勝部??
第2章 8 ときめきガール??
(主な登場人物)
・部長 林道 茜・副部長 敗北 勝負
・会計 山月 ありさ・騎士(書記) 結城 ひかり
・秘書 服部 彩・顧問 西園寺 麗子
【本編】
ありさがやりたい事をやろうという事で、ゲームをやる事になった俺たちは、恋愛シュミレーションゲーム『ときめきガール』をやっていたのだが、かつまは早くもこのゲーム否、女の子の恐ろしさを体験していた。
『光君は、松井れいらちゃんと知り合いました』
TV画面にはテロップが映し出され、TV画面の前ではひかりが悶絶していた。
れいらちゃんの声が、大好きなTVアニメ『世界を救った俺は魔王軍にスカウトされて・・』通称せかすくにでてくる人気No.1キャラ、レイラと同じ声優さんだからである。
リメイクされる度に声優さんが変わるのが普通なのだが、現代の技術で初代の声優さんの声が復刻されているのも、この作品が人気な理由である。
なるほど・・・。
ありさがこのゲームをやろうと言い出した理由が、かつまには理解できた。
ありさは仲間を作ろうとしているのだ。
このままでは、中二病で変態さんになってしまうおそれがある。
それはマズイ。
かつまはゲームの中止を呼びかけようとしたのだが、ひかりがありさに、嬉しそうに声をかける姿を見て、何も言えなくなってしまう。
「ありさ!ありさ!ありがとうな」
満面の笑みでありさに抱きつくひかり。
気持ちはわからなくもない。
好きな声優さんに、自分に対してではないが、名前を呼んでもらえたのだ。
悶絶級だろ?
アニメや漫画、ラノベ作家さん。
どうか、はいきたという名前のキャラクターを作って下さい。
かつまが、佐藤や鈴木という苗字を羨ましがっていると、恥ずかしくなったのか、ありさが少し大げさに咳をし、ゲームに戻ろうと提案する。
「よし。よいな?レイラちゃんとデデデデートをするぞ」
「まぁ慌てるなひかり。知り合っていきなりデートに誘うという行為は、別の目的があるのでは?と返って嫌われてしまう」
大興奮するひかりをなだめるように、ありさが解説する。
言われてみればそうなのだろう。
知り合って何回目でデートに誘うのが正解なのか、誰か教えてくれ。
「とりあえず、沢田に聞いてみよう」
ありさがひかりに、このゲームの攻略のコツを教える。
・・・おぉ!!沢田ーー!!
沢田は、色んな女の子の高感度を教えてくれる、有難い男なのである。
ありさが、コントローラを操作していく。
どうやら長かったオリエンテーションが終わりを告げ、受けたい授業の選択科目を選んでいるみたいだ。
基本的に大学は自由登校である。
この授業を受けようと決めたものの、月曜日にその授業がなければ、他の曜日にその授業を受ける事になる為、月曜日は休みになる。
ただし、必須科目や、授業を受ける回数などが決められており、それを達成しないと卒業できないのだ。
「なるほどね。受ける授業によって出会うビッチ達が変わるというわけね」
「待て。大学生=ビッチという発想はやめろ」
「ふむ。拙者はお市殿みたいな子と仲良くなりたいでござる」
「ク、クク馬鹿な事を言うでないぞ!レイラちゃんと仲良くなるのだ!」
何だかんだ言いながら、ときめきガールを楽しむ一同であった。
沢田にデートのコツを教わった後、じゃぁな!と帰り間際に手を振るシーンは、果たして必要なのだろうか?
かつまが首をかしげていると、ゲーム内では、どうやら光君の部屋についたようだ。
『何をしようか・・』
TV画面にはテロップが映し出され、カーソルキーがでてきた。
「おぉ!こやつひかりと同じでござるよ」
「こ、ここまで酷くないわい」
光君のパラメーターは全て0である。
一体どうやって、大学に入学したのか不思議なくらいだ。
ひかりみたいに賢者の杖でもつかったのか、これが噂に聞く裏口入学というやつなのか。
・・イケメンリッチー恐るべしだな。
かつまがそんな事を考えていると、茜が提案する。
「まずは勉強させましょう」
勉強、遊ぶ、働く、鍛える、沢田と遊ぶ。
基本的にこれらから選び、パラメーターをあげて行くのだが、沢田と遊ぶについては謎であった。
茜の提案に、レイラと遊ぶんだと、駄々をこねるひかりに対し、茜が解説する。
「いいひかり。世の中は頭が良くないとやっていけないものなのよ。例えば、貴女が遊びたいと思っている、れいらと遊んだとしましょう。食事の後、れいらが割り勘ね、と言ってきたらどうする?」
「愚か者!!レイラにお金を出させるとは・・恥を知れ」
「・・・質問を変えるわ。例えば貴女が好きなれいらは、頭の良い男と付き合うべきだとは思わない?」
「フ。レイラは中身を重視する素晴らしい女の子なのだ」
「・・・・。」
おぉ!!あの茜を黙らせるとは、ひかりのやつやるな!
ひかりに対してかつまが感激していると、ありさが話しの輪に入る。
「ひかり落ちつけ。多数決で、だろ?」
熱くなりすぎたひかりを、なだめるありさ。
こう言われてしまっては、ひかりも納得せざるを得ない。
「さすがはひかり。勉強しても3しかあがらないとは、恐れ入ったでござる」
「ぐぬぬぬ」
光君は図書館で勉強をするのだが、あまり成果はみられなかった。
勉強の息抜きなのか、本を探しに行くようだ。
『あっ、ごめんなさい』
眼鏡をかけた女の子が、光君に向かって謝罪する。
どうやら、お目当ての本が被ってしまい、譲ってくれるみたいだ。
これも定番ではあるが、ここから仲良くなる意味が俺には解らない。
共通の趣味を持っている異性だからという理由なのであれば、なろう作家達はどうすべきなのだ。
・・全く、なろう作家に出会いを求めるのは間違っているだろうか、否、間違っていない!
