世界を救った俺は魔王軍にスカウトされて

伊達\\u3000虎浩

特別篇 カズトのアルバイト…上

『主な登場人物』


 ・輝基 和斗てるもとかずと・・本作品の主人公。ゲームをクリアーしたのだが、アリスの魔法により異世界にワープする事になった。
 ・アリス・・・勇者軍に倒された魔王サタンの娘であり、現魔王軍を率いる女王である。勇者軍に奪われたブラッククリスタルを取り戻す為、カズトを召喚したが、クリフに力を奪われてしまう。
 ・レイラ・・・勇者軍の1人。レイラについたあだ名は戦略兵器バーサーカーレイラであり、カズトの事を勇者テトだと思っている。かつて仲間だったクリフをとめるべくカズト達と行動を共にする。(元人間)
 ・ナナ・・・魔女族。大切な姉を助けるべく、カズト達と行動を共にする。
 ・輝基 美姫てるもとみき・・カズトの妹で、ブラコン(重症)
 ・ナナミ・・・ナナの姉。大切な妹を守る為、魔女族を滅ぼした。一族殺しの魔女が通り名である。
 ・クリフ・・勇者軍の1人。クリフについたあだ名は魔法剣士クリフであり、ブラッククリスタルにより性格が変わってしまう。


【あらすじ】


 ある日ゲームをクリアーしたカズトは、ゲームの中に召喚されてしまう。
 そんなカズトを待っていたのは、かつて自分が操作していたキャラクターであった。
 ブラッククリスタルによって、性格が変わってしまったクリフから逃げる為、アリスは魔法を唱えるのだが、逃げた場所は和斗が暮らす世界であった。


【本編】


時刻は22時を過ぎていた。


夜遅くといっても、周りの家の電気はまだ点いている。しかし、高校生である自分達は寝る時間であり、夜遅くといっても間違いではない。


その為、この部屋の主人であるカズトは、他の部屋で寝ているであろう家族を起こさないようにと、静かにペンをはしらせていた。


「う〜ん」


頭を悩ますカズト。


「やはり、ここでの出費がでかいか」


出費という単語から分かるように、彼がやっているのは勉強ではなく、家計簿をつけているのであった。


自分の部屋で家計簿をつけているのは、他の部屋で寝ている家族を起こさないようにする目的と、他の家族に気付かれないようにするのが目的であった。


輝基家は両親がおらず、妹の美姫と二人暮らしである。その為、家計簿などはカズトがつけているのだが、問題が生じてしまっていたのだった。


もともと二人暮らしと考えて予算を組んだのだが、アリスとレイラ、ナナという異世界からやってきた三人が加わったとなると、当然変わってくるものがある。


「やはり…食費か」


食べ盛りになってしまったアリスや、こっちの料理にハマっているレイラとナナが、とにかく食べるのだ。
食べるな!と、言えるはずもない。


妹の美姫が心配していたが、心配をかけさせる訳にはいかなかった。妹が気づいた場合、お小遣い要らないなどと言い出すに違いない。


「ならば…ここをこうして…いや、ダメか」


こんな風に、1時間ほど頭を悩ますカズト。


(…テト)


