレは今回の交流会の結果と、今後の計画について話した。
「なにを勝手なことをやっとるんだ、君は!」
「そうだぞ! 交流会の内容を考えるのは、企画係の仕事だぞ。越権行為だぞ!」
え?
「だって! オレは魂魄の磨耗と消滅を改善するために!」
「だから! 交流会に来る神どもを押さえつければいいことだろう!」
「そうだぞ! あいつらはこちらが注魂してやらなきゃ、神になれなかったんだぞ! 従わせるべきだぞ!」
正気か、こいつら?
「ブチブチブッチさんが、秘書課推薦の強い魂だと言うから期待していたのだがね!」
「そうだぞ! 私たちの言葉の意味を取り違えるなんて、とんだ期待外れだぞ!」
駄目だ。こいつら恒久的な解決をするつもりがない。
現界を舐めている。交流の言葉の意味をわかっていない。
オレの方が役職が低いのはわかっている。
でも駄目だ。
こいつらは、一度誰かに雷を落とされないと、痛い目をみないとわからないのだ。
オレは大きく息を吸い込んだ。
「ふざけるな 」
ドギャーン!! ガジャーン!! ガラガラガラガラ!
オフィスに響く、オレの怒号。
怒号に続く、雷が天井を破壊し、二人に降り注ぐ音。
あ、あれ? 比喩! 比喩だよね!
『雷を落とす』は比喩だよね? 冥界に雲ないよね
イメージしてないよ! ちょっと比喩表現を思い浮かべただけだよ!
しかし現実として、神類部部長と交流課課長の二人が雷にうたれ、床の上に転がり痙攣している。
怪我なんかしない頑丈なはずの仮体が、うっすらと焦げて、煙をあげていた。
「ダ、ダイチさん。これって、まさか……」
「違うんだ! イメージなんてこれっぽっちも抱いてなかったんだ! 
ただ、オレの国に比喩って言葉があって
ただそれだけで こんなことするつもりじゃなかったんだ 」
ソレイユの顔が、真っ青になっている。
そりゃそうだ。こんなことをしでかすような奴が恐くないわけない。
ソレイユに嫌われたくない。嫌われたくないのに!
やっぱり、オレなんかがヤル気なんて出しちゃいけなかったんだ!
死を迎える時まで、ただ静かに暮らしているべきだったんだ!
「落ちついて! 落ちついてください、ダイチさん!
わかっていますから。あなたがこれを意図的にやるような魂でないことは、よくわかっています!
だから、お願い。泣かないで!」
泣く? 泣いてるのか、オレは? なんで?
頭が混乱する。自分の何かが崩壊していく。
床が揺れた。オレ自身の崩壊に合わせるように……。
天井の崩落が加速度的に早まる。
聞こえる悲鳴。
……終わった。何もかもが……。
「ふぅ〜」
「ヒィャァァァァ!!!」
突然、耳の奥まで、ヒンヤリとする息を吹き込まれたオレは、みっともない声をあげて床に転がった。
何事かと顔をあげた時には、地震は止まっていた。
「いいねぇ〜♪ いいねぇ〜♪ 相変わらず、いいリアクションだねぇ♪
だから、ダイちゃんは好きなのさ♪
ダイちゃん。お・ひ・さ。キャハ♪」
空気を読まない悪魔的な笑顔が、とても眩しかった。
ボクにもわかるように、説明してくれる?」
おお! まさか、異世界にもボク娘が!
しかも、ショートヘア!
やるな、旅女神レンダ!
現界に転生できたら、信者になると誓おう!
ソレイユがオレの尻をつねってくるが、魂魄移動されていないので痛くない!
しかし! リアクションを返さないのは流儀に反するので、ソレイユのお尻を撫でてやる。
可愛らしい「きゃっ」という声を聞きながら、オレはレンダの質問に答える。
「もちろん今日の交流会の話だ。これ以上やっても意味がない」
「おやおや、まともに会話ができる奴が来たと思ったら、結局なにもせず帰るのか?
自分で話を聞くことぐらいはできると言ったのは嘘だったのか?
