もしも理想のパーティー構成に実力以外が考慮されなかったら?

雪月 桜

真相は乙女の秘密

「それぇっ♪ やぁっ♪ とおぅっ♪」

謎の美女が可愛らしい掛け声を放つ度に、一瞬遅れて爆音が轟き、全ての音を呑み込んでいく。

そして、馬鹿みたいな威力の砲撃を連発されたゴーレムは、ついに体勢を崩し、背中から倒れ込んだ。

次の瞬間、大地震に匹敵する揺れが辺りを襲い、粉塵が舞い上がり、大地が悲鳴を上げる。

「うわっ、ああああああっ!?」

当然、俺も情けない声をあげて尻餅をついた。

そこから、なんとか体を捻って、うつ伏せになった俺は、頭を庇いつつ、揺れが収まるまで身を縮める。

しばらくして、グラグラという地響きが鳴り止んでから、辺りを見渡したが、その時には既に謎の美女の姿は無かった。

「いや、どんだけヤベェ奴だよ!? ゴーレムなんかより、よっぽど怖いわ! つーか、どうせなら最後までキッチリ仕留めて帰ってくれよ!」

さっきまでの悲壮感は、どこへやら。

謎の美女は俺の無気力と、シリアスな空気まで吹き飛ばし、風のように去っていた。

「おーいっ! お兄さーん! すごい地震やったねぇ!」

「アイン!? それに、もちこまで!」

加えて、その風は、新たな別の風を運んできたようだ。

街の方から走ってくる、アインと、もちこの姿が見えた。

「お前、今まで何してたんだよ! 通信アイテムも繋がらないし!」

「あー、えっと……そ、それについては後回しでええ? というか、出来ればミルクはんに説明させてほしいんやけど。ウチも一応、女の子やから、お兄さんに話すのは、ちょっと……」

「はあ? 何ワケわからんことを」

適当なことを言って誤魔化すつもりなのか、と勘ぐった俺は、アインの追及を続けようとした。

しかし、足元の小さな衝撃に気を取られて、開きかけた口を閉じる。

「……(ぴょんぴょん)」

「うん? どうした、もちこ」

何事かと思って視線を下げると、もちこが何かを訴えるように体当たりしていた。

その様子をつぶさに観察すると、どうやらデリカシーがない、とたしなめているような気がする。

「そうは言ってもな……。これは、大事なことなんだぞ?」

「……(ぽよんぽよんっ)」

「えっ? もちこが、ずっと一緒にいたから大丈夫? やましい事はしてない? ……うーん、もちこが、そこまで言うなら信じるけどさ」

「なんで、この人は当たり前のようにモンスターと意志疎通してんのやろな~。しかも、もちこはん、ウチより信頼されてるし……」

「別にモンスターと意志疎通なんて出来ないぞ? もちこだから分かるんだ。これぞ、愛の為せる技だな!」

「……(ぷるぷる)」

「ちなみに、これは? 震えて否定してんの? それとも怯えてんの?」

「なに言ってるんだ、失礼だなぁ。照れてるに決まってんだろ?」

「……(スリスリ)」

俺の言葉を肯定するように、足元にすり寄って来る、もちこ。

そんな、俺ともちこの相思相愛ぶりを見せつけられたアインは、胸焼けしたような顔を浮かべて溜め息を吐いたのだった。

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