かつまがそんな事を考えていると、ここでも選択肢がでてきた。
A→ゆずる。
B→ゆずってもらう。
C→いっしょに読む。
「待て。一緒に読むって何だ?」
「嫌、一緒に読むのだろ?』
かつまの質問に、ありさが答えた。
さて、どうしようと言う質問に、多数決を取って決める。
「全く。馬鹿なんだから、本を読む暇があるなら勉強しなさい」
「ぐぬぬ」
「茜殿の言う通りでござる」
勝負部の多数決の結果はゆずるであった。
『や、優しいんですね。私は長井ゆきといいます』
長井ゆきの高感度があがった。
もしかしたら、この子は宇宙人なのかもしれないと、かつまは心配してしまう。
しかし、思っていたのと何か違う気がする。
チョロすぎないか?
いや、イケメンリッチーだからなのかもしれない。
もしくは、最初ありさがやろうとした百合ゲーがあまりにも難しすぎて、こうなっているかもしれない。
かつまがそんな事を思っていると、こうして光君の一日が終わりをつげるという、テロップが流れた。
次の日。
『あれ?光君もこの授業を受けるんだ』
授業開始前に、松井れいらから話しかけられる。
隣いい?と聞かれ、光君はどうぞっと答えた。
れいらが喋る度に、ぐはとか、く〜とか騒ぐひかり。
・・昨日知り合ってすぐに友達面するなんて、この子はもしかしたら、ビッチなのではないだろうか?
かつまが偏見の目をしていると、隣の方から声がかけられる。
『よっ!お二人さん♪』
沢田である。
この男はいつの間に、れいらと仲良くなったのだろうか。
逆に言えばれいらは、沢田とも仲良くなっているという事だ。
やはりビッチなのだろうか。
「何だこの男は!我の恋の応援をすると言っときながら、邪魔をしに来ているではないか!!」
言われてみれば、そうとれなくもない。
しかし、沢田だけは許してあげてほしい。
ひかりの中で、沢田の高感度が下がった。
そのまま家に帰った光。
さっきと同じように、カーソルキーが表示される。
「なぁ?せっかくだから、他のやつも見てないか」
「それもそうね。鍛えるを選んでみましょう」
全員同じ気持ちだったらしく、鍛えるを選ぶ。
『今日は体でも鍛えよう』
そう言って光君はジャージ姿に着替え、スポーツジムに向かっていった。
『初めてですか?私は光君の担当インストラクターを務めさせていただきます、松原あきといいます。宜しくね』
なるほど。
ジムに行って身体を鍛えるフリをして、インストラクターとの恋を鍛えるということなのか。
かつまが、コレ使えるかもしれないと、心の中でメモをとっていると、またもや選択肢がでてきた。
A→宜しくお願いします。
B→自分で勝手にやるから。
C→チェンジで。
「・・最後のを選んだらどうなるのかが、凄く気になる所ね」
「た、確かに。別のインストラクターが来るのか、別のジムに行けと言われるかも知れん」
「レ、レイラが来るのか?」
《それは絶対ない》「でござる」
四人が断固宣言する。
ここはあきには可哀想だが、気になってしまう為、Cを選んでみないか?ということで、Cのチェンジを選択する。
『フフフ。ギニュー隊長ですね』
松原あきの高感度があがった。
「いやいやいや。何でドラゴンボールネタなんだよ」
「ど、どうやらこの子はアニメが好きなようだな」
かつまの疑問にありさが答える。
・・・マジかよ!アニメが好きだなんて最高じゃん。
かつまの中で、松原あきの高感度があがった。
TV画面では、ドラゴンボールネタで盛り上がっているのか、あきがポーズをとりながら何か言っていた。
『お命ちょうだい』
このセリフが誰のものか解ってしまうかつまは、今度ジムに行ってみようと心に誓うのであった。
「ふむ。ここまでくるとひかりは最低でござるな」
「な、なんだと!!」
「確かに。色んな女の子とすぐ仲良くなってしまうあたり、女好きにもほどがあるわね」
「ぐはっ」
光君が責められているのに、女好きというワードにありさが反応する。
しかし、女の子と知り合わない事には、ゲームが進展しないんじゃないのか?と言うかつまの結論に、全員納得したようだ。
ここまでを整理しよう。
大学で出会ったビッチっぽい女の子松井れいら。
図書館で出会った人気アニメキャラっぽい女の子長井ゆき。
ジムで知り合ったアニメ好きな女の子松原あき。
後、残されているのは働くと沢田と遊ぶである。
「な、なぁ?これって何人ぐらいの女の子と知り会うんだ?」
「ん?あぁこのゲームはアップデートなどがあるから、人数は決まっていない」
ありさは続けて解説する。
かつまはその話しを聞いて感心してしまう。
初めてプレイする俺たちが全員を攻略すると、アップデートしますか?となり、増えていくそうだ。
クリアーする度に違う女の子と知り合えるのだから、ファンにはたまらないゲームだろう。
それに、女の子が増えまくるという事は、難易度もあがっていくという事になる。
デートを目撃される回数が増えたり、休みの日に複数の女の子からの遊びの誘いなど、要はハーレム状態になり、クリアーが難しくなるのだ。
「とりあえず、最後の働くを選びましょう」
茜の提案に反対の声はあがらなかった。
・・イケメンリッチーなのに働くだなんて、どう考えても女の子目当てだなこいつ。
働く。
何とも嫌な響きである。
できることなら一生お家で過ごせる機械を、作ってほしいと心の底から願っている。
『君が今日からバイトに入る光君だね?私はここのコンビニの店員をやっている渡辺まいだ』
「面接もなしで働くなんて、こいつ何者かしら」
「まぁゲームだからな」
茜の疑問にかつまがつっこむ。
どうやらここでも、選択肢を選ぶみたいだ。
A→宜しくお願いします。
B→やめさせて下さい。
C→歳幾つですか?
