世界を救った俺は魔王軍にスカウトされて

伊達\\u3000虎浩

特別編 魔法少女ナナ

 『主な登場人物』


 ・輝基 和斗・・本作品の主人公。ゲームをクリアーした所、アリスの魔法により異世界にワープする事になった。
 ・アリス・・・勇者軍に倒された魔王サタンの娘であり、現魔王軍を率いる女王である。勇者軍に奪われたブラッククリスタルを取り戻す為、カズトを召喚したが、クリフに力を奪われてしまう。
 ・レイラ・・・勇者軍の1人。レイラについたあだ名は戦略兵器レイラであり、カズトの事を勇者テトだと思っている。かつて仲間だったクリフをとめるべくカズト達と行動を共にする。(元人間)
 ・ナナ・・・魔女族。大切な姉を助けるべく、カズト達と行動を共にする。
 ・輝基 美姫・・カズトの妹で、ブラコン(重症)
 ・ナナミ・・・ナナの姉。大切な妹を守る為、魔女族を滅ぼした。一族殺しの魔女が通り名である。
 ・クリフ・・勇者軍の1人。クリフについたあだ名は魔法剣士クリフであり、ブラッククリスタルにより性格が変わってしまう。


【あらすじ】


 ある日ゲームをクリアーしたカズトは、ゲームの中に召喚されてしまう。
 そんなカズトを待っていたのは、かつて自分が操作していたキャラクターであった。
 ブラッククリスタルによって、性格が変わってしまったクリフから逃げる為、アリスは魔法を唱えるのだが、逃げた場所は和斗が暮らす世界であった。


【本編】


 とある日の夕食後の出来事である。
 いつものように夕食をすませたカズト達。


「ラブパワー全開」


「・・・おぉ」


 カズトの耳にそんな声が聞こえてきたのは、ソファーに腰掛け、携帯で明日の天気などを調べていた時であった。
 声が聞こえた方へ顔を向けると、TVを観ている三人の少女の姿が見えた。
 少女達の姿を見たカズトは深いため息を吐き、少女達に声をかける。


「もう少し離れて観ないと、目が悪くなるぞ」


「・・・・ハイ」


 カズトの注意を受け、レイラは二人の襟首を掴んでTVから離した。


「ちょっ、馬鹿レイラ!離しなさい!」


 襟首を掴まれ、TVから離されたアリスがそう言うと、パッとレイラは襟首を離す。
 急に離されてしまったアリスは、背中から床に尻もちをついてしまう。


「フギャ!って何するのよ!」


「離せと言われたのでつい」


 そんな二人の会話を聞いて、さらに深いため息を吐くカズトは、妹の美姫に助けを求める目を向ける。


(勉強中だったか・・はぁ)


 前期期末テストを間近に控えている為、夕食後に勉強をするのが美姫の日課となっている。
 それを思い出したカズトは、この状況を一人で何とかしないといけないということに気づき、ため息を吐いた。
 そろそろ喧嘩を止めようかと考えていたカズトであったが、喧嘩を止める寸前で、ナナに声をかけられる。


「カ、カズトさん!あ、あ、あの・・」


 若干、顔が赤いのは気になるが、何か聞きたい事があるようなので、特に気にしない事にした。


「ん?何だナナ。何か聞きたい事があるのか?」


「ハ、ハイ。そ、その。アレなんですが・・」


 そう言うと、TVを指さしながらナナが質問をしてきたので、指を向けられた方に顔を向けるカズト。


「アレはアニメだな。いつも観ているやつじゃないか」


 異世界からやってきたアリス、レイラ、ナナが現在ハマっているのがアニメと日本の食文化である。
 妹の美姫が勉強をするのが日課だとするならば、アリス達はアニメを観る事が日課となっている。
 いつも観ているアニメに、ナナが質問をしてきたのは珍しい。
 なぜなら、いつもアリスが質問をするからである。


「こ、こ、この、女の子なんですが」


「怪盗魔法少女ハルだったか・・それで?」


 アリスが怪盗魔法少女ハルをつけろと毎日騒ぐ為、タイトルはバッチリ覚えてしまっているカズト。
 また、アリスやレイラの質問責めにあっているカズトは、解る事は答え、解らない事は携帯で調べて答えていた為、内容どころか、細かいところまで知ってしまっていた。


