聖剣に選ばれたスライムは、魔物なので勇者失格です!?

アイララ

浮遊と封印と転生と

転生の途中、突然空が暗くなる。全身が浮遊したまま、辺りの空が不穏の黒に染まっていく。

『この様子だと、どうやら魔王もこの転生を歓迎してるようね。』

私を包む光の粒子が分離し、人の形を取り声を発した。おそらく、先ほどまで頭の中に響いていた声の主だろう。

魔王の歓迎がどんな物は分からない。でも、間違いなく最悪な物だろう。なぜなら、魔王はこの転生を阻止したいだろうから。

『こうなったらさっさと転生を済まさないと!貴女、かなり身体がキツくなると思うけど我慢して!』

そう言うと同時に光が私を加速させ、押し潰される強烈な感覚と共に身体が動く。その加速を阻止しようと、後ろから黒い闇が襲ってくる。

闇は私を丸ごと飲み込む勢いで迫るが、少しずつ引き離される。その様子を見てると、この闇に殺されるという恐怖感が少しずつ薄れてきた。

目の前に魔王が現れるまでは。

手足に重たそうな鎖をつけ、口枷を付けられている。身体を満足に動かせないと思うのに、私を殺せそうな迫力がある。

『来たわね、魔王。言っておくけど、この子には指一本触れさせないんだから。』

光の主と魔王が対峙する。光の主は自身の身体をどんどん光らせ、魔王は"なぜか"自身の闇を消し去った。

『あら?そんな事するなんてね。、私達と戦う気がないという意思表示のつもり?』

魔王はその言葉に反応せず、じっと私を見つめている。それも私を憐むような眼で。なぜそんな眼で見つめるのかな?

「ねぇ、魔王さん。そんな眼で見つめるって事は、戦う気がないと言いたいのよね。それなら何故ここへ来たの?」

魔王はその問いに答える代わりに、黒い液体を召喚し私に浴びせてきた。その突然の行動を光の主は阻止しようと、光の壁を張るがすり抜けてしまう。

そしてそのまま、魔王の姿は黒い闇へと消えて行った。

〜〜〜〜〜

『気配はなし、本当に消えたみたいね。大丈夫?って、、、えぇぇぇ!!!」

「いきなり大声出さないでよね。ねぇ?そんな声を出すくらい、液体を浴びた姿がそんなに変なの?」

『違うわ、いい?落ち着いて、ゆっくり自分の身体を見て。』

「自分の身体?どれどれ、、、何これ!?私の身体、液体になってる!?」

一瞬、自分の目を信じられなかった。私の身体が紫色の液体に変わっているという、非現実的な状態になっているからだ。

『そうよ、液体になってるの。より正確に言うなら、ダークスライムの体液ね。ダークスライムがどんなのかは知ってるかしら?』

「えぇ、少しは。確か紫色の、液体でできた魔物の事ですよね。という事は、、、私魔物になったんですか!!!???」

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