もしも理想のパーティー構成に実力以外が考慮されなかったら?
◯◯体験
「……スゥスゥ」
「……むにゃむにゃ」
「……zzz (ぷるぷる)」
「……なんだ、この状況は?」
目が覚めたら、そこは楽園だった。
何を言っているのか分からないだろうが、俺も何が何だか分かっていない。
OK、現状を整理しつつ、もう少し詳しく説明しよう。
アインの屋敷の自室で、ベッドから顔だけ起こした俺は、目の前に広がる光景に頭を抱えている。
なにせ、右隣にミルク、反対にはリンネ、腹の上には、もちこがいて、4人で添い寝しているのだ。
加えて、変なオマケまで付いてるし。
まったく意味が分からない。
「そもそも、俺は……なんで、ここに?」
意識を失う前の記憶が、どうにも曖昧だ。
昨日、ミルクの悩みを聞いて……それから、どうしたんだっけ?
「教会から皆で運んで来たんよ? お兄さん、重かったわ~。感謝してな?」
俺の疑問に答えをもたらしたのは、ドアを開けて入ってきたアインだった。
随分とタイミングの良い登場だな。
にしても、教会……?
「そうか、思い出した。俺は黒ローブと戦って……」
「そっ。見事に相討ちで、ぶっ倒れたんよ。ミルクはんは、わんわん泣き出すし、プリムはんは解呪に手を貸せって言い出すし、一緒にいた騎士団は滅多にない大事件で大騒ぎやし、無茶苦茶やったで? それで、当の本人たちは呑気に寝てるんやから堪ったもんやないわ~」
俺に事情を説明しつつ、ベッドの傍の椅子に腰掛けるアイン。
一方、俺は身動きで3人を起こさないように、寝転んだまま話を続ける。
「いやぁ、一応、命懸けの死闘の果てだったんだけど」
「だったら、ウチらを頼ってほしかったわ。まったく……落ち込んだミルクちゃんを励ます手立てがあるって言うから、留守番を引き受けたのに」
「それについては、なんとか解決策を見つけたんだぞ? その帰りに色々あっただけで……」
「その色々が問題、大アリなんよ。昨日は後始末で大忙しや」
そうか、もう日が変わってるのか。
道理で気分がスッキリしている訳だ。
あれだけの戦闘の後なのに、疲れも殆ど感じないし。
「……申し訳ない」
俺なりの考えがあったとはいえ、ミルクを泣かせ、アインに迷惑を掛けたのは事実だ。
俺は余計な言い訳を重ねず、真摯に頭を下げた。
……体勢は寝転んだままだけど。
「……よし! 素直に謝ったから、ウチは、もうええよ。ミルクちゃんのフォローは自分でやりや?」
俺の謝罪に、アインは後腐れのない、晴れやかな笑みを浮かべてくれた。
「あぁ、分かってる。……ところで、ずっと気になってたんだけど、これは何だ?」
そう言って、俺は両手に嵌められた手錠をアインに示す。
手錠はミルクとリンネ、それぞれの手に繋がっており、俺は二人と離れられない状態だ。
見たところ、鍵穴が存在しないので、恐らくはアインの特注品だろう。
昨日の‘‘後始末’’とやらも詳しく聞きたいが、どう考えても、こちらの話が先である。
……主に生理現象的な理由で。
「ん? お兄さん、知らんの? それは手錠って言って、主に犯罪者を拘束するための……」
「モノは知ってるよ! 何で俺に嵌められてんのかって話!」
「ミルクはんに頼まれたんよ。お兄さんは命懸けの無茶した前科アリやしなぁ」
「さっき、許してくれたじゃん!?」
「昨日の問題については、水に流したよ? でも再発の防止は、また別の話やね~。それに、ミルクはんの意見も聞いてないし。あっ、ちなみに24時間たてば充填された魔力が尽きて、勝手に外れるから心配いらんよ? まぁ、再充填は何度でも可能やけど」
「……つまり、二人を説得するまで外して貰えないと?」
「そういう事。まぁ、二人も、もう起きるやろうし、そない焦らんでも……」
「……なんだ」
「えっ?」
「……漏れそうなんだ」
「……あー。えっと、その……。し、尿瓶ならあるよ?」
困ったような笑みを浮かべつつ、アイテムポーチから【ソレ】を取り出すアイン。
くっ、普段は澄ました顔してる癖に、こんな時だけ恥ずかしそうに赤くなるなよ。
ギャップ萌えで、グッとくるだろうが!
