もしも理想のパーティー構成に実力以外が考慮されなかったら?

雪月 桜

リンネの正体

「さて、ミルクの頬っぺたも堪能したことだし、そろそろ本題に移ろうかしら」

それまで、膝に乗せていたミルクをベッドに降ろして、真面目な顔つきになったプリムが、そう言った。

ただ、散々ミルクを弄り倒して、欲求が満たされたからか、心なしか艶々した様子だ。

「ん? 本題って、俺達に協力してくれる話じゃないのか?」

「それは、どちらかというと、ついでよ。別に急ぐ話でもないし。わたくしが本当に気にしているのは、昨日、何処からともなく教会に現れた女の事よ。あの時は緊迫していたから追及できなかったけど。……貴方、リンネって呼んでたわね?」

「……あっ」

そう言えば、そうだった!

俺も、あの時は混乱してたから、気にする余裕が全く無かったけど、思いっきり名前で呼んでたじゃん!

「あれ? そういえば何でリンネさんが居たんですます? たしか、他の街にいったハズじゃ?」

「え、えーっと、それは、だなぁ」

慌てて頭を回転させるが、ロクな言い訳が浮かばない。

「それと、あの子、どことなく女神リンネの像に似ていた気がするのよね。しかも、わたくしの見間違いでなければ、まるで像から飛び出したようだったわ。不思議な事もあるものね?」

こちらに考える暇を与えず、畳み掛けてくるプリムは、非常に嗜虐的な笑みを浮かべている。

うっ、美人のこういう顔は、ちょっとゾクッとするな。

別に俺は、カムみたいなMじゃないけどな!

「ハッ!? ミルクも、いま気付きました! 確かに女神像に似てますし、名前も同じですます!」

「まさか、とは思うけど……女神リンネ本人だなんて言わないわよね?」

「ま、まっさか~。神様が、その辺で呑気に歩いてる訳ないだろ? 他人の空似だって。前に言ってた女神リンネの目撃情報って奴も、アイツのことなんじゃないか?」

なんとか笑みを浮かべて、そう返したものの、頬が引きつるのは止められない。

「ホントかぁ? プリムさんを騙しやがったら、承知しねぇぞ!」

チンピラのように、こちらを睨んでくるカムに、俺は慌てて首を振る。

「本当だって!」

「そう……。なら良いのだけど。まぁ、女神像よりも間抜けな雰囲気だったし、何の力も感じなかったわ。突然、現れたのも何かタネがあるんでしょうね」

「そうそう! 前にミルクが、芸人に向いてるみたいな事を言ってたし、それで手品か何かを身に付けたんだよ! ……ちなみに、もしも女神だったら、どうしたんだ?」

返答によっては、やはりプリムと一緒には居られない。

借りについては別の形で返して貰うことになるな。

「別に? どうもしないわ。ただ避けるだけよ。腐っても神様なら、わたくしの力なんかじゃ、どうにも出来ないでしょうし」

それは、力さえあれば、どうこうする、と言っているようにも聞こえる。

「なぁ、なんで、そんなに神様が憎いんだ?」

この件にさえ目を瞑るなら、プリムの事は、別に嫌いじゃない。

治癒師としても頼りになるだろうし、時間さえ掛ければ気の良い仲間になれると思う。

だからこそ、この問題は何とか穏便に解決したかった。

「……貴方に話す気はないわ。少なくとも、今はまだ。どうしても知りたいなら、せいぜいわたくしの信頼を勝ち取ってみることね」

「まっ、お前には無理だろうがな! 俺だって、プリムさんにしてもらうために相当、苦労したんだぜ。ともなれば、なおさらだ!」

誇らしげに胸を張り、ドヤ顔になるカムだったが、すぐさまプリムに睨まれる。

「うるさい、お黙り駄犬」

「はいぃっ! 失礼しました!」

相変わらず、カムに当たりがキツイ、プリムだが、今のは、どこか照れ隠しのような気配を感じた気がした。

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