もしも理想のパーティー構成に実力以外が考慮されなかったら?

雪月 桜

勝機

「おふざけは、その辺にして、そろそろゴーレムの討伐について話すですます!」

俺とアイン、そして、もちこが盛り上がっている所へ割り込んで来たのは、力尽きていたはずのミルクだった。

「ミルク! 無事だったのか!」

「うっすらと魔力は感じてたから、心配してなかったけど、もう動けるん?」

「心配ご無用です! そもそも、ミルクは別に倒れてなんかないですます! ちょっと、疲れて横になってただけですから!」

俺達の懸念を笑い飛ばすように、ミルクは得意気に胸を張った。

鎧越しなので良く見えないが、その大きな胸は、さぞ揺れている事だろう。

それはそうと、若干、目が泳いでいるし、冷や汗と思しき雫が頬に流れている。

これは、どう見ても強がりだな。

「へー、寝てただけかぁ。じゃあ、ミルクが倒れた時、俺がなんて叫んだか当ててみろよ」

「えっ? ……えっと、ほらっ、ハルさんの事だから『もちこ最高!』とか『おっぱい大好き!』とか『寝ているミルクを襲ってやるぜ!』とか言ってたに違いないですます!」

「ミルクの中で俺は、どんだけ変態になってるんだよ!? それにアインと、もちこは今きたばっかりだ。つーか、‘‘言ってたに違いない’’って、明らかに予想じゃねーか!」

「う、うるさいですます! そんなことよりゴーレムの対策会議を始めますですよ! いつ動き出すか分からないんですから!」

「まぁ、それもそやね~。お兄さん、続きは家に帰ってからな?」

「そ、それもそうだな」

自分でも、いい加減、この脱線癖は直した方がいいと思うんだけど、いかんせん無意識だからなぁ。

どこに気を付ければ良いのか分からん。

「……こほん。さて、とにかく、とある助っ人のお陰でゴーレムは既に虫の息だと思う。あれを見てくれ」

そう言って、俺はゴーレムの胸部を指差した。

その部分だけ岩肌が砕けて、露出したケルンが覗いており、亀裂が入っている様子も見て取れる。

「本来、体に対するダメージは、全てケルンに蓄積されるはずだよな? だけど、どういう訳か、ゴーレムの体の一部がダメージで砕けている。そこから見えるケルンも傷だらけだ。詳しいことは分からないけど、あいつが弱ってるのは確かだと思う」

「ウチも賛成や。ついでに言うと、あんな巨大なゴーレムが自然に発生したなんて聞いたことないわ。何かしらの意図で作られたと考えるべきやろね」

「ってことは、たぶん例の黒ローブが【笛】を使って何かしたんですます! 例えば、ゴーレムを操って無理やり合体させたとか!」

「黒ローブ? なに、昨日の奴が脱走したん?」

「あー、細かい話は後でな。簡単に言うと別人だ。どうやら、もう一人いたらしい」

「なるほどなぁ。それで、その黒ローブがモンスターを操る【笛】を持ってると。ゴーレムは岩の塊みたいなもんやし、確かに繋げられん事もないかもね。ただ、相当な負荷が掛かってるみたいやけど。いま動いてへんのも、それが原因とちゃう?」

「だったら、あのボロボロのケルンを直接叩いてやれば、一気に崩れるんじゃね?」

「可能性は、あると思いますです! その方向で考えてみましょう!」

それから俺達は、ゴーレムのケルンを砕くための作戦について話し合ったのだった。

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