僕の家内は欲しがらない

ナルク

短編:僕の家内は欲しがらない

現在26男性会社員。
僕の家内は欲しがらない。
何を欲しがらないか?それは子供。

家内は43歳。17歳差である。

きっとこれを見て
「何それ」
「金目当てじゃない?」
「子供がいない未来だなんて」
「騙された?」

そう思う人が殆どだろうね。

実際、僕は家内との結婚を選択して実家とは音信不通になってしまったし、昔友人と思っていた人達に笑われてしまった。

あなたはここまでの情報で何を感じますか?何でもいいんですけどね、それがあなたの価値観なのだから。

この作品は深刻な悩みを打ち明けるものではありません。個人的に面白く書いているつもりではあるので、気軽に読み進めて欲しい。




家内との馴れ初めは奇怪だった。

21歳の頃、仕事中に知らない人からLINE電話がかかって来た。

その頃は社会人バスケサークルを自身で作り上げて、日々色んな人から連絡が来るからそれ関連だと思っていた。

正直に言うと彼女も欲しいと飢えていたので色んな出会い系サイトにも登録して放置していた気がする記憶もある...。

そんな事もあり、知らない人からのLINE電話も無視は出来ないと思い電話は繋がらなかったのでメッセージを送った。

自分「こんばんはさっきは仕事をしてて電話に出れなくてごめんね?なんの用事ですか?」

??「スマホが壊れててボタンが効かなくて勝手に電話をかけてしまったんです」

自分「へぇ~てっきり昔の友達かバスケ関連の応募かと思った」

??「違うけれど、バスケしてるの?」

自分「そうそう。よかったら見に来る?きっと楽しいよ」

ナナ「いきなりやね(笑)自己紹介まだでしたね。私ナナ。よろしくね(^_-)-☆」

ナルト「自分はナルト。ややこしいけどホンマに実名な(笑)」

ナナ「ウッソ~」

正直に言おう。
この時の自分は下心に溢れていた。

「スマホが壊れていたなんて白々しい言い訳だな」なんて内心思っていたが、このチャンスを何とか次につなげたい一心で話をしていた。

そんな中LINE通知が来た。
内心「よしよし」と思いながら見た通知には、当時の自分には衝撃の内容だった。

ナナ「私39歳だよ( *´艸`)それでもいいの?」

ナルト「へぇ~じゃあナナ姉さんだ(笑)全然いいよ!」

「いやいやいや、よくない、よくない!なんだ?!見間違えかな?おばさんやないか!」と、この当時の僕はそう思っていた。

でも自分からアプローチしておいて、やっぱ駄目なんて事は出来なかったので取り敢えずバスケは無しで食事に行く事に行く約束だけした。



約束の日。
電車で40分程で会える人だった。
幾らかの人は経験するだろうこの感覚。

「どんな人だろ?」
「年上でも綺麗な人がいいな」

とか、自分本意な甘い期待があるはずだ。
電車が待ち合わせ駅に到着し、軽く緊張する中LINEで知り合ったナナ姉さんを待つ。

ナナ姉さんは少し遅れて、黒の軽自動車で現れた。

先に注意しておくが、今から表現する人物は間違いなく我が妻である。

160センチにも満たないと思われる低身長、今時の若いもんでもしない様な金髪ボブショート、黒一色の服装にヒステリックグラマーというブランドに身を包み、顔・胸・お腹・尻・足・手に至る全てが豊満としか言えない肥満体系の女が現れたのだ。