 怪盗魔法少女ハル。
 タイトルから解るように、ハルは魔法少女で怪盗である。
 舞台は秋葉原。
 女子高校生である主人公ハルは、アニメやマンガ、ラノベが大好きな普通の女の子である。
 そんなある日、日本の象徴ともいえるアニメやマンガ、ラノベがこの世から姿を消してしまうのだ。
 朝起きたハルは、本棚にラノベがない事に気づき、母親に隠されたと思い母親にたずねるのだが、食べ物かい?と訳の解らない事を聞かれてしまう。
 からかっているのかと思い、TVのスイッチを入れ、リモコンで番組一覧を観るのだが、アニメという番組どころか、子供向け番組さえない事に気づいてしまう。
 慌てて本屋に駆け込むハルは、絶望してしまう。
 本棚に並べてあるのは、参考書ばかりであった。


 その日ハルは学校を休んだ。
 どうなっているのかと、携帯で調べてみてもでてこなかった。
 でてこないどころか、予測変換や漫画という漢字すら存在しない。
 何故、自分だけが覚えているのだろうか。
 それは、恐怖であった。


 そんなある日、ハルは気づいてしまう。
 皆んなが忘れてしまっているのであれば、自分自身が思い出させてあげればいいのではないか、つまり、漫画家を目指せばいいのでは?と考えたのである。
 早速、ノートを広げ、定規を使ってコマを書き、絵を描いていくハル。
 しかし、いきなり漫画を描くとなると、アイデアが思い浮かばない。
 悩むハル。
 悩んだ末にだした答え、キャラクターから描く事にしたのである。
 ファンタジー感のある作品にしようと考えたハルは、妖精から描く事を決意する。
 ちょっと生意気な、ツンデレ風な妖精。
 名前をつけるならそう、アリアであった。


 出来た!と思ったハルが、色鉛筆を置いた時であった。
 突然、ノートが光り輝いたかと思うと、そのノートから、可愛らしい妖精が姿を現した。
 それは、自分が一生懸命描いた妖精、アリアである。
 妖精アリアの力により、怪盗魔法少女に変身する事になったハルは、この世から無くなってしまった物を取り戻す為の冒険をする事になっていく・・・。


「と、まぁだいたいこんな感じの内容だったはずだが、何か聞きたい事があるのか?」


 長々と説明したカズト。
 第5話から見始めたアリス達は、何で魔法少女に変身するのか、何故、変身するのかなど、カズトに質問責めしていた為、がっつり内容を把握してしまっているカズト。
 要は悪い人達が、漫画やアニメという日本が世界に誇る作品を人々の記憶から消してしまい、それを主人公のハルが魔法少女に変身し、取り戻していくといった内容である。


「ハ、ハイ。そ、その・・」


 中々切り出そうとしないナナに、何かよっぽどの事なのかと身構えるカズト。
 カズトの目を見たナナは意を決し、カズトに質問をする。


「な、何で変身するとき、ハ、ハルは、はははだだだ・・裸になるのですか!」


 よっぽどの事であった。


 ラブパワー全開という呪文を唱える事により、主人公のハルは、魔法少女に変身するのだが、一度裸になり、可愛らしいリボンが全身を包み込んでいき、可愛らしい制服、いや、美少女服になるのだ。
 一応念の為に言っておくが、白く光り輝いている為、全裸を観る事はない。
 さて、何と説明したものか・・。
 アリスやレイラも興味があるらしく、喧嘩をやめて、ナナの背後からカズトの答えを待っている。
 そんな光景を見て、カズトは頭を抱えてしまうのであった。


 悩んだカズトは、携帯に助けを求めるのだが、全くもって助けにならなかった。
 何も書いていない訳ではない。
 魔法少女 変身 裸。
 検索した結果、ナナに何と説明してよいものか悩ませる内容であった。
 サービスなどと説明すれば、サービスとは何かと聞かれる可能性が高い。
 無論、もし聞かれたなら、サービスについて説明すれば良いだけなのだが、気まづくなってしまうと解っていて説明するのは、カズトの流儀に反してしまう。
 かと言って、説明しないわけにはいかないだろう。
 解らない事があれば、何でも聞いてこいと言ったのはカズトだからであった。