「こやつ、今日から働くと言っておいて、辞めると申すでござるか」
「冷やかしもいい所だな」
とりあえず無難にAを選択する。
しかし、高感度があがる所か下がってしまった。
首を傾げる一同に、ありさが解説する。
「この店長はどうやら、かまってちゃんみたいだな」
女性に年齢を聞くなとは常識であるが、一定の年齢を過ぎると、逆に聞いてくれと雰囲気で言ってくる。
相手に歳を聞いて〇〇歳です!と言われたとしよう。
全然見えないですね!〇〇歳かと思いました、と言ってほしいのだ。
「ま、まぁ。どんななのかの確認が目的なんだし、いいんじゃないか」
一通りのゲームの流れを理解した俺達は、誰と付き合うかを話しあったのだが、誰の高感度をあげる事になったのかは言うまでもない。
「とりあえず、デートに誘ってみましょう」
物語が進展しないため、デートに誘ってみる事にしたのだが、どんな感じになるのかが解らない。
そこでゆきで試す事にした。
・・おそらく文芸サークルだろうからとなれば。
TV画面には何処に誘いますか?と表示され、選択肢が出てきた。
A→遊園地。
B→図書館。
C→映画館。
D→ショッピング。
「ふむ。どれも同じ結果の気がするでござるよ」
「確かにそうね。けど、初デートが遊園地というのはどうなのかしら」
「え?ダメなのか?」
「普通にダメだろ。いいかかつま。初デートで観覧車に乗った所を想像してみろ!」
「・・た、確かに。無言が続いてしまう」
「それに初めての相手を、密室空間に誘うのは良くない」
ありさにそう言われて、かつまは考える。
密室空間じゃなく、閉鎖空間ならよいのか聞こうとしたかつまだったのだが、四人が真剣に悩んでいる所を見て別の疑問がうまれる。
「ちなみになんだが、お前達って初デートは何処だったんだ?」
「・・・・・。」
四人はかつまから顔を背けた。
かつまは茜の方に顔を向け、じーっと見ていた。
かつまの無言のプレッシャーに負けたのか、茜が答える。
「バ、バカにしないでくれる!!初デートでしょ?確か・・そうアレよ!アレ」
「どれだよ?」
「あ〜残念だわ。この私がど忘れしてしまうなんて」
何だか嘘くさいがとりあえず無視して、ありさを見る。
「わわわ私か?私はアレだ!そう幼稚園の頃だ」
それってノーカウントでは?と思ったがとりあえずかつまは、ひかりにきく。
「ク、クク。我は来世でちょっとな・・こ、これ以上は魔の物が見張っているやもしれぬから言えぬ」
来世という事は、まだしてないと言う意味なんだが、解っているのだろうか。
ひかりの頭が心配になるかつまは、最後に彩に聞く。
「拙者でござるか?拙者は忍び。ゆえにそんなものにうつつをぬかしてはおれぬでござるよ」
何だかカッコよく聞こえてしまうが、忍びもデートするよ?ナルトを読んで出直せってばよ!
かつまが心の中でつっこんでいると、茜が質問してきた。
「あんたはどうなのよ!!」
「ん?俺か?う〜ん。昔の事過ぎて覚えてねぇな」
かつまの答えを聞いて、四人は一斉にかつまの頭をはたいた。
何するんだと言うかつまの声はスルーされてしまい、かつまが四人を見渡すと、こう答えれば良かったのかと、それぞれ顔に書いてあった。
ぐぬぬ、と聞こえてくる声をスルーして、かつまはゲームの再開を提案した。
「そ、そうね。ありさのアドバイスを考えるなら、映画館も空間と言えば空間だし、同様に図書館も空間と言えば空間よね。ならショッピングしかないじゃない」
「そそそうだな。女の子はショッピングが好きだもんな」
「いや待だて!図書館で出会ったんだから、ここは図書館だろう?」
「かつま殿。図書館でデートと言うが、何をするのでござる?あそこは私語厳禁でござるよ」
彩のこの質問に答えれないのが決定打となり、ショッピングでデートするを選択する。
『ショッピングはちょっと・・・』
『デートを断られ、ゆきの好感度が下がりました』
「・・・・・。」
固まってしまう一同。
誘うのが早すぎたのだろうか。
・・もしくは人ゴミ、いや人ごみが苦手なのかもしれない。
しかし、断り方が問題だ。
ショッピングはちょっと・・と言うけれど、お買い物って絶対するはずなのだ。
デパートに行くのだって、コンビニに行くのだって、ゆきが好きな本を買いに行くのだって、立派なショッピングだ。
それなのにだ。
どこに買い物に行くかも伝えていないのに、ショッピングはちょっと・・と言ってきた。
つまりだ。
俺とのショッピングはちょっと・・と言っているという事なのだ。
全員がこの考えに思いついたらしく、少しの沈黙が部室内に流れた。
「ショッピングはちょっと・・と言われたが」
「そうでござるな。しかし買い物を嫌がるのに映画館とかならいいのでござるか?」
「我は解っておったわ。この女はクソだと」
「待て。長門ゆきをクソ呼ばわりは許せん」
「・・長井よ。字も読めなくなったのかしら」
TV画面には落ち込む光君の姿が映し出されていた。
とりあえず、どうすればいいのか解らない一同はゆきの攻略を諦める事にし、別のキャラクターで再度デートを申し込む事にした。
本命であるれいらに嫌われてしまわない為にも、予習は欠かせないのだ。
『デート・ア・ライブですか・・』
ジムでアニメ好きのあきをデートに誘うと、何故かこう言ってきた。
流石にアニメ好きなら、映画館だろうと一同の意見は一致したのだが、ここで問題が発生する。
「く、ここでも選択肢なのか」
「まぁ落ち着けありさ。アニメ好きにおいて俺の右にでるものはいない」
映画といっても色々あるのだ。
邦画、洋画、アニメ、海外アニメなどなどだ。
そんな中現れた選択肢に一同は悩む。
A→世界を救った俺は魔王軍にスカウトされて・・。
B→おうこく!。
C→世界は「 」で溢れている。
「Aだ!!A以外有り得ないだろう!!」
「いやいやいや、いいかひかり。異世界と現実世界を救うこの異世界ファンタジーは確かに面白い。しかしだ、アニメ好きの彼女が、これを見ていないという事はありえないんじゃないか?」
