異世界転生してハーレムルートなのにヤンデレしか選択肢がないんだが?
06 閑話・異世界のバレンタインで地獄を見るウタキの話
「え、この世界にもバレンタインとかあんの」
ぶっちゃけ転移してくる前の平凡むしろマイナスな大学生である俺はバレンタインに縁がない。悲しいほど縁がない。やめろもう言わせんな泣きそうだ。
俺はイベントごとではしゃげるタイプでもないので男同士で慰めあうチョコを食べるとか、女子に逆チョコをするとかいうのもなかったから「バレンタイン」なんてイベントがそもそも頭にはなかったりする。言ってて死にたくなってきた。
「チョコレートじゃなくて手紙やお花を贈ったりもするんだけどね、はい、これ私から」
「エレーナからチョコ貰える世界線ってなに?俺死ぬの?」
「大丈夫よ、純 然 た る 義 理 で し か な い ん だから」
「なんで俺の心を深く抉ってくるの!?」
分かってはいたけどもうすこし俺に優しくしてくれてもいいじゃん。外伝ってことは俺の扱いがいつもよりひどいの目に見えてるわけでしょ?なんなの?作者は俺をどうしたいの?なんでいつもこういう感じなの?
まあでも、こんなのはいつもの戯れだ。たぶん問題は
「ウタキ様ぁ!わたくし、愛情に愛情をかけたチョコレートを持ってまいりましたわ!」
「……まあ、軟弱とはいえ一応な。他意はないからな!」
「あらあら、私たちもチョコレート持ってきたんですけど……」
「まあまあ、全部食べてもらえば大丈夫ですよ」
「ゆっうしゃっサマー!これフィーからだよお!」
「こ、これは私とアリアドネから、なんだけど」
「はいでたこういうの!わかってた!わかってたさ!」
まさかアリアドネくんとアルバートちゃんまで頭数に入ってるとは思わなかった。死にたい。いや生きるけど。
「じ、じゃあ来てくれた順ってことで…姫様の…」
かぱ…
…ぱたん
「? どうしたのウタキ?」
「おかしいおかしいおかしい、チョコって茶色いよな?なんかすっげー真っ赤だったんだけど?フランボワーズとかルビーチョコレートみたいなのじゃなくてどす黒い赤なんだけど!?」
「やっぱり王道かと思いまして」
「ありがとう姫様、そういう気遣いほんっとやめてほしいなあ俺!!」
察した。もう何も言うまい。
「つ、次はティタニアさ〈ジュワッ〉…あああああああ!?なに!?箱溶けたけど!?なんなの!?」
「しまった、傾けてしまったか」
「ティタニアさん、これ何が入ってたの?」
「最近手に入れた酸が……」
「私はケーキとかゼリーとかそういう意味で聞いたつもりだったんだけど……」
本編以上に雑に殺しにかかってくるのほんと辞めてほしい。心臓に悪い。
黒く炭化したような、あるいは不完全な吐しゃ物みたいな、そういう様相でぽたぽたと床に落ちるそれはジュワジュワと嫌な音を立てた。なにこれ怖い。
「く、クレアとクレオは?」
「さすがに私たちはそこまでは……」
「普通ですよ、いたって」
「それ本当だろうな?」
白い箱に葵リボンでラッピングされたそれを恐る恐るほどくと中にはカップケーキがふた……え?カップケーキ?カップケーキだよな?明らかにホイップクリーム分離してるしめっちゃ粉々だけどカップと思しきものがあるから多分そういうやつだよな?
ちらりと双子を見るとしょんぼりしながら口を開いた。
「お料理は、できるんですけど…お菓子はあんまり得意じゃなくて…」
「み、見栄えも悪いし、食べないほうがいいかもしれないんですけど、あげたくて」
「ごめんな!食うわ!」
いたって普通だった。疑ってごめん。壊滅的にお菓子作り下手なのに頑張ってくれた二人を無碍にするのは俺にはできない!
口に入れたそれは卵と砂糖と明らかに土の味がした。
「はー、はー、つぎ…フィーアか!」
「はいこれぇ、アタシの大好物まぜてあるよぉ!」
「こうぶつ」
「ゴキb「チェンジ!!!!!!!!」
透明な袋でラッピンクされたトリュフはいびつに、絶妙に丸くない上になんか飛び出してたんだけどやめようそういうの。うち飯系作品じゃないからまだセーフかもしれないけどそれにしたってそれはない。
「最後はアルバートさんね。そういえばアリアドネさんはどうしたの?」
「アリアドネは「俺は男だから関係ない」って来なかったの」
「まあ、男が男にチョコわたすのは絵面的にないわな」
アリアドネちゃんは体は女だけども。
「はい、どうぞ」
「やっとちゃんと見た目がまともなんだけど……」
「私はアリアドネのケーキとかも作ってたから!おいしくできてると思う!」
スティック状になったガトーショコラは片手でも食べやすいようにという配慮らしい。本編終わってるとは言え魔王サイドのほうが俺に優しいっていったいどういうことなんだと頭を抱えた。そりゃね、まあね、魔王組は俺のルートじゃないからそもそも病んでないんだけどさ。
「あとこれ、アリアドネから手紙」
「?」
『アルのチョコ貰うとか腹立つから呪った(手紙を見た瞬間から有効)』
「ウタキ?」
「もうやだ俺おうち帰る!!!!!!!!」
呪いはジョークだったらしいが、双子のチョコレートにせいで俺は丸一週間寝込んだ。
バレンタインなんて大嫌いだ。
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