もしも理想のパーティー構成に実力以外が考慮されなかったら?
仮説と実証
「白虹丸が……?」
昨日の事件の元凶が、既に愛用していると言っても過言ではないほど愛着のある、白虹丸だと告げられて、俺は思わず腰に目を落とした。
そこには、白虹丸が裸のまま、ぶら下がっている。
ベルトを通す穴に無理矢理、突っ込んでいる形だ。
少し不格好だが、すぐに抜き差し出来る上、簡単に視界に入るので、失くした時に気付きやすい。
代替案が浮かぶまで、取りあえずは、これで通すつもりだ。
「白虹丸とは……?」
訝しげな様子で尋ねてくるキースに、俺は当然の答えを返す。
「えっ、この木刀だけど?」
「そ、そうか……。うん……僕は良いと思うぞ?」
「だよな! 俺の仲間は何故か微妙な反応だったけど、カッコいいよな! いや~、この良さが分かるなんて少し見直したわ!」
「う、うむ」
なにやら戸惑っている感があるキースだが、恐らく俺の熱量に当てられただけだろう。
さすがに急に手を取って、ぶんぶん振ったのは、やりすぎだったか。
しかし、意外な同士の発見に、俺の胸から溢れる衝動が抑えられなかったのだ、ここは大目に見て貰うとしよう。
「えっと、それで、話を戻したいのですが……」
俺達のやり取りを見守っていたリンネが、遠慮がちに声を掛けてきた。
おっと、俺としたことが、ついリンネを置き去りにしてしまっていたな。
「ああ、俺の白虹丸が原因って言ってたな。どういうことだ?」
「まず、その木刀が白虹樹から作られている、というアインさんの予想は的を射ていると思います。そして、白虹樹は幻素の吸収量が多く、変換効率にも優れた素材です。その白虹樹を加工して作られた木刀なら、魔法を使う際に影響を及ぼすような効果が付加されていても不思議じゃありません」
「例えば魔法の威力が上がるとか?」
「はい、ただし今回の場合は、魔法との親和性を高めると言った方が正しいかと」
そう言えば、俺が倒れた時にアインが何か呟いてたな。
相性が良すぎるとか何とか。
意識が薄れていたので、はっきりとは覚えてないけど。
「なるほどな~。でも、魔法と親和性が高まるって、普通に考えたら良いことだよな? 要するに魔法の適性が高くなるってことだろ?」
というか本当に、何で木刀なんか作ったんだろうな。
俺以外に需要ないだろ、この武器。
「まぁ、そうとも言えますが。少なくとも魔法を扱い慣れていない状態では、デメリットの方が大きいですね。今回のように【呑まれる】危険が高くなるので」
「ってことは、魔法に慣れるまで白虹丸が使えないのか?」
いくら魔法が使えても、白虹丸を手放したら本末転倒なんだけどな。
なんせ、魔法は体内の魔力が尽きたら使えなくなるし、そうなってしまえば只のカカシだ。
せいぜい自慢の逃げ足で敵を引き付けるくらいの貢献しか出来なくなる。
「いや、そうとも限らないだろう。君が魔法を使ったとき、その木刀は手に持っていたのか?」
キースの質問に、俺は昨日の記憶を掘り起こしてから頷いた。
「あー、そうだな。左手に白虹丸を持って、右手で魔法を使ってた」
「論理的に考えて、物理的な接点がなければ、装備の効果は発揮されないだろう。つまり、今のように腰に差した状態なら普通に魔法が使えるんじゃないか?」
「……お前、冴えてるな! んじゃ、さっそく——」
「おい、待て!? まだ決まった訳じゃないぞ!?」
適当に‘‘ウォルタ’’で確認するか、と手を掲げた瞬間、慌てたキースに取り押さえられる。
ついでに、‘‘なに店の中で魔法を使おうとしてんだ、アァン!?’’ とでも言いたげな、美人マスターの鋭い視線に射抜かれる羽目に。
その後、また【呑まれた】時のために、二人に見守って貰いつつ、俺はギルドの外で魔法の感触を確めたのだった。
そして、結果的には、キースの予想通り、白虹丸を腰に差した状態なら、問題なく魔法を使えると判明した。
これで、‘‘実は別の条件が関わってました’’なんてオチになったら、また【呑まれる】訳だが、現状では確かめる術がない。
そこの考察は保留にするとしよう。
ちなみに、初めて、まともに魔法を使った訳だが、やはり【持っていかれる】感覚はあった。
それを抑える感覚も何とか掴めたが、油断すれば一気に魔力を失うだろう。
しばらくは、ミルクやアインに付き添って貰いつつ、じっくり魔法の扱いに慣れるべきだな。
——キース達と別れた俺は、そんな事を考えながら1人、帰路についていた。
まさに、その時だ。
街の教会がある方角から、突如として轟音が鳴り響いたのは。