「Bしかありえんぞかつま!水瀬りの!!く~可愛すぎる」
「いやいやいや、いいか変態。0から異世界で国を作るこの異世界ファンタジーは、確かに面白い。水瀬りのが可愛いのも解る。まさかあきがりのを知らない何て事はないんじゃないか」
「ふむ。なら消去法でCでござるな」
「その言い方だとまるでCが一番面白くないみたいな言い方に聞こえるからやめろ」
Cの世界は「 」で溢れているだって面白いんだから。
かつまが心の中でつっこんでいると、あきの好感度が下がった。
『その作品はちょっと・・』
「何でだよ!!同じhiroto先生の作品だろうが!!あぁん?何とか言えや!!」
「待てかつま!TVが壊れるぞ」
TVを揺らすかつまを必死にとめる四人であった。
何とか落ち着きを取り戻したかつまは四人に謝り、ゲームを再開させる。
やはりれいらとデートをする前に予習は欠かせないからと、店長のまいをデートに誘う。
『フ。部下との信頼を築くのも私の役目か』
少し頬が赤いまいに、ちょっと可愛いかもと五人が思っていた時、ある事に気付いた。
「な、なぁ?年上の女性とデートするならどこなんだ?」
「い、居酒屋とかじゃないかしら」
「しかしだ茜。光君は未成年だし、向こうが酒乱の可能性もある」
ありさの解説に悩む一同。
確かに、私を酔わせてどうするの?とか言われたらたまらん。
どうもしねぇよと答えたら嫌われてしまうだろうし、ちょっと・・などと答えたらひかれてしまうだろう。
年上とデートをした事がない一同は助っ人に電話をかけた。
「呼ばれて飛び出た・わ・たしーー」
勝負部顧問の麗子である。
「さて、要件を聞こうじゃないか」
「実はですね・・という訳で、年上の人とのデートについて何ですがって聞いてます?」
かつまが事情を説明すると、事情を聞いていた麗子は額から汗を流す。
両腕を組んで、カッコ良く立っていた麗子であったのだが、突然何故か両目に涙をためる。
「か、かつまのバカーーー」
「ちょ、先生!?」
麗子は泣きながら部室を走り去ってしまった。
じーっと見られるかつま。
・・あれ?俺が悪いのか?まさかした事がなかったなんて普通思わないじゃん。
これは女性にとって、触れてほしくない案件のようだ。
かつまは何とも言えない気まずい雰囲気に、居心地が悪くなってしまった。
「おほん。とりあえず、どうするかだな」
ありさが空気を変えようとする。
しかし、問題は解決していない。
遊園地、ショッピング、映画、居酒屋の中からどれを選んでもダメな気がする。
年上の人と遊園地。
想像がつかない。
メリーゴーランドとか、コーヒーカップとか、マカロンのミュージックシアターとか。
マカロンは気分屋さんだからなぁ・・全くロン。
かつまは首をふり、甘ブリからはなれる。
年上の人とショッピング。
まぁ無難ではあるが、ブランドショップとかに連れて行かれても困ってしまう。
どうかな?と聞かれても困るミー。
かつまは首をふり、甘ブリからはなれる。
年上の人映画。
これも無難ではあるが、アニメを見るのだろうか。
かといって邦画や洋画でちょっとHなシーンが流れると困ってしまう。
思わず前かがみで恐縮してしまう。
かつまは首を強くふって、甘ブリからはなれる。
・・となれば消去法で。
「ここは無難に居酒屋を選ぶフモ」
「・・・ふも?」
何故か急に拳を固く握りしめ、変な語尾をつけるかつまに、困惑する一同であった。
ともあれ居酒屋にやってきた光君。
そこで待ち受けていたのは・・永遠と聞かされる上司の愚痴であった。
まいの好感度は上昇したものの、聞かされるこっちの身にもなってほしいものだ。
かつまは絶対に働かない事を決意する。
「さて、そろそろれいらを誘ってみるか」
「おおおお!!いよいよだな」
大興奮のひかり。
光君は、れいらを誘ってみた。
『ごめんなさい』
この言葉に固まる一同。
デートをする以前の問題である。
デートに誘ったのだが、何故か断られてしまった。
日にちがダメっだったのでは?と他の日を選択するも、答えは同じであった。
「どういう事なのかしら」
「どうしてくれるのだ!!レ、レイラちゃんに嫌われてしまったではないか!!」
泣きながら講義するひかり。
何回か試してみるが結果は同じであった。
「そ、そうだ!安心しろひかり。こんな時のあいつだ」
「ぐす。あいつ・・・?」
かつまは不敵な笑みを浮かべ、ありさからコントローラーを借りて操作する。
選んだカーソルは沢田と遊ぶだ。
『お前から誘いが来るなんて・・何だよ』
「ハ、ハハハハ。さぁ教えるがいい沢田!心の友よ」
困った時の沢田である。
やつは好感度や、攻略のヒントをくれる有り難い男、否、救世主なのだ。
しかし、何故かどこで遊ぶ?という表示画面がでてきた。
首をかしげながら、かつまは操作する。
『ゆ、遊園地か・・ち、しょうがねぇな』
それはカオスであった。
映し出される沢田の数々。
アイスクリームを食べさせあう沢田。
何故か隣いいか・・と観覧車で照れながら喋りかける沢田。
お化け屋敷で何故か手・・握っといてやるよと言ってくる沢田。
沢田。沢田。沢田。沢田。沢田。
『きょ、今日はその・・楽しかったぜ』
別れまぎわにさり気なく耳打ちしてくる沢田。
「・・・・・。」
「ななな何てものを見せるのよ!!このお馬鹿!!」
「ひひひひひかり。拙者との関係を改めるでござる」
「ちちちち違う。こいつはひかりではない」
「おおおお俺じゃねえ!!ま、待てありさ!!」
「し、知らなかったんだ」
こうして俺たちのときめきガールは幕を閉じた。
後から解った事ではあるが、どうやら最初にルートを間違えると強制的に沢田ルートへと突入するらしく、一部の女子や男子に人気となっている。
ちなみに、ひかりはありさからこのゲームを借りて、れいらルートを5回見たそうだ。
次回 第2章9 クラス委員?? 上
※ここまで読んで頂きありがとうございます。
さて、今回はいかがだったでしょうか?
