もしも理想のパーティー構成に実力以外が考慮されなかったら?

雪月 桜

夢?

「どうして、こんなことに……」

全身の感覚も、それを感じる意識も、全てがあやふやな世界。

視界はもやが掛かったように曖昧で、聴こえてくる悲鳴や怒号は、どこか別世界の出来事のように現実味がない。

そんな、何もかもが白く濁った世界に、俺は立っていた。

そうか、これは夢だ。

なら、別に気にする必要もない。

この世界で、どんな悲劇が起ころうと、現実には何の影響もないのだから。

「……ふざ、けるな。……ふざけんじゃねえぞ!?」

なのに、何故だろう。

夢の中の【俺】は、怒りで顔を歪め、泣きながら必死に叫んでいた。

この世界で、俺が唯一、認識できる、もう一人の【俺】の姿。

それは、この上なく悲壮感に満ちていて、それに当てられたように、俺の意識も黒く染まっていく気がした。

「返せ……。俺の仲間を……俺の恩人を……俺の日常を……ぜんぶ、ぜんぶ返しやがれッッッ!」

夢の中で、【俺】が駆け出す。

しかし、何かに弾かれたように、呆気なく宙を舞い、地面に倒れ伏した。

「俺に……俺に***があれば……」

【俺】のセリフに混じった、不自然なノイズ。

まるで、無機質な何かの意思に阻まれたような。

そして、ふと近くを見やれば、そこには既に息絶えた、俺の大切な——。

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