「・・ナナ。服を着替える時に、人は服を脱ぐだろう?それと同じだ」


「・・・なるほど」


 カズトは当たり障りのない答えを出し、ナナに説明をする。
 実際、魔法少女が変身する際に、裸になる答えなど存在しない。
 あるとすれば、変身したからという答えが一番無難だろう。
 その答えにたどり着いたのは、カズトがベットの中に入った時であった。


 ________________________


 誰かがよんでいる。
 その声に気が付いたナナは、目元を擦りながら上半身を起こした。


「ん・・んん・・誰ですか」


 目も開けず、ポツリと呟くナナ。
 うっすら目を開けるナナ。
 うっすらと開けた目が、パッチリ開かれたのは、ある人物が自分の鼻をつついていたのが目に入った時であった。


「お?ようやくお目覚めのようじゃな」


「え?え?えええ?ふぐ!」


 思わず声をあげてしまったナナは、アリスとレイラが寝ている事に気付き口元を隠す。
 おこしてしまわなかったかと、そ~っと二人が寝ている方に目を向けると、二人の姿は見当たらない。


「・・アリスさん?レイラさん?」


 キョロキョロと辺りを見渡すナナ。
 寝ぞうの悪いアリスがベットから落ちてしまったのかと思い、ベットの下を覗くも見当たらない。
 バババと、部屋全体を見渡すナナ。
 そこでようやく、自分の名前を呼んでいた人物に気が付いた。


「ん?なんじゃ?何を見惚れておる?」


「み、見惚れているというわけでは・・・あ、あのぉ妖精さん」


 ナナが目にしたものとは、妖精であった。
 魔女の村で聞いた事があった為、妖精が目の前にいても特に驚きはしない。
 驚いたといえば、この部屋にアリスとレイラがいない事であった。


「ワシの事はアリアで良い」


「ハ、ハイ。わわわ私はナナといいます」


 両手を腰にあて、偉そうなアリアとは対称的に、ナナは正座し直して、ペコペコと頭を下げる。


「あ、あのぉアリアさん。この部屋に女の子が二人いたと思うのですが・・」


「ふむ。二人はさらわれてしもうたわい」


「そうですか・・ってえええええ」


 さらりと返すアリア。
 聞き間違いかと、思わず自分の耳を疑うナナ。


「これこれ。近所迷惑というやつを考えんか」


「す、すいません。で、でも」


 アリアの言う通り、今は真夜中であり、カズトから静かにするように言われている。
 しかし、近所の人々を気にしている余裕など、今のナナにはない。
 あの二人がさらわれた?一体何故・・。
 心中はその事でいっぱいである。


「安心せい。その為にワシが来たのじゃ」


「ど、どういう事・・ですか?」


 二人がさらわれたからやってきたというのであれば、二人の知り合いか何かなのだろうか。
 あの二人をさらう人物となると、相当な手練れの可能性が高い。


「どうもこうも、お主に協力して、あの二人を助けるのじゃよ」


「む・・・・・はい」


 無理です!っと言いかけたナナであったが、そんな事を言っている場合ではないと思い直した。
 二人がさらわれているのだ。
 無理などと弱音を吐いている場合ではない。


「ほうほう。いい目つきじゃわい。あやつに見せてやりたいわい」


「・・あやつ?」


「ああ、こっちの話しじゃ。シポエ」


 アリアが呪文らしきものを唱えると、アリアの右指が光輝き、ナナの目の前に杖らしきものが現れた。
 それは普段使っている杖とは違い、杖の先端にハートがついている、可愛らしい杖である。
 それはナナが良く知っている、嫌、最近良く見ている杖であった。


「こここ、これって・・もしかして」


「ほれ。さっさと変身して行くぞ」


 その杖とは、最近ナナ達がハマっているアニメ、怪盗魔法少女ハルに出てくる杖にそっくりであった。
 ゴクリと唾を吞み込み、ナナは杖を手に取った。
 変身の仕方は良く見ていた為、やり方は解っている。