おかげさまで、皆様から愛される作品となりまして、感謝の気持ちを伝えたく、上中下とセットでお届け致しました。
少しでも面白かったと思っていただけたら幸いです。
では次回もお楽しみに。
・部長 林道 茜・副部長 敗北 勝負
・会計 山月 ありさ・騎士(書記) 結城 ひかり
・秘書 服部 彩・顧問 西園寺 麗子
【本編】
ありさがやりたい事をやろうという事で、ゲームをやる事になった俺たちは、恋愛シュミレーションゲーム『ときめきガール』をやっていたのだが、かつまは早くもこのゲーム否、女の子の恐ろしさを体験していた。
『光君は、松井れいらちゃんと知り合いました』
TV画面にはテロップが映し出され、TV画面の前ではひかりが悶絶していた。
れいらちゃんの声が、大好きなTVアニメ『世界を救った俺は魔王軍にスカウトされて・・』通称せかすくにでてくる人気No.1キャラ、レイラと同じ声優さんだからである。
リメイクされる度に声優さんが変わるのが普通なのだが、現代の技術で初代の声優さんの声が復刻されているのも、この作品が人気な理由である。
なるほど・・・。
ありさがこのゲームをやろうと言い出した理由が、かつまには理解できた。
ありさは仲間を作ろうとしているのだ。
このままでは、中二病で変態さんになってしまうおそれがある。
それはマズイ。
かつまはゲームの中止を呼びかけようとしたのだが、ひかりがありさに、嬉しそうに声をかける姿を見て、何も言えなくなってしまう。
「ありさ!ありさ!ありがとうな」
満面の笑みでありさに抱きつくひかり。
気持ちはわからなくもない。
好きな声優さんに、自分に対してではないが、名前を呼んでもらえたのだ。
悶絶級だろ?
アニメや漫画、ラノベ作家さん。
どうか、はいきたという名前のキャラクターを作って下さい。
かつまが、佐藤や鈴木という苗字を羨ましがっていると、恥ずかしくなったのか、ありさが少し大げさに咳をし、ゲームに戻ろうと提案する。
「よし。よいな?レイラちゃんとデデデデートをするぞ」
「まぁ慌てるなひかり。知り合っていきなりデートに誘うという行為は、別の目的があるのでは?と返って嫌われてしまう」
大興奮するひかりをなだめるように、ありさが解説する。
言われてみればそうなのだろう。
知り合って何回目でデートに誘うのが正解なのか、誰か教えてくれ。
「とりあえず、沢田に聞いてみよう」
ありさがひかりに、このゲームの攻略のコツを教える。
・・・おぉ!!沢田ーー!!
沢田は、色んな女の子の高感度を教えてくれる、有難い男なのである。
ありさが、コントローラを操作していく。
どうやら長かったオリエンテーションが終わりを告げ、受けたい授業の選択科目を選んでいるみたいだ。
基本的に大学は自由登校である。
この授業を受けようと決めたものの、月曜日にその授業がなければ、他の曜日にその授業を受ける事になる為、月曜日は休みになる。
ただし、必須科目や、授業を受ける回数などが決められており、それを達成しないと卒業できないのだ。
「なるほどね。受ける授業によって出会うビッチ達が変わるというわけね」
「待て。大学生=ビッチという発想はやめろ」
「ふむ。拙者はお市殿みたいな子と仲良くなりたいでござる」
「ク、クク馬鹿な事を言うでないぞ!レイラちゃんと仲良くなるのだ!」
何だかんだ言いながら、ときめきガールを楽しむ一同であった。
沢田にデートのコツを教わった後、じゃぁな!と帰り間際に手を振るシーンは、果たして必要なのだろうか?
かつまが首をかしげていると、ゲーム内では、どうやら光君の部屋についたようだ。
『何をしようか・・』
TV画面にはテロップが映し出され、カーソルキーがでてきた。
「おぉ!こやつひかりと同じでござるよ」
「こ、ここまで酷くないわい」
光君のパラメーターは全て0である。
一体どうやって、大学に入学したのか不思議なくらいだ。
ひかりみたいに賢者の杖でもつかったのか、これが噂に聞く裏口入学というやつなのか。
・・イケメンリッチー恐るべしだな。
かつまがそんな事を考えていると、茜が提案する。
「まずは勉強させましょう」
勉強、遊ぶ、働く、鍛える、沢田と遊ぶ。
基本的にこれらから選び、パラメーターをあげて行くのだが、沢田と遊ぶについては謎であった。
茜の提案に、レイラと遊ぶんだと、駄々をこねるひかりに対し、茜が解説する。
「いいひかり。世の中は頭が良くないとやっていけないものなのよ。例えば、貴女が遊びたいと思っている、れいらと遊んだとしましょう。食事の後、れいらが割り勘ね、と言ってきたらどうする?」
「愚か者!!レイラにお金を出させるとは・・恥を知れ」
「・・・質問を変えるわ。例えば貴女が好きなれいらは、頭の良い男と付き合うべきだとは思わない?」
「フ。レイラは中身を重視する素晴らしい女の子なのだ」
「・・・・。」
おぉ!!あの茜を黙らせるとは、ひかりのやつやるな!
ひかりに対してかつまが感激していると、ありさが話しの輪に入る。
「ひかり落ちつけ。多数決で、だろ?」
熱くなりすぎたひかりを、なだめるありさ。
こう言われてしまっては、ひかりも納得せざるを得ない。
「さすがはひかり。勉強しても3しかあがらないとは、恐れ入ったでござる」
「ぐぬぬぬ」
光君は図書館で勉強をするのだが、あまり成果はみられなかった。
勉強の息抜きなのか、本を探しに行くようだ。
『あっ、ごめんなさい』
眼鏡をかけた女の子が、光君に向かって謝罪する。
どうやら、お目当ての本が被ってしまい、譲ってくれるみたいだ。
これも定番ではあるが、ここから仲良くなる意味が俺には解らない。
共通の趣味を持っている異性だからという理由なのであれば、なろう作家達はどうすべきなのだ。
・・全く、なろう作家に出会いを求めるのは間違っているだろうか、否、間違っていない!
