異世界転生してハーレムルートなのにヤンデレしか選択肢がないんだが?

守村 肇

04 チュートリアルで飽きるタイプの人間





 そう俺だ。
 ゲームするけどチュートリアルで飽きるタイプだし、長編小説も序章読んで飽きるタイプだ。
 けどそんなことも言ってられそうにないのはよくわかる。




 「ここ最近、転生者の人数が多すぎます!」


 「キャパオーバーですよ!住民数の均衡が崩れてしまいます!」


 「局長おおおぉ、トストリアから移民受け入れ拒否されましたああああ!」




 「・・・忙しそうね」


 「そうだね」




 転生対応事務局、というのがあるらしい。
 簡単に言うと、転生そのもそが日常茶飯事のこの国で転生してきた人間の管理をするために作られた部署らしい。当然だけど、王室付き。


 管理といっても罪人じゃないし、閉じ込めとくわけにはいかないから名前を登録して管理ナンバーをつけて役職を選んでもらって好きなエリアで生活してもらうっていう方針なんだそうだ。


 元に戻る方法とかは事務局でもわからないけど、たまに唐突にいなくなる人が居るらしい。
 この世界は魔物に食べられたりすることもあるし、当然のように遭難もあるけど管理ナンバーがログから消えるっていうのはそもそもの存在が「ない」ことを意味するらしいので、少なくともこの世界からはいなくなったことになるって理屈らしい。


 らしいらしいって伝聞調だけど俺だってよくわからない。




 「あれっ、エレーナさん。珍しいッスね、新しい転生者さんッスか?」


 「そうなの、ウタキっていうのよ」




 肩に猫と狐を混ぜたような生き物をのせた男が通りががって、エレーナに声をかけた。
 見た目は、高校生くらいか。背は俺よりすこし低いけど。




 「お、久々に男の人ッスね~なんか親近感わくッス」


 「久々って、女のが多いのか?」


 「そうッスね、わりと。なんでかはよくわかんねッスけど」




 気さくに答えてくれる彼は人当たりのよいにこにこした顔で答えてくれた。
 髪は銀色っぽい白で、顔には入れ墨のような模様があるの以外は普通だ。耳が長いとかじゃなくてよかったなあとエレーナと彼を見ながら思った。




 「じゃあ、ウタキさんはーっと俺名乗ってないッスね、リトロスっていうッス。みんなからはリトって呼ばれてるッス」




 青年改めリトは、こいつは相棒のパキラっていうんッスよーと肩の生き物を撫でた。




 「エレーナさんも一緒についてきてもらうッス、まず問診みたいなことするんで」


 「問診」




 病院か。
 まあ、管理をする以上手続きというかいろいろと面倒くさいあれこれがあるんだろうが、リトも仕事だしやらないわけにもいかないんだろう。
 じじばばの談話室になっている近所の整骨院の待合室を思い出した。




 「じゃあ、名前、性別、年齢、国籍をお願いするッス」


 「国籍?」


 「そうッス。転生してくる人間でも黒髪だったり金髪だったりするッス。どっちにしてもこの国ではあり得ない色なんス。転生してくる前にどっかに所属が絶対あるのはみんな共通なんッスよ。国籍じゃなくてもなんかしらのコミュニティだったりね」




 ラノベでよく見るからなんとなく、日本人の男ってイメージがあるがどこにでもある一種の怪奇現象と同じってことだろう。ちょっとショック。




 「名前はミズガキ ウタキ。男で21才。国籍は日本ってところ」


 「ウタキさんも日本ッスか!多いッスねえ」




 多いらしい。
 理屈はわからないし、考えたくもないけどなんとなく俺と同じこと考えてるやつが他にもいそうで安心した。




 「管理コードは4675299623ッス。まあ、覚えてなくて大丈夫ッスけど」


 「コードは事務局が管理するために使ってるだけだからね」


 「ッス」




 日本にもあるな、マイナンバー法。俺、通知の紙なくしたけど。
 数字で管理するのがやり易いのはどこの世界でも共通なのかもしれない。




 「あ」


 「あ!?」




 ふいにリトが感動詞だけ発する。ちょっと待て「あ」ってなんだ、不穏な空気しか感じないぞ俺は一般人なんだやめてくれ頼むから。


 リトはなにやら険しい顔でデータの打ち込みをしている。そういえば打ち込みって言ってるけど、使ってるのはパソコンとかじゃなくて立方体の、茶色のでかいルービックキューブみたいなやつだ。
 理屈についてはもう考えるのをやめたい。





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