「・・・・何故脱ぎだすのじゃ」


「・・・・え?」


 黄色い熊がたくさんプリントされているパジャマのボタンをはずしだしたナナを見て、アリアが質問をする。
 変身するには服を脱ぐ必要があるからでは?とナナは思ったのだが、何故か言い出さなかった。
 アリアの視線が痛い。
 変身=脱ぐという発想が可笑しいという事をナナは知らなかった。


「脱がなくてよいわ。ほれ。呪文を唱えよ」


 アリアにそう言われたナナは、杖を前に突き出して呪文を唱える。


「ラ、ラブパワー全開」


 ナナが呪文を唱えると、身体全体が光輝き、リボンが全身を包み込んだ。
 どういう風になるのか気になったナナであったが、目を開けている事が出来ず、両目を閉じて変身が終わるのを待っていた。
 変身する際に、両目を閉じている謎が解けたナナであった。
 ピンク色の可愛らしい制服に、フリフリした白いレース。
 水色の可愛いリボンで出来た花が無数に散らばっている。


「いつまで目を閉じておる。ほれ。行くぞ」


「・・・どこにですか?」


 変身が終わったらしく、アリアに声をかけられたナナは、何処に行くのかをアリアにたずねた。
 質問されたアリアは、ため息をつきながら、質問に答えた。


「やれやれ。二人を助けにじゃよ」


「た、助ける!?」


 アリアの返しを聞き、驚いてしまったナナ。
 助けるという事は、助けにいかなくてはいけない状況に陥っているという事である。


「続きは行きがてら話すとしよう。ほれ。あっちじゃ」


「ハ、ハイ!・・・・あれ?」


 元気良く返事を返すナナであったが、アリアが指をさす方を向いて固まってしまう。
 アリアが指をさしたのは、窓の外である。
 くいくいっと、窓を開けろと合図してくるので、窓をカラカラっと開けるナナ。


「ほれ。飛ぶのじゃ」


「ととととと飛べませんよ」


 ナナの胸元のポッケトに入るアリアに、ナナは抗議する。
 姉のナナミであれば飛べるが、ナナはまだ飛ぶ事が出来ない。


「変身したのじゃ。自分の中でイメージしてみよ」


「は、はぁ・・飛ぶ、飛ぶ、飛ぶ」


 両目を閉じ、空を飛ぶイメージを頭の中で想像する。
 フワフワとプカプカと浮かぶイメージ。
 まるで海の中を浮くようなイメージを思い浮かべると、ふわりと身体が浮いた。


「へ?え、えええ」


 サーっと空に浮かぶナナ。
 下を見ると、カズトの家が目に見える。
 上を向くと、綺麗な満天の星空が目に入る。
 前を向くと、ツバメが目に入る。
 目に・・・ってええええ!思わずしゃがみ込むナナ。


「あ、危なかったぁ・・ぶつかっちゃうとこだったよ」


「・・・そろそろ行くぞ」


 アリアに声をかけられ、ナナは静かにうなずいた。


 ____________________


 サーっと空を飛ぶ。
 下を向いて思わず歓喜する。
 綺麗な光が色とりどり目に入る。
 信号やら街灯、コンビニエンスストアやお家のカーテンから漏れる光。
 空からでないと味わえない光景。


「さて、二人はあそこにおるようじゃ」


 あそこと言われて目を向けた先には、大きな建物が目に入った。
 確かあれは・・何とかツリーだと、カズトから教わった記憶がある。
 いや、授業というやつで教わったんだったか・・とにかくあそこに二人がいるとの事であった。


「二人はどうしてさらわれたのでしょうか?」


 スーパーマンのように右腕を突き出して飛ばず、ピョン、フワリ、ピョン、フワリと、何かを踏んでジャンプするナナは、アリアにたずねた。
 何かを踏んでいる訳ではなく、何かを踏んでいるイメージをしているからそうなっているだけであり、怪盗魔法少女ハルをイメージしてのものである。