かつまがそんな事を考えていると、ここでも選択肢がでてきた。
A→ゆずる。
B→ゆずってもらう。
C→いっしょに読む。
「待て。一緒に読むって何だ?」
「嫌、一緒に読むのだろ?』
かつまの質問に、ありさが答えた。
さて、どうしようと言う質問に、多数決を取って決める。
「全く。馬鹿なんだから、本を読む暇があるなら勉強しなさい」
「ぐぬぬ」
「茜殿の言う通りでござる」
勝負部の多数決の結果はゆずるであった。
『や、優しいんですね。私は長井ゆきといいます』
長井ゆきの高感度があがった。
もしかしたら、この子は宇宙人なのかもしれないと、かつまは心配してしまう。
しかし、思っていたのと何か違う気がする。
チョロすぎないか?
いや、イケメンリッチーだからなのかもしれない。
もしくは、最初ありさがやろうとした百合ゲーがあまりにも難しすぎて、こうなっているかもしれない。
かつまがそんな事を思っていると、こうして光君の一日が終わりをつげるという、テロップが流れた。
次の日。
『あれ?光君もこの授業を受けるんだ』
授業開始前に、松井れいらから話しかけられる。
隣いい?と聞かれ、光君はどうぞっと答えた。
れいらが喋る度に、ぐはとか、く〜とか騒ぐひかり。
・・昨日知り合ってすぐに友達面するなんて、この子はもしかしたら、ビッチなのではないだろうか?
かつまが偏見の目をしていると、隣の方から声がかけられる。
『よっ!お二人さん♪』
沢田である。
この男はいつの間に、れいらと仲良くなったのだろうか。
逆に言えばれいらは、沢田とも仲良くなっているという事だ。
やはりビッチなのだろうか。
「何だこの男は!我の恋の応援をすると言っときながら、邪魔をしに来ているではないか!!」
言われてみれば、そうとれなくもない。
しかし、沢田だけは許してあげてほしい。
ひかりの中で、沢田の高感度が下がった。
そのまま家に帰った光。
さっきと同じように、カーソルキーが表示される。
「なぁ?せっかくだから、他のやつも見てないか」
「それもそうね。鍛えるを選んでみましょう」
全員同じ気持ちだったらしく、鍛えるを選ぶ。
『今日は体でも鍛えよう』
そう言って光君はジャージ姿に着替え、スポーツジムに向かっていった。
『初めてですか?私は光君の担当インストラクターを務めさせていただきます、松原あきといいます。宜しくね』
なるほど。
ジムに行って身体を鍛えるフリをして、インストラクターとの恋を鍛えるということなのか。
かつまが、コレ使えるかもしれないと、心の中でメモをとっていると、またもや選択肢がでてきた。
A→宜しくお願いします。
B→自分で勝手にやるから。
C→チェンジで。
「・・最後のを選んだらどうなるのかが、凄く気になる所ね」
「た、確かに。別のインストラクターが来るのか、別のジムに行けと言われるかも知れん」
「レ、レイラが来るのか?」
《それは絶対ない》「でござる」
四人が断固宣言する。
ここはあきには可哀想だが、気になってしまう為、Cを選んでみないか?ということで、Cのチェンジを選択する。
『フフフ。ギニュー隊長ですね』
松原あきの高感度があがった。
「いやいやいや。何でドラゴンボールネタなんだよ」
「ど、どうやらこの子はアニメが好きなようだな」
かつまの疑問にありさが答える。
・・・マジかよ!アニメが好きだなんて最高じゃん。
かつまの中で、松原あきの高感度があがった。
TV画面では、ドラゴンボールネタで盛り上がっているのか、あきがポーズをとりながら何か言っていた。
『お命ちょうだい』
このセリフが誰のものか解ってしまうかつまは、今度ジムに行ってみようと心に誓うのであった。
「ふむ。ここまでくるとひかりは最低でござるな」
「な、なんだと!!」
「確かに。色んな女の子とすぐ仲良くなってしまうあたり、女好きにもほどがあるわね」
「ぐはっ」
光君が責められているのに、女好きというワードにありさが反応する。
しかし、女の子と知り合わない事には、ゲームが進展しないんじゃないのか?と言うかつまの結論に、全員納得したようだ。
ここまでを整理しよう。
大学で出会ったビッチっぽい女の子松井れいら。
図書館で出会った人気アニメキャラっぽい女の子長井ゆき。
ジムで知り合ったアニメ好きな女の子松原あき。
後、残されているのは働くと沢田と遊ぶである。
「な、なぁ?これって何人ぐらいの女の子と知り会うんだ?」
「ん?あぁこのゲームはアップデートなどがあるから、人数は決まっていない」
ありさは続けて解説する。
かつまはその話しを聞いて感心してしまう。
初めてプレイする俺たちが全員を攻略すると、アップデートしますか?となり、増えていくそうだ。
クリアーする度に違う女の子と知り合えるのだから、ファンにはたまらないゲームだろう。
それに、女の子が増えまくるという事は、難易度もあがっていくという事になる。
デートを目撃される回数が増えたり、休みの日に複数の女の子からの遊びの誘いなど、要はハーレム状態になり、クリアーが難しくなるのだ。
「とりあえず、最後の働くを選びましょう」
茜の提案に反対の声はあがらなかった。
・・イケメンリッチーなのに働くだなんて、どう考えても女の子目当てだなこいつ。
働く。
何とも嫌な響きである。
できることなら一生お家で過ごせる機械を、作ってほしいと心の底から願っている。
『君が今日からバイトに入る光君だね?私はここのコンビニの店員をやっている渡辺まいだ』
「面接もなしで働くなんて、こいつ何者かしら」
「まぁゲームだからな」
茜の疑問にかつまがつっこむ。
どうやらここでも、選択肢を選ぶみたいだ。
A→宜しくお願いします。
B→やめさせて下さい。
C→歳幾つですか?