……なんて、言ってる余裕も、あまりない。
「今すぐ外せないのか!?」
「時間経過でしか外れへんよ。ミルクちゃんの注文でな?」
「だぁっ、くそっ! 分かったよ、もう尿瓶で良いよ! ただし、二人が起きないように細工して、アインは外に出ててくれ!」
「りょ、了解や!」
その後、俺は人生初の尿瓶体験に苦労しつつ、なんとか事なきを得たのだった。
……うぅ、もう、お婿に行けない。
「……むにゃむにゃ」
「……zzz (ぷるぷる)」
「……なんだ、この状況は?」
目が覚めたら、そこは楽園だった。
何を言っているのか分からないだろうが、俺も何が何だか分かっていない。
OK、現状を整理しつつ、もう少し詳しく説明しよう。
アインの屋敷の自室で、ベッドから顔だけ起こした俺は、目の前に広がる光景に頭を抱えている。
なにせ、右隣にミルク、反対にはリンネ、腹の上には、もちこがいて、4人で添い寝しているのだ。
加えて、変なオマケまで付いてるし。
まったく意味が分からない。
「そもそも、俺は……なんで、ここに?」
意識を失う前の記憶が、どうにも曖昧だ。
昨日、ミルクの悩みを聞いて……それから、どうしたんだっけ?
「教会から皆で運んで来たんよ? お兄さん、重かったわ~。感謝してな?」
俺の疑問に答えをもたらしたのは、ドアを開けて入ってきたアインだった。
随分とタイミングの良い登場だな。
にしても、教会……?
「そうか、思い出した。俺は黒ローブと戦って……」
「そっ。見事に相討ちで、ぶっ倒れたんよ。ミルクはんは、わんわん泣き出すし、プリムはんは解呪に手を貸せって言い出すし、一緒にいた騎士団は滅多にない大事件で大騒ぎやし、無茶苦茶やったで? それで、当の本人たちは呑気に寝てるんやから堪ったもんやないわ~」
俺に事情を説明しつつ、ベッドの傍の椅子に腰掛けるアイン。
一方、俺は身動きで3人を起こさないように、寝転んだまま話を続ける。
「いやぁ、一応、命懸けの死闘の果てだったんだけど」
「だったら、ウチらを頼ってほしかったわ。まったく……落ち込んだミルクちゃんを励ます手立てがあるって言うから、留守番を引き受けたのに」
「それについては、なんとか解決策を見つけたんだぞ? その帰りに色々あっただけで……」
「その色々が問題、大アリなんよ。昨日は後始末で大忙しや」
そうか、もう日が変わってるのか。
道理で気分がスッキリしている訳だ。
あれだけの戦闘の後なのに、疲れも殆ど感じないし。
「……申し訳ない」
俺なりの考えがあったとはいえ、ミルクを泣かせ、アインに迷惑を掛けたのは事実だ。
俺は余計な言い訳を重ねず、真摯に頭を下げた。
……体勢は寝転んだままだけど。
「……よし! 素直に謝ったから、ウチは、もうええよ。ミルクちゃんのフォローは自分でやりや?」
俺の謝罪に、アインは後腐れのない、晴れやかな笑みを浮かべてくれた。
「あぁ、分かってる。……ところで、ずっと気になってたんだけど、これは何だ?」
そう言って、俺は両手に嵌められた手錠をアインに示す。
手錠はミルクとリンネ、それぞれの手に繋がっており、俺は二人と離れられない状態だ。
見たところ、鍵穴が存在しないので、恐らくはアインの特注品だろう。
昨日の‘‘後始末’’とやらも詳しく聞きたいが、どう考えても、こちらの話が先である。
……主に生理現象的な理由で。
「ん? お兄さん、知らんの? それは手錠って言って、主に犯罪者を拘束するための……」
「モノは知ってるよ! 何で俺に嵌められてんのかって話!」
「ミルクはんに頼まれたんよ。お兄さんは命懸けの無茶した前科アリやしなぁ」
「さっき、許してくれたじゃん!?」
「昨日の問題については、水に流したよ? でも再発の防止は、また別の話やね~。それに、ミルクはんの意見も聞いてないし。あっ、ちなみに24時間たてば充填された魔力が尽きて、勝手に外れるから心配いらんよ? まぁ、再充填は何度でも可能やけど」
「……つまり、二人を説得するまで外して貰えないと?」
「そういう事。まぁ、二人も、もう起きるやろうし、そない焦らんでも……」
「……なんだ」
「えっ?」
「……漏れそうなんだ」
「……あー。えっと、その……。し、尿瓶ならあるよ?」
困ったような笑みを浮かべつつ、アイテムポーチから【ソレ】を取り出すアイン。
くっ、普段は澄ました顔してる癖に、こんな時だけ恥ずかしそうに赤くなるなよ。
ギャップ萌えで、グッとくるだろうが!
……なんて、言ってる余裕も、あまりない。
「今すぐ外せないのか!?」
「時間経過でしか外れへんよ。ミルクちゃんの注文でな?」
「だぁっ、くそっ! 分かったよ、もう尿瓶で良いよ! ただし、二人が起きないように細工して、アインは外に出ててくれ!」
「りょ、了解や!」
その後、俺は人生初の尿瓶体験に苦労しつつ、なんとか事なきを得たのだった。
……うぅ、もう、お婿に行けない。
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