お世辞にも可愛いとも綺麗とも言えない。


全世界のデブを敵に回すだろうがこの時は即帰ろうかと思った。

読み手であられる皆様に反感を買わない為にも一つ伝えておくべき事があるのだが、家内もその時の僕をみて車で拾わず帰ろうとしたらしい。

結局は似たもの同士だったのだ。

性格や行動には可愛らしい一面を感じられる事があった。

緊張していたのか車を看板にぶつけたり、目的地を間違えたり、本当に年上なのかと疑うくらいのドジっぷりには笑った。



それからなんやかんやで、僕とナナは一緒になる事を決めた。


まぁ大変だった。なんせまず金がない!貯金残高6000円弱!よし家内の財産を当てにしよう!なんて考えても家内も一切貯金がない。

「オメェ大丈夫か?」なんて思ったけれど、よくよく考えたら僕が大丈夫か?なんてブーメランしてしまう中で、救世主となったのが現在勤めている会社である。


給料の前払いや、ボーナスも前払いとか、働いている人達から祝金貰ったりでなんとか僕とナナ姉の新生活が始まった。


2LDK月々5万。頭金なし。自宅から会社まで徒歩10分。価格的にも通勤的にも良かったがなんせボロい。




結婚当初は机もタンスもテレビもカーテンもない。どんぶりが二つにお皿が2枚。

「アレ?親からの援助はなかったの?」という意見もあるが、自分の親からはなかった。

何故なら反対されたのを押し切って勝手に結婚したからだ。この話はまた後ほどに行おう。


ナナ姉側の母、今は義母ですね。義母からは30万円程助けて貰った。

最初は両親からも
「遊びなら、いね!」なんて言われたりしたが僕とナナが結婚を勝手に押し切ったら逆に喜んでくれた。




ここまではよくある話(?)
ここからが本題。
まぁ、家内は欲しがらない訳で当時は本当に悩みました。

少し話がそれますが、人って生き物は自分にベクトルを向けたがる性質を持ちます。

・自分がこう思ったからこうした。
・自分が感じたから正しい。

自分が、自分が、自分が、、、この感覚に気付ける人はどれくらい居るでしょうか?

基本的には相手にベクトルを向けて上げた方が物事というのは円滑に進みます。

・相手はどう感じるのか?
・相手が何を考えてるのか?

皆、大なり小なり承認欲求を持っていて、僕もその中の1人にしか過ぎない。

だから今でもよく「自分ベクトルだな」とやってしまってから反省する事がある。

話を戻そう。

家内が子供を欲しがらない理由をよく考えた。

最初は自分ベクトルで
「俺は愛されてないのか」
「ただ利用されているのか」

愛した筈のナナを疑う思考が過った。
これが自分にしかベクトルが向いてない証拠である。


そこから思考を重ねた
「僕と家内にある年齢差」
「それぞれの家庭での育ち方」
「僕と家内にある価値観の違い」

そもそも僕とナナの間には
多くの違いに溢れていた。

好きな味付けが違う。
趣味も違う。
考え方も違う。

違う事だらけで「何で俺この人と結婚したんだ?」と笑うくらい違う。

でも確かにある感情がある。
結婚すると決めた時、ナナの全てを許そうと決めた。必ず幸せにすると決めた。

結論から言うと
「子供を欲しがらない妻も良いではないか」
「子供が全てではない」
と考えることに決めた。

ナナは性格も良い方ではないのだ。年齢だけが重なり、思考は中学生のまま止まり幼い。

敵は作るし、料理は出来ないし、気は利かないし、言った事の反対を行くし、天邪鬼オッペケペーにも程がある。しかしそれが可愛く思えてしまった。愛おしいと思えてしまった。

自分も充分に狂っているのだろう。



それからと言うものの
僕は子供が欲しい何て言わなくなった。

家内もあれから辛そうな顔は見せない。

でも、この選択が最良だなんて思わない。

ここだけは少し真面目だ。

夫婦というのは苦楽を共にするという考えがあるかもしれないが、僕は違うと断言する。

夫婦以前に、夫は妻を悲しませない。妻を幸せにする者だ。苦を感じさせた時点で結婚の時に覚悟した想いに対して嘘をつく大罪を犯したのと同じだ。

妻も人間だ。そりゃ間違いの1つや2つはあるだろう。その間違いに気付いた時に後悔するのかもしれない。

その時に
「その間違いはナナのじゃない。僕がそう決めたから間違えたんだ。」と言える状態にしたい。

それが相手の人生を背負う事だと思うし、これこそが苦楽を共にする事だと思う。

ちょうど伝えたい事は伝えたのでそろそろお開きにしようと思います。

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