「あそこにさらわれたのは確かじゃな」


 アリアは、ナナの質問に答えなかった。
 知らないのか、言えないのか。
 そんな事を考えながら、目的地の近くまで飛んでいたナナは、高層ビルの屋上に降りたった。
 さらわれたということは、何者かがいるということであると考えたナナは、突入前に辺りを見渡す。


「・・特に何も感じませんね」


「油断してはならぬぞ・・よいかナナ」


 可愛らしい杖を握りしめ、邪悪な気配は感じないとアリアに告げるナナ。
 油断するなと告げるアリアは、ナナの鼻先へとやってきた。


「この先、卑劣な罠があるかも知れぬ。気を引き締めよ」


「・・・ハイ。」


 ギュッと杖を握り締めるナナ。
 小さく深呼吸をし、ツリーの中間地点に向けて、魔法を放つ。


「フレイム」


 魔法で辺りを照らそうと思ったのだが、魔法は発動しなかった。


「あ、あれ?」


「何をしておるのじゃ!呪文が違うぞ」


 アリアに指摘され、ハッとなるナナ。


(そ、そうだった。い、今の私は魔法少女ナナ)


 呪文、呪文、確かこうだったはずと、日頃から見ているアニメを思い出しながら、キリッと表情を引き締め、先ほどと同じ方向に向けて杖を向ける。


「ライトニングフラワー」


 放たれた魔法は、ヒュ〜・バンっと激しい光を夜空に撒き散らす。
 体の芯まで響き渡る音。
 夜空を大きくて、綺麗な光が辺りを照らしだす。
 夏の風物詩。
 人はそれを、花火と呼ぶ。


「・・・綺麗」


「な、ななな何じゃと!?」


「ア、アリアさん!?」


 何かに気がついたのか、アリアはナナの胸元からビュンっと、建物へと飛んで行く。
 花火に感動していたナナは、慌ててアリアの後を追うのであった。


 ーーーーーーーーーー


 建物に降りたつナナ。
 辺りは真っ暗というわけではない。
 緑色の光や赤い光などが、辺りを照らしている。


「ひ・・非常階段?どういう意味でしょう?」


「お、おのれ!!こ、このワシを騙しおったな!」


「ア、アリアさん?」


 そんなアリアの声が聞こえてきたのは、非常階段について考えていた時であった。
 声がする方へと急ぐナナ。


「ナナ!気をつけるのじゃ!わ、罠じゃ!」


 アリアに注意されるナナは、杖をギュッと握り締め、近くの扉に身を隠す。
 そっと扉から、アリアの方へと顔を向けて様子をうかがう。
 すると扉がガチャリと開き、誰かが出てきた。
 相手に気付かれないように、サッと顔を引っ込め、再度、そ〜っとアリアの方へと顔を向ける。


 赤と黒のチェックがらの帽子、上着、スカート。
 黒い靴下は膝下まであり、スカートから女の子だとわかる。
 しかし、顔は良く解らなかった。
 暗いからではない。
 黒いサングラスみたいなものを、していたからである。


「あーはっはっは。引っ掛かったわねアリア」


「ぐぬぬ。卑劣なり水瀬りの!ワシを食べ物で騙すとは」


 お皿の上に饅頭が置いてあり、お皿の前にはざるに入っているアリアの姿。
 そんなアリアの姿を見て、固まるナナ。


(あれって確か・・小動物を捕まえるヤツ・・・じゃ?)


 魔女の森で、姉から教わった狩りの方法。
 用意するものは、エサと木の棒、ざるとひもであり、ざるの下にエサを置き、ざるをひもでくくってある木の棒で支えておく。
 後は、エサを食べにやってきた獲物が、ざるの下にやってきたら、ひもを引っ張って木の棒を倒し、ざるの檻に閉じ込めるという手法だったはずなのだが・・。


(ん?ざるの奥におまんじゅうがあるけど?)


