もしも理想のパーティー構成に実力以外が考慮されなかったら?
沈黙の館
『いらっしゃいませ! 武器屋【沈黙の館】にようこそ! 剣だろうと、斧だろうと、槍だろうと、お客様の要望には何でも応えさせて頂きます! お気軽に御相談ください!』
ミルクに連れられて、彼女の行きつけの武器屋にやって来た俺達は、そんなセリフが書かれたスケッチブックに出迎えられた。
……何を言っているか分からないだろうが、俺も何が何だか分かっていない。
まぁ、もう少し詳しく説明すると、スケッチブックを持った可憐な女の子が、カウンターの向こうから寄ってきた、という状況だ。
少女は桜色の髪と翡翠色の瞳が特徴的で、良く言えば大人しそうな、悪く言えば気弱そうな印象の子だった。
『えっ、なに? ここって声を出したら駄目な店?』
そんな意図を込めて、ミルクにジェスチャーを送る。
すると、すぐさま俺の意を理解してくれたらしいミルクが、笑顔で首を横に振った。
「あー、大丈夫ですます。この店の名前の由来は、店主、兼、鍛冶師の親父さんが寡黙な人だからです。それに加えて、お母さんも病弱なので、この子は幼い頃から話し相手が少なく、あまり喋り慣れていませんです。ついでに緊張しいなので、会話はスケッチブックを良く使ってる、という訳です」
「ほーん、なるほど。まぁ、簡単な会話なら、どもりながら話すより、セリフ見せた方が早いしな」
「…………(パァッ♪)」
「えっ、なんかめっちゃ笑顔になったんだけど?」
「自分で話さないなんて変な子だ……って、嫌な顔したり、怒ったりする人も多いですから。ハルさんが優しそうな人だって思ったみたいですます」
「…………(コクコク♪)」
「おぉ、今度はめっちゃ頷いてる。喋らないけど表情が素直で分かりやすいな~」
ミルクと同じく、少女の身長は俺よりも、かなり低い。
そして、その頭がちょうど良い位置にあったので、つい手を伸ばして撫でてしまう。
妹に良くやっていたから、というのも、関係あるかもしれない。
「よしよし。人と話すのが苦手でも店番してて偉いなぁ」
「…………(ポッ)」
ウザがられるかと思ったが、どうやら意外にも好感触な様子だ。
少女は照れつつも、心地良さそうに、大人しく俺に頭を預けていた。
「あ~、妹を思い出すなぁ。君も将来は、きっと美人さんになるぞっ。まぁ、俺の妹には敵わないだろうがな!」
「…………?」
「ん? ……あー、ハルさん。その子は男の子ですます」
………………………………はい?
「…………(コクコク)」
「マジで?」
「マジです」
「…………(ポッ)」
「いや、そこで照れるのは良く分からん」
『良く女の子に間違われます。お恥ずかしいです』
少女がスケッチブックのページをめくり、別のセリフを見せてくる。
なるほど、照れじゃなくて、恥ずかしくて顔が赤かったのね。
「あー、なんかごめんな。悪い意味で言ったつもりはないんだ」
「…………(ふるふる)」
少女が一生懸命、首を振って、気にしていない事をアピールしてくれる。
ぷるぷる震える、その姿は、どことなく、もちこを彷彿とさせるな。
「あれ? そういえば、もちこは? 良く見たらアインもいねぇし」
店内を見渡しても、二人の姿が見当たらない。
というか、入店してすぐ少女(いや、少年か)に気を取られたから、二人が店に入ったかも確認してない。
「お待たせ~」
と、ここでタイミング良く、アインがもちこと一緒に店に入ってくる。
「おい、どこ行ってたんだよ? 心配するだろ?」
「いや~、店に入る直前で、もちこちゃんが近くの屋台に興味を引かれたみたいでな? よくよく考えたら、もちこちゃんに朝ごはんあげて無かったなって。それで、買いに行ってたんよ」
「……そういえば、忘れてたな。すまん、ありがとう」
「気にせんで、ええよ~。それより、可愛い女の子やね? 店番してるん?」
「あー、もう、そのくだりは終わった」
「ん~?」
