勝部??
第2章12 自宅訪問??下
マジカルウェポン。
何て恐ろしいゲームなのだろうか。
たった1回だが、俺はこのゲームの真実に気づいてしまった。
何が楽しく連想ゲームだよ!このメイドのお姉さん、ニコニコしながら何て女だ。
言葉とは武器である。
言葉の使い方次第で、相手を傷つけてしまうのだ。
「ほらほら?かつま?どうしたのかな?」
やめて!そんなニコニコしながら俺を見ないで!
クソ、ありさといったら何だ!
無難な答えは何だ?
「はぁい。じゃぁ元気よく言ってみよう!マジカル・ウェ・ポン♫ありさといったら?」
クソ!これしか思い浮かばねえ!
かつまは、勇気を振り絞って答えを出した。
しかし、それは地獄を招き寄せる、魔の呪文のような答えであった。
「ありさといったら・・可愛い」
「・・・・。」
バスの中を、短い沈黙が流れる。
皆んなの顔が見れない。
ち、ちくしょー。
無難な答えはこれだと思ったが、一番はクラスメイトだったか。
あれ?何この沈黙。
「な、なんだか聞いてはいけない事をきいてしまった気分だわ」
「う、うむ。かつま殿がそう思っていたとは思ってもいなかったでござる」
「ク、ク、ク。恥ずかしがる事はないぞゴン太」
「・・・ぐ、ぐぬぬぬ」
生き地獄とはこういう時に使う言葉なのだろうか。
顔を赤くしてしまうかつまを救ったのは、嬉しそうな顔をしたメイド服のお姉さんであった。
「何ですか?間違えていないはずですよ?」
ありさ=可愛いという連想は、間違えていないと主張するメイド服のお姉さんは、何故ゲームを中断するのかと、ニコニコしながら質問する。
「そ、そうね。じゃぁ続けましょうか」
「ハイ。じゃぁ茜ちゃんからだね。マジカル・ウェ・ポン♫可愛いといったら?」
成る程。
かつまは呼び捨てで、茜達はちゃん付けで呼ぶのかと、一人で納得していた。
そう思わなければ恥ずかしくてやってられないという理由もあったが・・。
お題は可愛いである。
茜は元気良く可愛いといったら何かを答えた。
「可愛いと言ったら、林道茜」
「・・・・。」
再びおとずれる短い沈黙。
オイオイ、この女自信満々に答えたぞ。
「う、うむ。茜殿は自分の事を可愛いと思っていたでござったか」
「い、いや待て。ここでそれは違うと言えるか?」
「違うと言えば茜をブスだと言っている事になってしまうな・・い、嫌、我は可愛いと思っているがな」
茜の目が怖いよ。
コイツ、これをよんで答えたのだろうか?
恐ろしい女よ。
当然、違うなどと言える訳もなく、ゲームは進む。
「林道茜といったら・・部長」
「異議あり!!」
ひかりが答えた無難な答えに、某ゲームの如く茜が右手をあげる。
「ひかり?他になかったのかな?」
笑顔がこえぇよ!
ひかりの中で茜=部長なのかと茜が詰め寄る。
若干涙目になりながら、ひかりはかつまに助けを求めた。
これが職権乱用というやつなのだろうか。
パワハラというやつなのだろうか。
「ま、まぁ待て茜。ゲームはまだ続くんだし、間違いでもないんだから」
「フ、フン。まぁいいわ」
ホッと胸を撫で下ろすひかり。
両腕を組んで背中を預ける茜。
キランと光る目を、メイド服のお姉さんだけは気付いていた。
「ふむ。拙者の番でござるな。部長といったら茜殿でござる」
「・・・・くっ!?」
こ、この彩、やりやがったな。
ハメ技という高等技術をみせてきやがった。
茜がビクっとしたのを、メイド服のお姉さんだけは気付いていた。
「茜といったら・・・ぶ、部長」
「ア、アンタって奴は・・・」
し、仕方ないじゃないか!
お願いだからその右拳をしまって!