 普通であれば、饅頭はざるの中にあるはずである。


「まさか、手前で転んでお皿をざるの外に出しちゃうなんて」


「ワシとした事が・・迂闊じゃわい」


「・・・・。」


 どうやら、饅頭に気をとられてしまい、罠に引っ掛かってしまったらしい。
 しかし、どうやら二人は知り合いみたいだ。


「り、りの!いい加減目を覚まさんか!」


「可笑しな事を言うのね。まるで私がみたいじゃない」


「・・・!?」


 ようやく、この事件の真相が見えてきた。
 水瀬りのという犯人とアリアは知り合いであり、水瀬りのは何らかの方法で、アリスとレイラをさらってしまう。
 水瀬りのをとめなくてはと考えたアリアは、アリスとレイラの仲間であるナナに助けを求めてきたということだろう。


「操られておるわい。お主が作ろうとしていた国を思い出すのじゃ!」


(すごい・・。私と同い歳に見えるけど、国を作ろうとしているなんて)


 アリスとレイラを誘拐したのは許せないと思うが、自分とさほど変わらない水瀬りのという女の子に、感心してしまう。


「何を言うかと思えば・・。私は国を作ろうとしているじゃない!」


「人を誘拐するようなヤツを、あのジジィが許すと思うておるのか?」


「えぇ思うわ。私が作るハーレム帝国を、きっと気に入って下さるに違いないわ」


「ぐ、ぐぬぬ。あのジジィならあり得る話しやも知れぬ」


(ハーレム帝国?ハーレムってどういう意味だろう?)


 今度カズトにでも聞いてみようと思うナナであった。
 しかし、そんな事を考えている場合ではない。
 何だか雲行きが怪しくなってきていると、ナナは焦る。
 アリスとレイラは、何処にいるのだろうか。
 辺りを見渡すが、二人の姿は見当たらない。


「それよりもアリア。さっきナナって言ってなかったかしら?」


「ななな、何の事じゃ」


(・・・!?はわわわ。どどど、どうしよう)


「まぁいいわ。さっきの部屋に戻って、クマのパジャマを着た可愛い子をさらって来なくちゃグヘヘ」


 りのの言葉を聞いて、ナナの心臓が大きく音を鳴らす。
 だがこれは好機だ。
 自分ナナをさらいに行っている間に、アリアを救出し、アリスとレイラを探せばいいと、ナナは考えていた。


「ク、ク、ク。無駄じゃ無駄じゃ」


「・・・どういう意味よ?」


 あれ?妖精さん?と、ナナは焦る。


「カッカカ。ワシが魔法少女にしてお主の目を覚まさせるようにしたからのぉ」


 よ、妖精・・さん。
 ナナは泣きそうになってしまう。


「ま、魔法少女ですって!!」


 驚くりのであったが、目は♡である。
 いきなり大きな声がした為、ナナはびっくりしてしまった。


「ま、ま、ま、魔法少女キター!!!!」


 両手を握り締め、両腕を天にかかげながら、水瀬りのは歓喜するのであった。


 ーーーーーーーー


 何としてでも捕まえる、いや、さらってきて、ハーレム帝国の一員にするんだと、りのの力がみなぎっている事に、アリアは気がついていた。


「さぁアリア。その魔法少女可愛い子は何処にいるのかを教えなさい」


「目を覚まさんか!お主が目指した国は、そうではなかったはずじゃ!」


「ふふふ。教えないつもりだろうけど、いつまで続くかしら?」


 りのはそういうと、アリアが入っているざるの方へと歩み寄って行く。


(は、はわわわ!!どどどどうしよう)


 このままではアリアが危ない。
 何とかしなくてはと、杖をギュッと握り締め、飛び出そうとしたその時であった。


「ずずずずるいぞりの!!や、やめるのじゃぁ!」


「ほら?アリアも食べたいでしょ?早く、ング。しないと、ゴク。無くなっング。ちゃうわよ?」


「ひ、卑劣なり!く、あ〜ワシの饅頭がぁぁ」


 ざるの前にあった2つの饅頭のうちの1つを、りのは見せびらかしながら、美味しそうに食べる。
 夜空に響く、アリアの悲鳴。


「な、何と恐ろしい拷問じゃ。あぁ!こやつ、ワシの饅頭に手をとりおったわぃ。た、助けてくれ魔法少女ナナ!」


「・・・・。」


 普段見ている、怪盗魔法少女ハル。
 確かに、誰かの助けてを合図に変身し、助けるのだが、こんな風に助けてと呼んでいただろうかとナナは考えていた。
 しかし、アリアが危ないのに変わりはない。
 ナナは意を決し、飛び出すのであった。