そーっと扉が閉まる音にすら気づかないほど、カズトは集中していたのであった。


ーーーーーーーー


とある一室。


可愛らしいパジャマ姿の三人は、円を囲うようにして座っていた。


「…と言う訳です」


一通り話し終えたレイラは、寂しそうな表情を浮かべていた。


「カ、カズトさんが元気がない理由は何でしょうか?」


レイラは、テトが落ち込んでいるとだけ伝えている。レイラ自身、テトが落ち込んでいる理由に、心当たりがない。


「わ、私の所為じゃないわよ!?」


悩む二人とは対照的に、幼女は焦り始めた。


「何か心当たりがあるのですか?」


ギロリと、殺気じみた視線を送るレイラ。


「う…そ、その。カズトの唐揚げを一つだけ…その…食べちゃったってだけよ」


「…!?」


ゆらりと立ち上がるレイラ。
背後から、ただならぬオーラが見えているのは、気のせいであってほしい。


「テ、テトの唐揚げ…わ、私の唐揚げ」


「レ、レイラさん!カズトさんの唐揚げは、カズトさんの唐揚げですよ!?」


あわあわわと、慌てながらも、ナナは二人が喧嘩しないようにと仲裁に入る。


「と、とにかく、唐揚げの一つや二つ取ったくらいで、アイツは落ち込んだりしないわよ」


ふん。というアリスに、レイラが尋ねた。


「…二つ、ですか?」


ギクッという音を、ナナも耳にした。


「お、落ち着いて話しあいましょう。このままだと、カズトさん落ち込んだままですよ?」


「…!?」


テトが落ち込んでいる。
それはレイラにとって最重要任務であった。


ーーーーーーーーーー


次の日。


美姫は朝練でいない。
美姫とレイラで作った朝食を食べながら、カズトは考えていた。


(やはり、アルバイトをするしかないか…ん?)


お皿に目を向けると、山盛りになったピーマンがあった。


「…おぃアリス。何のつもりだ?」


「ふん。アンタの唐揚げを昨日食べちゃったから、そのお詫びってヤツよ。感謝しなさい」


勝ち誇った顔のアリスを見て、カズトのお説教が始まるのであった。


ーーーーーーーー


休み時間になり、校内放送で呼ばれたカズトは、職員室へと向かって行く。
カズトが教室を出ていくのを見送った三人は、昨日の続きを話し合う。


「あ、アンタ達が唐揚げが原因だって言うから、お返しにピーマンを渡したらめちゃくちゃ怒られちゃったじゃない」


「…当たり前です」


「そうですね」


「ぐぬぬ…」


猛抗議するも、それは当然だと即否定されてしまうアリス。


「け、けど、カズトさんが何かに悩んでいるのは確かですね」


三人は、朝のカズトの様子を思い出していた。


「情報が必要ね」


「情報…ですか?」


「そうよ。冒険の基本は情報だって、カズトが言ってたわよ」


「…確かに言っていましたね」


アリスの提案に、レイラも賛成のようだ。


「情報収集ですか?ですが、一体誰に聞くんですか?」


ナナも反対するつもりはないのだが、情報収集をする相手をどうするのかと尋ねると、アリスはニヤリと笑いながら、決まっているじゃない!と言って、席を立ちあがるのであった。


ーーーーーーーー


「え?お兄ちゃんが悩んでる?」


廊下を出てすぐ隣のクラスへとやって来たアリス達は、カズトの妹である美姫の元へと足を運んだ。


「はい。ですから、美姫さんは何か心当たりがありませんか?」


事情を聞いた美姫は、考える素ぶりすら見せず、カズトが悩んでいるであろう理由を教えてくれた。


「お兄ちゃんが悩んでいるのはね…きっと、私の事だよ!!」


「え?」


「あぁ美姫に恋してしまった。俺は、俺はどうすれば…ってあれ?」


気がつくと、レイラ達の姿はなかった。


ーーーーーーーーーー


「レイラさんの事かもしれないですね」


「……!!!」


何の前置きもなく、突然ナナがそんな事を言ってきた。


「テ、テトが…テトが私の事を…♡」


顔を真っ赤に染め、耳から白い煙があがっているように見えるレイラ。


「一応聞くけど、その根拠は?」


「アリスさんでも、美姫さんでもないじゃないですか?」


「んん?まぁ、そうね」


「私も身に覚えがありませんですし…って、レ、レイラさん!?」


思いっきり前のめりに倒れたレイラは、机に思いっきり頭突きをしてしまったのであった。
余談になるが、その際、机の方がダメージが大きく、ヒビが入ってしまったが、三人の力で何とか直したのは、カズトも知らない三人だけの秘密であった。

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