「まぁ、いいわ。部長といったら林道茜」
ニヤリと微笑む茜。
ビクっと震えるひかり。
「り、林道茜といったら・・ぶ、部長」
茜から目を逸らしながら、ボソリと呟くひかり。
ピクっと頬がひきつる茜。
ビクっと震えるかつま。
「ふむ。部長といったら茜殿」
な、何だよこのループ。
ここで茜といったら部長と答えた所で、再び茜といったらと、お題がくるのは目にみえている。
俺か、ひかりがお題を変える必要があるのだが、ここでお題を変えるという事は、何か負けた気がしてしまう。
それならば、俺が答えるべき答えはコレしかない。
「茜といったら・・部長」
ピクピクっと頬がひきつる茜。
茜の目を見れないよ。
マジカルウェポンおそるべし。
「部長といったら林道茜」
若干、嫌、かなりアクセントをつける茜。
顔が青くなるひかり。
ひかりの中で、短い間の葛藤があったのだろう。
「ク、ク、ク。林道茜といったらワガママ」
「・・・い、異議あり!!」
何かに吹っ切れたのか、かつまと同じ答えにたどり着いたのだろうか、ひかりはこのループを脱出する為に、別の答えを出してきた。
ワガママと言われて、当然茜が右手をあげる。
ひ、ひかりのヤツ、これはこれで困るぞ。
俺を、茜が見ている事が雰囲気でわかる。
さ、さて、どうしたものか。
「ク、ク、ク。このループキャストを抜け出す勇気よ」
勇気だけで、抜けられるものではないがな。
自信満々な所、悪いなひかり。
茜が多数決を求めてくる。
茜の事をワガママだと認めてしまうと後が怖い。
それは違うとかつまは手をあげる。
「ふむ。アレがコウモリ野郎というヤツでござるか」
「卑劣なりかつま。だからお主はループキャストから抜け出せぬのだ」
手を挙げたのは、かつまと茜だけであった。
ふふふ。
何とでもいうが良い。
強いものには巻かれろという、素晴らしい言葉を知らぬのか。
「ワガママといったら林道茜殿でござる」
「・・・・さ、彩」
やめて!謝るから!茜がワガママだと認めなかった事、謝るから!お願いだからお題を変えて下さい。
「り、林道茜といったら・・・すごい」
「ん?何がすごいのかな?ねぇ?ねぇ?」
で、ですよね。
どうする?すごいワガママとか、すごい自己中とか、答えられる訳がない。
詰め寄るメイド服のお姉さん。
近い!近いよ!
何かいい匂いしてるから!
思わず目をそらすかつまは、モジモジしだす茜が
目に入った。
「よもや、すごい可愛いと言うつもりでござるか?」
ま、まずい。
どうする俺?何か気不味い雰囲気だぞ。
どうする?どうする?どうする?かつまは考える。
「す、すごい・・・部長っ痛!?」
「すすす凄い部長って何よ」
顔を真っ赤にしながら、拳を振り落とす茜。
「ま、待て!俺はお前を、凄い部長だと思っている!」
色んな意味でな。
「ま、まぁ私は凄い部長だけども・・どう凄いっていうのかを説明しなさいよ」
ワガママが凄い部長だよ!などという訳にはいかない。
「なるほど。そうだよな。ソレが解らない答えを返した俺は負けだな」
「こ、こら!逃げるな」
負けるが勝ちだったか、逃げるが勝ちだったか。
負けを認めたかつまに、お姉さんが飲み物を渡してきた。
「ハイかつま。一気飲みしてね♡呪文いるぅ?」
「いりません」
渡された透明なカップ。
オレンジ色から、オレンジジュースかと思い一気飲みするかつまであったが、思わず吹き出してしまう。
「罰ゲームだぞ♡」
「サ、サジージュースだ・・・と」
「・・・・かつま」
呼ばれた方へ顔を向けるかつまは固まってしまう。
かつまが吹き出したジュースが、三人にかかってしまっていた。
ま、不味い、嫌、まずいぞ。
どうする?ご褒美です♡などといえる訳もない。
「ご、ごめんなさい」
謝る事しか、かつまにはできなかった。
「あらあら。牛乳じゃなくて良かったですね」
「・・・どういう意味ですか?」
「こらかつま。セクハラだぞ♡」
か、可愛いよぉぉお!ハッ?落ち着け俺。
とりあえずタオルを、三人に手渡さなければいけないだろう。
お姉さんからタオルを受け取って、三人に手渡したりしていると、バスが止まる。
どうやらありさ停についたらしい。
「ありさお嬢様の服をお借りしてきますので、先にお風呂でもどうぞ」
スッと立ち上がって、メイド服のお姉さんは通路を譲る。
マジカルウェポン。
恐ろしいゲームであったぜ。
合コンで使えそうだなと、かつまは心のメモに刻むのであった。
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