昨日の事件の元凶が、既に愛用していると言っても過言ではないほど愛着のある、白虹丸だと告げられて、俺は思わず腰に目を落とした。
そこには、白虹丸が裸のまま、ぶら下がっている。
ベルトを通す穴に無理矢理、突っ込んでいる形だ。
少し不格好だが、すぐに抜き差し出来る上、簡単に視界に入るので、失くした時に気付きやすい。
代替案が浮かぶまで、取りあえずは、これで通すつもりだ。
「白虹丸とは……?」
訝しげな様子で尋ねてくるキースに、俺は当然の答えを返す。
「えっ、この木刀だけど?」
「そ、そうか……。うん……僕は良いと思うぞ?」
「だよな! 俺の仲間は何故か微妙な反応だったけど、カッコいいよな! いや~、この良さが分かるなんて少し見直したわ!」
「う、うむ」
なにやら戸惑っている感があるキースだが、恐らく俺の熱量に当てられただけだろう。
さすがに急に手を取って、ぶんぶん振ったのは、やりすぎだったか。
しかし、意外な同士の発見に、俺の胸から溢れる衝動が抑えられなかったのだ、ここは大目に見て貰うとしよう。
「えっと、それで、話を戻したいのですが……」
俺達のやり取りを見守っていたリンネが、遠慮がちに声を掛けてきた。
おっと、俺としたことが、ついリンネを置き去りにしてしまっていたな。
「ああ、俺の白虹丸が原因って言ってたな。どういうことだ?」
「まず、その木刀が白虹樹から作られている、というアインさんの予想は的を射ていると思います。そして、白虹樹は幻素の吸収量が多く、変換効率にも優れた素材です。その白虹樹を加工して作られた木刀なら、魔法を使う際に影響を及ぼすような効果が付加されていても不思議じゃありません」
「例えば魔法の威力が上がるとか?」
「はい、ただし今回の場合は、魔法との親和性を高めると言った方が正しいかと」
そう言えば、俺が倒れた時にアインが何か呟いてたな。
相性が良すぎるとか何とか。
意識が薄れていたので、はっきりとは覚えてないけど。
「なるほどな~。でも、魔法と親和性が高まるって、普通に考えたら良いことだよな? 要するに魔法の適性が高くなるってことだろ?」
というか本当に、何で木刀なんか作ったんだろうな。
俺以外に需要ないだろ、この武器。
「まぁ、そうとも言えますが。少なくとも魔法を扱い慣れていない状態では、デメリットの方が大きいですね。今回のように【呑まれる】危険が高くなるので」
「ってことは、魔法に慣れるまで白虹丸が使えないのか?」
いくら魔法が使えても、白虹丸を手放したら本末転倒なんだけどな。
なんせ、魔法は体内の魔力が尽きたら使えなくなるし、そうなってしまえば只のカカシだ。
せいぜい自慢の逃げ足で敵を引き付けるくらいの貢献しか出来なくなる。
「いや、そうとも限らないだろう。君が魔法を使ったとき、その木刀は手に持っていたのか?」
キースの質問に、俺は昨日の記憶を掘り起こしてから頷いた。
「あー、そうだな。左手に白虹丸を持って、右手で魔法を使ってた」
「論理的に考えて、物理的な接点がなければ、装備の効果は発揮されないだろう。つまり、今のように腰に差した状態なら普通に魔法が使えるんじゃないか?」
「……お前、冴えてるな! んじゃ、さっそく——」
「おい、待て!? まだ決まった訳じゃないぞ!?」
適当に‘‘ウォルタ’’で確認するか、と手を掲げた瞬間、慌てたキースに取り押さえられる。
ついでに、‘‘なに店の中で魔法を使おうとしてんだ、アァン!?’’ とでも言いたげな、美人マスターの鋭い視線に射抜かれる羽目に。
その後、また【呑まれた】時のために、二人に見守って貰いつつ、俺はギルドの外で魔法の感触を確めたのだった。
そして、結果的には、キースの予想通り、白虹丸を腰に差した状態なら、問題なく魔法を使えると判明した。
これで、‘‘実は別の条件が関わってました’’なんてオチになったら、また【呑まれる】訳だが、現状では確かめる術がない。
そこの考察は保留にするとしよう。
ちなみに、初めて、まともに魔法を使った訳だが、やはり【持っていかれる】感覚はあった。
それを抑える感覚も何とか掴めたが、油断すれば一気に魔力を失うだろう。
しばらくは、ミルクやアインに付き添って貰いつつ、じっくり魔法の扱いに慣れるべきだな。
——キース達と別れた俺は、そんな事を考えながら1人、帰路についていた。
まさに、その時だ。
街の教会がある方角から、突如として轟音が鳴り響いたのは。
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