「こやつ、今日から働くと言っておいて、辞めると申すでござるか」
「冷やかしもいい所だな」
とりあえず無難にAを選択する。
しかし、高感度があがる所か下がってしまった。
首を傾げる一同に、ありさが解説する。
「この店長はどうやら、かまってちゃんみたいだな」
女性に年齢を聞くなとは常識であるが、一定の年齢を過ぎると、逆に聞いてくれと雰囲気で言ってくる。
相手に歳を聞いて〇〇歳です!と言われたとしよう。
全然見えないですね!〇〇歳かと思いました、と言ってほしいのだ。
「ま、まぁ。どんななのかの確認が目的なんだし、いいんじゃないか」
一通りのゲームの流れを理解した俺達は、誰と付き合うかを話しあったのだが、誰の高感度をあげる事になったのかは言うまでもない。
「とりあえず、デートに誘ってみましょう」
物語が進展しないため、デートに誘ってみる事にしたのだが、どんな感じになるのかが解らない。
そこでゆきで試す事にした。
・・おそらく文芸サークルだろうからとなれば。
TV画面には何処に誘いますか?と表示され、選択肢が出てきた。
A→遊園地。
B→図書館。
C→映画館。
D→ショッピング。
「ふむ。どれも同じ結果の気がするでござるよ」
「確かにそうね。けど、初デートが遊園地というのはどうなのかしら」
「え?ダメなのか?」
「普通にダメだろ。いいかかつま。初デートで観覧車に乗った所を想像してみろ!」
「・・た、確かに。無言が続いてしまう」
「それに初めての相手を、密室空間に誘うのは良くない」
ありさにそう言われて、かつまは考える。
密室空間じゃなく、閉鎖空間ならよいのか聞こうとしたかつまだったのだが、四人が真剣に悩んでいる所を見て別の疑問がうまれる。
「ちなみになんだが、お前達って初デートは何処だったんだ?」
「・・・・・。」
四人はかつまから顔を背けた。
かつまは茜の方に顔を向け、じーっと見ていた。
かつまの無言のプレッシャーに負けたのか、茜が答える。
「バ、バカにしないでくれる!!初デートでしょ?確か・・そうアレよ!アレ」
「どれだよ?」
「あ〜残念だわ。この私がど忘れしてしまうなんて」
何だか嘘くさいがとりあえず無視して、ありさを見る。
「わわわ私か?私はアレだ!そう幼稚園の頃だ」
それってノーカウントでは?と思ったがとりあえずかつまは、ひかりにきく。
「ク、クク。我は来世でちょっとな・・こ、これ以上は魔の物が見張っているやもしれぬから言えぬ」
来世という事は、まだしてないと言う意味なんだが、解っているのだろうか。
ひかりの頭が心配になるかつまは、最後に彩に聞く。
「拙者でござるか?拙者は忍び。ゆえにそんなものにうつつをぬかしてはおれぬでござるよ」
何だかカッコよく聞こえてしまうが、忍びもデートするよ?ナルトを読んで出直せってばよ!
かつまが心の中でつっこんでいると、茜が質問してきた。
「あんたはどうなのよ!!」
「ん?俺か?う〜ん。昔の事過ぎて覚えてねぇな」
かつまの答えを聞いて、四人は一斉にかつまの頭をはたいた。
何するんだと言うかつまの声はスルーされてしまい、かつまが四人を見渡すと、こう答えれば良かったのかと、それぞれ顔に書いてあった。
ぐぬぬ、と聞こえてくる声をスルーして、かつまはゲームの再開を提案した。
「そ、そうね。ありさのアドバイスを考えるなら、映画館も空間と言えば空間だし、同様に図書館も空間と言えば空間よね。ならショッピングしかないじゃない」
「そそそうだな。女の子はショッピングが好きだもんな」
「いや待だて!図書館で出会ったんだから、ここは図書館だろう?」
「かつま殿。図書館でデートと言うが、何をするのでござる?あそこは私語厳禁でござるよ」
彩のこの質問に答えれないのが決定打となり、ショッピングでデートするを選択する。
『ショッピングはちょっと・・・』
『デートを断られ、ゆきの好感度が下がりました』
「・・・・・。」
固まってしまう一同。
誘うのが早すぎたのだろうか。
・・もしくは人ゴミ、いや人ごみが苦手なのかもしれない。
しかし、断り方が問題だ。
ショッピングはちょっと・・と言うけれど、お買い物って絶対するはずなのだ。
デパートに行くのだって、コンビニに行くのだって、ゆきが好きな本を買いに行くのだって、立派なショッピングだ。
それなのにだ。
どこに買い物に行くかも伝えていないのに、ショッピングはちょっと・・と言ってきた。
つまりだ。
俺とのショッピングはちょっと・・と言っているという事なのだ。
全員がこの考えに思いついたらしく、少しの沈黙が部室内に流れた。
「ショッピングはちょっと・・と言われたが」
「そうでござるな。しかし買い物を嫌がるのに映画館とかならいいのでござるか?」
「我は解っておったわ。この女はクソだと」
「待て。長門ゆきをクソ呼ばわりは許せん」
「・・長井よ。字も読めなくなったのかしら」
TV画面には落ち込む光君の姿が映し出されていた。
とりあえず、どうすればいいのか解らない一同はゆきの攻略を諦める事にし、別のキャラクターで再度デートを申し込む事にした。
本命であるれいらに嫌われてしまわない為にも、予習は欠かせないのだ。
『デート・ア・ライブですか・・』
ジムでアニメ好きのあきをデートに誘うと、何故かこう言ってきた。
流石にアニメ好きなら、映画館だろうと一同の意見は一致したのだが、ここで問題が発生する。
「く、ここでも選択肢なのか」
「まぁ落ち着けありさ。アニメ好きにおいて俺の右にでるものはいない」
映画といっても色々あるのだ。
邦画、洋画、アニメ、海外アニメなどなどだ。
そんな中現れた選択肢に一同は悩む。
A→世界を救った俺は魔王軍にスカウトされて・・。
B→おうこく!。
C→世界は「 」で溢れている。
「Aだ!!A以外有り得ないだろう!!」
「いやいやいや、いいかひかり。異世界と現実世界を救うこの異世界ファンタジーは確かに面白い。しかしだ、アニメ好きの彼女が、これを見ていないという事はありえないんじゃないか?」
「Bしかありえんぞかつま!水瀬りの!!く~可愛すぎる」