「ままま待って下さい!!」


「だ、誰!?」


 スタッと扉からジャンプして、アリアのそばに降りたつナナに、りのは饅頭を皿に置いてから声をかける。


「ア、ア、アリアさんを解放して下さい。あ、後、アリスさんとレイラさんを返して下さい」


 杖、もといステッキを両手で握り締め、ナナはりのに話しかけた。


「カーーーット!!貴方ダメじゃない」


「ふへ?」


 訳もわからず、いきなり怒られてしまうナナは、思わずマヌケな声が出てしまう。


「私が誰かってたずねているんだから、ちゃんと名乗らなきゃ!!」


「ハ、ハイ!!す、すいません」


 両手を腰にあて、怒るりのに対し、思わず謝ってしまうナナ。
 確かに、初対面の人にはキチンと挨拶しなさいと、大好きな姉から教わっていたなと、ナナは反省する。


「ハイ。じゃぁTake2・・・だ、誰!?」


「あっ、ナナと申します。この度は・・」


「カーーーット!!コラコラこら。貴方は魔法少女ナナでしょ。その衣装からして、怪盗魔法少女ハルなんだから、あるでしょ?ほら?アレよアレ」


「ハ、ハ、ハイ!!!すす、すいません」


 丁寧にお辞儀をして、挨拶をするナナであったが、またもや怒られてしまう。
 魔女の村では、これが挨拶なのだが、どうやらカズトがいる世界では違うらしい。
 怒られたナナは、ペコペコと何度も頭を下げる。


「ハイ。Take3・・だ、誰!?」


「こ、この世に悪がある限り」


 バッと右手を天にかかげ、左手に持ったステッキをクルクルと器用に回す。


「誰かが私を求める限り」


 左手から天に向かって放たれるステッキを、右手でキャッチすると、それを右手でクルクル器用に回し、回しながら頭上から足元へ、足元から頭上へとステッキを持った右手を2周させる。


「わ、私は貴方の元へと駆けつける!」


 ピタっと、右手で持ったステッキを相手に向け、左手はピースした状態で左眼付近に持っていき、右足をくの字にしてポーズをとる。


「愛と勇気と正義の魔法少女服を纏いし可憐な美少女、魔法少女ナナちゃんただいま参上!星に変わってお仕置きです!」


 弓矢をから矢が飛び出すかの如く、左眼付近に添えていたピースを相手に向け、突き出していた右手を引っ込め、ステッキはアゴ付近に添える。
 くの字にしていた右足を、左足より少し下げた位置に下げる。


「・・・か、か、可愛いーーーーグハッ!」


「・・・お主は馬鹿なのか?」


「・・・あ、あれれ?え?えぇえ!?」


 パタリと倒れるりのであった。


 ーーーーーーーー


 良く解らないが、どうやら倒したらしい。
 閉じ込められているアリアを救出し、どういうことなのかをたずねるナナ。


「騙すつもりは無かったんじゃ。すまぬ。実はじゃ・・・」


 妖精アリアは、ことのてんまつを話し始めた。


 アリアと水瀬りのは、とある場所で国を作っている。
 アリアは1日に、3回までお助けアイテムを出せ、りのの国作りに協力をしているのだが、ある日だしたお助けアイテムに問題が発生してしまったらしい。