不思議そうな顔をするアインに、俺は入店してからの一連の流れを説明するのだった。
ミルクに連れられて、彼女の行きつけの武器屋にやって来た俺達は、そんなセリフが書かれたスケッチブックに出迎えられた。
……何を言っているか分からないだろうが、俺も何が何だか分かっていない。
まぁ、もう少し詳しく説明すると、スケッチブックを持った可憐な女の子が、カウンターの向こうから寄ってきた、という状況だ。
少女は桜色の髪と翡翠色の瞳が特徴的で、良く言えば大人しそうな、悪く言えば気弱そうな印象の子だった。
『えっ、なに? ここって声を出したら駄目な店?』
そんな意図を込めて、ミルクにジェスチャーを送る。
すると、すぐさま俺の意を理解してくれたらしいミルクが、笑顔で首を横に振った。
「あー、大丈夫ですます。この店の名前の由来は、店主、兼、鍛冶師の親父さんが寡黙な人だからです。それに加えて、お母さんも病弱なので、この子は幼い頃から話し相手が少なく、あまり喋り慣れていませんです。ついでに緊張しいなので、会話はスケッチブックを良く使ってる、という訳です」
「ほーん、なるほど。まぁ、簡単な会話なら、どもりながら話すより、セリフ見せた方が早いしな」
「…………(パァッ♪)」
「えっ、なんかめっちゃ笑顔になったんだけど?」
「自分で話さないなんて変な子だ……って、嫌な顔したり、怒ったりする人も多いですから。ハルさんが優しそうな人だって思ったみたいですます」
「…………(コクコク♪)」
「おぉ、今度はめっちゃ頷いてる。喋らないけど表情が素直で分かりやすいな~」
ミルクと同じく、少女の身長は俺よりも、かなり低い。
そして、その頭がちょうど良い位置にあったので、つい手を伸ばして撫でてしまう。
妹に良くやっていたから、というのも、関係あるかもしれない。
「よしよし。人と話すのが苦手でも店番してて偉いなぁ」
「…………(ポッ)」
ウザがられるかと思ったが、どうやら意外にも好感触な様子だ。
少女は照れつつも、心地良さそうに、大人しく俺に頭を預けていた。
「あ~、妹を思い出すなぁ。君も将来は、きっと美人さんになるぞっ。まぁ、俺の妹には敵わないだろうがな!」
「…………?」
「ん? ……あー、ハルさん。その子は男の子ですます」
………………………………はい?
「…………(コクコク)」
「マジで?」
「マジです」
「…………(ポッ)」
「いや、そこで照れるのは良く分からん」
『良く女の子に間違われます。お恥ずかしいです』
少女がスケッチブックのページをめくり、別のセリフを見せてくる。
なるほど、照れじゃなくて、恥ずかしくて顔が赤かったのね。
「あー、なんかごめんな。悪い意味で言ったつもりはないんだ」
「…………(ふるふる)」
少女が一生懸命、首を振って、気にしていない事をアピールしてくれる。
ぷるぷる震える、その姿は、どことなく、もちこを彷彿とさせるな。
「あれ? そういえば、もちこは? 良く見たらアインもいねぇし」
店内を見渡しても、二人の姿が見当たらない。
というか、入店してすぐ少女(いや、少年か)に気を取られたから、二人が店に入ったかも確認してない。
「お待たせ~」
と、ここでタイミング良く、アインがもちこと一緒に店に入ってくる。
「おい、どこ行ってたんだよ? 心配するだろ?」
「いや~、店に入る直前で、もちこちゃんが近くの屋台に興味を引かれたみたいでな? よくよく考えたら、もちこちゃんに朝ごはんあげて無かったなって。それで、買いに行ってたんよ」
「……そういえば、忘れてたな。すまん、ありがとう」
「気にせんで、ええよ~。それより、可愛い女の子やね? 店番してるん?」
「あー、もう、そのくだりは終わった」
「ん~?」
不思議そうな顔をするアインに、俺は入店してからの一連の流れを説明するのだった。
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