「いやいやいや、いいか変態。0から異世界で国を作るこの異世界ファンタジーは、確かに面白い。水瀬りのが可愛いのも解る。まさかあきがりのを知らない何て事はないんじゃないか」
「ふむ。なら消去法でCでござるな」
「その言い方だとまるでCが一番面白くないみたいな言い方に聞こえるからやめろ」
Cの世界は「 」で溢れているだって面白いんだから。
かつまが心の中でつっこんでいると、あきの好感度が下がった。
『その作品はちょっと・・』
「何でだよ!!同じhiroto先生の作品だろうが!!あぁん?何とか言えや!!」
「待てかつま!TVが壊れるぞ」
TVを揺らすかつまを必死にとめる四人であった。
何とか落ち着きを取り戻したかつまは四人に謝り、ゲームを再開させる。
やはりれいらとデートをする前に予習は欠かせないからと、店長のまいをデートに誘う。
『フ。部下との信頼を築くのも私の役目か』
少し頬が赤いまいに、ちょっと可愛いかもと五人が思っていた時、ある事に気付いた。
「な、なぁ?年上の女性とデートするならどこなんだ?」
「い、居酒屋とかじゃないかしら」
「しかしだ茜。光君は未成年だし、向こうが酒乱の可能性もある」
ありさの解説に悩む一同。
確かに、私を酔わせてどうするの?とか言われたらたまらん。
どうもしねぇよと答えたら嫌われてしまうだろうし、ちょっと・・などと答えたらひかれてしまうだろう。
年上とデートをした事がない一同は助っ人に電話をかけた。
「呼ばれて飛び出た・わ・たしーー」
勝負部顧問の麗子である。
「さて、要件を聞こうじゃないか」
「実はですね・・という訳で、年上の人とのデートについて何ですがって聞いてます?」
かつまが事情を説明すると、事情を聞いていた麗子は額から汗を流す。
両腕を組んで、カッコ良く立っていた麗子であったのだが、突然何故か両目に涙をためる。
「か、かつまのバカーーー」
「ちょ、先生!?」
麗子は泣きながら部室を走り去ってしまった。
じーっと見られるかつま。
・・あれ?俺が悪いのか?まさかした事がなかったなんて普通思わないじゃん。
これは女性にとって、触れてほしくない案件のようだ。
かつまは何とも言えない気まずい雰囲気に、居心地が悪くなってしまった。
「おほん。とりあえず、どうするかだな」
ありさが空気を変えようとする。
しかし、問題は解決していない。
遊園地、ショッピング、映画、居酒屋の中からどれを選んでもダメな気がする。
年上の人と遊園地。
想像がつかない。
メリーゴーランドとか、コーヒーカップとか、マカロンのミュージックシアターとか。
マカロンは気分屋さんだからなぁ・・全くロン。
かつまは首をふり、甘ブリからはなれる。
年上の人とショッピング。
まぁ無難ではあるが、ブランドショップとかに連れて行かれても困ってしまう。
どうかな?と聞かれても困るミー。
かつまは首をふり、甘ブリからはなれる。
年上の人映画。
これも無難ではあるが、アニメを見るのだろうか。
かといって邦画や洋画でちょっとHなシーンが流れると困ってしまう。
思わず前かがみで恐縮してしまう。
かつまは首を強くふって、甘ブリからはなれる。
・・となれば消去法で。
「ここは無難に居酒屋を選ぶフモ」
「・・・ふも?」
何故か急に拳を固く握りしめ、変な語尾をつけるかつまに、困惑する一同であった。
ともあれ居酒屋にやってきた光君。
そこで待ち受けていたのは・・永遠と聞かされる上司の愚痴であった。
まいの好感度は上昇したものの、聞かされるこっちの身にもなってほしいものだ。
かつまは絶対に働かない事を決意する。
「さて、そろそろれいらを誘ってみるか」
「おおおお!!いよいよだな」
大興奮のひかり。
光君は、れいらを誘ってみた。
『ごめんなさい』
この言葉に固まる一同。
デートをする以前の問題である。
デートに誘ったのだが、何故か断られてしまった。
日にちがダメっだったのでは?と他の日を選択するも、答えは同じであった。
「どういう事なのかしら」
「どうしてくれるのだ!!レ、レイラちゃんに嫌われてしまったではないか!!」
泣きながら講義するひかり。
何回か試してみるが結果は同じであった。
「そ、そうだ!安心しろひかり。こんな時のあいつだ」
「ぐす。あいつ・・・?」
かつまは不敵な笑みを浮かべ、ありさからコントローラーを借りて操作する。
選んだカーソルは沢田と遊ぶだ。
『お前から誘いが来るなんて・・何だよ』
「ハ、ハハハハ。さぁ教えるがいい沢田!心の友よ」
困った時の沢田である。
やつは好感度や、攻略のヒントをくれる有り難い男、否、救世主なのだ。
しかし、何故かどこで遊ぶ?という表示画面がでてきた。
首をかしげながら、かつまは操作する。
『ゆ、遊園地か・・ち、しょうがねぇな』
それはカオスであった。
映し出される沢田の数々。
アイスクリームを食べさせあう沢田。
何故か隣いいか・・と観覧車で照れながら喋りかける沢田。
お化け屋敷で何故か手・・握っといてやるよと言ってくる沢田。
沢田。沢田。沢田。沢田。沢田。
『きょ、今日はその・・楽しかったぜ』
別れまぎわにさり気なく耳打ちしてくる沢田。
「・・・・・。」
「ななな何てものを見せるのよ!!このお馬鹿!!」
「ひひひひひかり。拙者との関係を改めるでござる」
「ちちちち違う。こいつはひかりではない」
「おおおお俺じゃねえ!!ま、待てありさ!!」
「し、知らなかったんだ」
こうして俺たちのときめきガールは幕を閉じた。
後から解った事ではあるが、どうやら最初にルートを間違えると強制的に沢田ルートへと突入するらしく、一部の女子や男子に人気となっている。
ちなみに、ひかりはありさからこのゲームを借りて、れいらルートを5回見たそうだ。
次回 第2章9 クラス委員?? 上
※ここまで読んで頂きありがとうございます。
さて、今回はいかがだったでしょうか?
おかげさまで、皆様から愛される作品となりまして、感謝の気持ちを伝えたく、上中下とセットでお届け致しました。
少しでも面白かったと思っていただけたら幸いです。
では次回もお楽しみに。
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