「ア、アリア。もう駄目・・お助けアイテムを出して」


「う、うむ。流石のワシも腹ペコじゃ・・シポエ」


「ありがとうアリアって!何よこの怪しげなサングラスは!パーティーでもしようって言うの?ねぇ?仮面舞踏会なの?」


「ま、まぁそう怒るな。後2回は出せるじゃろうが・・シポエ」


「お、お饅頭だわ!くっ。涙が、涙が出てきた」


「まぁ慌てるでない。後は飲み物じゃな」


「ちょっ!ちょっと待って!え、えぇぇえ!」


 3つ目のお助けアイテムは、時空間をゆがませる、タイムマシーンのようなものであった。
 りのとアリアを光が包みこむ。


「いっててて。り、りの大丈夫か?りの?」


「ふふふ。ははは!私は作る!ハーレム帝国を!」


 アリアが見上げると、先ほどのサングラスをかけたりのの姿が目に入った。


「何を言っておるのじゃって、コラ!よさぬか!」


「何この子達!ちょー可愛いいんですけど!天使の3Pは、ここにあったのね!」


 りのが目撃したのは、パジャマにケーキやらお菓子やらがプリントされていて、パジャマからチラリと見えるお腹のあたりをかいているアリスの姿。
 パジャマに黄色い熊がプリントされていて、スヤスヤ眠るナナの姿。
 可愛い♡が、たくさんプリントされているパジャマを着たレイラの姿であった。


「流石に三人同時には持てないから・・ヨイショっと」


「り、りの!?よさぬか!!」


 呼び止めるアリアの声を無視し、カラカラっと窓を開け、バッと外に飛び出してしまうのであった。


「じゃ、じゃぁアリスさんとレイラさんはこの辺りにいるって事ですか?で、でも・・」


 一通り話しを聞いたナナは、再度声をかけた。
 アリアの話しが正しいのだとすれば、この辺にアリスとレイラがいるはずである。
 しかし、魔力の気配が感じられない。


「なぁに心配せんでよい。とりあえずコヤツのサングラスを取って・・これでヨシ。ワシの魔法で何とかしよう」


「あ、あれ?でも1日3回が限度なんじゃ?」


 先ほどの話しからして、すでにアリアはお助けアイテムを3回だしているはずである。


「ふむ。どうやらあっちの世界で3回、こっちの世界で3回の魔法が可能なのじゃ」


「・・・なるほど」


「お主を魔法少女にしたから残りは2回じゃの。1つはお主の仲間を元の場所へ、もう1つはコヤツと帰るとしよう」


「あ、ありがとうございます」


「礼には及ばぬ。ワシらの責任じゃからな・・そうじゃ!どうじゃ?ワシらと向こうの世界に行くというのは?」


 別れるのが寂しくなったのか、アリアは一緒に行こうとナナ達を誘う。


「ごめんなさい。私にはやらなくてはならない事があるんです」


 かつて大好きだった姉ナナミ。
 魔女の村を壊滅し、自分の元から去ってしまった姉を取り戻す為に、ナナはカズト達と行動を共にしている。
 だから・・。


「それは残念じゃ。だが、お主ならきっとできるじゃろう。では、シポエ」


 アリアから放たれる白い光。
 眩しい。
 ギュッと目を閉じるナナであった。


 ーーーーーーーー


 誰かが呼んでいる。
 だけど、後少し、ほんの少しだけ。


「入るぞ。何だ?ナナは寝坊か?」


「あっお兄ちゃん。うーん。夜更かししちゃったのかな?」


「・・・ナナ。起きて下さい」


「全く。朝ごはんが冷めちゃうじゃない」


「・・おいアリス。お前も今起きただろう」


 ピョンピョンはねた寝癖を見て、カズトはここはいいから先に髪を直せと注意しようとしたのだが、それどころではなくなってしまう。


「カ、カズトさん・・ハーレム・・だ、駄目・・」


「・・・・。」


「おおおおお兄ちゃん!!どどどどういうこと!?」


「・・・・テト?説明して下さい」


「ア、アンタってヤツは、ナナに何をしようとしたのよ!!」


「ま、待て!誤解だ!お、おいナナ!起きろ!起きて説明しろ」


「・・・フニャ」


「ナナに触るんじゃないわよ!!」


「イ、イテッ!?ご、誤解だと言っているだろう」


 ナナが目を開けると、何故かアリスに踏まれているカズトの姿が見えた。
 顔を赤くし、涙目の美姫の姿も見える。
 プクっと頬を膨らませているレイラの姿。


「あ、あれ?アリア?」


 キョロキョロと辺りを見渡すナナ。
 夢だったのだろうか?


「みなさんおはようございます」


 ぺこりと頭を下げるナナ。
 枕元にある可愛らしいステッキには、気がつかないのであった。


 次回に続く?

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