まだなにも聞いてもらっていないが?」
豊穣神サクリフィシオが、はっきりと言ってくる。
だが、怒っているようではない。
きちんとした説明をしてくれと、言外に匂わせている。
「うん。サクリフィシオ殿の言いたいことはわかる。
ただ、ここまでの貴方がたの話を聞いて思ったことは、貴方がたは冥界を知らなさすぎるんだ。
誤解しないでもらいたい。これはもちろん貴方がたが悪い訳ではなく、これまでの対応係が、あまりにも歪んだ情報のみを伝えていたのが悪いんだ」
「だから、なんなのだ! お前の物言いは、さっきから迂遠すぎる!」
太陽神カサルティリオが、苛立たしげにそう言う。
せっかちだな、コイツは。
「このまま、誤った知識を持ったまま意見交換しても、相互理解を深めるのは不可能だと言うことだ。
まずは、冥界の魂運営システムを中心に、本当の冥界の姿を知ってもらうべきだと思う。
それも貴方がただけじゃなく、神族全員にだ。
できれば、来月に神族向けの冥界説明会を開催したい。
ここより広い場所、できれば全ての神が集まれるような場所があれば、提供してもらいたいんだが、可能かな?」
オレの質問に、10神の視線が、北神と南神に注がれる。
この2神が、神族の中心であることは間違いないようだ。
「可能だ」と北神。
「だが、冥界の接見の魔方陣を張るには広すぎるだろう」と南神。
「場所を貸してもらえるなら、問題ないよ。
俺たちの仮体に、直接魔方陣を書き込むから。
それから最初に言ったけど、オレが対応係になったのは今日なんだ。
しかも事前に通告もなかったから、神族に関しても、交流会のこれまでのシステムに関しても、勉強をする時間がなかった。貴方がたや他の神々に集まってもらうにはどうしたらいいのかな?」
「そうか。本当に貴殿は、緊急でこの場に派遣されたのだな。
そうとは知らず、先程は失礼した。
私は戦女神カラベラ。
一定以上の信仰地域を持つ神は、冥界から連絡用の通信魔方陣を付与されている。
現存する神の半数近くはこれで連絡が取れる。
使い方は、そちらで確認されるがよかろう。
だが、これを付与されていない存在の弱い神は、冥界の存在すら知らない可能性があるが、そういった神も呼ぶのか?」
すぐに頷く。
「オレはそうしたいと思っている。
できれば、冥界と神族との新しい約束事を明文化する為のきっかけの場ともしたい。
その小さな神が、大きくならない保証なんてないからな。あとから、そんなこと聞いていないと憤られても困る。
呼び掛けは全ての神に行いたい。来るかどうかは本人の自由意思に任せるけど」
カラベラが頷く。
「承知した。冥界側が自ら情報を開示してくれるのならば、私は協力しよう。今後、我らの関係をどうするかは、その後に話会えば良い。
知り合いの神々には私からも呼び掛けておこう。
冥界からの連絡が有る無しに関わらず、参加できるとな」
戦女神カラベラがそう表明すると、他の神々も次々に参加と協力を表明していく。
そして、10神が表明し終え、北神と南神に目を向ける。
「いいだろう。神界大評議場の使用を認める」と北神。
「しかし、お主に決定権はないと言ったな。
本当に冥界の情報を開示するような集会を開けるのか?」と南神。
「大丈夫だと思う。直接の上司はともかく、転生役所の最高責任者を丸め込む自信はある!」
オレの言葉に月女神サラーが笑う。
「それって、充分大物だと思うのだけれど♪」
とりあえず来月の開催を目指し、詳しい日時は、決定次第連絡魔方陣で通知することに決まった。
解散となり、全ての神を見送ると、部屋の片付けを職員に任せ、ソレイユを連れ、報告のため転生役所の神類部オフィスへと戻る。
オフィスに入ると神類部部長と交流課課長が駆け寄って来た。
「どうだった 神たちは考えを改めたか 」
「そうだぞ! 奴等から冥界の魂は守れそうなのか 」
詰め寄ってくる二人を宥めつつ、オレは今回の交流会の結果と、今後の計画について話した。
「なにを勝手なことをやっとるんだ、君は!」
「そうだぞ! 交流会の内容を考えるのは、企画係の仕事だぞ。越権行為だぞ!」
え?
「だって! オレは魂魄の磨耗と消滅を改善するために!」
「だから! 交流会に来る神どもを押さえつければいいことだろう!」
「そうだぞ! あいつらはこちらが注魂してやらなきゃ、神になれなかったんだぞ! 従わせるべきだぞ!」
正気か、こいつら?
「ブチブチブッチさんが、秘書課推薦の強い魂だと言うから期待していたのだがね!」
「そうだぞ! 私たちの言葉の意味を取り違えるなんて、とんだ期待外れだぞ!」
駄目だ。こいつら恒久的な解決をするつもりがない。
現界を舐めている。交流の言葉の意味をわかっていない。
オレの方が役職が低いのはわかっている。
でも駄目だ。
こいつらは、一度誰かに雷を落とされないと、痛い目をみないとわからないのだ。
オレは大きく息を吸い込んだ。
「ふざけるな 」
ドギャーン!! ガジャーン!! ガラガラガラガラ!
オフィスに響く、オレの怒号。
怒号に続く、雷が天井を破壊し、二人に降り注ぐ音。
あ、あれ? 比喩! 比喩だよね!
『雷を落とす』は比喩だよね? 冥界に雲ないよね
イメージしてないよ! ちょっと比喩表現を思い浮かべただけだよ!
しかし現実として、神類部部長と交流課課長の二人が雷にうたれ、床の上に転がり痙攣している。
怪我なんかしない頑丈なはずの仮体が、うっすらと焦げて、煙をあげていた。
「ダ、ダイチさん。これって、まさか……」
「違うんだ! イメージなんてこれっぽっちも抱いてなかったんだ! 
ただ、オレの国に比喩って言葉があって
ただそれだけで こんなことするつもりじゃなかったんだ 」
ソレイユの顔が、真っ青になっている。
そりゃそうだ。こんなことをしでかすような奴が恐くないわけない。
ソレイユに嫌われたくない。嫌われたくないのに!
やっぱり、オレなんかがヤル気なんて出しちゃいけなかったんだ!
死を迎える時まで、ただ静かに暮らしているべきだったんだ!
「落ちついて! 落ちついてください、ダイチさん!
わかっていますから。あなたがこれを意図的にやるような魂でないことは、よくわかっています!
だから、お願い。泣かないで!」
泣く? 泣いてるのか、オレは? なんで?
頭が混乱する。自分の何かが崩壊していく。
床が揺れた。オレ自身の崩壊に合わせるように……。
天井の崩落が加速度的に早まる。
聞こえる悲鳴。
……終わった。何もかもが……。
「ふぅ〜」
「ヒィャァァァァ!!!」
突然、耳の奥まで、ヒンヤリとする息を吹き込まれたオレは、みっともない声をあげて床に転がった。
何事かと顔をあげた時には、地震は止まっていた。
「いいねぇ〜♪ いいねぇ〜♪ 相変わらず、いいリアクションだねぇ♪
だから、ダイちゃんは好きなのさ♪
ダイちゃん。お・ひ・さ。キャハ♪」
空気を読まない悪魔的な笑顔が、とても眩しかった。
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